StudyMed医師国家試験

救命救急センターは「健康づくり」の目標か?―健康日本21(第3次)と医療計画の線引き

第119回医師国家試験 C問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第119回 C問題 第1問

健康日本21(第3次)で目標とされていないのはどれか。

  1. a.健康経営の推進
  2. b.救命救急センター数の増加
  3. c.メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加
  4. d.利用者に応じた食事提供をしてくれる特定給食施設の増加
  5. e.「居心地がよく歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む市町村数の増加

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、健康日本21(第3次)の目標に含まれないものを選ぶ問題だ。細かい数値目標を丸暗記していなくても、「この計画は何を目指すものか」という性格をつかめば解ける。まずは健康日本21がどんな計画か、思い出してみようか。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いました。国民の健康づくり運動で、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が大きな目標だったと思います。
ドクタードクター
そうだね。健康増進法に基づく基本方針として作られていて、第3次は2024年度から2035年度までの12年間の計画だ。第1次は2000年度に始まって一次予防を重視し、第2次で健康寿命の延伸と健康格差の縮小が最上位目標になった。第3次でもそれは引き継がれている。
医学生医学生
第3次で何か新しくなった点はあるんですか。
ドクタードクター
大きな特徴は「社会環境の質の向上」をしっかり柱に据えたこと。個人の努力だけに頼るのではなく、職場や地域、食環境、まちづくりを整えて、本人が強く意識しなくても自然に健康になれる環境をつくろう、という考え方なんだ。基本的な方向は、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりの4つだよ。
医学生医学生
そうすると、企業や自治体の取り組みも目標になっているということですか。
ドクタードクター
その通り。この問題の選択肢の多くは、まさにその社会環境の目標から作られている。例えば健康経営の推進。従業員の健康管理を経営的な視点でとらえて戦略的に実践する企業を増やすことが、誰もがアクセスできる健康増進の基盤整備の項目に入っている。
医学生医学生
働く世代は自分で健診や運動に時間を割きにくいので、会社ぐるみで後押しするということですね。
ドクタードクター
そう。メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加も目標に含まれる。こちらは社会とのつながり・こころの健康の項目で、心のサポーターを増やすことや、地域の人とのつながりを強めることなども同じ枠に並んでいる。
医学生医学生
特定給食施設の食事提供はどうでしょう。病院実習で栄養科の見学をしたとき、患者さんごとに食形態やエネルギー量を調整していて驚きました。
ドクタードクター
いい経験だね。特定給食施設は、特定かつ多数の人に継続的に食事を出す施設で、健康増進法で栄養管理が求められている。社員食堂などで利用者の身体状況に応じた食事を出す施設を増やせば、利用者は自然に適切な食事がとれる。これも基盤整備の目標に入っているんだ。
医学生医学生
「居心地がよく歩きたくなる」まちなかづくりも、歩くことを個人の意志に任せず、環境のほうから促すという発想ですね。
ドクタードクター
まさにそう。自然に健康になれる環境づくりの項目で、取り組む市町村の数を増やすことが掲げられている。第3次の考え方を一番よく表している目標だと言える。
医学生医学生
となると、残る救命救急センター数の増加が仲間外れですね。でも救急医療も国民の健康には大事なので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのはもっともだ。ただ、ここで考えてほしいのは所管の違いだ。救命救急センターの整備のような医療提供体制の確保は、医療法に基づいて都道府県が作る医療計画の領域なんだ。健康日本21は生活習慣の改善や社会環境の整備による健康増進、つまり一次予防が中心の計画で、病院や救急体制の量的な整備は目標にしていない。
医学生医学生
医療計画というと、5疾病・6事業ですね。CBTの勉強で語呂合わせを作りました。
ドクタードクター
5疾病はがん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患。6事業は救急医療、災害時の医療、新興感染症の発生・まん延時の医療、へき地医療、周産期医療、小児医療だ。救急医療はこの6事業の一つだから、救命救急センターはこちらに属する。
医学生医学生
「健康増進の計画か、医療提供体制の計画か」で仕分ければいいんですね。
ドクタードクター
その視点を持っておくと、似た問題にも強くなる。補足すると、第3次では個人の行動として栄養・食生活、身体活動、休養・睡眠、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康などが並び、ライフコースではこども、高齢者、女性の健康が取り上げられている。臨床に出てからも、患者さん個人への指導だけでなく、職場や地域の環境が健康を左右することを意識できると、産業医や地域保健の場面で役に立つよ。
医学生医学生
外来で生活指導をするときも、その人の職場環境や住んでいる地域まで想像してみます。
ドクタードクター
それが第3次の精神そのものだね。

まとめ

健康日本21(第3次)は健康増進法に基づく国民健康づくり運動で、2024〜2035年度の12年間を計画期間とし、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指します。第3次では「社会環境の質の向上」が重視され、健康経営の推進、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加、利用者に応じた食事を提供する特定給食施設の増加、「居心地がよく歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む市町村の増加など、企業・事業場・施設・自治体の取り組みが目標とされています。一方、救命救急センターの整備は医療法に基づき都道府県が策定する医療計画(5疾病・6事業)の救急医療に属し、健康日本21の目標ではありません。「健康増進(一次予防)の計画か、医療提供体制の計画か」という視点で整理すると、公衆衛生の各種計画の区別がしやすくなり、臨床でも個人を取り巻く環境に目を向ける姿勢につながります。

