StudyMed医師国家試験

壁に上皮はあるか?―膵囊胞を「真性」と「仮性」から読み解く

第99回医師国家試験 E問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第36問

囊胞性膵疾患で正しいのはどれか。

  1. a.仮性囊胞壁は上皮を有しない。
  2. b.粘液性囊胞腫瘍は男性に多い。
  3. c.粘液性囊胞腫瘍は膵頭部に多い。
  4. d.貯留性囊胞内のアミラーゼ値は低い。
  5. e.漿液性囊胞腫瘍は癌化しやすい。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膵臓の囊胞性病変をまとめて整理する問題だ。膵囊胞は種類が多くて混乱しやすいけれど、最初に「囊胞の内側が上皮で覆われているかどうか」という1本の軸を立てると、一気に見通しがよくなる。そこから腫瘍性囊胞の好発年齢・性別・部位・悪性度へと進んでいこう。
医学生医学生
病理学の講義で「真性囊胞と仮性囊胞の違いは上皮の有無」と習った気がします。膵臓でも同じ考え方でいいんですか。
ドクタードクター
その通り、全身共通の定義がそのまま当てはまる。真性囊胞は内面が上皮で裏打ちされたもので、先天性囊胞、膵管が詰まって膵液がたまる貯留性囊胞、そして漿液性囊胞腫瘍や粘液性囊胞腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍といった腫瘍性囊胞が入る。一方の仮性囊胞は、膵炎や外傷で漏れ出た膵液や壊死物質を、周りの肉芽組織や線維組織が袋のように包み込んでできたものだ。
医学生医学生
つまり仮性囊胞の壁は炎症でできた線維性の被膜で、上皮の裏打ちはない、ということですね。だから「仮性囊胞壁は上皮を有しない」が正しい記述になる。
ドクタードクター
正解。これが今回の答えだ。上皮の有無は仮性囊胞を定義づける病理学的な特徴そのものだから、迷わず選べるようにしておきたい。急性膵炎の後、発症から4週以降に被包化された液体貯留として見つかることが多いね。
医学生医学生
消化器内科を回ったとき、重症膵炎後の患者さんで「被包化された液体貯留」の話が出ていました。あれが仮性囊胞につながるんですね。
ドクタードクター
そう、膵炎後の経過観察では大事なテーマだ。では次に腫瘍性囊胞の代表、粘液性囊胞腫瘍、いわゆるMCNについて。性別と部位はどうだろう。
医学生医学生
男性に多くて膵頭部……と言いたいところですが、それはIPMNと混ざっている気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。MCNはほぼ女性に限って発生し、40〜50歳代の中年女性に多い。部位は大部分が膵体尾部で、膵頭部はまれだ。組織では上皮の下に卵巣様間質がみられ、これが診断に必須の所見になっている。女性に偏って発生することと関連すると考えられているんだ。
医学生医学生
卵巣様間質……膵臓なのに卵巣っぽい間質があるのは面白いですね。画像ではどう見えるんでしょう。
ドクタードクター
厚い被膜に包まれた類円形の多房性囊胞で、大きな囊胞の中に小さな囊胞が入り込む「cyst in cyst」の像をとる。夏みかんの断面に例えられることもあるね。通常は主膵管と交通しない。悪性化しうるので、原則として切除が検討される。
医学生医学生
対照的に、IPMNは高齢男性の膵頭部に多くて、膵管と交通するんでしたね。CBTの過去問でセットで覚えました。
ドクタードクター
その対比の覚え方はとても有効だ。MCNは「中年女性・体尾部・交通なし・卵巣様間質」、IPMNは「高齢男性・膵頭部(鉤部)・膵管と交通あり」。混同しやすいからこそ、ペアで整理しておこう。次は貯留性囊胞の内容液。アミラーゼは高い?低い?
医学生医学生
膵管が詰まってその上流に膵液がたまるわけだから、中身は膵液そのもの……つまりアミラーゼはむしろ高いはずですね。
ドクタードクター
その推論で正しい。貯留性囊胞の内容液アミラーゼは血清値よりはるかに高くなるのが普通だ。膵管と交通する仮性囊胞でも同様に高値になる。「低い」という記述は誤りだね。最後に漿液性囊胞腫瘍、SCNはどうかな。
医学生医学生
囊胞腫瘍というだけで癌化しそうなイメージがありますが……。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。SCNはグリコーゲンに富む淡明な細胞が小さな囊胞をたくさんつくる腫瘍で、高齢女性に多い。典型例は微小囊胞が蜂の巣状に集まり、中心に星芒状の瘢痕や石灰化を伴うことがある。ほとんどが良性で、悪性化はきわめてまれだ。癌化を警戒すべきなのはむしろMCNやIPMNのほうだね。
医学生医学生
同じ「囊胞性腫瘍」でも、漿液性はほぼ良性、粘液性は悪性化しうる、と分けて覚えればいいんですね。
ドクタードクター
そう。臨床ではこの違いが治療方針に直結する。SCNは症状や増大がなければ経過観察が基本、MCNは原則切除、IPMNは主膵管型で悪性の頻度が高いので型に応じて判断する。仮性囊胞では感染、出血、破裂、周囲臓器の圧迫などの合併症があれば内視鏡的あるいは経皮的なドレナージを考える。
医学生医学生
若い女性の囊胞性腫瘍だとSPNもありましたよね。外科の実習で手術症例を見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。solid-pseudopapillary neoplasmは若年女性に多く、充実成分と囊胞成分が混在する低悪性度腫瘍だ。膵囊胞性病変は「年齢・性別」「部位」「膵管との交通」「内容液」「悪性度」の5つの視点で表にしておくと、どんな角度から問われても対応できるよ。

