StudyMed医師国家試験

円の中に波打つ線―シェーマが語る肛門診察の記録術

第99回医師国家試験 B問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第99回 B問題 第15問

診察所見の記録に使用する模式図(①~⑤)を示す。 肛門の診察時に使用するのはどれか。

第99回 B問題 第15問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、カルテに所見を書き込むための模式図、いわゆるシェーマを見分ける問題だ。乳房、眼、肛門、鼓膜、子宮腟部と、診療科ごとに定番の図がある。図の「どこに何が描かれているか」を、実際の解剖と結びつけて考えるのがポイントだよ。
医学生医学生
シェーマって、臨床実習で指導医の先生がカルテにさらっと描いていたものですね。正直、どれも丸ばかりで似て見えます。
ドクタードクター
確かに外形はどれも円や楕円だ。だから見るべきは内側の構造。肛門の図なら、外側の円の内側に花びらのように波打つ閉じた線が描かれている。これが何を表しているか分かるかな。
医学生医学生
波打つ線……解剖実習で見た肛門柱の下端でしょうか。歯状線ですか。
ドクタードクター
その通り。外側の円が肛門縁、内側の波状線が歯状線だ。肛門柱の下端が波打って並ぶので、図でもギザギザの輪として表現される。だから花びら状の波線をもつ図が肛門のシェーマで、これが正解になる。
医学生医学生
歯状線って、発生学で習った内胚葉と外胚葉の境目でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。口側は内胚葉由来の直腸粘膜で円柱上皮、肛門側は外胚葉由来の肛門上皮で重層扁平上皮。神経支配も違って、口側は自律神経で痛覚に乏しく、肛門側は陰部神経による体性神経支配で痛みに敏感なんだ。だから図に歯状線が描いてあると、痔核が内か外かを区別して書き込めるわけ。
医学生医学生
なるほど、内痔核は痛みが少なくて出血で気づかれ、外痔核や裂肛は痛い、というのはそこから来ているんですね。
ドクタードクター
そういうこと。では他の図も確認しよう。円を十字の点線で4分割し、中央に小円、外上方に点線の張り出しがある図は何だと思う?
医学生医学生
中央が乳頭で、張り出しは腋窩のほうへ伸びる乳腺……乳房ですね。外科の実習で乳腺外来に入ったとき、しこりの位置をこの図に書いていました。
ドクタードクター
正解。内上・内下・外上・外下の4領域と腋窩突出部に分けて、腫瘤の位置や大きさ、硬さ、可動性、えくぼ徴候などを記録する。次に、上下にまつげのついたまぶたと、中央に丸い黒目が描かれた図は?
医学生医学生
それはさすがに眼ですね。前眼部のスケッチ。
ドクタードクター
そう、眼瞼の麦粒腫や霰粒腫、結膜充血、角膜や水晶体の混濁などを書き込む図だ。では、楕円の中を上から下へ斜めに線が走っている図はどうかな。
医学生医学生
斜めの線……耳鼻科の実習で耳鏡をのぞいたとき、鼓膜にツチ骨柄が透けて見えました。鼓膜でしょうか。
ドクタードクター
その通り。鼓膜の発赤や膨隆なら急性中耳炎、陥凹や液面なら滲出性中耳炎、穿孔の位置や大きさなども記録する。最後に、円の中央に横長の小さな楕円がある図は?
医学生医学生
円の真ん中に穴……肛門と迷いそうですが、波線がないので違いますね。子宮腟部と外子宮口ですか。
ドクタードクター
いい見分け方だ。腟鏡診で見た子宮腟部の図で、中央の楕円が外子宮口。未産婦では小さな円形、経産婦では横に裂けた形になるから、横長の楕円で描かれることが多い。びらん様所見やポリープ、出血などを書き込むよ。
医学生医学生
肛門の図に所見を書くときは、位置をどう表すんですか。
ドクタードクター
時計の文字盤で表すのが一般的だ。砕石位で腹側を12時、背側を6時とする。実際の診察は左側臥位のシムス位で行うことも多いけれど、記録は同じ時計表示に換算して書く。内痔核は3時・7時・11時に好発し、裂肛は6時方向に最も多い、というのも合わせて覚えておこう。
医学生医学生
体位によって見え方が変わるから、書き方の約束事が大事なんですね。OSCEの直腸診のステーションでも、体位の説明を練習しました。
ドクタードクター
まさに。シェーマは文章だけではあいまいになりがちな位置関係を、他の医療者に正確に伝え、経過を比べるための共通言語なんだ。自分が描けるだけでなく、他人が描いた図を正しく読めることも大切だよ。

まとめ

診療録では、所見の部位や大きさを正確に伝えるため、臓器ごとに定型の模式図(シェーマ)が用いられます。肛門のシェーマは外側の円(肛門縁)と内側の花びら状の波線(歯状線)が特徴で、歯状線より口側に生じる痔核を内痔核、肛門側を外痔核として区別して記録できます。乳房は十字の4分割と腋窩突出部、眼は眼瞼・まつげと角膜、鼓膜はツチ骨柄の斜線、子宮腟部は中央の外子宮口で見分けます。肛門所見は砕石位で腹側12時・背側6時の時計表示で記載し、内痔核は3・7・11時、裂肛は6時方向に好発します。図の構造を解剖と結びつけて理解しておくことは、カルテを正しく書き、他者の記録を正確に読むための基本となります。