解答・解説

正解はbです

健康日本21(第3次)は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として策定された国民健康づくり運動であり、2024(令和6)年度から2035(令和17)年度までの12年間を計画期間とする。 本問の選択肢の多くは、4つの基本的方向のうち「社会環境の質の向上」に属する目標から作られている。第3次では、個人の努力だけに頼らず、職場・地域・食環境・まちづくりなど「本人が意識しなくても健康になれる環境」を整えることが重視されており、企業・事業場・給食施設・市町村といった主体の取り組みを数値目標としている点が特徴である。 一方、救命救急センターの整備のような救急医療提供体制の確保は、医療法に基づき都道府県が策定する医療計画(5疾病・6事業)の領域であり、健康づくり(一次予防中心)の計画である健康日本21の目標には含まれない。このように「健康増進の計画か、医療提供体制の計画か」という所管の違いに着目すると正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  健康経営の推進

    目標に含まれる。「誰もがアクセスできる健康増進のための基盤整備」の項目で、保険者とともに健康経営(従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること)に取り組む企業数の増加が指標とされている。働く世代の健康づくりを企業の取り組みとして後押しする狙いがある。

  2. ○b.  救命救急センター数の増加

    健康日本21(第3次)の目標には設定されていない。救命救急センターなど救急医療体制の整備は、医療法に基づいて都道府県が作成する医療計画の「6事業」の一つである救急医療に関する事項である。健康日本21は生活習慣の改善や社会環境の整備を通じた健康増進(主に一次予防)を目的とする計画であり、医療提供体制の量的整備を目標とはしていない。

  3. ×c.  メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加

    目標に含まれる。「社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上」の項目で、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を増やすことが掲げられている。同じ項目には、心のサポーター数の増加、地域の人々とのつながりが強いと思う者の増加、社会活動を行っている者の増加なども含まれる。

  4. ×d.  利用者に応じた食事提供をしてくれる特定給食施設の増加

    目標に含まれる。特定給食施設(特定かつ多数の者に継続的に食事を供給する施設で、健康増進法により栄養管理が求められる)において、利用者の身体状況や栄養状態に応じた食事を提供する施設の割合を増やすことが、「誰もがアクセスできる健康増進のための基盤整備」の目標とされている。社員食堂や病院給食などを通じて、利用者が自然に適切な食事を取れる環境を整える狙いである。

  5. ×e.  「居心地がよく歩きたくなる」まちなかづくりに取り組む市町村数の増加

    目標に含まれる。「自然に健康になれる環境づくり」の項目で、歩行者中心の空間整備など、住民が自然と歩きたくなるまちづくりに取り組む市町村数の増加が掲げられている。身体活動量を個人の意志だけに頼らず、環境から引き上げようとする第3次の考え方をよく表す目標である。

健康日本21の変遷

・第1次:2000(平成12)年度開始。一次予防の重視。2003年施行の健康増進法が法的基盤となった。 ・第2次:2013(平成25)年度〜2023(令和5)年度(1年延長)。健康寿命の延伸と健康格差の縮小を最上位の目標とした。 ・第3次:2024(令和6)年度〜2035(令和17)年度。ビジョンは「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」。

第3次の4つの基本的な方向

1. 健康寿命の延伸と健康格差の縮小 2. 個人の行動と健康状態の改善(栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康、生活習慣病の発症予防・重症化予防、生活機能の維持・向上) 3. 社会環境の質の向上  3-1 社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上(地域の人々とのつながり、社会活動、共食、メンタルヘルス対策に取り組む事業場、心のサポーター数)  3-2 自然に健康になれる環境づくり(健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブの推進、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくり、望まない受動喫煙の機会の減少)  3-3 誰もがアクセスできる健康増進のための基盤整備(スマート・ライフ・プロジェクト活動企業・団体の増加、健康経営の推進、利用者に応じた食事提供をしている特定給食施設の増加、必要な産業保健サービスを提供している事業場の増加) 4. ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり(こども、高齢者、女性)

医療計画との区別

医療計画は医療法に基づき都道府県が策定し、5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)と6事業(救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時の医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)について医療提供体制を定める。救命救急センターの整備はここに含まれる。

POINT

・健康日本21(第3次)は健康増進法に基づき、2024〜2035年度の12年間。 ・基本的方向は「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」「個人の行動と健康状態の改善」「社会環境の質の向上」「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」の4つ。 ・社会環境の目標は、企業(健康経営)、事業場(メンタルヘルス・産業保健)、給食施設、市町村(まちづくり)など取り組む主体の数・割合で示される。 ・救急医療体制(救命救急センター)は医療計画の事項であり、健康日本21の目標ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。