StudyMed医師国家試験

「見つかった=治療」ではない―サルコイドーシスのステロイド適応は臓器で決まる

第99回医師国家試験 E問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第20問

サルコイドーシスで副腎皮質ステロイド薬の全身投与が適応でないのはどれか。

  1. a.房室ブロック
  2. b.顔面神経麻痺
  3. c.高カルシウム血症
  4. d.肺門リンパ節腫脹
  5. e.活動性ぶどう膜炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はサルコイドーシスで、副腎皮質ステロイド薬の全身投与が「適応でない」ものを選ぶ問題だ。サルコイドーシスは自然に良くなる例が多い一方、特定の臓器が侵されると命に関わったり後遺症を残したりする。だから治療を決める軸は「どの臓器が、どの程度侵されているか」。それぞれの選択肢が放っておくとどうなるか、という視点で見ていこう。
医学生医学生
病理実習で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の標本を見ました。全身どこにでもできるから、見つかったら全部ステロイドで抑えるのかと思っていました。
ドクタードクター
そう考えたくなるけど、実は経過観察が基本の病気なんだ。無症状で臓器の機能障害がなければ治療しない。逆に、重要な臓器の機能が脅かされているときに全身投与を考える。まず房室ブロックはどうかな。
医学生医学生
心サルコイドーシスですよね。刺激伝導系に肉芽腫ができるとブロックが起こると習いました。
ドクタードクター
その通り。高度房室ブロックや心室性不整脈は失神や突然死につながり、心病変は本症の予後を決める大きな因子だ。だからステロイド全身投与の適応で、必要に応じてペースメーカや植込み型除細動器も使う。
医学生医学生
顔面神経麻痺も神経サルコイドーシスの症状ですね。Heerfordt症候群という名前を覚えています。
ドクタードクター
よく覚えているね。顔面神経麻痺は神経サルコイドーシスで最も多い脳神経障害で、耳下腺腫脹、ぶどう膜炎、発熱を伴うものをHeerfordt症候群、ブドウ膜耳下腺熱と呼ぶ。神経病変は後遺症を残しやすいから、これも全身投与の適応だ。
医学生医学生
高カルシウム血症はなぜ起こるんでしたっけ。副甲状腺とは関係ないですよね。
ドクタードクター
いい疑問だね。肉芽腫の中のマクロファージが1α-水酸化酵素を持っていて、25-水酸化ビタミンDを活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDに変えてしまう。その結果、腸管からのカルシウム吸収が増えて高カルシウム血症や高カルシウム尿症になり、腎結石や腎機能障害の原因になる。ステロイドは肉芽腫を抑えてこの活性化を減らすので、適応になるんだ。
医学生医学生
ぶどう膜炎は、眼科の臨床実習で点眼で治療しているのを見ました。それでも全身投与なんですか。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。眼病変は日本の患者で特に多く、まずはステロイド点眼などの局所治療から始めるのが実際の診療だ。ただ、局所治療で抑えられない活動性ぶどう膜炎や、網脈絡膜炎・視神経病変などの後眼部病変は、続発緑内障や視力低下の危険が高い。そういう場合は全身投与をする。この問題の「活動性」という言葉はそこを指していると考えよう。
医学生医学生
そうすると残るのは肺門リンパ節腫脹ですね。一番よく見る所見なのに治療しないんですか。
ドクタードクター
そこが本問の核心だ。両側肺門リンパ節腫脹、いわゆるBHLは本症で最も多い所見だけど、それだけなら臓器の機能障害はない。胸部X線の病期分類ではI期にあたり、多くは自然に消える。だから経過観察が原則で、全身投与の適応にはならない。これが正解だ。
医学生医学生
「よく見つかる所見」と「治療が必要な所見」は別なんですね。病期分類も確認させてください。
ドクタードクター
0期は胸部X線で異常なし、I期がBHLのみ、II期がBHLと肺野病変、III期が肺野病変のみ、IV期が肺の線維化だ。病期が進むほど自然寛解の率は下がる。肺病変については、症状があって進行する肺野病変や呼吸機能が低下している場合に全身投与を考える。
医学生医学生
診断ではどんな検査が役立ちますか。CBTでは血清ACEの上昇を覚えました。
ドクタードクター
血清ACEのほか、リゾチームや可溶性IL-2受容体の上昇、ツベルクリン反応の陰性化、気管支肺胞洗浄液でのリンパ球増加とCD4/CD8比上昇、ガリウムシンチやFDG-PETでの集積などがある。それから、ステロイドが効かない例や減量できない例にはメトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用することもある。
医学生医学生
BHLだけで経過観察中の患者さんでも、心臓や眼の病変が後から出てくることはありますか。
ドクタードクター
あり得るから、そこが臨床での注意点だね。BHLだけと思っていても、心電図やホルター心電図、眼科診察で他臓器の病変を定期的に確認することが大切だ。特に心病変は無症状のまま進むこともあり、突然死を防ぐためにも見逃さない姿勢が求められる。

