寝返りでぐるぐる、でも耳は聞こえる―耳石の迷子が起こす良性発作性頭位めまい症
第115回医師国家試験 E問題 第10問
国試問題にチャレンジ
良性発作性頭位めまい症について正しいのはどれか。
- a.難聴を伴う。
- b.小児に好発する。
- c.一過性の意識消失を伴う。
- d.頭位変換時に眼振を示す。
- e.浮遊耳石は半規管由来である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は最も頻度の高い末梢性めまいで、卵形嚢からはがれた耳石が半規管に迷入(半規管結石症)またはクプラに付着(クプラ結石症)することで生じます。寝返りや起き上がりなどの頭位変換で誘発される1分以内の回転性めまいと、頭位変換時の眼振が特徴で、後半規管型ではDix-Hallpike法、外側半規管型ではsupine roll testで診断します。難聴などの蝸牛症状や意識障害は伴わず、中高年女性に多く、小児ではまれです。耳石の由来は半規管ではなく耳石器である点が頻出のひっかけであり、治療にはEpley法などの頭位治療が有効です。蝸牛症状・持続時間・神経症状の有無でめまいを整理する姿勢は、救急や外来で中枢性めまいを見逃さないための基本となります。
解答・解説
正解はdです
良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)は、めまいを主訴に受診する患者の中で最も頻度が高い末梢性(内耳性)めまいである。
病態
内耳の耳石器(卵形嚢)の平衡斑にのっている耳石(炭酸カルシウムの結晶)が何らかの理由ではがれ、半規管内に迷入して浮遊する(半規管結石症)、あるいはクプラ(半規管膨大部の感覚装置)に付着する(クプラ結石症)ことで、頭の位置を変えるたびに異常なリンパ流やクプラの偏位が生じ、回転性めまいと眼振が誘発される。後半規管に起こる型が最も多く、次いで外側(水平)半規管型が多い。
臨床像の要点
・寝返り、起き上がり、上を向くなど特定の頭位変換で誘発される回転性めまい ・めまいは数秒~数十秒、長くても1分以内でおさまり、同じ頭位を繰り返すと軽くなる(疲労現象) ・蝸牛症状(難聴・耳鳴・耳閉感)を伴わない ・意識障害や脳神経症状・四肢の神経症状を伴わない ・中高年、特に女性に多い
解き方
本問は、BPPVを「頭位で誘発される短時間の回転性めまい+頭位変換で出現する眼振、蝸牛症状なし、中枢症状なし」と整理できていれば解ける。浮遊耳石の由来が「半規管」ではなく「耳石器(卵形嚢)」である点は、名前の印象から誤りやすいので注意する。
選択肢考察
- ×a. 難聴を伴う。
誤り。BPPVは前庭系(半規管)の障害であり、聴覚をつかさどる蝸牛は障害されないため、難聴・耳鳴・耳閉感などの蝸牛症状は伴わない。めまいに難聴を伴う場合は、メニエール病、突発性難聴(めまいを伴うもの)、内耳炎、外リンパ瘻、聴神経腫瘍などを考える。蝸牛症状の有無はBPPVと他の内耳性めまいとを鑑別する重要な手がかりである。
- ×b. 小児に好発する。
誤り。BPPVは中高年に多く、特に高齢女性に多い。加齢による耳石器の変性や、骨粗鬆症などとの関連が指摘されている。小児ではまれである。小児の反復性めまいでは、良性発作性めまい(片頭痛関連の病態とされる)などを考える。
- ×c. 一過性の意識消失を伴う。
誤り。BPPVは内耳の末梢性めまいであり、脳の機能は保たれているため意識消失は起こらない。めまいとともに意識消失をきたす場合は、椎骨脳底動脈循環不全などの中枢性疾患や、不整脈・起立性低血圧などによる失神(前失神性めまい)を考える必要がある。
- ○d. 頭位変換時に眼振を示す。
正しい。BPPVの診断の中心は、頭位・頭位変換による眼振の誘発である。最も多い後半規管型では、Dix-Hallpike法(座位から患側を下にして頭を懸垂位に倒す検査)で、数秒の潜時の後に上眼瞼向きの成分を伴う回旋性眼振が出現し、めまいとともに次第に強くなってから減衰・消失する。座位に戻すと逆向きの眼振がみられる。外側半規管型では仰臥位で左右に頭を向ける検査(supine roll test)で水平性の方向交代性眼振が出現する。なお、BPPVでは頭位変換眼振検査以外の前庭機能検査(温度眼振検査など)では異常がみられないことが多い。
- ×e. 浮遊耳石は半規管由来である。
誤り。耳石はもともと耳石器(卵形嚢・球形嚢)の平衡斑上にある耳石膜に含まれる炭酸カルシウムの結晶である。BPPVでは主に卵形嚢の耳石がはがれ、それが半規管内に入り込んで浮遊したりクプラに付着したりする。半規管は浮遊耳石が症状を起こす「場所」であり、耳石の「由来」ではない。
めまいの分類
・末梢性(内耳・前庭神経):BPPV、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴に伴うめまいなど。回転性めまいが多く、眼振は一方向性で、固視により抑制されやすい。意識障害や脳神経症状を伴わない。 ・中枢性(脳幹・小脳):脳梗塞、脳出血、椎骨脳底動脈循環不全など。構音障害、複視、運動失調、感覚障害などの神経症状を伴うことがあり、垂直性眼振や注視方向性眼振がみられる。
主な末梢性めまいの比較
・BPPV:頭位変換で誘発、数秒~1分以内、蝸牛症状なし ・メニエール病:数十分~数時間の回転性めまい発作を反復、変動する低音域の感音難聴・耳鳴・耳閉感を伴う(内リンパ水腫) ・前庭神経炎:先行する上気道感染などの後に突然発症し、数日続く激しい回転性めまい、蝸牛症状なし、温度眼振検査で患側の半規管麻痺
誘因・背景
加齢のほか、頭部外傷、長期臥床、内耳疾患(前庭神経炎、突発性難聴など)の後に発症することがある。原因が明らかでない特発性のものが多い。
治療
自然に軽快することが多いが、浮遊耳石を半規管から卵形嚢へ戻す頭位治療(耳石置換法)が有効である。後半規管型ではEpley法がよく用いられる。外側半規管型ではLempert法(barbecue rotation)などが行われる。めまい・悪心が強い場合には抗めまい薬や制吐薬を対症的に用いる。
POINT
・BPPVは最も頻度の高い末梢性めまいで、中高年女性に多い。 ・頭位変換で誘発される数秒~1分以内の回転性めまいと、頭位変換時の眼振が特徴。 ・難聴・耳鳴などの蝸牛症状や意識障害、神経症状は伴わない。 ・浮遊耳石は耳石器(卵形嚢)由来で、半規管(多くは後半規管)に迷入して症状を起こす。 ・診断はDix-Hallpike法など、治療はEpley法などの頭位治療。
