医師の任務はどこまで?―医師法第1条が描く「公衆衛生」への道筋
第115回医師国家試験 E問題 第7問
国試問題にチャレンジ
医師法第1条の条文を示す。 「医師は,医療と保健指導を掌ることによって,(ア)の向上と増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するものとする。」 (ア)に入るのはどれか。
- a.公衆衛生
- b.社会保障
- c.生命科学
- d.適正診療
- e.臨床医学
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
医師法第1条は「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」と医師の任務を定めています。手段は医療と保健指導、直接の目標は公衆衛生の向上・増進、最終目的は国民の健康な生活の確保という三段構成で、医師の役割が個々の治療にとどまらず予防や健康増進を通じて社会全体の健康に及ぶことを示しています。歯科医師法・薬剤師法の第1条も同じ構造をもつ一方、医療提供体制の確保を目的とする医療法第1条とは性格が異なるため混同に注意が必要です。業務独占、応招義務、異状死体の届出、診療録の保存など医師法の主要条文とあわせて整理しておくと、医事法規の問題に強くなり、医師としての職業的責任を理解する土台にもなります。
解答・解説
正解はaです
医師法は、医師の任務、免許、試験、臨床研修、業務上の義務などを定めた法律であり、その第1条は「医師の任務」を規定している。条文は「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」であり、(ア)には「公衆衛生」が入る。 この条文は次の三段構成になっている。 ・手段:医療と保健指導を担う(掌る)こと ・直接の目標:公衆衛生の向上と増進に寄与すること ・最終目的:国民の健康な生活を確保すること つまり医師の役割は、目の前の患者を治療すること(医療)にとどまらず、健康の保持増進や疾病予防のための指導(保健指導)も通じて、社会全体の健康水準を引き上げることにある、という考え方が示されている。「向上及び増進」という語と組み合わさる言葉としては、日本国憲法第25条第2項(国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)とも共通する「公衆衛生」が自然であり、文脈からも推測できる。ただし本問は条文の暗記を問う問題であるため、第1条の文言はそのまま覚えておくのが確実である。
選択肢考察
- ○a. 公衆衛生
正しい。医師法第1条は「医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と定めている。公衆衛生とは、地域社会の組織的な取り組みによって疾病を予防し、健康を保持増進し、生命を延長させる科学と技術を指す。個々の患者への医療と、集団への保健指導の両方を通じて社会全体の健康に貢献するという医師の任務を端的に表す語である。
- ×b. 社会保障
誤り。社会保障は、病気・けが・老齢・失業などで生活の安定が損なわれたときに、公的責任で所得保障や医療・介護・福祉などの給付を行い、国民の生活を支える制度の総称である(社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生などから構成される)。制度の整備・運営の主体は国や地方公共団体であり、医師が医療と保健指導によって直接その「向上と増進」に寄与する対象として医師法第1条に記されているものではない。
- ×c. 生命科学
誤り。生命科学は生命現象を研究対象とする学問分野であり、医師が研究を通じてその発展に貢献することはありうるが、医師法第1条の文言ではない。第1条は学問の進歩ではなく、医療と保健指導を通じて国民の健康な生活を確保するという社会的役割を規定している。
- ×d. 適正診療
誤り。「適正診療」は保険診療の適正化などの文脈で使われる言葉であり、医師法第1条には含まれない。また、診療は主に病気の発見と治療にかかわる行為であって、「医療と保健指導を掌ることによって」それを向上・増進させる、という文の構造にも合わない。
- ×e. 臨床医学
誤り。臨床医学は患者の診断・治療を扱う医学の領域であり、医師法第1条の文言ではない。条文が求めているのは臨床医学という学問領域の発展ではなく、医療に加えて保健指導(予防・健康増進)も担うことで集団全体の健康水準を高めることである。
医師法の主な規定
・第1条:医師の任務(医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する) ・第2条:医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。 ・第16条の2:診療に従事しようとする医師は、2年以上の臨床研修を受けなければならない。 ・第17条:医師でなければ医業をしてはならない(業務独占)。第18条:医師でなければ医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない(名称独占)。 ・第19条:応招義務、診断書等の交付義務。 ・第20条:無診察治療等の禁止。 ・第21条:異状死体等の届出義務(24時間以内に所轄警察署へ)。 ・第22条:処方箋の交付義務。 ・第23条:療養方法等の指導義務。 ・第24条:診療録の記載と5年間の保存義務。
他の医療関係職種の法律の第1条との比較
・歯科医師法第1条:歯科医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する(医師法とほぼ同じ構造)。 ・薬剤師法第1条:調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する。 ・保健師助産師看護師法第1条:保健師、助産師及び看護師の資質を向上し、もって医療及び公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする。
医療法第1条(混同に注意)
医療法は医療提供体制について定める法律で、第1条は、医療を受ける者による適切な選択の支援、医療の安全の確保、病院・診療所・助産所の開設と管理、医療提供施設相互間の機能分担と業務連携の推進などに必要な事項を定め、医療を受ける者の利益の保護と、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、国民の健康の保持に寄与することを目的としている。医師法第1条が「医師の任務」を定めるのに対し、医療法第1条は「法律の目的」を定めている点が異なる。
日本国憲法第25条
第1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(生存権)。 第2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
POINT
・医師法第1条:「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」 ・手段は「医療と保健指導」、目標は「公衆衛生の向上と増進」、最終目的は「国民の健康な生活の確保」。 ・歯科医師法・薬剤師法の第1条も「公衆衛生の向上及び増進に寄与」という同じ構造をもつ。 ・医療法第1条(医療提供体制に関する法律の目的)と混同しない。
