StudyMed医師国家試験

SDGsのゴールは「目的」か「手段」か―17の目標から外れる選択肢を見抜く

第118回医師国家試験 F問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第28問

持続可能な開発のための2030アジェンダ〈SDGs〉に含まれない項目はどれか。

  1. a.貧困撲滅
  2. b.格差の是正
  3. c.遠隔医療の推進
  4. d.ジェンダー平等
  5. e.気候変動への対応

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は持続可能な開発目標、SDGsの中身を問う問題だ。17のゴールを丸暗記していなくても、「ゴールとはどういうレベルのものか」を理解していれば解ける。まずSDGsの基本から確認しよう。いつ、どこで決まったものか覚えているかな。
医学生医学生
2015年の国連サミットで採択されて、2030年が期限だったと思います。公衆衛生の講義で、カラフルな17個のアイコンを見ました。
ドクタードクター
その通り。正式には「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核で、17のゴールと169のターゲットからなる。理念は「誰一人取り残さない」だ。では選択肢を見て、どれがゴールに含まれないと思う?
医学生医学生
医療系の国試なので、遠隔医療はゴール3の保健に入っていそうな気がして、逆に迷いました。
ドクタードクター
そこがまさに落とし穴。保健に関するゴール3は「すべての人に健康と福祉を」という大きな目標で、遠隔医療の推進という項目は掲げられていない。遠隔医療は医療へのアクセスを改善する一つの「手段」ではあるけれど、「目標」そのものではないんだ。だから含まれないのは遠隔医療の推進だね。
医学生医学生
ゴールは地球規模の大きな課題領域で、特定の技術や方法の名前はゴールにならない、ということですか。
ドクタードクター
いい整理だ。ほかの選択肢を確認しよう。貧困撲滅はゴール1で、前身のミレニアム開発目標でも第1目標が極度の貧困と飢餓の撲滅だった。一貫して最重要課題なんだ。
医学生医学生
格差の是正は、途上国と先進国の差の話でしょうか。
ドクタードクター
国家間だけでなく、一つの国の中での所得や機会の不平等も対象にしているのがゴール10の特徴だ。国内の格差まで視野に入れた点は、MDGsからの拡張点でもある。
医学生医学生
ジェンダー平等はゴール5ですよね。産婦人科の講義で、児童婚や女性器切除の話が出てきました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ゴール5のターゲットには、女性・女児への差別や暴力の撤廃、児童婚や女性器切除などの有害な慣行の撤廃、性と生殖に関する健康へのアクセスなどが含まれている。そして気候変動への対応はゴール13で、同じ2015年に採択されたパリ協定とも連動しているんだ。
医学生医学生
MDGsとSDGsは何が一番違うんですか。CBTの勉強のときに混同しそうになりました。
ドクタードクター
MDGsは2000年の国連ミレニアム・サミットを受けて策定され、2015年を期限とした8つの目標で、主に開発途上国の課題が対象だった。SDGsは先進国を含むすべての国が対象という普遍性、社会・経済・環境の統合、そして包摂性が特徴だ。環境分野も気候・海洋・陸上生態系と複数のゴールに広がった。
医学生医学生
ゴール3の中身として、具体的にはどんなターゲットがあるんですか。
ドクタードクター
妊産婦死亡率を出生10万対70未満に減らすこと、新生児と5歳未満児の死亡削減、エイズ・結核・マラリア・顧みられない熱帯病の流行終息、非感染性疾患による若年死亡を3分の1減らすこと、精神保健の推進、交通事故死傷者の半減、たばこ規制枠組条約の実施強化などがある。中でも中心的な概念がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCだ。
医学生医学生
UHCは、誰もが必要な医療を経済的な困難なく受けられる状態のことですよね。遠隔医療はそのための手段になりうる、という位置づけでしょうか。
ドクタードクター
その理解で十分だよ。遠隔医療は僻地や離島での医療アクセス改善に役立ちうるけれど、あくまでUHCという目標を達成するための道具の一つ。目標と手段を区別する視点は、公衆衛生の問題全般で役に立つから覚えておこう。

まとめ

SDGsは2015年の国連サミットで採択された2030アジェンダの中核で、2030年を期限とする17ゴール・169ターゲットからなり、「誰一人取り残さない」を理念に先進国を含むすべての国を対象とします。貧困撲滅(ゴール1)、ジェンダー平等(ゴール5)、不平等の是正(ゴール10)、気候変動への対応(ゴール13)はいずれもゴールとして明記されていますが、遠隔医療の推進は保健医療を提供する具体的な手段にすぎず、ゴールには含まれません。保健分野はゴール3「すべての人に健康と福祉を」にまとめられ、妊産婦・小児死亡の削減、感染症やNCDs対策、そして中心概念であるUHCの達成などがターゲットです。MDGsとの違いや「目標と手段の区別」を押さえておくと、17ゴールを丸暗記していなくても国際保健の問題に対応できます。

解答・解説

正解はcです

テーマ

持続可能な開発目標〈SDGs:Sustainable Development Goals〉は、2015年9月に国連本部で開かれたサミットにおいて全加盟国一致で採択された「2030アジェンダ」(正式名称は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)の中核をなす国際目標である。2016年から2030年までの15年間で達成を目指し、17のゴール(目標)とそれを具体化した169のターゲット、進捗を測るための指標から構成される。理念は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」である。

