StudyMed医師国家試験

固まりすぎて止まらない―DICの検査値は「活性化・消費・線溶」の3段階で読め

第99回医師国家試験 E問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第40問

播種性血管内凝固〈DIC〉にみられるのはどれか。3つ選べ。

  1. a.血小板減少
  2. b.血清FDP低値
  3. c.血小板粘着能低下
  4. d.血漿フィブリノゲン減少
  5. e.トロンビン・アンチトロンビン複合体〈TAT〉高値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は播種性血管内凝固、DICで見られる検査所見を3つ選ぶ問題だ。検査値を丸暗記するより、DICの病態を段階に分けて考えると、それぞれの値が増えるか減るかが自然に導ける。まずDICとはどんな病態か説明できるかな。
医学生医学生
敗血症などを背景に、全身の細い血管に小さな血栓がたくさんできる病態ですよね。でも、血栓ができるのに出血しやすくなるというのが、CBTの勉強のときからずっとしっくりきていません。
ドクタードクター
そこがDIC理解の核心だね。血管内で凝固が延々と続くと、血栓の材料である血小板や凝固因子が使い果たされてしまう。これを消費性凝固障害という。さらにできた血栓を溶かそうとして線溶が亢進する。その結果、本来止血に必要な場所では血が止まらなくなるんだ。
医学生医学生
材料切れと、溶かす力の亢進の両方で出血するわけですね。微小血栓のほうは臓器障害の原因になるんでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。腎・肺・肝・脳などの循環障害から多臓器不全につながる。では検査所見を、凝固の活性化、消費、二次線溶の亢進という3段階で整理しよう。まず消費の段階で、何が減ると思う?
医学生医学生
血小板とフィブリノゲンですね。どちらも血栓の材料なので。
ドクタードクター
正解。血小板は微小血栓に取り込まれて減少し、これはDICの早期から出やすく、診断基準でも中心的な項目だ。数日で急に減っていく経過は特に重要な手がかりになる。フィブリノゲンはトロンビンでフィブリンに変えられて消費され、さらに線溶でも分解されるから減少する。PTやAPTTも延長するよ。
医学生医学生
救急の実習で敗血症の患者さんを見たとき、フィブリノゲンはむしろ高めだった気がします。それでもDICだったんでしょうか。
ドクタードクター
鋭い観察だね。フィブリノゲンは炎症で産生が増える急性相反応物質でもあるから、感染症や悪性腫瘍が背景のDICでは、消費されていても正常〜高値にとどまることがある。だから「フィブリノゲンが正常だからDICではない」とは言えず、経時的な低下傾向に注目するのが大切なんだ。逆に急性前骨髄球性白血病や産科DICでは著明に低下しやすい。
医学生医学生
次に凝固の活性化ですが、TATはトロンビンとアンチトロンビンの複合体ですよね。これが増えるのはなぜですか。
ドクタードクター
凝固が進んでトロンビンができると、生理的な阻止因子であるアンチトロンビンがすぐに1対1で結合して不活化する。その結合体がTATだ。つまりTAT高値は、血管内でトロンビンが大量に作られている証拠、凝固活性化を直接映す分子マーカーなんだ。DICの前段階を捉えるのにも役立つ。ちなみにアンチトロンビン自体は消費されて低下する。
医学生医学生
TATは上がるけどアンチトロンビン活性は下がる、と逆向きになるのがややこしいですね。では線溶の段階では、FDPは低値ではなく高値になるということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。できたフィブリン血栓をプラスミンが分解するから、分解産物のFDPやDダイマーが上昇する。FDP上昇は「血管内で血栓ができ、それが溶かされている」ことを示していて、血小板減少と並んで早期から出やすい所見だ。だから血清FDP低値は向きが逆で誤りになる。
医学生医学生
残りの血小板粘着能低下は、血小板が減るならその働きも落ちそうな気がして迷いました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でもDICで問題になるのは血小板の「数」の減少だ。DICの引き金となる場面では、血小板はむしろ活性化されて粘着・凝集し、血栓づくりに参加した結果として消費される。粘着能低下が主体になるのはフォン・ヴィレブランド病やベルナール・スーリエ症候群のような先天性の血小板機能障害で、DICとは区別して覚えよう。
医学生医学生
つまり正解は血小板減少、フィブリノゲン減少、TAT高値の3つですね。減るのは材料、増えるのは活性化と分解の産物、と整理すると覚えやすいです。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。発展として、線溶の程度による病型も押さえておこう。敗血症ではPAI-1が増えて線溶が抑えられる線溶抑制型が多く、臓器障害が前面に出てFDPの上昇は比較的軽度。一方、急性前骨髄球性白血病や大動脈瘤では線溶亢進型が多く、FDPやPICが著明に上昇し、出血症状が強くなる。
医学生医学生
同じDICでも、基礎疾患によって臓器障害型か出血型かが変わるんですね。治療はヘパリンでしょうか。
ドクタードクター
最も大切なのは基礎疾患の治療だ。そのうえで病態に応じて、ヘパリン類やアンチトロンビン製剤、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤などの抗凝固療法を行い、出血が強ければ新鮮凍結血漿や血小板を補充する。急性前骨髄球性白血病ならレチノイン酸などによる原疾患治療が鍵になる。検査値の羅列ではなく、病態と基礎疾患をセットで考える癖をつけてほしいな。