まとめ

サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が全身に形成される疾患で、自然寛解も多いため、治療は重要臓器の障害の有無で判断します。房室ブロックなどの心病変、顔面神経麻痺などの神経病変、局所治療で抑えられない活動性ぶどう膜炎、肉芽腫による活性型ビタミンD産生が原因の高カルシウム血症、症状があり進行する肺病変は、副腎皮質ステロイド薬の全身投与の適応です。一方、両側肺門リンパ節腫脹のみ(胸部X線I期)は臓器の機能障害がなく自然に消えることが多いため、経過観察が原則となります。ただし経過中に心臓や眼の病変が現れることがあるため、定期的な評価が欠かせません。「所見があるか」ではなく「臓器機能が脅かされているか」で治療を判断する姿勢は、サルコイドーシスに限らず全身性疾患の診療に通じる大切な考え方です。

解答・解説

正解はdです

サルコイドーシスは、原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が全身の諸臓器に形成される疾患である。自然に良くなる例が多い一方で、特定の臓器が侵されると命に関わったり、重い後遺症を残したりする。そのため治療では「どの臓器が、どの程度侵されているか」を見て、副腎皮質ステロイド薬(以下ステロイド)の全身投与をするかどうかを決める。 全身投与を考える主な状況は次のとおりである。 ・心臓病変:房室ブロック、心室性不整脈、心機能低下などを起こし、突然死の原因となる ・神経病変:顔面神経麻痺、中枢神経病変など ・眼病変:局所治療で抑えられない活動性ぶどう膜炎、後眼部病変など。放置すると視力が低下する ・高カルシウム血症:肉芽腫がビタミンDを活性化させることで起こり、腎障害や腎結石の原因となる ・肺病変:症状があり進行する肺野病変(間質性変化)や、呼吸機能が低下している場合 一方、両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は本症で最もよく見られる所見だが、それだけなら臓器の機能障害はない。自然に消えることも多いため経過観察が原則で、ステロイドの全身投与は必要ない。本問はこの点を問うている。

選択肢考察

  1. ×a.  房室ブロック

    心サルコイドーシスで肉芽腫が刺激伝導系を侵すと、房室ブロックが起こる。高度になると失神や突然死につながり、本症の予後を決める大きな因子である。そのためステロイド全身投与の適応であり、必要に応じてペースメーカや植込み型除細動器(ICD)も使う。

  2. ×b.  顔面神経麻痺

    神経サルコイドーシスの中で最も頻度の高い脳神経障害が顔面神経麻痺である。耳下腺腫脹・ぶどう膜炎・発熱と合併したものはHeerfordt症候群(ブドウ膜耳下腺熱)と呼ばれる。神経病変は後遺症を残しやすいので、ステロイド全身投与の適応である。

  3. ×c.  高カルシウム血症

    肉芽腫の中のマクロファージが1α-水酸化酵素を持ち、25-水酸化ビタミンDを活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDに変える。その結果、腸管からのカルシウム吸収が増えて高カルシウム血症や高カルシウム尿症となり、腎結石や腎機能障害の原因となる。ステロイドは肉芽腫を抑えてこの活性化を減らすので、全身投与の適応である。

  4. ○d.  肺門リンパ節腫脹

    両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は本症の代表的な所見で、胸部X線の病期分類ではI期(BHLのみで肺野に病変がない)にあたる。I期は臓器の機能障害を起こさず、多くは自然に消えるので経過観察が原則である。したがって、肺門リンパ節腫脹だけではステロイド全身投与の適応にならない。適応でないものを問う本問の正解である。

  5. ×e.  活動性ぶどう膜炎

    眼病変は日本の本症患者でとくに多く、ぶどう膜炎が中心である。まずステロイド点眼などの局所治療を行う。しかし局所治療で炎症が抑えられない活動性ぶどう膜炎や、網脈絡膜炎・視神経病変などの後眼部病変は、続発緑内障や視力低下の危険が高い。このような場合はステロイドの全身投与をする。そのため本問では全身投与の適応に含まれる。

サルコイドーシスの概要

・病理:非乾酪性類上皮細胞肉芽腫 ・好発:若年成人と中高年女性の二峰性(日本) ・主な障害臓器:肺・リンパ節(両側肺門リンパ節腫脹)、眼(ぶどう膜炎)、皮膚、心臓、神経、腎など ・検査所見:血清ACE(アンジオテンシン変換酵素)上昇、血清リゾチーム上昇、可溶性IL-2受容体上昇、高カルシウム血症・高カルシウム尿症、ツベルクリン反応陰性化、気管支肺胞洗浄液(BALF)でリンパ球増加とCD4/CD8比上昇、67Gaシンチグラフィや18F-FDG PETでの集積

胸部X線の病期分類

・0期:胸部X線で異常なし ・I期:BHLのみ ・II期:BHLと肺野病変 ・III期:肺野病変のみ(BHLなし) ・IV期:肺の線維化 I期は自然に治ることが多いが、病期が進むほど自然に治る率は下がる。

治療の考え方

・無症状で臓器の機能障害がない例は経過観察とする ・心臓・神経・眼(局所治療が効かないもの)・高カルシウム血症・症状があり進行する肺病変ではステロイド全身投与を行う ・ステロイドが効かない例や減量できない例には、メトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用する

POINT

・サルコイドーシスの治療は「重要臓器の障害の有無」で決まる ・ステロイド全身投与の適応:心病変(房室ブロックなど)、神経病変(顔面神経麻痺など)、局所治療が効かない眼病変(活動性ぶどう膜炎)、高カルシウム血症、症状があり進行する肺病変 ・BHLだけ(I期)なら自然に消えることが多く、経過観察が原則である

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。