StudyMed医師国家試験

Apgarスコアは「5項目だけ」を拾え―情報の取捨選択で8点を導く

第117回医師国家試験 F問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第36問

生後1分の女児。在胎40週5日,経腟分娩で出生した。心拍は6秒間に12回,啼泣は強い。四肢を活発に動かし,刺激に対して咳嗽を認める。皮膚にわずかに胎便が付着している。皮膚色は全身暗紫色である。  この児のApgarスコアはどれか。

  1. a.6点
  2. b.7点
  3. c.8点
  4. d.9点
  5. e.10点

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は出生直後の新生児の状態を数値化するApgarスコアの計算問題だ。ポイントは2つ。採点に使う5項目だけを問題文から拾い出すこと、そして心拍数の換算を正しく行うこと。まず、Apgarスコアの5項目を挙げられるかな。
医学生医学生
心拍数、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色ですよね。CBTの前に「APGAR」の頭文字で覚えました。
ドクタードクター
その通り。Appearance(皮膚色)、Pulse(心拍数)、Grimace(刺激への反射)、Activity(筋緊張)、Respiration(呼吸)だね。それぞれ0〜2点で、合計10点満点。生後1分と5分に評価する。では心拍数から。6秒間で数えた値はどう扱う?
医学生医学生
6秒なので10倍して1分あたりに直す……120/分ですね。100以上なので2点です。
ドクタードクター
正解。新生児蘇生の現場では、短時間で判断するために6秒間数えて10倍する方法がよく使われる。100/分が1点と2点の境目で、この数字は蘇生の判断にも直結するよ。次に呼吸と筋緊張は?
医学生医学生
強く泣いているので呼吸は2点、四肢を活発に動かしているので筋緊張も2点だと思います。
ドクタードクター
いいね。呼吸は弱い泣き声や不規則な浅い呼吸なら1点、筋緊張は四肢をいくらか曲げる程度なら1点だ。では刺激への反射。咳嗽が出たというのはどう評価する?
医学生医学生
正直、顔をしかめる程度と区別がつかなくて、1点にしかけました。
ドクタードクター
そこは間違えやすいところだね。反射は、反応なしが0点、顔をしかめるだけが1点、泣く・咳嗽・くしゃみといったはっきりした反応が2点。咳嗽は2点に入る。ここを1点にしてしまうと7点と答えてしまうわけだ。
医学生医学生
最後の皮膚色は全身暗紫色なので……体幹がピンクなら1点でしたっけ。
ドクタードクター
そう。全身ピンクで2点、体幹はピンクで四肢末端だけチアノーゼなら1点、全身が蒼白か暗紫色なら0点。今回は全身なので0点。ここを1点と見誤ると9点になってしまう。合計するといくつになる?
医学生医学生
2+2+2+2+0で8点です。在胎週数や胎便の付着は計算に入れなくていいんですね。
ドクタードクター
その通り。正期産であることも経腟分娩であることも、胎便の付着も採点項目ではない。問題文に情報が多いと、つい何かを減点したくなるけれど、5項目だけを機械的に抜き出すのがコツだ。ちなみに、満点の10点は健康な児でも1分値ではあまり見られない。生まれた直後は末梢循環が整っておらず、手足のチアノーゼが残っていることが多いからね。
医学生医学生
産婦人科の実習で分娩に立ち会ったとき、元気に泣いているのに手足が紫っぽくて驚いたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが皮膚色1点の典型だね。では解釈も押さえよう。日本では一般に7〜10点が正常、4〜6点が軽症仮死、0〜3点が重症仮死とされる。今回の8点は正常範囲だ。1分値は出生直後の状態を、5分値は神経学的予後とより関連するとされ、5分値が7点未満なら7点以上になるまで5分ごとに評価を続けることが推奨されている。
医学生医学生
胎便が付着していたことは、何も意味がないんですか。
ドクタードクター
スコアには入らないけれど、臨床的には大事な情報だよ。子宮内で低酸素などのストレスを受けると、腸管運動が亢進して肛門括約筋がゆるみ、胎便が羊水中に出て羊水混濁になる。それを吸い込むと胎便吸引症候群を起こすことがあるから、その後の呼吸状態には注意して観察する。
医学生医学生
蘇生が必要かどうかもApgarスコアで決めるのでしょうか。
ドクタードクター
そこが臨床上の重要な注意点だ。新生児蘇生法(NCPR)では、蘇生の要否はApgarスコアの結果を待たずに判断する。出生直後に早産か、呼吸や啼泣が弱いか、筋緊張が低下しているかを見て、該当すれば保温・気道確保・皮膚乾燥と刺激などの初期処置を行う。そのうえで無呼吸やあえぎ呼吸、または心拍数100/分未満なら人工呼吸、60/分未満が続けば胸骨圧迫を加える。Apgarスコアはあくまで状態の評価と記録の指標、蘇生の判断は呼吸と心拍数で即座に、という使い分けだ。
医学生医学生
スコアは評価・記録用、蘇生は呼吸と心拍で今すぐ判断、と分けて覚えておきます。