まとめ

膵囊胞性病変は、まず囊胞壁に上皮があるかどうかで真性囊胞と仮性囊胞に分けて考えます。仮性囊胞は膵炎や外傷で漏れた膵液を肉芽・線維組織が包んだもので、壁に上皮をもたないことが定義上の特徴です。腫瘍性囊胞では、粘液性囊胞腫瘍が中年女性の膵体尾部に好発し卵巣様間質をもち悪性化しうるのに対し、漿液性囊胞腫瘍は高齢女性に多い蜂巣状の腫瘍でほぼ良性です。また膵管閉塞による貯留性囊胞や膵管と交通する仮性囊胞では、内容液のアミラーゼは高値となります。MCNとIPMNを対にして覚え、年齢・性別・部位・膵管との交通・悪性度の視点で整理しておくことが、画像診断や治療方針の判断にそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はaです

膵臓にできる囊胞性病変の分類と、それぞれの特徴を問う問題である。 膵囊胞は、まず「囊胞の内面が上皮で覆われているかどうか」で大きく2つに分けて考えると整理しやすい。 ・真性囊胞:内面が上皮で裏打ちされている。先天性囊胞、貯留性囊胞(膵管の閉塞によって膵液がたまったもの)、腫瘍性囊胞(漿液性囊胞腫瘍、粘液性囊胞腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍など)が含まれる。 ・仮性囊胞:急性膵炎・慢性膵炎・外傷などで漏れ出た膵液や壊死物質が、周囲の肉芽組織・線維組織で被包されてできる。壁に上皮をもたない。 次に、腫瘍性囊胞の代表である漿液性囊胞腫瘍(SCN)と粘液性囊胞腫瘍(MCN)については、好発年齢・性別・部位・形態・悪性化のしやすさの違いが頻出である。MCNは中年女性の膵体尾部に好発し、悪性化のポテンシャルをもつ。SCNは高齢女性に多く、ほとんどが良性である。 さらに、膵管と交通する囊胞(貯留性囊胞や多くの仮性囊胞)では膵液が流入するため、内容液のアミラーゼ値が高くなる点も押さえておく。これらを踏まえて各選択肢を判断する。

選択肢考察

  1. ○a.  仮性囊胞壁は上皮を有しない。

    膵仮性囊胞は、急性膵炎(特に発症4週以降)、慢性膵炎、膵外傷などで膵管や膵実質が破綻し、漏出した膵液・滲出液が周囲の肉芽組織や線維性組織に囲まれて形成される。囊胞壁は炎症反応による線維性被膜であり、上皮細胞による裏打ちをもたない。この「上皮の有無」こそが仮性囊胞と真性囊胞を区別する病理学的な定義であり、記述は正しい。

