StudyMed医師国家試験

在宅で人工呼吸器を守るのは誰か―訪問看護の「指示書・保険・診療の補助」を整理する

第115回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第115回 C問題 第7問

 訪問看護について正しいのはどれか。

  1. a.自己負担は発生しない。
  2. b.主治医の指示とは独立して行われる。
  3. c.介護保険よりも医療保険を優先して利用する。
  4. d.要介護認定を受けていない者は対象外である。
  5. e.人工呼吸器の管理は看護師が在宅で行う診療補助行為に含まれる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は訪問看護の制度を問う問題だ。押さえるべき軸は4つ。誰の指示で動くのか、費用はどうなるのか、介護保険と医療保険のどちらを使うのか、そして看護師が在宅でどこまでの医療行為を担えるのか。この順に見ていこう。
医学生医学生
在宅医療の実習で訪問看護に同行したことがあります。看護師さんがかなり独立して動いている印象でした。
ドクタードクター
現場ではそう見えるよね。でも、訪問看護ステーションの訪問看護は、主治医が交付する「訪問看護指示書」に基づいて始まるんだ。有効期間は最長6か月で、看護師は訪問看護報告書で主治医に経過を報告する。主治医の指示から独立して行うものではないんだよ。
医学生医学生
なるほど、実習で見た看護師さんも、帰ってから報告書を書いて主治医に送っていました。あれが連携の仕組みだったんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。病状が急に悪化したときには特別訪問看護指示書が出て、一時的に頻回の訪問ができるようになる。次は費用だ。訪問看護の自己負担はどうなっていると思う?
医学生医学生
医療保険でも介護保険でも、普通は自己負担がありますよね。訪問看護だけ無料というのは考えにくいです。
ドクタードクター
その通り。介護保険なら原則1割、所得によって2割か3割。医療保険なら年齢や保険に応じて1〜3割の負担がある。難病医療費助成などの公費を併用すれば軽くなることはあるけど、一律に自己負担がないわけではない。では、介護保険と医療保険はどちらが優先されるかな。
医学生医学生
医療行為をするなら、医療保険が優先されそうな気がします。
ドクタードクター
そこが引っかけポイント。実は逆で、要介護・要支援認定を受けている人は原則として介護保険が優先されるんだ。ただし例外があって、末期の悪性腫瘍やALSなど厚生労働大臣が定める疾病等、人工呼吸器を使っている状態、特別訪問看護指示書が出ている期間、精神科訪問看護の場合は医療保険になる。
医学生医学生
介護保険優先が原則で、重い医療ニーズのある人は医療保険に回る、と覚えればいいですね。じゃあ、要介護認定を受けていない人は訪問看護を使えないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。介護保険の訪問看護は使えないけれど、医療保険の訪問看護なら使える。たとえば医療的ケアが必要な子ども、40歳未満の難病患者さん、認定を受けていない高齢者などだ。だから「要介護認定がなければ対象外」というのは誤りだよ。
医学生医学生
小児科の実習で、人工呼吸器をつけたまま退院する医療的ケア児の話を聞きました。その子たちも訪問看護を受けているわけですね。
ドクタードクター
まさにそう。そこで正解の話になる。保健師助産師看護師法では、看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」とされている。在宅での人工呼吸器の管理は、医師の指示のもとで行う診療の補助に含まれる。だから人工呼吸器の管理は訪問看護で行える、という記述が正しいんだ。
医学生医学生
具体的には、看護師さんは呼吸器の何を見ているんですか。
ドクタードクター
作動状態や設定の確認、回路の管理、気管切開部のケア、喀痰吸引、アラームなどトラブル時の対応、そして家族への指導だね。神経筋疾患の患者さんや医療的ケア児では、家族が日常のケアを担う場面も多いから、家族指導はとても大切なんだ。
医学生医学生
人工呼吸器以外にも、診療の補助として在宅でできることはありますか。
ドクタードクター
たくさんあるよ。在宅酸素療法の管理、中心静脈栄養や点滴の管理、胃瘻や尿道カテーテルの管理、褥瘡の処置、服薬管理などだ。療養上の世話としては清潔の保持や排泄・食事の援助、さらに在宅での看取りの支援も訪問看護の大事な役割だよ。
医学生医学生
まとめると、訪問看護は主治医の指示書に基づいて行い、自己負担はあり、原則は介護保険優先、認定がなくても医療保険で使える、そして人工呼吸器管理は診療の補助として在宅でできる、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点。将来、皆さんが主治医として訪問看護指示書を書く立場になる。指示書の内容が不十分だと、看護師さんが必要なケアを行えないこともある。疾患によって医療保険か介護保険かが変わるから、正確な病名や状態の記載も大切だ。そして、ケアマネジャー、薬剤師、リハビリ職、ヘルパーなどとの多職種連携の中心に訪問看護がいることも覚えておこう。
医学生医学生
指示書を書くのは医師の仕事なんですね。制度を知らないと、患者さんの在宅生活を支えられないと実感しました。

まとめ

訪問看護は、看護師などが居宅を訪れて療養上の世話や診療の補助を行うサービスで、訪問看護ステーションでは主治医の訪問看護指示書に基づいて提供されます。介護保険・医療保険のいずれでも自己負担があり、要介護・要支援認定者では原則として介護保険が優先されますが、末期癌やALSなど厚生労働大臣が定める疾病等、特別訪問看護指示書の期間、精神科訪問看護では医療保険が使われます。要介護認定がなくても、医療的ケア児や若年の難病患者などは医療保険で利用できます。人工呼吸器の管理、喀痰吸引、中心静脈栄養の管理などは、医師の指示に基づく診療の補助として在宅でも実施できます。主治医として指示書を作成し多職種と連携するためにも、訪問看護の仕組みを理解しておくことは在宅医療を担う医師に欠かせません。