まとめ

Apgarスコアは心拍数・呼吸・筋緊張・刺激に対する反射・皮膚色の5項目を各0〜2点で評価し、生後1分と5分に採点する新生児の状態評価法です。心拍数は6秒間の拍数を10倍して換算し100/分以上で2点、刺激に対する咳嗽やくしゃみは反射2点、全身暗紫色は皮膚色0点となり、本例は2+2+2+2+0の8点です。在胎週数や胎便付着は採点項目ではありませんが、胎便付着は子宮内ストレスや胎便吸引症候群のリスクを示す臨床的に重要な所見です。7〜10点は正常、4〜6点は軽症仮死、0〜3点は重症仮死とされ、5分値は神経学的予後とより関連します。蘇生の要否はスコアを待たず呼吸と心拍数で判断するというNCPRの原則とあわせて理解することが、分娩室での適切な初期対応につながります。

解答・解説

正解はcです

Apgarスコアとは

Apgarスコアは、出生直後の新生児の状態(主に新生児仮死の有無と程度)を評価する指標である。通常、生後1分と5分に評価し、次の5項目をそれぞれ0〜2点で採点して合計する(満点10点)。 ・心拍数(Heart rate):なし 0点、100/分未満 1点、100/分以上 2点 ・呼吸(Respiratory effort):なし 0点、弱い泣き声・不規則な浅い呼吸 1点、強く泣く・規則的な呼吸 2点 ・筋緊張(Muscle tone):だらりとしている 0点、四肢をいくらか曲げる 1点、四肢を活発に動かす 2点 ・刺激に対する反射(Reflex irritability):反応なし 0点、顔をしかめる 1点、泣く・咳嗽・くしゃみ 2点 ・皮膚色(Color):全身蒼白または暗紫色 0点、体幹ピンク・四肢チアノーゼ 1点、全身ピンク 2点

本児の採点

・心拍数:6秒間に12回なので、10倍して120/分となる。100/分以上なので2点。新生児蘇生の現場では、迅速に評価するため6秒間の心拍を数えて10倍する方法がよく用いられる。 ・呼吸:啼泣が強い → 2点。 ・筋緊張:四肢を活発に動かす → 2点。 ・刺激に対する反射:刺激に対して咳嗽を認める → 2点。 ・皮膚色:全身暗紫色 → 0点。 合計は 2+2+2+2+0=8点である。

採点に関係しない情報

在胎40週5日の正期産であること、経腟分娩であること、皮膚にわずかに胎便が付着していることは、いずれもApgarスコアの採点項目ではない。胎便の付着は羊水混濁を示し、子宮内で胎児がストレスを受けた可能性を示唆するが、スコアには反映しない。採点に関係ない情報に惑わされず、5項目だけを抜き出して計算することが大切である。

選択肢考察

  1. ×a.  6点

    6点になるのは、皮膚色0点に加えてさらに2点分の減点がある場合である。本児は心拍数120/分(2点)、強い啼泣(2点)、四肢の活発な運動(2点)、刺激で咳嗽(2点)と、皮膚色以外の4項目はすべて満点であり、6点にはならない。