  2. ×b.  粘液性囊胞腫瘍は男性に多い。

    粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)はほぼ女性に限って発生し、好発年齢は40〜50歳代を中心とする中年である。組織学的に囊胞壁の上皮下に卵巣様間質(ovarian-type stroma)を認めることが診断に必須の特徴で、これが女性に偏って発生することと関連すると考えられている。男性に多いとする記述は誤りである。

  3. ×c.  粘液性囊胞腫瘍は膵頭部に多い。

    MCNの大部分は膵体尾部に発生し、膵頭部発生はまれである。画像上は厚い被膜に覆われた類円形の囊胞で、内部が隔壁で区切られた多房性囊胞(大きな囊胞の中に小囊胞が入り込む「cyst in cyst」像、夏みかん様と表現される)を示す。通常、主膵管との交通は認めない。膵頭部に多いとする記述は誤りである。なお膵頭部(鉤部)に好発する囊胞性腫瘍としては膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)が挙げられる。

  4. ×d.  貯留性囊胞内のアミラーゼ値は低い。

    貯留性囊胞は、結石・腫瘍・狭窄などで膵管が閉塞し、その上流の膵管が拡張して膵液がたまってできる真性囊胞である。内容は膵液そのものであるから、囊胞内容液のアミラーゼ値は血清値よりもはるかに高くなるのが普通である。したがって「低い」とする記述は誤りである。膵管と交通のある仮性囊胞でも同様に内容液アミラーゼは高値となる。

  5. ×e.  漿液性囊胞腫瘍は癌化しやすい。

    漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)は、グリコーゲンに富む淡明な細胞質をもつ上皮が小囊胞を多数形成する腫瘍で、高齢女性に多い。典型例は微小な囊胞が蜂の巣状に集まった形態(microcystic type)で、中心部に星芒状の瘢痕や石灰化を伴うことがある。ほとんどが良性であり、悪性化(漿液性囊胞腺癌)はきわめてまれである。癌化しやすいのはむしろMCNやIPMNであり、記述は誤りである。

膵囊胞性病変の整理

・仮性囊胞:膵炎・外傷後。上皮なし。膵管と交通することが多く内容液アミラーゼ高値。感染・出血・破裂・周囲臓器圧迫などの合併症があれば内視鏡的または経皮的ドレナージを行う。 ・貯留性囊胞:膵管閉塞による膵液の貯留。上皮あり(真性囊胞)。アミラーゼ高値。 ・漿液性囊胞腫瘍(SCN):高齢女性、膵体尾部にやや多い。蜂巣状の微小囊胞集簇、中心瘢痕。ほぼ良性で、症状や増大がなければ経過観察が基本。 ・粘液性囊胞腫瘍(MCN):中年女性、膵体尾部。厚い被膜をもつ多房性囊胞(cyst in cyst)、卵巣様間質。主膵管との交通なし。悪性化のおそれがあるため原則として切除する。 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN):高齢男性に多い、膵頭部(鉤部)に多い。膵管内で粘液を産生する腫瘍で膵管と交通する。主膵管型・分枝型・混合型に分けられ、主膵管型は悪性の頻度が高い。十二指腸乳頭の開大と粘液排出が内視鏡でみられることがある。 ・solid-pseudopapillary neoplasm(SPN):若年女性に多い充実性と囊胞性が混在する低悪性度腫瘍。

MCNとIPMNの対比

MCNは「中年女性・体尾部・膵管と交通なし・卵巣様間質」、IPMNは「高齢男性・膵頭部・膵管と交通あり」と対にして覚えると混同しにくい。

POINT

・仮性囊胞は壁に上皮をもたない(上皮の有無で真性囊胞と区別する)。 ・MCNは中年女性の膵体尾部に好発し、卵巣様間質が特徴で悪性化しうる。 ・SCNは高齢女性に多い蜂巣状の多囊胞性腫瘍で、ほぼ良性。 ・貯留性囊胞や膵管と交通する仮性囊胞では内容液アミラーゼは高値。 ・IPMNは高齢男性の膵頭部に多く、膵管と交通する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。