StudyMed医師国家試験

詰まった出口を見逃すな―急性腎障害で最初に当てるべきプローブ

第116回医師国家試験 D問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第116回 D問題 第7問

腎後性急性腎障害を,腎前性・腎性急性腎障害と鑑別する場合に最も有用な検査はどれか。

  1. a.腎生検
  2. b.尿蛋白定量
  3. c.尿比重測定
  4. d.腹部エコー検査
  5. e.血清クレアチニン値測定

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は急性腎障害、AKIの原因を部位で3つに分けたうえで、腎後性を見分ける検査を選ぶ問題だ。ポイントは「腎後性とはどういう異常なのか」を考えること。異常の性質がわかれば、それをとらえる検査も自然に決まってくる。まず、腎前性・腎性・腎後性の違いを説明できるかな。
医学生医学生
腎前性は脱水などで腎血流が減るもの、腎性は腎臓そのものが傷むもの、腎後性は尿の通り道が詰まるもの、ですよね。
ドクタードクター
その通り。腎前性は脱水・出血・心不全・ショックなどで腎血流が落ち、腎臓自体は正常なのにGFRが下がる。腎性は急性尿細管壊死、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎など腎実質の障害。そして腎後性は、腎盂から尿管、膀胱、尿道までの流出路が閉塞して尿が出せなくなる状態だ。
医学生医学生
腎後性の原因というと、前立腺肥大症による尿閉が思い浮かびます。泌尿器科の実習で、尿閉の患者さんに導尿したら1リットル以上出て驚きました。
ドクタードクター
典型的な経験だね。高齢男性の前立腺肥大症は頻度が高い。ほかにも両側の尿管結石、子宮頸癌や直腸癌など骨盤内悪性腫瘍の尿管浸潤、後腹膜線維症、神経因性膀胱、抗コリン薬による薬剤性尿閉なども原因になる。片腎の人なら一側の尿管閉塞でも起こりうる。では、腎後性の本質はどんな異常だと思う?
医学生医学生
尿の通り道が物理的に塞がっている、という形の異常でしょうか。
ドクタードクター
そう、解剖学的・形態的な異常なんだ。閉塞部より上流には尿がたまるから、腎盂や腎杯が広がる水腎症、尿管の拡張、膀胱のパンパンな拡張として現れる。つまり、尿路の拡張を画像で直接見る検査が一番役に立つ。
医学生医学生
それなら腹部エコーですね。非侵襲的で、ベッドサイドですぐにできます。
ドクタードクター
正解。腹部超音波は被曝も造影剤もいらず、繰り返し行える。両側の水腎症や膀胱の著明な拡張があれば腎後性を強く疑えるし、結石や腫瘍など閉塞の原因、それに腎臓の大きさも同時に見られる。腎臓が萎縮していれば、もともと慢性腎臓病があった可能性を示唆するんだ。AKIを診たらまず行う画像検査と覚えておこう。詳しい原因検索には必要に応じて単純CTを追加する。
医学生医学生
尿比重も迷いました。生理学の講義で、尿の濃縮能で腎前性と腎性を区別すると習ったので。
ドクタードクター
その知識は正しいけれど、使いどころが違うんだ。腎前性では尿細管の濃縮能が保たれ、ADHの作用で水が再吸収されて高比重、目安で1.020以上になる。急性尿細管壊死では濃縮能が壊れて1.010前後の等張尿になりやすい。つまり尿比重は腎前性と腎性を分ける検査で、腎後性では閉塞の時期や程度によって値がばらつき、特徴的な所見にならない。
医学生医学生
尿蛋白定量はどうでしょう。腎臓の病気なら蛋白尿は大事な気がします。
ドクタードクター
蛋白尿は糸球体の障害を反映する。ネフローゼレベルの蛋白尿や赤血球円柱を伴う血尿があれば糸球体性の腎性AKIを疑う手がかりになるけれど、尿路が詰まっているかどうかは蛋白尿の量には表れない。だから腎後性の鑑別には役立たないんだ。
医学生医学生
血清クレアチニンは、AKIなら必ず測りますよね。
ドクタードクター
もちろん。KDIGO基準でも、48時間以内に0.3 mg/dL以上の上昇や、7日以内に基礎値の1.5倍以上への上昇、あるいは尿量の減少でAKIを診断する。ただ、腎前性・腎性・腎後性のどれでも上がるから、AKIがあることはわかっても、どこに原因があるかまでは教えてくれない。
医学生医学生
腎生検は腎性AKIの確定診断に使う検査なので、閉塞の評価には向かないですね。
ドクタードクター
そう。腎生検は急速進行性糸球体腎炎や急性間質性腎炎など、原因疾患を確定して治療方針を決めたいときに行う侵襲的検査で、出血のリスクもある。むしろ腎後性や腎前性をまず除外してから適応を考える検査なんだ。
医学生医学生
整理すると、クレアチニンでAKIを見つけて、エコーで腎後性を除外して、尿検査で腎前性と腎性を分ける、という流れでしょうか。
ドクタードクター
いい流れだね。尿検査では尿比重のほかに、尿中Na、尿浸透圧、ナトリウム排泄分画FENaも腎前性と腎性の鑑別に使う。腎前性ではFENaが1%未満、急性尿細管壊死では2%を超えるのが目安で、利尿薬を使っている人では尿素排泄分画が参考になる。そして臨床で強調したいのは、腎後性AKIは閉塞を解除すれば速やかに回復しうる、ということ。導尿や膀胱カテーテル留置、尿管ステント、腎瘻造設で閉塞を解除するんだ。
医学生医学生
治せるタイプだからこそ、見逃すと不可逆的な障害になってしまうんですね。
ドクタードクター
その通り。もうひとつ、閉塞を解除した後には大量の尿が出る閉塞後利尿が起こることがあるから、脱水や電解質異常に注意して管理しよう。AKIを見たら、まずエコーのプローブを当てる習慣をつけておくといい。

