StudyMed医師国家試験

リンパ球の「学校」と「戦場」―一次リンパ組織と二次リンパ組織を見分ける

第99回医師国家試験 D問題 第54問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第54問

一次リンパ組織はどれか。2つ選べ。

  1. a.脾
  2. b.骨髄
  3. c.胸腺
  4. d.扁桃
  5. e.リンパ節

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、リンパ組織の分類を問う問題だ。リンパ組織は「リンパ球が生まれて育つ場所」と「育ったリンパ球が抗原と出会って働く場所」の2種類に分けられる。この区別ができれば迷わず解けるよ。まず、一次リンパ組織という言葉からどんなイメージが湧くかな。
医学生医学生
「一次」なので、最初に免疫反応が起こる場所……リンパ節でしょうか。
ドクタードクター
なるほど、「一次免疫応答」と混同しやすいところだね。でもここでの一次・二次は、反応の順番ではなく組織の役割の違いなんだ。一次リンパ組織は中枢リンパ組織とも呼ばれ、リンパ球前駆細胞が分化・成熟して、自己に反応しない機能的なリンパ球として送り出される、いわば「学校」だ。
医学生医学生
ということは、B細胞とT細胞が成熟する場所ですね。B細胞は骨髄、T細胞は胸腺です。
ドクタードクター
正解。だから答えは骨髄と胸腺の2つ。一次リンパ組織では抗原刺激がなくてもリンパ球が作られて、抗原受容体の遺伝子再構成と、自己反応性クローンの排除が行われる。
医学生医学生
免疫学の講義で、B細胞の「B」はbone marrowだと思っていたんですが、別の由来があると聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。もともとは鳥類でB細胞が成熟するファブリキウス嚢、bursaのBなんだ。ヒトではその役割を骨髄が担っているから、結果的にbone marrowと覚えても困らない。骨髄はすべての血球の起源である造血幹細胞がいる場所で、T細胞の前駆細胞もここで生まれてから胸腺へ移動するんだよ。
医学生医学生
胸腺ではT細胞の選択が行われるんでしたよね。正の選択と負の選択、どっちがどこだったか混乱します。
ドクタードクター
皮質では自己MHC分子を認識できる細胞だけが生き残る正の選択、髄質では自己抗原に強く反応する細胞が除かれる負の選択が行われる。「まず使えるかを確かめ、次に危険なものを除く」という順番で、外側の皮質から内側の髄質へ進むと覚えるといい。最終的にCD4陽性またはCD8陽性の成熟T細胞として末梢へ送り出されるんだ。
医学生医学生
では脾臓は二次リンパ組織ですね。でも胎児期には造血していたと発生学で習ったので、少し引っかかります。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。確かに胎生期に造血を担う時期はあるけれど、それをもって一次リンパ組織とはいわない。成人の脾臓の白脾髄には動脈周囲リンパ鞘というT細胞領域とリンパ濾胞というB細胞領域があって、血液中に入った抗原を捕まえて免疫応答を起こす「戦場」なんだ。
医学生医学生
リンパ節も同じ「戦場」で、こちらはリンパ液に乗ってきた抗原を担当する、という理解でいいですか。
ドクタードクター
その通り。組織から運ばれてきた抗原を樹状細胞などが提示してリンパ球を活性化する。皮質にはB細胞のリンパ濾胞、傍皮質にはT細胞領域がある。病理実習で反応性リンパ節炎の標本を見たなら、胚中心が目立つ濾胞を覚えているかもしれないね。扁桃はどうだろう。
医学生医学生
耳鼻科の実習で、扁桃は喉の入り口で見張り番をしていると教わりました。
ドクタードクター
いい表現だ。扁桃は咽頭を輪状に囲むWaldeyer咽頭輪をつくり、口や鼻から入る抗原に対応する。腸管のPeyer板や虫垂と同じく粘膜関連リンパ組織、つまりMALTの一つで、二次リンパ組織だよ。MALTはIgA産生の中心でもある。
医学生医学生
二次リンパ組織は、抗原が入ってくる入り口ごとに担当が分かれているんですね。
ドクタードクター
そう、リンパ節は組織からのリンパ流、脾臓は血流、MALTは粘膜表面。臨床的に大事なのは脾臓で、莢膜をもつ細菌の処理に重要だから、脾摘後は肺炎球菌などによる脾摘後重症感染症が起こりやすい。ワクチン接種が勧められるのはそのためだ。
医学生医学生
胸腺のほうで臨床的に注意することはありますか。
ドクタードクター
胸腺は小児期に最も大きく、思春期以降は脂肪に置き換わって退縮する。先天的な胸腺低形成であるDiGeorge症候群ではT細胞が欠乏して細胞性免疫不全になるし、胸腺腫は重症筋無力症や赤芽球癆を合併することがある。成人のCTで前縦隔に腫瘤を見たら胸腺腫を鑑別に挙げる、というのも覚えておこう。

