リンパ球の「学校」と「戦場」―一次リンパ組織と二次リンパ組織を見分ける
第99回医師国家試験 D問題 第54問
国試問題にチャレンジ
一次リンパ組織はどれか。2つ選べ。
- a.脾
- b.骨髄
- c.胸腺
- d.扁桃
- e.リンパ節
対話形式の解説
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ドクターまとめ
リンパ組織は、リンパ球が産生・成熟する一次(中枢)リンパ組織と、成熟リンパ球が抗原と出会って活性化する二次(末梢)リンパ組織に分けられます。一次リンパ組織は骨髄(B細胞の成熟、全リンパ球前駆細胞の産生)と胸腺(T細胞の成熟)で、胸腺では皮質で正の選択、髄質で負の選択が行われます。二次リンパ組織にはリンパ節(リンパ流の抗原)、脾臓(血中の抗原)、扁桃・Peyer板・虫垂などのMALT(粘膜からの抗原)が含まれます。脾摘後の重症感染症やDiGeorge症候群、胸腺腫に伴う重症筋無力症など、各組織の役割を理解しておくことは臨床の病態把握にも直結します。
解答・解説
正解はb, cです
リンパ組織は、その働きによって一次リンパ組織と二次リンパ組織の2つに大別される。 一次リンパ組織(中枢リンパ組織)は、造血幹細胞に由来するリンパ球前駆細胞が分化・成熟し、自己に反応しない機能的なリンパ球として送り出される「教育の場」である。ここでは抗原刺激がなくてもリンパ球が作られ、抗原受容体(T細胞受容体、B細胞受容体)の遺伝子再構成と、自己反応性クローンの排除(負の選択)が行われる。ヒトではB細胞が骨髄で、T細胞が胸腺で成熟する。 二次リンパ組織(末梢リンパ組織)は、成熟したナイーブリンパ球が集まり、外から入ってきた抗原と出会って活性化・増殖・分化する「実戦の場」である。脾臓、リンパ節、扁桃、腸管のPeyer板(パイエル板)、虫垂などがこれにあたる。 したがって「リンパ球が生まれ育つ場所」か「リンパ球が抗原と出会い働く場所」かを区別できれば、骨髄と胸腺の2つを選ぶことができる。
選択肢考察
- ×a. 脾
脾臓は二次リンパ組織である。白脾髄にはT細胞領域(動脈周囲リンパ鞘:PALS)とB細胞領域(リンパ濾胞)があり、血液中に侵入した抗原を捕捉して免疫応答を起こす。リンパ球の成熟の場ではない。なお胎生期には造血を担う時期があるが、それをもって一次リンパ組織とはいわない。
- ○b. 骨髄
骨髄はすべての血球の起源である造血幹細胞が存在する場所であり、B細胞はここで免疫グロブリン遺伝子の再構成を受け、自己抗原に強く反応するクローンが除かれたうえで成熟B細胞となる。またT細胞の前駆細胞も骨髄で生まれて胸腺へ移動する。リンパ球の産生・分化の場であるため一次リンパ組織に該当する。(鳥類ではB細胞の成熟の場はファブリキウス嚢であり、B細胞の「B」はbursaに由来する。ヒトではその役割を骨髄が担う。)
- ○c. 胸腺
胸腺は前縦隔にある臓器で、骨髄から来たT前駆細胞がここでT細胞受容体の遺伝子再構成を受ける。皮質では自己MHC分子を認識できる細胞だけが生き残る正の選択、髄質では自己抗原に強く反応する細胞が除かれる負の選択が行われ、CD4陽性またはCD8陽性の成熟T細胞として末梢へ送り出される。T細胞の分化・成熟の場であり、一次リンパ組織である。
- ×d. 扁桃
扁桃(口蓋扁桃、咽頭扁桃、舌扁桃など)は咽頭を輪状に囲むリンパ組織(Waldeyer咽頭輪)を形成し、口や鼻から入ってくる抗原に対して免疫応答を起こす。粘膜関連リンパ組織(MALT:mucosa-associated lymphoid tissue)の一つであり、二次リンパ組織である。
- ×e. リンパ節
リンパ節はリンパ管の経路上にあり、組織から運ばれてきた抗原を樹状細胞などが提示してリンパ球を活性化する場である。皮質にはB細胞のリンパ濾胞(活性化されると胚中心を形成)、傍皮質にはT細胞領域がある。代表的な二次リンパ組織である。
リンパ組織の分類
一次(中枢)リンパ組織:骨髄(B細胞の成熟、全リンパ球前駆細胞の産生)、胸腺(T細胞の成熟) 二次(末梢)リンパ組織:リンパ節、脾臓、粘膜関連リンパ組織(MALT) MALTには扁桃、腸管のPeyer板、虫垂、気管支関連リンパ組織(BALT)などが含まれ、腸管や気道などの粘膜から侵入する抗原に対応する。
二次リンパ組織が担当する抗原の入口
リンパ節:組織からリンパ流に乗って運ばれてくる抗原 脾臓:血流中の抗原(特に莢膜をもつ細菌)。そのため脾摘後は肺炎球菌などによる重症感染(脾摘後重症感染症:OPSI)が起こりやすい MALT:粘膜表面から侵入する抗原。IgA産生の中心となる
胸腺の加齢変化と関連疾患
胸腺は小児期に最も大きく、思春期以降は脂肪組織に置換されて退縮する。先天的な胸腺低形成(DiGeorge症候群:22q11.2欠失)ではT細胞が欠乏し、細胞性免疫不全を来す。胸腺腫は重症筋無力症や赤芽球癆を合併することがある。
POINT
・一次リンパ組織=リンパ球が作られ成熟する場:骨髄(B細胞)と胸腺(T細胞) ・二次リンパ組織=成熟リンパ球が抗原と出会う場:リンパ節、脾臓、扁桃・Peyer板・虫垂などのMALT ・胸腺では正の選択(皮質)と負の選択(髄質)が行われる
