StudyMed医師国家試験

指示書がいるのは誰?―在宅を支える多職種と「医療」と「介護」の境界線

第119回医師国家試験 B問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第119回 B問題 第14問

在宅医療・介護のサービスで医師の指示が必要でないのはどれか。

  1. a.訪問介護
  2. b.訪問看護
  3. c.訪問栄養指導
  4. d.訪問薬剤管理指導
  5. e.訪問リハビリテーション

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅療養を支えるさまざまな訪問サービスのうち、医師の指示がなくても提供できるものを選ぶ問題だ。ポイントは、そのサービスが医学的な判断に基づくものなのか、日常生活を支えるものなのか、という線引きにある。まず、在宅でどんな職種が関わっているか思い浮かべてみよう。
医学生医学生
地域医療の実習で在宅診療に同行したとき、医師のほかに訪問看護師さんやヘルパーさん、薬剤師さんも出入りしていました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。在宅医療は多職種チームで成り立っている。そのサービスを大きく2つに分けると、医療職が病状や治療方針を踏まえて行うサービスと、生活を支える介護サービスになる。前者は医師の指示に基づいて行い、実施後は医師に報告する。後者は医師の指示を前提としない。
医学生医学生
そうすると、看護師さんが行う訪問看護は医療職のサービスなので指示が必要ですね。
ドクタードクター
その通り。訪問看護では病状観察や点滴、カテーテルや人工呼吸器の管理、褥瘡処置、ターミナルケアなどを行う。その多くが診療の補助にあたるから、医療保険でも介護保険でも主治医の訪問看護指示書が必要だ。有効期間は最長6か月で、病状が急に悪化したときには頻回の訪問を可能にする特別訪問看護指示書が出されることもある。
医学生医学生
実習先でも、先生が指示書の更新に追われていました。訪問リハビリテーションも同じ扱いですか。
ドクタードクター
同じだよ。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅でADL訓練や嚥下訓練を行うけれど、心疾患のリスクや骨折後の荷重制限などを踏まえる必要がある。だから医師の診察と指示に基づいてリハビリ計画が作られるんだ。
医学生医学生
訪問栄養指導は、医療行為っぽくないので指示がいらない気がしてしまいました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。管理栄養士の訪問栄養指導は、低栄養や嚥下障害、糖尿病や腎臓病などの病態に合わせて食事を指導するものだ。病態の評価と治療方針が前提になるから、医師が示す栄養管理の方針、たとえば食事箋などに基づいて行われる。医療保険なら在宅患者訪問栄養食事指導、介護保険なら居宅療養管理指導という枠組みになる。
医学生医学生
薬剤師さんの訪問薬剤管理指導も、処方医の方針がないと始まらないということですね。
ドクタードクター
そう。服薬状況や副作用の確認、残薬の整理、服薬方法の工夫を行うけれど、処方医の指示に基づいて薬学的管理指導計画を立て、結果を医師に報告する。多剤併用の高齢者では残薬の発見が処方見直しのきっかけになることも多いんだ。
医学生医学生
残る訪問介護は、ヘルパーさんが入浴や食事の介助、掃除や調理をするサービスなので、医師の指示は不要ということですね。
ドクタードクター
正解。訪問介護は身体介護、生活援助、通院等乗降介助からなり、医学的判断を伴う行為を目的としない。ケアマネジャーが作るケアプランと、事業所のサービス提供責任者が作る訪問介護計画に沿って提供されるんだ。
医学生医学生
でも、ヘルパーさんが痰の吸引をしているのを見たことがあります。あれは医行為ではないんですか。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。喀痰吸引と経管栄養は、所定の研修を修了して登録された介護職員が、医師の指示書と看護職との連携のもとで行うことが例外的に認められている。ただしこれは特定の行為に関するルールで、訪問介護というサービス自体の利用に医師の指示が必要になるわけではない。
医学生医学生
なるほど。ケアプランを作るのはケアマネジャーで、医師は医療系サービスの指示を出す、という役割分担なんですね。
ドクタードクター
そうだね。医師は訪問診療や往診を行いつつ、医療職へ指示を出し、ケアマネジャーとも情報を共有する。主治医意見書を書いて要介護認定に関わるのも医師の大事な役割だ。在宅では医師がすべてを担うのではなく、各職種がそれぞれの専門性を発揮できるよう、適切に指示と連携を行うことが求められる。将来どの科に進んでも、退院支援などで必ず関わる知識だよ。

まとめ

在宅療養を支える訪問サービスは、医療職が病状を踏まえて行うサービスと、日常生活を支える介護サービスに分けて考えると整理しやすくなります。訪問看護(訪問看護指示書が必要、有効期間は最長6か月)、訪問リハビリテーション、管理栄養士による訪問栄養指導、薬剤師による訪問薬剤管理指導は、いずれも医師の指示に基づいて実施され、医師への報告が求められます。一方、訪問介護は身体介護や生活援助を行うサービスで、ケアマネジャーのケアプランと訪問介護計画に基づいて提供され、医師の指示は必要ありません。研修を受けた介護職員による喀痰吸引・経管栄養には医師の指示書が必要ですが、これは例外的な扱いです。各職種の役割と指示系統を理解しておくことは、退院支援や多職種連携を円滑に進めるための基本となります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

