「苦情の窓口」か「事故の調査」か―名前が似た2つのセンターを見分ける医療安全の基礎
第117回医師国家試験 C問題 第24問
国試問題にチャレンジ
医療安全支援センターについて正しいのはどれか。
- a.市町村に設置される。
- b.医療事故調査を実施する。
- c.地域保健法に規定されている。
- d.患者・家族からの苦情に対応する。
- e.看護師の常駐が義務付けられている。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
医療安全支援センターは医療法(第6条の13)に基づき、都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努める相談窓口で、患者・家族からの医療に関する苦情・相談への対応と助言、情報提供、研修を担います。名前の似た医療事故調査・支援センターは、厚生労働大臣が指定する全国1か所の第三者機関(日本医療安全調査機構)で、予期しなかった死亡・死産の調査・分析と再発防止を担います。地域保健法には医療安全支援センターの規定はなく、職員の職種にも法的な定めはありません。院内の医療安全管理体制、自治体の相談窓口、全国の事故調査制度という役割の違いを整理しておくことは、試験対策だけでなく、医療者として患者の声や事故に向き合うための土台となります。
解答・解説
正解はdです
医療安全支援センターは、医療法(第6条の13)に根拠をもつ相談窓口である。2006年(平成18年)の第5次医療法改正で法律に位置づけられ、都道府県、保健所を設置する市、特別区(東京23区)が設置に努めることとされている(努力義務)。主な役割は、住民(患者・家族)から寄せられる医療に関する苦情や相談に応じ、必要に応じて患者・家族や医療機関に助言することである。あわせて、医療機関や住民への医療安全に関する情報提供、医療機関の管理者・従業者向けの研修も担う。 本問を解くうえで最も紛らわしいのは、名前のよく似た「医療事故調査・支援センター」との区別である。こちらは2015年(平成27年)に始まった医療事故調査制度の中核機関で、厚生労働大臣が指定する民間の第三者機関(一般社団法人日本医療安全調査機構)である。医療事故の調査・分析を担い、苦情相談を受けるわけではない。 つまり、「医療安全支援センター=自治体の苦情・相談窓口(医療法)」、「医療事故調査・支援センター=事故の調査・分析を行う全国一つの第三者機関(同じく医療法)」と整理しておけば、各選択肢を判断できる。
選択肢考察
- ×a. 市町村に設置される。
誤り。設置主体は都道府県、保健所を設置する市(政令指定都市・中核市など)、特別区である。保健所をもたない一般の市町村は設置主体に含まれない。保健所を設置している自治体が担うという点で、地域の医療機関への立入検査などの医療行政を担う主体と一致している。
- ×b. 医療事故調査を実施する。
誤り。医療事故の調査を行うのは、厚生労働大臣が指定する医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)である。医療事故調査制度では、まず事故が起きた医療機関自身が院内調査を行い、その結果を医療事故調査・支援センターへ報告する。遺族や医療機関から依頼があれば、同センターが独自に調査を行う。医療安全支援センターは苦情・相談への対応が中心で、事故の原因を究明する調査は行わない。
- ×c. 地域保健法に規定されている。
誤り。医療安全支援センターの根拠法は医療法である(第6条の13)。地域保健法は保健所や市町村保健センターの設置、地域保健対策の基本指針などを定める法律であり、医療安全支援センターについての規定はない。保健所設置自治体に置かれるため地域保健法と結びつけがちだが、混同しないこと。
- ○d. 患者・家族からの苦情に対応する。
正しい。医療安全支援センターの中心となる業務は、医療機関で受けた医療について患者・家族から寄せられる苦情や相談に応じることである。必要に応じて、患者・家族に助言したり、当該医療機関の管理者に情報を伝えて助言したりする。センターは中立的な立場で双方の話を聞き、問題解決を手助けする役割を担う。ただし、医療行為の過失の有無を判定したり、紛争の仲裁・賠償の交渉を代行したりする機関ではない。
- ×e. 看護師の常駐が義務付けられている。
誤り。医療法には、センターに置く職員の職種や人数を定めた規定はない。センターは診療や療養上の世話を行う施設ではないため、看護師を常駐させる法的な義務はない。実際の運営では、保健師・看護師・事務職員などの自治体職員が相談に当たることが多いが、これは各自治体の判断による。
医療安全支援センターの業務(医療法 第6条の13)
・患者・家族などからの医療に関する苦情への対応と相談への応需、患者・家族や医療機関の管理者への助言 ・医療機関の開設者・管理者・従業者、患者・家族、住民に対する医療安全に関する情報提供 ・医療機関の管理者・従業者に対する医療安全に関する研修の実施 ・その他、地域の医療安全の確保に必要な支援 設置は都道府県、保健所設置市、特別区の努力義務とされている。全国の設置数は400か所余り(令和3年度で416か所)。都道府県単位の拠点と、二次医療圏ごとの窓口(多くは保健所内)として設置されていることが多い。
医療事故調査制度と医療事故調査・支援センター
・2015年(平成27年)10月施行。対象となる「医療事故」は、医療機関に勤務する医療従事者が提供した医療に起因する(または起因すると疑われる)死亡・死産であって、管理者がその発生を予期しなかったものである。 ・流れ:医療機関の管理者が医療事故調査・支援センターに報告 → 医療機関が院内調査を実施 → 結果をセンターと遺族に報告。遺族や医療機関が依頼すればセンターが調査を行う。 ・医療事故調査・支援センターは厚生労働大臣が指定する機関で、現在は日本医療安全調査機構の1か所のみである。事例の収集・分析、再発防止策の普及、院内調査の支援、研修などを担う。 ・制度の目的は医療安全の確保と再発防止であり、個人の責任追及ではない。
その他の医療安全関連の仕組み
・医療機関の管理者には医療安全管理体制の整備が義務付けられている(医療安全管理指針、医療安全管理委員会、職員研修、事故報告などによる改善策)。 ・日本医療機能評価機構が行う医療事故情報収集等事業(ヒヤリ・ハット事例の収集を含む)は、医療事故調査制度とは別の仕組みである。
POINT
・医療安全支援センター:医療法に基づき、都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努める(市町村一般ではない)。 ・主な業務は患者・家族からの医療に関する苦情・相談への対応と助言、情報提供、研修。 ・医療事故の調査は医療事故調査・支援センター(厚生労働大臣が指定、日本医療安全調査機構の1か所)が担う。 ・職員の職種についての法的な規定はない。