解答・解説

正解はcです

診療録(カルテ)には、所見の部位・大きさ・性状を正確に残すため、臓器ごとに決まった模式図(シェーマ)を描いて記録することが多い。本問は、図の形からどの部位の模式図かを見分ける問題である。

各図の見分け方

・①: 大きな円を点線で十字に4分割し、中央に小円、外上方に点線の突出部がある。中央の小円が乳頭・乳輪、点線の突出部が腋窩方向へ伸びる乳腺組織(腋窩突出部)であり、乳房の模式図である。 ・②: 上下にまつげのついた眼瞼があり、中央に円形の角膜(黒目)が描かれている。眼(前眼部)の模式図である。 ・③: 外側の円の内側に、花びら状に波打つ閉じた線がある。外側の円が肛門縁、内側の波状線が歯状線(直腸粘膜と肛門上皮の境界で、肛門柱の下端が波打って見える)に相当し、肛門の模式図である。 ・④: 楕円形の輪郭の中に、上方から下方へ斜めに伸びる線がある。この線はツチ骨柄(鼓膜の内側に付着するツチ骨の一部が透見されたもの)であり、鼓膜の模式図である。 ・⑤: 円の中央に横長の小さな楕円がある。円が子宮腟部、中央の楕円が外子宮口であり、腟鏡で観察した子宮頸部の模式図である。 したがって、肛門の診察に用いるのは③である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    誤り。①は乳房の模式図である。乳頭を中心に乳房を十字線で内上・内下・外上・外下の4領域に分け、腋窩へ伸びる腋窩突出部を加えて描く。触診で触れた腫瘤の位置・大きさ・硬さ・可動性、皮膚のくぼみ(えくぼ徴候)、乳頭分泌物、腋窩リンパ節腫大などを記録する。

  2. ×b.  ②

    誤り。②は眼(前眼部)の模式図で、上下の眼瞼とまつげ、その間の眼球表面と角膜が描かれている。眼瞼の病変(麦粒腫、霰粒腫、眼瞼下垂など)、結膜・強膜の所見(充血、黄染など)、角膜・水晶体の混濁(白内障など)を書き込む。

  3. ○c.  ③

    正しい。③は肛門の模式図で、外側の円が肛門縁、内側の花びら状の波線が歯状線を表す。直腸肛門診(視診・直腸指診・肛門鏡検査)の所見を、時計の文字盤に見立てた位置(砕石位で腹側を12時、背側を6時とするのが一般的)で記録する。歯状線より口側(直腸側)に生じる痔核は内痔核、肛門側に生じる痔核は外痔核と区別でき、裂肛・痔瘻の開口部・腫瘤などの位置も書き込む。

  4. ×d.  ④

    誤り。④は鼓膜の模式図で、中央の斜めの線はツチ骨柄である。耳鏡で観察した鼓膜の発赤・膨隆(急性中耳炎)、陥凹や液面(滲出性中耳炎)、穿孔の位置と大きさ、白色の石灰化斑(鼓室硬化症)などを記録する。

  5. ×e.  ⑤

    誤り。⑤は子宮頸部(子宮腟部)の模式図で、中央の楕円が外子宮口である。腟鏡診で観察した腟部の色調(妊娠時には青紫色調を帯びる)、びらん様所見(円柱上皮の外反)、ポリープ・腫瘤・潰瘍、外子宮口からの分泌物や出血などを書き込む。外子宮口は未産婦では小さな円形、経産婦では横に裂けた形になる。

肛門部の解剖と歯状線

歯状線(櫛状線)は、肛門縁から約2cm口側にある波状の線で、発生学的に内胚葉由来の直腸粘膜(円柱上皮)と外胚葉由来の肛門上皮(重層扁平上皮)の境界にあたる。歯状線より口側は自律神経支配で痛覚に乏しく、肛門側は体性神経(陰部神経)支配で痛覚が鋭い。このため内痔核は痛みが少なく出血で気づかれやすいのに対し、外痔核(特に血栓性外痔核)や裂肛は強い痛みを伴う。

肛門所見の記載

・部位は時計の文字盤で示す。砕石位(仰向けで両脚を開いて挙上する体位)で腹側(陰嚢・腟側)を12時、背側(尾骨側)を6時とする表記が一般的である。実際の診察は左側臥位で膝を曲げるシムス位で行うことも多いが、記録は同じ時計表示に換算して書く。 ・内痔核は砕石位で3時・7時・11時方向に好発する。 ・裂肛は後方(6時)に最も多く、次いで前方(12時)に多い。

模式図(シェーマ)の意義

所見を文章だけで書くと位置関係があいまいになりやすい。臓器ごとの定型の図に書き込むことで、他の医療者にも正確に伝わり、経過の比較もしやすくなる。

POINT

・肛門の模式図: 外側の円(肛門縁)+内側の波状線(歯状線)。 ・肛門所見は時計表示で記載(砕石位で腹側12時・背側6時)。歯状線より口側が内痔核、肛門側が外痔核。 ・他の模式図の特徴: 乳房は4分割+腋窩突出部、鼓膜はツチ骨柄の線、子宮腟部は中央の外子宮口、眼は眼瞼・まつげと角膜。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。