解き方

SDGsの17ゴールは、貧困・飢餓・保健・教育・ジェンダー・水・エネルギー・雇用と経済・産業とインフラ・不平等・都市・生産と消費・気候変動・海洋・陸上生態系・平和と公正・パートナーシップという、社会・経済・環境にまたがる大きな課題領域を示したものである。選択肢のうち、貧困撲滅(ゴール1)、格差の是正(ゴール10)、ジェンダー平等(ゴール5)、気候変動への対応(ゴール13)はいずれもゴールそのものとして明記されている。一方、遠隔医療の推進は保健医療を提供する具体的な手段の一つにすぎず、ゴールとしては掲げられていない。したがって含まれない項目は c である。 17ゴールをすべて暗記していなくても、「SDGsのゴールは地球規模の大きな課題領域であり、特定の技術や医療提供手段の名称はゴールにならない」と考えれば判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  貧困撲滅

    ゴール1「貧困をなくそう(あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる)」に該当し、SDGsに含まれる。前身のミレニアム開発目標〈MDGs〉でも第1目標が極度の貧困と飢餓の撲滅であり、一貫して最重要課題と位置づけられている。

  2. ×b.  格差の是正

    ゴール10「人や国の不平等をなくそう(各国内および各国間の不平等を是正する)」に該当し、SDGsに含まれる。国家間の格差だけでなく、一国の中での所得・機会の格差の縮小も対象としている点がMDGsからの拡張点である。

  3. ○c.  遠隔医療の推進

    SDGsの17ゴールに遠隔医療の推進は掲げられていない。保健医療に関するゴールはゴール3「すべての人に健康と福祉を」であり、そのターゲットには妊産婦死亡率の削減、5歳未満児死亡の削減、感染症対策、非感染性疾患〈NCDs〉による早期死亡の削減、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉の達成などが含まれる。遠隔医療はUHC達成などの目標に寄与しうる手段ではあるが、目標そのものではない。よって、SDGsに含まれない項目として正解である。

  4. ×d.  ジェンダー平等

    ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう(ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児のエンパワーメントを行う)」に該当し、SDGsに含まれる。女性・女児への差別や暴力の撤廃、児童婚・女性器切除などの有害な慣行の撤廃、性と生殖に関する健康へのアクセスなどがターゲットに含まれる。

  5. ×e.  気候変動への対応

    ゴール13「気候変動に具体的な対策を(気候変動とその影響に立ち向かうため緊急対策を講じる)」に該当し、SDGsに含まれる。同じ2015年に採択されたパリ協定とも連動している。環境分野はMDGsでは比重が小さかったが、SDGsでは気候・海洋・陸上生態系など複数のゴールに拡充された。

SDGsの17ゴール(分野:目標の要旨)

1 貧困:あらゆる場所・あらゆる形態の貧困を終わらせる 2 飢餓:飢餓の終結、食料安全保障と栄養状態の改善、持続可能な農業の促進 3 保健:あらゆる年齢の人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する 4 教育:包摂的かつ公正で質の高い教育と、生涯学習の機会を提供する 5 ジェンダー:ジェンダー平等の達成と、女性・女児のエンパワーメント 6 水・衛生:安全な水と衛生設備(トイレ)の利用と持続可能な管理 7 エネルギー:安価で信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセス 8 経済成長と雇用:持続的な経済成長と、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク) 9 インフラ・産業化:強靱なインフラ整備、持続可能な産業化、技術革新の推進 10 不平等:国内および国家間の不平等を是正する 11 都市:包摂的で安全かつ強靱で、持続可能な都市・居住環境を実現する 12 生産・消費:持続可能な生産と消費の形態を確保する 13 気候変動:気候変動とその影響に対する緊急の対策 14 海洋:海洋と海洋資源の保全と持続可能な利用 15 陸上:陸域生態系の保護・回復、森林管理、砂漠化や生物多様性損失への対処 16 平和と公正:平和で包摂的な社会、司法へのアクセス、説明責任のある制度 17 実施手段:目標達成のためのグローバル・パートナーシップの活性化

MDGsとSDGsの違い

ミレニアム開発目標〈MDGs〉は2000年の国連ミレニアム・サミットを受けて策定され、2015年を期限とした8つの目標からなり、主に開発途上国の課題(貧困、初等教育、乳幼児死亡、妊産婦の健康、HIV/AIDS・マラリアなど)を対象とした。SDGsはその後継であり、先進国を含むすべての国を対象とする普遍性、社会・経済・環境の統合、「誰一人取り残さない」包摂性を特徴とする。

ゴール3(保健)の主なターゲット

妊産婦死亡率を出生10万対70未満に削減、新生児死亡率と5歳未満児死亡率の削減、エイズ・結核・マラリア・顧みられない熱帯病の流行終息、NCDsによる若年死亡を3分の1減少、精神保健と福祉の推進、交通事故死傷者の半減、UHCの達成、たばこ規制枠組条約の実施強化などがある。

POINT

・SDGsは2015年国連サミットで採択、2030年を期限とし、17ゴール・169ターゲットからなる。 ・理念は「誰一人取り残さない」。先進国を含むすべての国が対象。 ・貧困(1)、保健(3)、ジェンダー平等(5)、不平等の是正(10)、気候変動(13)は頻出。 ・遠隔医療のような具体的な手段・技術はゴールに含まれない。 ・保健分野の中心概念はUHC(ゴール3のターゲット)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。