まとめ

DICは基礎疾患を背景に全身の細小血管内で凝固が持続的に活性化される病態で、検査所見は「凝固活性化・消費・二次線溶亢進」の3段階で整理できます。凝固活性化を反映してTATや可溶性フィブリンが上昇し、消費により血小板・フィブリノゲン・アンチトロンビンが減少してPT・APTTが延長し、線溶亢進によりFDP・Dダイマー・PICが上昇します。感染症を基礎とするDICではフィブリノゲンが急性相反応で正常〜高値となりうるため経時的変化に注目し、血小板粘着能低下はフォン・ヴィレブランド病などの特徴でDICの所見ではない点に注意しましょう。また、敗血症に多い線溶抑制型と急性前骨髄球性白血病などに多い線溶亢進型で臨床像が異なり、治療の基本は基礎疾患の治療です。病態から検査値を導く考え方は、救急・集中治療の現場で検査結果を素早く解釈するための土台になります。

解答・解説

正解はa, d, eです

DICの本態

播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)は、敗血症・悪性腫瘍(特に急性前骨髄球性白血病)・産科合併症(常位胎盤早期剝離、羊水塞栓)・重症外傷などの基礎疾患を背景に、全身の細小血管内で凝固が持続的に活性化され、微小血栓が多発する病態である。その結果、次の二つの問題が同時に生じる。 (1) 微小血栓による臓器の循環障害 → 腎・肺・肝・脳などの臓器障害(多臓器不全) (2) 血小板と凝固因子が血栓づくりに使い果たされること(消費性凝固障害)と、できた血栓を溶かす線溶の亢進 → 出血傾向

検査所見を病態から組み立てる

本問は検査値を暗記で答えるより、次の3つの段階に分けて考えると確実に解ける。 ・凝固の活性化(トロンビンの過剰産生):トロンビンはすぐに阻止因子アンチトロンビンと結合して不活化されるため、その結合体であるトロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)が血中で増える。プロトロンビンからトロンビンができるときに切り離されるプロトロンビンフラグメントF1+2も増える。 ・消費:血小板、フィブリノゲン、その他の凝固因子が減少し、プロトロンビン時間(PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長する。凝固を抑える側のアンチトロンビンも消費されて低下する。 ・二次線溶の亢進:生じたフィブリン血栓をプラスミンが分解するため、フィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP)やDダイマー(安定化フィブリンの分解産物)が上昇し、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)も増加する。 この枠組みに当てはめると、「減るもの」は血小板・フィブリノゲン、「増えるもの」はTAT・FDP・Dダイマーであり、各選択肢の増減の向きが合っているかを確認すればよい。

選択肢考察

  1. ○a.  血小板減少

    血管内で次々に形成される微小血栓に血小板が取り込まれて消費されるため、血小板数は減少する。血小板減少はFDP上昇と並んでDICの早期から認められやすい所見であり、各種診断基準でも中心的な項目である。特に経時的に急速に減少していくこと(例えば数日で前値の30〜50%以上の低下)はDICを疑う重要な手がかりとなる。ただし、造血器腫瘍や化学療法後など骨髄での産生低下がある例では、血小板数がDICの評価に使いにくい点に注意する。

  2. ×b.  血清FDP低値

    DICでは形成されたフィブリン血栓がプラスミンによって分解される二次線溶が亢進するため、FDPは低値ではなく高値を示す。FDPはフィブリン(およびフィブリノゲン)がプラスミンで分解されてできる産物の総称であり、その上昇は「血管内で血栓ができ、それが溶かされている」ことを反映する。FDP上昇はDICの早期から認められ、診断基準の重要な項目である。同時にDダイマーも上昇する。なお、測定検体については、FDPは専用の採血管を用いて血清で測定されるのに対し、Dダイマーはクエン酸加血漿で測定されるという違いがある。

