「誰に」「何を」示す基準か―日本人の食事摂取基準の骨格をつかむ
第115回医師国家試験 E問題 第22問
国試問題にチャレンジ
日本人の食事摂取基準について正しいのはどれか。
- a.個人には適用されない。
- b.65歳未満を対象とする。
- c.妊娠や授乳期間については扱わない。
- d.目標とするBMIは18~20の範囲である。
- e.エネルギーと栄養素の摂取量の基準を示すものである。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
日本人の食事摂取基準は、健康増進法に基づき厚生労働大臣が定める、エネルギーと栄養素の摂取量の基準であり、おおむね5年ごとに改定されます。対象は健康な個人と集団の両方で、乳児から高齢者までの全年齢を扱い、妊婦・授乳婦には付加量が設定されています。エネルギーは推定エネルギー必要量と目標BMI(18〜49歳18.5〜24.9、50〜64歳20.0〜24.9、65歳以上21.5〜24.9)で評価し、栄養素は推定平均必要量・推奨量・目安量・耐容上限量・目標量の5指標で示されます。高齢者でBMIの下限が高いのはフレイル予防の観点によるものです。「誰に」「何を」示す基準かという骨格を押さえることは、栄養指導や給食管理、生活習慣病予防の実践を理解する土台になります。
解答・解説
正解はeです
日本人の食事摂取基準は、健康増進法に基づいて厚生労働大臣が定めるもので、国民の健康の保持・増進と生活習慣病の予防(2015年版以降は重症化予防も含む。2020年版からは高齢者のフレイル予防も視野に入れている)を目的に、エネルギーと各栄養素について「1日あたりどれだけ摂取するのが望ましいか」の基準を示している。おおむね5年ごとに改定され、本試験当時は2020年版(2020~2024年度使用)、現在は2025年版(2025~2029年度使用)が用いられている。 本問を解くには、次の3点を押さえておけばよい。 (1) 対象:健康な個人と健康な集団。高血圧・脂質異常・高血糖・腎機能低下などのリスクはあっても、おおむね自立した日常生活を営む者も含む。 (2) 年齢・ライフステージ:乳児(0~5か月、6~11か月)から小児、成人、高齢者(65~74歳、75歳以上)まで全年齢を扱い、妊婦・授乳婦についても付加量などの基準を設けている。 (3) 内容:エネルギー(推定エネルギー必要量と、エネルギー収支の指標としての目標BMI)と、たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなどの栄養素の摂取量の基準である。 この枠組みに照らすと、個人を除外する、65歳以上や妊産婦を除外するといった記述はいずれも誤りで、エネルギーと栄養素の摂取量の基準を示すという記述だけが正しい。
選択肢考察
- ×a. 個人には適用されない。
誤り。食事摂取基準は健康な個人にも健康な集団にも用いる。個人に使う場合は、食事調査などで習慣的な摂取量を推定し、推定平均必要量や推奨量と比べて不足のおそれを評価したり、耐容上限量を超えていないか確認したりして、食事改善の計画を立てる。集団に使う場合は、摂取量の分布と基準値を比べ、不足や過剰の者の割合を見積もる。給食施設での献立作成や栄養指導など、個人を対象とした場面でも広く使われている。
- ×b. 65歳未満を対象とする。
誤り。乳児から高齢者までのすべての年齢区分について、性別ごとに基準を示している。高齢者は65~74歳と75歳以上に分けられており、高齢者の低栄養やフレイル(加齢に伴い心身の予備能が低下し、要介護に移行しやすい状態)を防ぐ観点から、たんぱく質の目標量の下限を引き上げるなどの配慮もされている。
- ×c. 妊娠や授乳期間については扱わない。
誤り。妊婦と授乳婦については、同じ年齢の非妊娠女性の値に上乗せする「付加量」の形で基準が示されている。妊婦のエネルギーやたんぱく質などの付加量は妊娠初期・中期・後期に分けて設定されている。たとえば鉄は胎児の発育や循環血液量の増加のため妊娠中に付加量が大きく、葉酸も胎児の神経管閉鎖障害予防の観点から妊娠期の付加量が設けられている。
- ×d. 目標とするBMIは18~20の範囲である。