  2. ×b.  7点

    7点とするのは、皮膚色を0点としたうえでほかのいずれかの項目を1点と評価した場合である。たとえば咳嗽を「顔をしかめる程度の反応」と取り違えると1点になるが、咳嗽は刺激に対する反射で2点に該当する。皮膚色以外の4項目はすべて2点であり、7点ではない。

  3. ○c.  8点

    心拍数は6秒間12回から120/分と換算でき、100/分以上で2点。強い啼泣で呼吸2点、四肢を活発に動かすので筋緊張2点、刺激で咳嗽が出るので反射2点である。皮膚色は全身暗紫色なので0点となる。合計は8点であり、これが正しい。7点以上は正常範囲とされ、本児は新生児仮死には該当しない。

  4. ×d.  9点

    9点とするのは、皮膚色を1点と評価した場合である。皮膚色の1点は「体幹はピンクで四肢末端のみチアノーゼ」のときであり、本児のように全身が暗紫色であれば0点となる。したがって9点ではない。

  5. ×e.  10点

    10点は全身ピンク色を含め5項目すべてが2点の場合である。本児は全身暗紫色で皮膚色が0点なので、10点にはならない。なお、出生直後の新生児は末梢循環が未熟で、生後1分の時点では四肢末端のチアノーゼが残っていることが多く、健康な児でも1分値が10点となることは少ない。

Apgarスコアの評価と解釈

・評価の時点:生後1分と5分。5分値が7点未満の場合は、7点以上になるまで5分ごとに評価を続けることが推奨されている。 ・解釈(日本で一般的な区分):7〜10点は正常、4〜6点は軽症仮死(第1度仮死)、0〜3点は重症仮死(第2度仮死)。 ・1分値は出生直後の状態を反映し、5分値は神経学的予後とより関連するとされる。 ・覚え方:英語の頭文字でAppearance(皮膚色)、Pulse(心拍数)、Grimace(刺激に対する反射)、Activity(筋緊張)、Respiration(呼吸)と並べると「APGAR」となる。

新生児蘇生との関係

新生児蘇生法(NCPR:Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation)のアルゴリズムでは、蘇生の要否はApgarスコアの結果を待たずに、呼吸と心拍数で判断する。出生直後に「早産か」「弱い呼吸・啼泣か」「筋緊張が低下しているか」を確認し、いずれかに該当すれば保温・気道確保・皮膚乾燥と刺激などの初期処置を行う。そのうえで無呼吸・あえぎ呼吸、または心拍数100/分未満なら人工呼吸を開始し、さらに心拍数60/分未満が続けば胸骨圧迫を加える。心拍数は6秒間数えて10倍する方法がよく用いられる。

新生児仮死

新生児仮死とは、出生時に胎内環境から肺呼吸への切り替えがうまくいかず、呼吸・循環が確立しない状態である。低酸素血症とアシドーシスによって肺血管抵抗が下がらず、肺血流が増えないため(新生児遷延性肺高血圧症)、さらに低酸素が進む悪循環に陥りうる。重症例では低酸素性虚血性脳症を起こし、神経学的後遺症の原因となる。

胎便の付着

子宮内で胎児が低酸素などのストレスを受けると、腸管運動の亢進と肛門括約筋の弛緩により胎便が羊水中に排出され、羊水混濁となる。この羊水を吸い込むと胎便吸引症候群を起こすことがある。

POINT

・Apgarスコアは心拍数、呼吸、筋緊張、刺激に対する反射、皮膚色の5項目を各0〜2点で評価し、生後1分・5分に採点する。 ・心拍数は100/分以上で2点。6秒間の拍数×10で1分値に換算する。 ・皮膚色は全身暗紫色・蒼白で0点、四肢末端のみチアノーゼで1点、全身ピンクで2点。 ・7点以上は正常、4〜6点は軽症仮死、3点以下は重症仮死。 ・在胎週数や胎便付着は採点項目ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。