まとめ

急性腎障害(AKI)は、腎血流低下による腎前性、腎実質障害による腎性、尿路閉塞による腎後性に分けて考えます。腎後性AKIの本質は尿の流出路の物理的な閉塞であり、水腎症や膀胱の著明な拡張を非侵襲的・迅速に描出できる腹部超音波検査が鑑別に最も有用で、AKIの初期評価として第一に行います。尿比重や尿中Na、FENaなどの尿検査は主に腎前性と腎性の鑑別に、血清クレアチニンはAKIの診断と重症度評価に用いますが、原因部位の特定はできず、腎生検は腎性AKIの原因精査のための侵襲的検査です。腎後性AKIは導尿や尿管ステントなどで閉塞を解除すれば回復しうる一方、見逃すと不可逆的な腎障害を残すため、早期に必ず除外することが重要です。検査ごとに「何がわかり、何がわからないか」を意識する姿勢は、AKIに限らず効率的で安全な診療の基本になります。

解答・解説

正解はdです

【テーマ】急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の原因を、障害部位によって腎前性・腎性・腎後性に分ける考え方と、腎後性を見分ける検査である。

AKIの3分類

・腎前性:腎臓そのものは正常だが、脱水・出血・心不全・ショックなどで腎血流が減少し、糸球体濾過量(GFR)が低下する。 ・腎性:腎実質の障害による。急性尿細管壊死(虚血や腎毒性薬剤)、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎など。 ・腎後性:腎臓で作られた尿の流出路(腎盂・尿管・膀胱・尿道)が閉塞し、尿が排出できなくなる。両側尿管の閉塞(結石、骨盤内悪性腫瘍の浸潤、後腹膜線維症など)や、膀胱出口部の閉塞による尿閉(前立腺肥大症、神経因性膀胱、抗コリン薬など)が原因となる。片腎の患者では一側の尿管閉塞でも起こりうる。 【設問の考え方】腎後性AKIの本質は「尿路の通過障害」という解剖学的・形態的な異常である。閉塞部より上流には尿がたまり、水腎症(腎盂・腎杯の拡張)、水尿管症、膀胱の著明な拡張(尿閉)として現れる。したがって、尿路の拡張を画像で直接とらえる検査が最も有用であり、なかでも腹部超音波(エコー)検査は非侵襲的で放射線被曝も造影剤も不要、ベッドサイドで迅速に繰り返し行えるため、AKIを診たら最初に行う画像検査として推奨される。一方、血液・尿の生化学検査は主に腎前性と腎性の区別に用いられ、腎後性の診断には決め手とならない。 腎後性AKIは閉塞を解除すれば(導尿・膀胱カテーテル留置、尿管ステント、腎瘻造設など)速やかに腎機能が回復しうる。見逃すと不可逆的な腎障害につながるため、AKIの診療では早期に必ず除外する。

選択肢考察

  1. ×a.  腎生検

    誤り。腎生検は腎組織を採取して病理学的に評価する侵襲的検査であり、腎性AKIのうち、急速進行性糸球体腎炎や急性間質性腎炎など原因疾患の確定診断と治療方針の決定が必要な場合に行う。出血などの合併症リスクがあり、尿路の閉塞の有無を評価する検査ではない。むしろ腎後性・腎前性を除外したうえで適応を考える検査である。