誤り。目標とするBMI(body mass index:体重kg÷身長mの2乗)は、エネルギー摂取量と消費量のつり合いを評価する指標として成人(18歳以上)に示されている。年齢により下限が異なり、18~49歳は18.5~24.9、50~64歳は20.0~24.9、65歳以上(65~74歳、75歳以上)は21.5~24.9である。上限はどの年齢でも24.9であり、「18~20」では範囲が低すぎるうえ、やせの領域を目標とすることになってしまう。高齢者で下限が高めに設定されているのは、低栄養やフレイルを予防するためである。
- ○e. エネルギーと栄養素の摂取量の基準を示すものである。
正しい。食事摂取基準はまさにエネルギーと栄養素の摂取量の基準である。エネルギーについては、性・年齢区分・身体活動レベル(低い・ふつう・高い)別の推定エネルギー必要量を参考値として示し、実際の過不足は目標BMIや体重変化で評価する。栄養素については、たんぱく質・脂質・炭水化物・食物繊維、ビタミン、ミネラルなどについて、推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量の5種類の指標を用いて基準を示している。また、たんぱく質・脂質・炭水化物がエネルギー全体に占める割合(エネルギー産生栄養素バランス)も目標量として示されている。
食事摂取基準の位置づけ
健康増進法に基づき厚生労働大臣が定める。おおむね5年ごとに改定され、2020年版(2020~2024年度)、2025年版(2025~2029年度)と続いている。国民健康・栄養調査、特定保健指導、給食管理、栄養指導などの基礎資料として用いられる。
対象
健康な個人と集団。生活習慣病などに関する危険因子を持っていても、おおむね自立した日常生活を営んでいる者や、フレイルに関する危険因子を持つ高齢者も含む。疾病を持つ者の治療を目的とする場合は、各疾患の診療ガイドラインなどを優先し、食事摂取基準はその基本的な考え方を参考として使う位置づけである。
エネルギーの指標
・推定エネルギー必要量:エネルギー収支がゼロ(体重が維持される)と推定される1日の摂取量。性・年齢・身体活動レベルで異なり、参考表として示される。 ・目標とするBMI(18歳以上):18~49歳 18.5~24.9、50~64歳 20.0~24.9、65歳以上 21.5~24.9。 エネルギーの過不足は摂取量そのものではなく、体重の変化やBMIで評価するのが基本である。
栄養素の5指標
・推定平均必要量(EAR:estimated average requirement):集団の50%が必要量を満たすと推定される量。 ・推奨量(RDA:recommended dietary allowance):集団のほとんど(97~98%)が必要量を満たすと推定される量。 ・目安量(AI:adequate intake):推定平均必要量・推奨量を決めるだけの科学的根拠が十分でない場合に、良好な栄養状態を維持するのに十分な量として設定される。 ・耐容上限量(UL:tolerable upper intake level):健康障害のリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。 ・目標量(DG:tentative dietary goal for preventing life-style related diseases):生活習慣病の発症予防のために当面の目標とすべき量(例:食塩相当量、食物繊維、飽和脂肪酸、エネルギー産生栄養素バランス)。 前の3つは不足の回避、耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避、目標量は生活習慣病の予防が目的である。
ライフステージ別の配慮
・乳児は0~5か月、6~11か月(一部は6~8か月、9~11か月)に分け、主に母乳中の濃度と哺乳量から目安量を設定する。 ・妊婦は初期・中期・後期、授乳婦はそれぞれ付加量を示す。 ・高齢者は65~74歳、75歳以上に分け、フレイル予防の観点を取り入れている。
POINT
・日本人の食事摂取基準は、健康な個人と集団を対象に、エネルギーと栄養素の摂取量の基準を示したもの(健康増進法に基づき、おおむね5年ごとに改定)。 ・全年齢(乳児~高齢者)を対象とし、妊婦・授乳婦には付加量が設定されている。 ・エネルギーは推定エネルギー必要量と目標BMIで評価する。目標BMIは18~49歳 18.5~24.9、50~64歳 20.0~24.9、65歳以上 21.5~24.9。 ・栄養素の指標は、推定平均必要量・推奨量・目安量(不足回避)、耐容上限量(過剰回避)、目標量(生活習慣病予防)の5つ。