在宅療養を支える各種の訪問サービスのうち、提供の前提として医師の指示(指示書など)が求められないものを選ぶ問題である。

考え方

在宅でのサービスは大きく、①医療職が医学的判断に基づいて行うサービスと、②日常生活を支える介護サービスに分けて考えるとわかりやすい。 ・①に当たるのが訪問看護(看護師)、訪問リハビリテーション(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、訪問栄養指導(管理栄養士)、訪問薬剤管理指導(薬剤師)である。これらは病状や治療方針を踏まえて行う必要があるため、主治医の指示(訪問看護指示書、リハビリテーションの指示、栄養指導や薬学的管理の指示など)に基づいて実施され、実施後は医師への報告が求められる。 ・②に当たるのが訪問介護(ホームヘルプ)である。訪問介護員(ホームヘルパー)が入浴・排泄・食事などの介助や、調理・洗濯・掃除などの家事援助を行うもので、医療行為を目的としない。介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するケアプラン(居宅サービス計画)と、事業所のサービス提供責任者が作る訪問介護計画に沿って提供され、医師の指示は必要としない。 したがって、医師の指示が必要でないのは訪問介護である。

選択肢考察

  1. ○a.  訪問介護

    医師の指示を必要としないサービスであり、これが正解である。訪問介護は介護保険の居宅サービスの一つで、訪問介護員が利用者の自宅を訪れ、身体介護(入浴・排泄・食事・更衣の介助など)、生活援助(調理・洗濯・掃除・買い物など)、通院等乗降介助を行う。医学的判断を伴う行為ではないため、ケアマネジャーのケアプランと、サービス提供責任者が作成する訪問介護計画や手順書に基づいて提供され、主治医の指示書は前提とならない。なお、一定の研修を受けた介護職員が喀痰吸引や経管栄養を行う場合には別途医師の指示書が必要となるが、これは訪問介護というサービスそのものの利用要件ではない。

  2. ×b.  訪問看護

    医師の指示が必要である。訪問看護では看護師などが病状観察、点滴・カテーテルや人工呼吸器などの管理、褥瘡処置、服薬管理、ターミナルケアなどを行い、その多くが診療の補助に当たる。そのため、医療保険・介護保険のいずれで利用する場合も、主治医が発行する訪問看護指示書が必要である(有効期間は最長6か月)。病状が急に悪化した場合などには、短期間に頻回の訪問を可能にする特別訪問看護指示書が出されることもある。

  3. ×c.  訪問栄養指導

    医師の指示が必要である。管理栄養士が通院困難な在宅療養者の自宅を訪問し、低栄養、嚥下障害、糖尿病・腎臓病など食事管理が必要な病態に対して、献立や調理法、食形態などの具体的な指導を行う。医療保険では在宅患者訪問栄養食事指導、介護保険では管理栄養士による居宅療養管理指導として行われ、いずれも医師が作成・指示する栄養管理の方針(食事箋など)に基づいて実施される。

  4. ×d.  訪問薬剤管理指導

    医師の指示が必要である。薬剤師が通院困難な在宅療養者の自宅を訪問し、服薬状況や副作用の確認、服薬方法の工夫、残薬の整理などを行うサービスである。医療保険では在宅患者訪問薬剤管理指導、介護保険では薬剤師による居宅療養管理指導として行われ、処方医の指示(または同意)に基づいて薬学的管理指導計画を立てて実施し、結果を医師に報告する。

  5. ×e.  訪問リハビリテーション

    医師の指示が必要である。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅を訪問し、筋力・関節可動域の維持改善、歩行や移乗などの日常生活動作(ADL)の訓練、嚥下・言語の訓練、住環境の助言などを行う。病状やリスク(心疾患、骨折後の荷重制限など)を踏まえる必要があるため、医師の診察と指示に基づいてリハビリテーション計画が作成され、実施される。

在宅療養を支える職種とサービスの整理

・医師:訪問診療(計画的・定期的な訪問)と往診(急変時など求めに応じた臨時の訪問)を行い、他職種へ指示を出す。 ・看護師など:訪問看護(訪問看護指示書が必要)。 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:訪問リハビリテーション(医師の指示が必要)。 ・管理栄養士:訪問栄養食事指導、居宅療養管理指導(医師の指示が必要)。 ・薬剤師:訪問薬剤管理指導、居宅療養管理指導(医師の指示が必要)。 ・歯科医師・歯科衛生士:訪問歯科診療、口腔ケア。 ・訪問介護員:訪問介護(医師の指示は不要)。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー):要介護者の状態を評価し、必要なサービスを組み合わせたケアプランを作成して、各職種・事業所との調整を行う。

介護保険の主な在宅サービス

訪問系(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導)、通所系(通所介護〈デイサービス〉、通所リハビリテーション〈デイケア〉)、短期入所(ショートステイ)、福祉用具貸与、住宅改修などがある。医療職が提供するサービスは医師の指示を要し、介護・福祉的なサービスは要しない、という整理が基本である。

補足:介護職員による医行為

喀痰吸引と経管栄養は、所定の研修を修了し登録された介護職員が、医師の指示書と看護職との連携のもとで行うことが認められている。これは例外的な扱いであり、通常の訪問介護(生活支援・身体介護)は医師の指示を必要としない。

POINT

・医療職(看護師、療法士、管理栄養士、薬剤師)による訪問サービスは医師の指示に基づいて行う。 ・訪問看護には主治医の訪問看護指示書が必要(有効期間は最長6か月)。 ・訪問介護は日常生活の介助・家事援助であり、ケアプランに基づいて提供され、医師の指示は不要。 ・サービスを組み合わせて調整するのは介護支援専門員(ケアマネジャー)である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。