StudyMed医師国家試験

競争ではなく補完―チーム医療を動かす「相互理解」と「情報共有」

第117回医師国家試験 C問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第117回 C問題 第21問

チーム医療について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.職種間での競争意識向上が主な目的である。
  2. b.多職種相互の十分な業務理解により促進される。
  3. c.チーム医療リーダーの職種は医師に限定される。
  4. d.患者情報は多職種で共有できる仕組みが重要である。
  5. e.多職種カンファレンスに患者の家族は同席できない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療の基本原則を問う問題だ。2つ選ぶ形式だけど、「チームが機能するには何が必要か」を考えれば、自然に答えが見えてくるよ。
医学生医学生
チーム医療というと、医師がリーダーで、看護師さんや薬剤師さんに指示を出していく形をイメージしてしまいます。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。でも現在のチーム医療は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・リハビリ職・臨床工学技士・医療ソーシャルワーカーなど多様な専門職が、目的と情報を共有し、互いに補い合って患者中心の医療を行うものなんだ。まず目的から考えてみよう。職種間の競争意識を高めることが主な目的、というのはどうかな。
医学生医学生
競争させれば質が上がるという考え方もありそうですが……患者さんのためというより、職種のための話になってしまう気がします。
ドクタードクター
鋭いね。チーム医療の目的は、それぞれの専門性を相補的に組み合わせて、医療の質と安全性を高めること。求められるのは競争ではなく、対等で協調的な関係なんだ。では、チームがうまく回るための前提条件は何だと思う?
医学生医学生
お互いの職種が何をできるのかを知っていること、でしょうか。
ドクタードクター
その通り。多職種相互の十分な業務理解がチーム医療を促進する、というのが正しい記述の1つだ。たとえば嚥下障害の評価は言語聴覚士、服薬アドヒアランスの支援は薬剤師、退院後の社会資源の調整は医療ソーシャルワーカー。誰が何を得意とするかを知っていれば、適切な相手に適切なタイミングで相談できる。
医学生医学生
1年生のときに他学部の学生と一緒に受けた多職種連携の授業は、そのためだったんですね。当時はあまり意味が分かっていませんでした。
ドクタードクター
多職種連携教育(IPE)だね。卒前から互いの役割を知っておくことが、現場での連携の土台になるんだ。もう1つの土台が情報共有。患者情報を多職種で共有できる仕組みが重要、というのも正しい記述だよ。
医学生医学生
病状や方針が職種ごとにバラバラだと、同じ説明を何度もしたり、逆に大事なことが抜け落ちたりしそうです。
ドクタードクター
まさにそれが医療安全上の問題になる。電子カルテでの記録共有、多職種カンファレンス、申し送りの標準化などが仕組みの例だ。記録は他職種にも伝わるように書くことが大切で、独自の略語を多用しないといった配慮も必要になる。もちろん、共有は診療上必要な範囲で、個人情報保護に配慮して行うのが前提だね。
医学生医学生
リーダーは医師に限定される、というのは、最初の私のイメージそのものでした。
ドクタードクター
実際には課題に応じて最適な職種が中心になる。褥瘡対策チームなら皮膚・排泄ケア認定看護師、栄養サポートチームなら管理栄養士や薬剤師、退院支援なら医療ソーシャルワーカーや退院調整看護師が中心的役割を担うことがある。医師が最終的な医学的判断に責任をもつ場面はあっても、リーダーの職種が固定されるわけではないんだ。
医学生医学生
患者さんの家族はカンファレンスに同席できない、というのも違いますよね。内科の実習で退院前カンファレンスに家族の方が参加していました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。患者中心の医療では、患者本人や家族もチームの一員だ。退院前カンファレンスや人生会議(ACP)の話し合いでは、家族が同席して意向を伝え、方針を一緒に決める共同意思決定が行われる。一律に同席を禁じる決まりはないよ。
医学生医学生
整理すると、目的は患者のための質と安全、土台は相互の業務理解と情報共有、リーダーは課題次第、患者・家族もメンバー、ということですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。発展として、栄養サポートチーム、感染制御チーム、抗菌薬適正使用支援チーム、緩和ケアチーム、認知症ケアチームなど、診療報酬上の加算の対象になっているチームもあり、制度面からも推進されている。情報伝達ではSBARのような型を使うと、要点が漏れにくくなる。
医学生医学生
臨床実習で看護師さんに報告するときも、状況・背景・評価・提案の順に話すよう指導されました。
ドクタードクター
それがSBARだね。それと、医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアも、チーム医療が前提の取り組みだ。研修医になったら、他職種の意見に耳を傾け、自分も意見を言える心理的安全性のあるチームづくりを意識してほしい。それが結局、患者さんを守ることにつながるんだ。

まとめ

チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・リハビリ職・医療ソーシャルワーカーなどの多職種が目的と情報を共有し、専門性を相補的に活かして患者中心の質の高い安全な医療を提供することです。その土台となるのは、他職種の役割や業務への相互理解と、電子カルテやカンファレンスなどを通じて患者情報を共有できる仕組みです。目的は職種間の競争ではなく、リーダーも医師に限らず課題に応じて最適な職種が担い、患者や家族もチームの一員として意思決定に参加します。栄養サポートチームや感染制御チームなどの具体的な形態、SBARによる情報伝達、タスク・シフト/シェアもあわせて理解しておくと、臨床現場で円滑に連携するための実践的な力になります。