まとめ

リンパ組織は、リンパ球が産生・成熟する一次(中枢)リンパ組織と、成熟リンパ球が抗原と出会って活性化する二次(末梢)リンパ組織に分けられます。一次リンパ組織は骨髄(B細胞の成熟、全リンパ球前駆細胞の産生)と胸腺(T細胞の成熟)で、胸腺では皮質で正の選択、髄質で負の選択が行われます。二次リンパ組織にはリンパ節(リンパ流の抗原)、脾臓(血中の抗原)、扁桃・Peyer板・虫垂などのMALT(粘膜からの抗原)が含まれます。脾摘後の重症感染症やDiGeorge症候群、胸腺腫に伴う重症筋無力症など、各組織の役割を理解しておくことは臨床の病態把握にも直結します。

解答・解説

正解はb, cです

リンパ組織は、その働きによって一次リンパ組織と二次リンパ組織の2つに大別される。 一次リンパ組織(中枢リンパ組織)は、造血幹細胞に由来するリンパ球前駆細胞が分化・成熟し、自己に反応しない機能的なリンパ球として送り出される「教育の場」である。ここでは抗原刺激がなくてもリンパ球が作られ、抗原受容体(T細胞受容体、B細胞受容体)の遺伝子再構成と、自己反応性クローンの排除(負の選択)が行われる。ヒトではB細胞が骨髄で、T細胞が胸腺で成熟する。 二次リンパ組織(末梢リンパ組織)は、成熟したナイーブリンパ球が集まり、外から入ってきた抗原と出会って活性化・増殖・分化する「実戦の場」である。脾臓、リンパ節、扁桃、腸管のPeyer板(パイエル板)、虫垂などがこれにあたる。 したがって「リンパ球が生まれ育つ場所」か「リンパ球が抗原と出会い働く場所」かを区別できれば、骨髄と胸腺の2つを選ぶことができる。

選択肢考察

  1. ×a.  脾

    脾臓は二次リンパ組織である。白脾髄にはT細胞領域(動脈周囲リンパ鞘:PALS)とB細胞領域(リンパ濾胞)があり、血液中に侵入した抗原を捕捉して免疫応答を起こす。リンパ球の成熟の場ではない。なお胎生期には造血を担う時期があるが、それをもって一次リンパ組織とはいわない。

  2. ○b.  骨髄

    骨髄はすべての血球の起源である造血幹細胞が存在する場所であり、B細胞はここで免疫グロブリン遺伝子の再構成を受け、自己抗原に強く反応するクローンが除かれたうえで成熟B細胞となる。またT細胞の前駆細胞も骨髄で生まれて胸腺へ移動する。リンパ球の産生・分化の場であるため一次リンパ組織に該当する。(鳥類ではB細胞の成熟の場はファブリキウス嚢であり、B細胞の「B」はbursaに由来する。ヒトではその役割を骨髄が担う。)

  3. ○c.  胸腺

    胸腺は前縦隔にある臓器で、骨髄から来たT前駆細胞がここでT細胞受容体の遺伝子再構成を受ける。皮質では自己MHC分子を認識できる細胞だけが生き残る正の選択、髄質では自己抗原に強く反応する細胞が除かれる負の選択が行われ、CD4陽性またはCD8陽性の成熟T細胞として末梢へ送り出される。T細胞の分化・成熟の場であり、一次リンパ組織である。

  4. ×d.  扁桃

    扁桃(口蓋扁桃、咽頭扁桃、舌扁桃など)は咽頭を輪状に囲むリンパ組織(Waldeyer咽頭輪)を形成し、口や鼻から入ってくる抗原に対して免疫応答を起こす。粘膜関連リンパ組織(MALT:mucosa-associated lymphoid tissue)の一つであり、二次リンパ組織である。

  5. ×e.  リンパ節

    リンパ節はリンパ管の経路上にあり、組織から運ばれてきた抗原を樹状細胞などが提示してリンパ球を活性化する場である。皮質にはB細胞のリンパ濾胞(活性化されると胚中心を形成)、傍皮質にはT細胞領域がある。代表的な二次リンパ組織である。

リンパ組織の分類

一次(中枢)リンパ組織:骨髄(B細胞の成熟、全リンパ球前駆細胞の産生)、胸腺(T細胞の成熟) 二次(末梢)リンパ組織:リンパ節、脾臓、粘膜関連リンパ組織(MALT) MALTには扁桃、腸管のPeyer板、虫垂、気管支関連リンパ組織(BALT)などが含まれ、腸管や気道などの粘膜から侵入する抗原に対応する。

二次リンパ組織が担当する抗原の入口

リンパ節:組織からリンパ流に乗って運ばれてくる抗原 脾臓:血流中の抗原(特に莢膜をもつ細菌)。そのため脾摘後は肺炎球菌などによる重症感染(脾摘後重症感染症:OPSI)が起こりやすい MALT:粘膜表面から侵入する抗原。IgA産生の中心となる

胸腺の加齢変化と関連疾患

胸腺は小児期に最も大きく、思春期以降は脂肪組織に置換されて退縮する。先天的な胸腺低形成(DiGeorge症候群:22q11.2欠失)ではT細胞が欠乏し、細胞性免疫不全を来す。胸腺腫は重症筋無力症や赤芽球癆を合併することがある。

POINT

・一次リンパ組織=リンパ球が作られ成熟する場:骨髄(B細胞)と胸腺(T細胞) ・二次リンパ組織=成熟リンパ球が抗原と出会う場:リンパ節、脾臓、扁桃・Peyer板・虫垂などのMALT ・胸腺では正の選択(皮質)と負の選択(髄質)が行われる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。