「偽」痛風の正体はピロリン酸―結晶で見分ける関節炎と結石の成分
第99回医師国家試験 E問題 第55問
国試問題にチャレンジ
偽痛風の関節内にみられる結晶はどれか。
- a.リン酸カルシウム
- b.ピロリン酸カルシウム
- c.炭酸カルシウム
- d.尿酸カルシウム
- e.蓚酸カルシウム
対話形式の解説
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医学生まとめ
偽痛風は、関節内に沈着したピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶を好中球が貪食して起こる急性関節炎で、CPPD沈着症の急性関節炎型にあたります。関節液の偏光顕微鏡で長方形〜菱形・弱い正の複屈折性の結晶を証明すれば確定でき、針状・強い負の複屈折性を示す痛風の尿酸ナトリウム結晶と区別されます。高齢者の膝関節に好発し、X線での軟骨石灰化が手がかりとなる一方、発熱やCRP上昇を伴うため化膿性関節炎の除外が欠かせません。リン酸カルシウムや蓚酸カルシウムは尿路結石、炭酸カルシウムは膵石の主成分であり、尿酸カルシウムは臨床的に重要な結晶ではありません。結晶の種類と好発年齢・部位を対応づけて理解することは、急性単関節炎の鑑別を進めるうえでの基本となります。
解答・解説
正解はbです
偽痛風は、関節内にピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dihydrate:CPPD)結晶が沈着・遊離し、それを好中球が貪食することで急性の関節炎を起こす病態である。痛風(尿酸ナトリウム結晶による関節炎)とよく似た急性単関節炎を起こすため「偽」痛風と呼ばれる。現在では、CPPD結晶の沈着によって起こる病態を総称してCPPD沈着症(CPPD deposition disease)と呼び、偽痛風はその急性関節炎型にあたる。 本問は「結晶誘発性関節炎の原因結晶」を正しく対応づけられるかを問うている。痛風=尿酸ナトリウム(尿酸塩)、偽痛風=ピロリン酸カルシウム、という基本の組み合わせを押さえれば、正解はbと決まる。そのほかの選択肢は、主に尿路結石や膵石など関節以外の結石の成分として知られるものであり、それぞれどこで問題になる物質かを整理しておくとよい。
選択肢考察
- ×a. リン酸カルシウム
リン酸カルシウムはヒドロキシアパタイトとして骨や歯の主成分であり、尿路結石の成分(しばしば蓚酸カルシウムとの混合結石)としても知られる。塩基性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)結晶は石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)やMilwaukee肩などの原因となることがあるが、偽痛風の原因結晶ではない。偽痛風で問題となるのはリン酸ではなくピロリン酸(リン酸が2分子結合したもの)のカルシウム塩である。
- ○b. ピロリン酸カルシウム
偽痛風の原因結晶である。関節液を偏光顕微鏡で観察すると、長方形〜菱形の結晶が好中球に貪食されている像がみられ、弱い正の複屈折性を示す(鋭敏色板の軸と平行に置くと青色にみえる)。これに対し、痛風の尿酸ナトリウム結晶は針状で強い負の複屈折性を示す。関節液中にこの結晶を証明することが偽痛風の確定診断となり、単純X線で半月板や関節軟骨に線状の石灰化(軟骨石灰化症)がみられることも診断の手がかりとなる。
- ×c. 炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは膵石の主成分として知られ、慢性膵炎(特にアルコール性)で膵管内に形成される。胆石の一部(黒色石など)にも含まれることがある。偽痛風の関節内にみられる結晶ではない。
- ×d. 尿酸カルシウム
偽痛風の結晶ではない。尿酸に関連する関節炎は痛風であるが、痛風で関節内に析出するのはカルシウム塩ではなく尿酸ナトリウム(一ナトリウム尿酸塩)の結晶である。また、尿路結石として問題になるのは主に尿酸結石(尿酸そのものの結晶)であり、「尿酸カルシウム」は臨床的に重要な結晶成分ではない。痛風と偽痛風の名称の類似から誤りを誘う選択肢である。
- ×e. 蓚酸カルシウム
蓚酸(しゅうさん)カルシウムは尿路結石の成分として最も多く、尿路結石の大部分はカルシウム含有結石で、その中心が蓚酸カルシウムである。高蓚酸尿症(原発性高蓚酸尿症、腸管切除後など)で形成されやすい。長期透析患者などでまれに関節内に沈着することはあるが、偽痛風の原因結晶ではない。
偽痛風(CPPD沈着症)の概要
・高齢者に多く、加齢とともに頻度が増す。性差は痛風ほど明らかではない。 ・好発部位は膝関節が最多で、ほかに手関節、肩関節、足関節など。痛風が第1中足趾節関節(母趾MTP関節)に好発するのと対照的である。 ・誘因として手術、外傷、重篤な内科疾患などのストレスがあり、入院中の高齢者に急な膝の腫脹・発熱として発症することがある。発熱やCRP上昇を伴い、化膿性関節炎との鑑別が重要となる(関節液のグラム染色・培養を行う)。 ・基礎疾患として副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症)、ヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症、低リン血症などが関連する。若年発症や多発例ではこれらを検索する。 ・単純X線で半月板、関節軟骨、恥骨結合、手関節の三角線維軟骨複合体などに石灰化(軟骨石灰化症)を認める。 ・治療は関節穿刺による排液、安静、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、ステロイドの関節内注射など。痛風と異なり、結晶を溶解・排泄させる根本的な薬物療法はない。
結晶誘発性関節炎の比較
・痛風:尿酸ナトリウム結晶。針状、強い負の複屈折性。中年男性、母趾MTP関節に好発。高尿酸血症が背景。 ・偽痛風:ピロリン酸カルシウム結晶。長方形〜菱形、弱い正の複屈折性。高齢者、膝関節に好発。 ・塩基性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト):石灰沈着性腱板炎など。光学顕微鏡では確認しにくい。
主な結石の成分
・尿路結石:蓚酸カルシウムが最多、次いでリン酸カルシウム。ほかに尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石(感染結石)、シスチン結石。 ・膵石:炭酸カルシウム。 ・胆石:コレステロール結石、ビリルビンカルシウム石、黒色石など。
POINT
・偽痛風の原因結晶はピロリン酸カルシウム(CPPD)で、偏光顕微鏡で弱い正の複屈折性を示す長方形〜菱形の結晶。 ・痛風の原因結晶は尿酸ナトリウムで、針状・強い負の複屈折性。 ・偽痛風は高齢者の膝関節に好発し、X線で軟骨石灰化を認める。 ・尿路結石は蓚酸カルシウムが最多、膵石は炭酸カルシウムが主成分。