解答・解説

正解はb, dです

テーマ

チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床工学技士・医療ソーシャルワーカー〈MSW〉など多様な医療専門職が、それぞれの専門性を発揮しつつ目的と情報を共有し、互いに連携・補完し合って患者中心の医療を提供することをいう。厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」報告書(2010年)でも、医療の質の向上、医療の効率化と医療従事者の負担軽減、医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上などがその効果として挙げられている。

正解を導く考え方

チーム医療が機能するための条件を考えればよい。 ・目的:職種同士が競うのではなく、専門性を持ち寄って患者のアウトカム(治療成績、生活の質〈QOL〉、安全)を高めること。 ・前提:互いの職種が何をできるか、どのような役割を担うかを理解していること(相互の業務理解)。 ・基盤:患者情報を必要なメンバーが適時に参照・共有できる仕組み(電子カルテ、カンファレンス、記録の標準化など)。 ・構成:リーダーは課題に応じて最適な職種が担い、患者・家族もチームの一員として意思決定に参加する。 この観点から、相互の業務理解と情報共有の仕組みを述べた選択肢が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  職種間での競争意識向上が主な目的である。

    誤り。チーム医療の目的は、各職種の専門能力を相補的に組み合わせて患者に最善のケアを提供し、医療の質と安全性を高めることである。職種間で競わせることは目的ではなく、むしろ対等で協調的な関係こそが求められる。

  2. ○b.  多職種相互の十分な業務理解により促進される。

    正しい。他職種がどのような専門知識・技能をもち、どの業務を担えるかを理解していれば、適切な職種に適切なタイミングで相談・依頼ができ、役割分担と連携が円滑になる。例えば、嚥下障害の評価は言語聴覚士、服薬アドヒアランスの支援は薬剤師、退院後の社会資源調整はMSWといった具合に、業務理解があってこそ各職種の専門性を十分に活かせる。多職種連携教育〈interprofessional education:IPE〉が卒前教育から重視されているのもこのためである。

  3. ×c.  チーム医療リーダーの職種は医師に限定される。

    誤り。リーダーは医師に限られない。チームの目的や患者の課題に応じて、最も適した職種がリーダーやコーディネーターを担う。例えば、褥瘡対策チームでは皮膚・排泄ケア認定看護師、栄養サポートチーム〈NST〉では管理栄養士や薬剤師、退院支援ではMSWや退院調整看護師が中心的役割を果たすことがある。医師が最終的な医学的判断に責任をもつ場面はあるが、それはリーダーの職種を固定することを意味しない。

  4. ○d.  患者情報は多職種で共有できる仕組みが重要である。

    正しい。同じ患者に複数の職種がかかわる以上、病状、治療方針、生活背景、患者・家族の意向などの情報が共有されていなければ、方針の食い違いや重複・漏れが生じ、医療安全上の問題にもつながる。電子カルテによる記録の共有、多職種カンファレンス、申し送りの標準化などの仕組みが重要である。共有を円滑にするため、診療記録は他職種にも理解できるよう日本語を基本とし、略語を用いる場合は施設内の略語集などで意味が確認できるようにしておくことが望ましい。なお、共有はチーム内で診療上必要な範囲に限り、個人情報保護に配慮して行う。

  5. ×e.  多職種カンファレンスに患者の家族は同席できない。

    誤り。患者中心の医療では、患者本人や家族もチームの一員と位置づけられる。退院前カンファレンスや人生会議(アドバンス・ケア・プランニング〈ACP〉)の話し合いなど、目的によっては患者・家族が同席し、意向を表明したり方針を一緒に決めたりする(共同意思決定〈shared decision making:SDM〉)。家族の同席を一律に禁止する決まりはない。

チーム医療の主な形態

・栄養サポートチーム〈NST〉:医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師などが栄養状態の評価と栄養療法を支援する。 ・感染制御チーム〈ICT〉、抗菌薬適正使用支援チーム〈AST〉:院内感染対策や抗菌薬の適正使用を推進する。 ・緩和ケアチーム:身体症状・精神症状の緩和や家族ケアを担う。 ・呼吸ケアサポートチーム、褥瘡対策チーム、認知症ケアチーム、精神科リエゾンチームなど。 これらの一部は診療報酬上の加算の対象となっており、制度面からも推進されている。

チームが機能するための要素

・目標の共有:患者の治療目標・生活目標をチーム全体で共有する。 ・役割の明確化と相互理解:各職種の専門性と業務範囲を理解し合う。 ・コミュニケーション:カンファレンス、記録、申し送りによる情報共有。SBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)などの伝達手法も医療安全の観点から推奨される。 ・対等性:職種間の上下関係にとらわれず、意見を言い合える心理的安全性のある環境。 ・患者・家族の参加:意思決定の主体として尊重する。

タスク・シフト/シェア

医師の働き方改革に伴い、医師の業務の一部を他職種へ移管・共同化する取り組みも進められており、これもチーム医療を前提とした考え方である。

POINT

・チーム医療の目的は、多職種の専門性を相補的に活かして患者中心の質の高い安全な医療を提供すること。競争が目的ではない。 ・他職種の役割・業務への相互理解と、患者情報を共有する仕組みがチーム医療を支える。 ・リーダーは医師に限らず、課題に応じて最適な職種が担う。 ・患者・家族もチームの一員であり、カンファレンスに参加しうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。