胎盤・卵膜・臍帯・羊水―「数」と「例外」で攻略する胎児付属物
第99回医師国家試験 D問題 第55問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.胎盤は多くの分葉からなる。
- b.卵膜は2層構造である。
- c.臍帯動脈は1本である。
- d.臍帯付着部位は胎盤中央に限られる。
- e.羊水量は超音波検査で推定できる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
胎児付属物の基本は「数」と「例外」で整理すると覚えやすくなります。胎盤の母体面は15〜20個の分葉(コチレドン)に分かれ、分娩後に欠損を確認することで胎盤遺残による出血を防ぎます。卵膜は羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層で脱落膜のみ母体由来、臍帯は動脈2本・静脈1本で、単一臍帯動脈は胎児奇形の合併に注意が必要です。臍帯付着は中央付近が多いものの辺縁付着や卵膜付着もあり、卵膜付着は前置血管による胎児失血のリスクとなります。羊水量は超音波で最大羊水ポケットや羊水インデックスにより評価し、その異常は胎児の嚥下や尿産生の異常を探る手がかりになるため、妊婦健診での胎児評価の土台となる知識です。
解答・解説
正解はa, eです
胎児付属物(胎盤、卵膜、臍帯、羊水)の基本構造と、その評価方法を問う問題である。 胎盤は妊娠末期で直径約15〜20cm、厚さ約2〜3cm、重さ約500g(胎児体重の約1/6)の円盤状の臓器で、母体面は胎盤中隔によって15〜20個ほどの分葉(コチレドン)に分けられている。卵膜は胎児側から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層からなり、前2者が胎児由来、脱落膜のみが母体由来である。臍帯は臍帯動脈2本と臍帯静脈1本を含み、胎盤への付着部位は中央付近が最も多いが、偏側・辺縁・卵膜付着といった変異もある。羊水量は、現在は超音波断層法による最大羊水ポケット(MVP:maximum vertical pocket)や羊水インデックス(AFI)で評価する。 それぞれの構造について「数」(分葉数、卵膜の層数、臍帯血管の本数)と「例外」(付着部位の異常)を正しく押さえていれば、正解の2つが選べる。
選択肢考察
- ○a. 胎盤は多くの分葉からなる。
成熟胎盤の母体面は、脱落膜から伸びる胎盤中隔によって15〜20個程度の分葉(コチレドン、胎盤葉)に区分されている。各分葉には絨毛幹が枝分かれして入り込み、その周りの絨毛間腔を母体血が満たして物質交換が行われる。分娩後に胎盤の母体面を観察し、分葉の欠損がないかを確認するのは、胎盤片の子宮内遺残(弛緩出血などの原因)を見逃さないためである。
- ×b. 卵膜は2層構造である。
卵膜は胎児側から羊膜、絨毛膜、脱落膜の3層構造である。羊膜と絨毛膜は受精卵(胎児側)に由来し、脱落膜は子宮内膜が妊娠によって変化した母体由来の組織である。羊水に直接接しているのは最内層の羊膜である。
- ×c. 臍帯動脈は1本である。
正常の臍帯には臍帯動脈が2本、臍帯静脈が1本(2A1V)含まれ、これらをWharton膠質(ワルトンゼリー)が包んでいる。臍帯動脈は胎児の内腸骨動脈から分かれ、酸素の乏しい静脈性の血液を胎盤へ運ぶ。臍帯静脈は酸素に富む血液を胎児へ戻す。臍帯動脈が1本しかない単一臍帯動脈は約1%にみられる異常で、胎児の形態異常(心奇形、腎尿路奇形など)や染色体異常、胎児発育不全を伴うことがあるため、見つかった場合は精査が必要である。
- ×d. 臍帯付着部位は胎盤中央に限られる。
臍帯は胎盤の中央付近(中央付着)または中央から外れた位置(側方付着)に付着するのが大部分であるが、胎盤の縁に付く辺縁付着や、胎盤実質ではなく卵膜に付着して血管が卵膜内を走行する卵膜付着もみられる。卵膜付着では、露出した臍帯血管が内子宮口上を走る前置血管を合併することがあり、破水時に血管が断裂すると胎児失血から急速に胎児死亡に至りうるため重要である。したがって「中央に限られる」は誤りである。
- ○e. 羊水量は超音波検査で推定できる。
羊水量は経腹超音波検査で推定するのが標準である。指標には、子宮内で胎児や臍帯を含まない最大の羊水腔の垂直距離を測る最大羊水ポケット(MVP:maximum vertical pocket、単に羊水ポケットとも呼ぶ)と、子宮を4分割して各区画の最大垂直距離を合計する羊水インデックス(AFI:amniotic fluid index)がある。おおむね最大羊水ポケット2cm未満またはAFI 5cm未満で羊水過少、最大羊水ポケット8cm以上またはAFI 24〜25cm以上で羊水過多と判断する。
胎児付属物の概要
胎盤:妊娠末期で重さ約500g、直径15〜20cm。胎児側の絨毛膜有毛部と母体側の基底脱落膜からなる。母体面は15〜20個の分葉に分かれる。ガス交換・栄養供給・老廃物排泄のほか、hCG、hPL(ヒト胎盤性ラクトーゲン)、エストロゲン、プロゲステロンなどのホルモン産生を担う。 卵膜:羊膜(胎児由来)・絨毛膜(胎児由来)・脱落膜(母体由来)の3層。 臍帯:長さ約50〜60cm、太さ約1〜2cm。臍帯動脈2本・臍帯静脈1本をWharton膠質が包む。動脈には胎児からの低酸素血、静脈には胎盤からの高酸素血が流れる(成人の動静脈と逆である点に注意)。 羊水:妊娠末期で約500mL前後(妊娠30〜35週頃に最大となり約700〜800mL)。妊娠中期以降は主に胎児尿で産生され、胎児の嚥下によって吸収される。
羊水量の異常
羊水過多(おおむね800mL以上):胎児の嚥下障害(食道閉鎖、無脳症など)、上部消化管閉鎖、母体糖尿病など。 羊水過少(おおむね100mL以下):胎児の尿産生低下(腎無形成、尿路閉塞)、前期破水、胎盤機能不全など。高度になると肺低形成や四肢変形(Potter sequence)を来す。
臍帯付着部位の分類
中央付着・側方付着(大部分)、辺縁付着、卵膜付着(前置血管の原因となる)。
POINT
・胎盤は15〜20個の分葉(コチレドン)からなる ・卵膜は羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層で、脱落膜のみ母体由来 ・臍帯は動脈2本・静脈1本。単一臍帯動脈は胎児奇形の合併に注意 ・臍帯付着は中央が多いが、辺縁付着・卵膜付着もある(卵膜付着は前置血管のリスク) ・羊水量は超音波で最大羊水ポケット(MVP)や羊水インデックス(AFI)により評価する
