離島と山あいの医療を支えるしくみ―へき地医療拠点病院は「どの単位」で考える?
第117回医師国家試験 C問題 第25問
国試問題にチャレンジ
日本のへき地保健医療対策について誤っているのはどれか。
- a.巡回診療が推進されている。
- b.ITの活用が推進されている。
- c.医療計画の5事業に含まれている。
- d.へき地医療拠点病院は一次医療圏単位で整備される。
- e.プライマリケアを実践する医師の確保が求められている。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
へき地医療は医療法に基づく医療計画の事業の一つ(第7次までは5事業、第8次から新興感染症を加えた6事業)で、巡回診療・代診医派遣、ICTを用いた遠隔医療、プライマリケアを担う医師の育成・確保が対策の柱です。都道府県のへき地医療支援機構が全体を調整し、都道府県が指定するへき地医療拠点病院が広域からへき地診療所を支援するため、拠点病院を一次医療圏単位で整備するという記述は誤りです。一次医療圏は市町村単位の外来中心の圏域、二次医療圏は入院医療の完結と基準病床数の単位、三次医療圏は原則都道府県単位という区分を押さえると、制度の位置づけが理解しやすくなります。無医地区(おおむね半径4kmに50人以上居住)の定義も含め、地域医療を支える仕組みを知ることは、将来どこで働くにしても役立つ視点です。
解答・解説
正解はdです
本問は「誤っているもの」を選ぶ問題である。 へき地とは、山間地や離島など交通が不便で、医療を受けにくい地域を指す。代表的な指標が「無医地区」で、医療機関のない地域のうち、おおむね半径4kmの区域に50人以上が住み、容易に医療機関を利用できない地区をいう。国は1956年(昭和31年)以来、へき地保健医療計画を策定して対策を続けてきた。現在では、医療法に基づき都道府県が定める医療計画の一分野として、へき地医療が位置づけられている。 へき地医療対策の柱は、次のようにまとめられる。 ・医療を届ける:へき地診療所の設置、巡回診療、医師の代診派遣、ICT(情報通信技術)を用いた遠隔医療 ・人材を確保する:総合的な診療能力をもつ医師(プライマリケア医)の育成と派遣(自治医科大学、地域枠など) ・支える仕組み:都道府県の「へき地医療支援機構」が対策全体を調整し、都道府県が指定する「へき地医療拠点病院」が医師派遣や巡回診療を実施する へき地医療拠点病院は、へき地診療所を後方から支援する病院である。一次医療圏(おおむね市町村単位で、日常的な外来診療を完結させる圏域)ごとに整備されるものではない。この点が誤りとなる。
選択肢考察
- ×a. 巡回診療が推進されている。
正しい記述。医療機関まで通うのが難しい無医地区や離島の住民に医療を届けるため、巡回診療が行われている。主な担い手はへき地医療拠点病院で、巡回診療車や巡回診療船(離島向け)を用いる。巡回診療は、へき地医療拠点病院の主要な事業の一つに位置づけられている。
- ×b. ITの活用が推進されている。
正しい記述。医師が少ない地域を支えるため、ICT(情報通信技術)の活用が推進されている。例として、画像の遠隔診断(遠隔画像診断)、へき地診療所の医師と拠点病院の専門医をつなぐ相談支援、患者に対するオンライン診療などがある。これらは医師の不足と距離の壁を補う手段として重視されている。
- ×c. 医療計画の5事業に含まれている。
正しい記述。医療法に基づく医療計画では、5疾病(がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患)に加えて、救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む)の5事業を定めてきた。へき地医療はこの5事業の一つである。なお、2024年度からの第8次医療計画では「新興感染症発生・まん延時における医療」が加わって6事業となったが、へき地医療が含まれることに変わりはない。
- ○d. へき地医療拠点病院は一次医療圏単位で整備される。
誤った記述であり、これが正解。へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する病院で、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣、巡回診療、遠隔医療による支援などを担う。一次医療圏ごとの身近な医療機関ではなく、より広域から複数のへき地を支える役割をもつ。整備の単位は都道府県(へき地医療支援機構の調整のもとで指定)であり、医療計画上は入院医療を含めて完結を目指す二次医療圏を意識して配置される。一次医療圏単位という記述は誤りである。
- ×e. プライマリケアを実践する医師の確保が求められている。
正しい記述。へき地では専門医がそろわないため、年齢や臓器を問わず幅広い健康問題に最初に対応できる医師(プライマリケア医、総合診療医)が必要とされる。こうした医師の育成と確保は対策の大きな柱である。へき地医療拠点病院での研修受け入れ、自治医科大学の卒業生や地域枠出身医師の配置、総合診療専門医の育成などが行われている。
医療圏の区分
・一次医療圏:日常的な外来診療を中心とする身近な医療の圏域。おおむね市町村単位で、医療法上の明確な規定はない。 ・二次医療圏:一般的な入院医療を完結させることを目指す圏域。複数の市町村からなり、医療計画で基準病床数(一般病床・療養病床)を定める単位。 ・三次医療圏:高度・特殊な医療を提供する圏域。原則として都道府県単位(北海道は複数に分かれる)。
へき地医療を支える主な仕組み
・へき地医療支援機構:都道府県単位で設置。へき地医療対策の企画・調整、代診医の派遣調整、へき地勤務医師の確保などを担う司令塔。 ・へき地医療拠点病院:都道府県が指定。巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣、遠隔医療による支援、へき地で勤務する医師の研修などを行う。 ・へき地診療所:無医地区などに設置され、住民の日常的な医療を担う。 ・人材育成:自治医科大学(都道府県が共同で設立し、卒業後一定期間のへき地勤務を想定)、医学部の地域枠、総合診療専門医の養成。
無医地区と準無医地区
・無医地区:医療機関のない地域で、その地区の中心からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住し、容易に医療機関を利用できない地区。 ・準無医地区:無医地区には当たらないが、これに準じて医療の確保が必要と都道府県知事が判断し、厚生労働大臣に協議できる地区。
医療計画の5疾病・6事業
5疾病:がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患 事業:救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(第8次から新興感染症発生・まん延時における医療が加わり6事業) このほか在宅医療についても計画で定める。
POINT
・へき地医療は医療計画の事業の一つ(5事業、第8次以降は6事業)。 ・柱は巡回診療・代診派遣、ICTを用いた遠隔医療、プライマリケアを担う医師の育成・確保。 ・へき地医療拠点病院は都道府県が指定し、広域からへき地診療所を支える(一次医療圏単位ではない)。 ・無医地区:おおむね半径4kmに50人以上居住し、容易に医療機関を利用できない地区。