  3. ×c.  血小板粘着能低下

    DICで問題になるのは血小板の「数」の減少であり、血小板の粘着能低下はDICの特徴的所見ではない。DICの引き金となる血管内皮障害や組織因子の流入の場面では、血小板はむしろ活性化されて内皮下組織に粘着・凝集し、血栓形成に参加している(その結果消費される)。血小板粘着能の低下が主体となる病態としては、フォン・ヴィレブランド病(粘着に必要なフォン・ヴィレブランド因子の異常)やベルナール・スーリエ症候群(血小板膜糖蛋白GPIb-IX-Vの欠損)などの先天性血小板機能・粘着障害が代表的であり、DICとは区別して覚える。

  4. ○d.  血漿フィブリノゲン減少

    フィブリノゲンはトロンビンによってフィブリンに変換されて血栓の材料になるため、凝固が持続的に進むDICでは消費されて減少する。さらに亢進した線溶によってフィブリノゲン自体も分解される。ただし、フィブリノゲンは急性相反応物質(炎症で産生が増える蛋白)でもあるため、感染症や悪性腫瘍を基礎疾患とするDICでは消費があっても正常〜高値にとどまることがある。そのため「フィブリノゲンが正常だからDICではない」とは言えず、経時的な低下傾向に注目することが大切である。一方、急性前骨髄球性白血病や産科DICのように線溶亢進が強い病型では著明に低下しやすい。

  5. ○e.  トロンビン・アンチトロンビン複合体〈TAT〉高値

    凝固が活性化されて生じたトロンビンは、生理的な凝固阻止因子であるアンチトロンビンと1対1で結合し、TATとして不活化される。したがって血中TATの上昇は、血管内でトロンビンが大量に作られていること、すなわち凝固活性化状態を直接反映する分子マーカーである。DICでは高値となり、DICの前段階(凝固亢進状態)の把握にも役立つ。同様の意義をもつマーカーに可溶性フィブリン、プロトロンビンフラグメントF1+2がある。なお、TAT形成に伴ってアンチトロンビンは消費され、アンチトロンビン活性は低下する。

DICの主な基礎疾患

・感染症(特に敗血症) ・悪性腫瘍:急性前骨髄球性白血病(APL)、前立腺癌・膵癌などの固形癌 ・産科疾患:常位胎盤早期剝離、羊水塞栓症、死胎児症候群 ・その他:重症外傷・熱傷、大動脈瘤、劇症肝炎、重症膵炎、不適合輸血など

線溶の程度による病型

・線溶抑制型:敗血症に多い。線溶を抑えるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)が増加し、血栓が溶けにくいため臓器障害が前面に出る。FDP・Dダイマーの上昇は比較的軽度。 ・線溶亢進型:APL、大動脈瘤、前立腺癌などに多い。PICやFDPが著明に上昇し、フィブリノゲンが著減して出血症状が強い。 ・線溶均衡型:固形癌などでみられる中間型。

DIC関連検査の整理

・消費を反映:血小板数↓、フィブリノゲン↓、PT延長、APTT延長、アンチトロンビン↓ ・凝固活性化を反映:TAT↑、可溶性フィブリン↑、プロトロンビンフラグメントF1+2↑ ・線溶を反映:FDP↑、Dダイマー↑、PIC↑

治療の原則

最も重要なのは基礎疾患の治療である。そのうえで病態に応じて抗凝固療法(ヘパリン類、アンチトロンビン製剤、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤など)、APLではレチノイン酸などによる原疾患治療、出血が強い場合は新鮮凍結血漿や血小板の補充を行う。線溶亢進型では蛋白分解酵素阻害薬(ナファモスタットなど)も用いられる。

血小板機能異常との区別

血小板粘着の障害:フォン・ヴィレブランド病、ベルナール・スーリエ症候群 血小板凝集の障害:血小板無力症(GPIIb/IIIa欠損)、アスピリン内服など これらは血小板数が保たれていても出血時間が延長する点で、数の減少が主体のDICと異なる。

POINT

・DICは「凝固活性化 → 消費 → 二次線溶亢進」の3段階で検査所見を整理する。 ・減少するもの:血小板、フィブリノゲン、アンチトロンビン(PT・APTTは延長)。 ・増加するもの:TAT、可溶性フィブリン、FDP、Dダイマー、PIC。 ・感染症を基礎とするDICでは、フィブリノゲンが急性相反応で正常〜高値となりうる。 ・血小板粘着能低下はフォン・ヴィレブランド病などの特徴であり、DICの所見ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。