「半分」と「ほとんど」の差は2SD―概念図で読み解く食事摂取基準の推奨量
第117回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
食事摂取基準の指標の概念図を示す。 ほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量(推奨量)はどれか。

- a.A
- b.B
- c.C
- d.D
- e.E
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
日本人の食事摂取基準の概念図では、横軸に習慣的な摂取量をとり、左側の曲線で不足している人の割合、右側の曲線で過剰摂取による健康障害のリスクを示します。不足の割合が0.5となる点が推定平均必要量で、そこに標準偏差の2倍を上乗せし不足の割合が約0.025となる点が推奨量であり、集団のほとんど(97〜98%)の人が必要量を満たすと推定される量です。推定平均必要量・推奨量を算定できない栄養素では目安量が設定され、過剰摂取の上限として耐容上限量が定められています。生活習慣病予防を目的とする目標量は、不足や過剰の割合に基づかないため概念図には描かれません。各指標が「何を避けるための、何%の人が満たす量か」を理解しておくことは、個人や集団の栄養評価・栄養指導を正しく行う土台になります。
解答・解説
正解はbです
日本人の食事摂取基準は、健康な個人・集団がエネルギーと各栄養素をどれだけ摂取すればよいかを示す指標で、厚生労働省が5年ごとに改定している。提示図はその各指標の位置関係を示す概念図である。
図の読み方
・横軸は習慣的な摂取量で、左ほど少なく、右ほど多い。 ・左の縦軸と左側の下降曲線は「不足している人の割合(不足のリスク)」を表す。摂取量が増えるにつれ、必要量を満たせない人の割合は1.0から0に向かって減少する。 ・右の縦軸と右側の上昇曲線は「過剰摂取している人の割合(過剰摂取による健康障害のリスク)」を表す。摂取量がある値を超えると、健康障害のリスクが0から上昇していく。 ・両曲線がともに0である中央の範囲が、不足・過剰いずれのリスクもほぼない摂取量である。
推奨量の考え方
人によって必要量にはばらつきがあり、集団内の必要量はほぼ正規分布すると考えられる。分布の中央(50%の人が必要量を満たし、50%の人が満たさない量)が推定平均必要量であり、そこから標準偏差の2倍分を上乗せした量が推奨量である。正規分布では平均+2標準偏差を超える必要量をもつ人は約2.5%しかいないため、推奨量を摂取すれば、ほとんど(約97〜98%)の人が必要量を満たすことになる。図上では、不足している人の割合が0.025に下がった点がこれにあたる。 設問は「ほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量」すなわち推奨量を問うており、不足の割合が0.025となる点Bを選べばよい。
選択肢考察
- ×a. A
誤り。点Aは不足している人の割合が0.5となる摂取量であり、推定平均必要量(estimated average requirement:EAR)を示す。この量を摂取しても、集団の半数の人は必要量を満たせない。推奨量を算出する際の基準となる値であり、推奨量そのものではない。
- ○b. B
正しい。点Bは不足している人の割合が0.025(2〜3%)まで下がった摂取量であり、推奨量(recommended dietary allowance:RDA)を示す。推定平均必要量に標準偏差の2倍を加えた値として理論上定義され、集団のほとんど(97〜98%)の人が必要量を満たすと推定される量である。実際の算定では、個人間の変動係数をもとにした推奨量算定係数(多くの栄養素で1.2程度)を推定平均必要量に乗じて求める。
- ×c. C
誤り。点Cは不足している人の割合が0となる領域にあり、目安量(adequate intake:AI)を示す。目安量は、科学的根拠が不十分で推定平均必要量・推奨量を算定できない栄養素について設定される指標で、一定の栄養状態を維持するのに十分な量とされる。実際には、特定の集団で不足状態をほとんど認めない人々の摂取量の中央値などをもとに決められる。推奨量より高い位置に描かれるのは、目安量を摂取していれば不足のリスクは非常に低いと考えられるためである。
- ×d. D
誤り。点Dは過剰摂取による健康障害のリスクが0から上昇し始める境目で、耐容上限量(tolerable upper intake level:UL)を示す。健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限であり、これを超えて摂取すると過剰摂取による健康障害が生じる潜在的なリスクが存在する。
- ×e. E
誤り。点Eは耐容上限量(点D)をさらに超え、過剰摂取による健康障害のリスクが現実に生じている摂取量の一例を示しているにすぎず、食事摂取基準で定義された指標には該当しない。なお、食事摂取基準のもう一つの指標である目標量は、性質が異なるためこの概念図には描かれない(補足参照)。
食事摂取基準の5つの指標(栄養素)
1. 摂取不足の回避を目的とするもの ・推定平均必要量(EAR): 集団の50%の人が必要量を満たすと推定される摂取量 ・推奨量(RDA): 集団のほとんど(97〜98%)の人が必要量を満たすと推定される摂取量。推定平均必要量を算定できる栄養素で設定される ・目安量(AI): 推定平均必要量・推奨量を算定するだけの科学的根拠が得られない場合に、一定の栄養状態を維持するのに十分な量として設定される 2. 過剰摂取による健康障害の回避を目的とするもの ・耐容上限量(UL): 健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限 3. 生活習慣病の発症予防を目的とするもの ・目標量(DG): 生活習慣病の発症予防のために、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量(または範囲)。疫学研究などの知見をもとに設定される。例として、食塩相当量(減らす方向)、食物繊維・カリウム(増やす方向)、エネルギー産生栄養素バランス(たんぱく質・脂質・炭水化物の構成比を範囲で示す)がある 目標量は不足や過剰の「割合」を軸とする考え方とは異なり、生活習慣病のリスクとの関連で決められるため、提示図のような概念図には表せない。
エネルギーの指標
エネルギーについては、摂取量と消費量のバランス(エネルギー収支)を評価する指標として、成人ではBMI(body mass index)が用いられ、年齢区分ごとに目標とするBMIの範囲が示されている。参考値として推定エネルギー必要量も示される。
活用の考え方
個人の食事改善では、摂取量が推定平均必要量を下回れば不足の可能性が高く、推奨量付近かそれ以上であれば不足の可能性は低いと判断する。耐容上限量を超えていれば過剰摂取の可能性があり、摂取量を減らす。
POINT
・推定平均必要量: 不足している人の割合が50%となる量(図のA) ・推奨量: 推定平均必要量+2標準偏差。不足している人の割合が約2.5%(ほとんどの人が必要量を満たす)となる量(図のB) ・目安量: 推定平均必要量・推奨量を算定できない栄養素に設定。不足のリスクがほぼない量(図のC) ・耐容上限量: 過剰摂取による健康障害のリスクがないとみなされる上限(図のD) ・目標量は生活習慣病の発症予防のための指標で、概念図には描かれない