  2. ×b.  尿蛋白定量

    誤り。尿蛋白の定量は、糸球体疾患の有無や程度を評価するのに役立つ。多量の蛋白尿(ネフローゼレベル)や血尿・赤血球円柱を伴えば糸球体性の腎性AKIを疑う手がかりとなるが、尿路の閉塞は蛋白尿の量に反映されないため、腎後性AKIの鑑別には役立たない。

  3. ×c.  尿比重測定

    誤り。尿比重は尿の濃縮の程度を反映し、主に腎前性と腎性の鑑別に用いる。腎前性では尿細管の濃縮能が保たれ、ADH(抗利尿ホルモン)の作用で水が再吸収されるため高比重(目安1.020以上)となる。腎性(急性尿細管壊死)では濃縮能が障害され、等張尿(比重1.010前後)になりやすい。腎後性では閉塞の時期や程度でさまざまな値をとり、特徴的な所見とはならないため、腎後性の鑑別には有用でない。

  4. ○d.  腹部エコー検査

    正しい。腹部超音波検査では、腎盂・腎杯の拡張(水腎症)、尿管の拡張、膀胱内の多量の尿貯留(尿閉)を直接描出でき、尿路の閉塞を非侵襲的かつ迅速に確認できる。両側の水腎症や膀胱の著明な拡張があれば腎後性AKIを強く疑う。さらに結石や腫瘍など閉塞の原因、腎臓の大きさ(萎縮していれば慢性腎臓病の存在を示唆)も同時に評価できる。被曝や造影剤による腎障害の心配がなく、AKIの初期評価として第一に行うべき画像検査である。原因の詳しい評価には、必要に応じて単純CTを追加する。

  5. ×e.  血清クレアチニン値測定

    誤り。血清クレアチニン値はGFRの低下を反映し、AKIの診断と重症度評価に用いられる(KDIGO基準では48時間以内に0.3 mg/dL以上の上昇、または7日以内に基礎値の1.5倍以上への上昇、あるいは尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上持続でAKIと診断)。しかし腎前性・腎性・腎後性のいずれでも上昇するため、AKIの存在はわかっても原因部位の鑑別はできない。

腎前性と腎性の鑑別に用いる尿検査の目安

・尿比重:腎前性 >1.020、腎性(急性尿細管壊死) 約1.010 ・尿浸透圧:腎前性 >500 mOsm/kg、腎性 <350 mOsm/kg ・尿中Na濃度:腎前性 <20 mEq/L、腎性 >40 mEq/L ・ナトリウム排泄分画(FENa):腎前性 <1%、腎性 >2%(利尿薬使用中は尿素排泄分画〈FEUN〉が参考になり、腎前性 <35%) ・BUN/クレアチニン比:腎前性で20以上に上昇しやすい ・尿沈渣:腎前性ではほぼ正常(硝子円柱程度)、急性尿細管壊死では顆粒円柱・尿細管上皮細胞、糸球体腎炎では赤血球円柱

腎後性AKIの主な原因

・上部尿路(両側または片腎での閉塞):両側尿管結石、骨盤内悪性腫瘍(子宮頸癌、直腸癌、膀胱癌など)による尿管浸潤、後腹膜線維症、手術時の尿管損傷 ・下部尿路(膀胱出口部閉塞・尿閉):前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱(糖尿病、脊髄障害)、抗コリン薬や抗ヒスタミン薬など薬剤性尿閉 ・高齢男性の前立腺肥大症に伴う慢性尿閉は日常診療で頻度が高い。

腎後性AKIの治療

・尿閉:導尿・膀胱カテーテル留置 ・尿管閉塞:尿管ステント留置、経皮的腎瘻造設 ・閉塞解除後は多尿(閉塞後利尿)となることがあり、脱水や電解質異常に注意する。

POINT

・AKIは腎前性・腎性・腎後性に分けて考える。 ・腎後性AKIの診断には、尿路の拡張(水腎症・尿閉)をみる腹部超音波検査が第一選択。 ・尿比重・尿浸透圧・尿中Na・FENaは主に腎前性と腎性の鑑別に用いる。 ・血清クレアチニンはAKIの診断・重症度評価には使うが、原因部位の鑑別はできない。 ・腎後性AKIは閉塞解除で回復しうるため、早期に必ず除外する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。