解答・解説

正解はeです

訪問看護とは、看護師などが患者の自宅(居宅)を訪れ、療養上の世話や診療の補助を行うサービスである。本問は、その制度の骨格を問うている。押さえるべき点は次の4つである。 ①主治医の指示のもとで行われる:訪問看護ステーションの訪問看護は、主治医が交付する「訪問看護指示書」に基づいて始まる。看護師が独自の判断だけで医療的な処置を始めるわけではない。 ②費用は保険から給付され、自己負担がある:介護保険・医療保険のどちらで利用しても、原則として所定の割合の自己負担が生じる。 ③介護保険が優先される:要介護・要支援認定を受けている者は、原則として介護保険で利用する。ただし、例外として医療保険で利用する場合がある。 ④介護保険の対象でなくても利用できる:要介護認定を受けていない者(40歳未満の者や、要介護認定を受けていない高齢者など)も、医療保険を使えば利用できる。 そのうえで、保健師助産師看護師法では、看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」とされている。在宅での人工呼吸器の管理、在宅酸素療法、中心静脈栄養や点滴の管理、喀痰吸引、胃瘻(胃ろう)や尿道カテーテルの管理、褥瘡(床ずれ)の処置などは、医師の指示のもとで行う診療の補助として訪問看護で実施できる。

選択肢考察

  1. ×a.  自己負担は発生しない。

    訪問看護は、介護保険で利用すれば原則1割(所得に応じて2割または3割)、医療保険で利用すれば加入している保険と年齢に応じた割合(1〜3割)の自己負担が生じる。また、交通費などが利用料として別途かかることもある。難病医療費助成などの公費負担医療を併用すると負担が軽くなる場合はあるが、制度として一律に自己負担が生じないわけではない。

  2. ×b.  主治医の指示とは独立して行われる。

    訪問看護ステーションからの訪問看護は、主治医が交付する訪問看護指示書(有効期間は最長6か月)に基づいて行われる。看護師は訪問の結果を訪問看護報告書などで主治医に報告し、互いに連携しながらケアを進める。病状が急に悪化したときなどには、特別訪問看護指示書が交付され、一時的に頻回の訪問ができる。いずれにしても、主治医の指示から独立して行うものではない。

  3. ×c.  介護保険よりも医療保険を優先して利用する。

    記述は逆である。要介護・要支援認定を受けている者は、原則として介護保険の訪問看護が優先される。ただし、次の場合は例外として医療保険で利用する。厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉、パーキンソン病関連疾患の一部、人工呼吸器を使用している状態など)に当たる場合、急性増悪などで特別訪問看護指示書が交付された期間、精神科訪問看護を受ける場合である。

  4. ×d.  要介護認定を受けていない者は対象外である。

    要介護認定を受けていない者は、介護保険による訪問看護は利用できない。しかし、医療保険による訪問看護は利用できる。たとえば、医療的ケアを必要とする小児、40歳未満の難病患者、要介護認定を受けていない高齢者などである。したがって、要介護認定がないことを理由に対象外となるわけではない。

  5. ○e.  人工呼吸器の管理は看護師が在宅で行う診療補助行為に含まれる。

    看護師の業務の一つである「診療の補助」は、医師の指示のもとに行う医療行為である。在宅で人工呼吸器を使用している患者(神経筋疾患の患者や医療的ケア児など)に対しては、訪問看護師が呼吸器の作動状態や設定の確認、回路の管理、気管切開部のケア、喀痰吸引、トラブル時の対応、家族への指導などを行う。これらは主治医の指示に基づく診療の補助として、在宅でも実施できる。

訪問看護の提供体制

訪問看護は、訪問看護ステーションまたは病院・診療所から提供される。訪問看護ステーションの場合は、主治医が訪問看護指示書を交付してサービスが始まる。訪問するのは看護師のほか、保健師、准看護師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などである。

主なサービス内容

・療養上の世話:清潔の保持、排泄・食事の援助、療養環境の調整など ・診療の補助:人工呼吸器や在宅酸素療法の管理、中心静脈栄養・点滴の管理、喀痰吸引、胃瘻や経鼻胃管の管理、尿道カテーテルの管理、褥瘡の処置、服薬の管理など ・リハビリテーション ・終末期ケア(在宅での看取りの支援)、家族への指導・相談

介護保険と医療保険の使い分け

原則:要介護・要支援認定を受けている者は、介護保険が優先される。 医療保険で利用する者:要介護認定を受けていない者(40歳未満の者を含む)。また、認定を受けていても、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合、特別訪問看護指示書が交付された期間(原則として月1回、最長14日間)、精神科訪問看護を受ける場合は医療保険となる。

在宅医療と多職種連携

在宅医療を推進するうえで、訪問看護は主治医、ケアマネジャー(介護支援専門員)、薬剤師、リハビリテーション職、ヘルパーなどと連携する中心的な役割を担う。今後もニーズの増加が見込まれている。

POINT

・訪問看護は主治医の訪問看護指示書に基づいて行う ・要介護・要支援認定を受けている者は、原則として介護保険が医療保険より優先される(末期癌・ALSなどの厚生労働大臣が定める疾病等、特別訪問看護指示書の期間、精神科訪問看護は医療保険) ・要介護認定がなくても、医療保険で利用できる ・介護保険・医療保険のいずれでも自己負担がある ・人工呼吸器の管理、喀痰吸引、中心静脈栄養の管理などは、診療の補助として在宅で実施できる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。