「破水した!」はまだ始まりじゃない?―分娩開始を決めるのは陣痛のリズム
第115回医師国家試験 C問題 第30問
国試問題にチャレンジ
分娩開始と判断する所見はどれか。2つ選べ。
- a.破水
- b.児頭の下降
- c.子宮口開大の開始
- d.陣痛周期が10分以内
- e.陣痛頻度が1時間に6回以上
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
分娩開始は、陣痛周期が10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点(陣痛発来)と定義され、両者は同じ状態を周期と頻度で言い換えたものです。破水は分娩経過のどこで起きたかで前期破水・早期破水・適時破水・遅滞破水に分類されるため、開始の基準にはなりません。児頭の下降や子宮口の開大は分娩前から生じうる、あるいは時点を特定できない所見であり、進行の評価に用いる指標です。妊娠末期の前陣痛は不規則で増強せず子宮口開大を伴わない点で分娩陣痛と区別されます。分娩開始の時点は分娩所要時間や遷延分娩、前期破水の判定の起点となるため、客観的に判断できる定義を正確に押さえておくことが産科臨床の基本になります。
解答・解説
正解はd, eです
分娩開始の定義
日本産科婦人科学会の定義では、分娩開始とは「陣痛周期が10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点」である。つまり、分娩開始は規則的な子宮収縮(陣痛)が一定以上の頻度で起こるようになったこと、すなわち「陣痛発来」によって判断する。陣痛周期とは、ある子宮収縮の始まりから次の子宮収縮の始まりまでの時間のことであり、10分周期であれば1時間に6回の収縮に相当する。このため両者は同じ状態を別の表現で言い表したものといえる。
なぜ陣痛で判断するのか
分娩開始の時点は、分娩所要時間(遷延分娩の判定など)や、破水が「前期破水」かどうかの判定の基準点となる。そのため、誰が判断しても同じ時点になるよう、妊婦が自覚でき外測陣痛計でも客観的に記録できる陣痛の周期・頻度で定義されている。破水、児頭の下降、子宮口の開大は、分娩開始前から起こりうる、あるいは分娩開始後かなり経ってから起こる所見であり、分娩開始の目印にはならない。
正解の導き方
選択肢のうち、陣痛の周期と頻度の基準を述べている「陣痛周期が10分以内」と「陣痛頻度が1時間に6回以上」の2つが正解となる。
選択肢考察
- ×a. 破水
破水は分娩開始の判断基準ではなく、分娩経過のどの時点で起こったかによって分類される。通常は子宮口全開大の頃に起こり、これを適時破水という。分娩開始前(陣痛発来前)の破水を前期破水(PROM)、分娩開始後で子宮口全開大より前の破水を早期破水、子宮口全開大後も破水しない場合を遅滞破水という。前期破水は分娩開始より前に起こるのだから、破水をもって分娩開始とすると定義が矛盾する。前期破水では上行性感染(絨毛膜羊膜炎)や臍帯脱出に注意が必要である。
- ×b. 児頭の下降
児頭の下降は分娩開始の基準ではない。特に初産婦では、妊娠末期(分娩の数週間前)から児頭が骨盤入口に進入・固定し始めることが多く、分娩開始前から下降がみられる。妊婦は子宮底が下がることで胃の圧迫感が軽くなる一方、胎動を感じにくくなったり頻尿になったりする。逆に経産婦では陣痛が始まってから児頭が下降することも多い。児頭の下降度(ステーション)は分娩の進行を評価する指標として用いる。
- ×c. 子宮口開大の開始
子宮口の開大は分娩開始の基準ではない。妊娠末期には子宮頸管が熟化(軟化・短縮・展退)し、特に経産婦では陣痛発来前から子宮口が数cm開大していることも珍しくない。また「開大が始まった時点」を内診で厳密に特定することはできない。子宮口開大度は、分娩第1期の潜伏期・活動期の区別や分娩進行の評価(Bishopスコア、パルトグラム)に用いる指標である。なお子宮口全開大は分娩第1期の終わり(第2期の始まり)を示す。
- ○d. 陣痛周期が10分以内
分娩開始の定義そのものである。陣痛周期(子宮収縮の開始から次の収縮の開始までの時間)が10分以内となった時点を分娩開始とする。妊娠末期には不規則で弱い子宮収縮(前陣痛、いわゆる偽陣痛)が起こるが、これは周期が不規則で次第に間隔が短くなることはなく、子宮口の開大も伴わない。これに対し分娩陣痛は規則的で、時間とともに周期が短く、収縮が強く長くなっていく。周期が10分以内で規則的になったことが、真の陣痛の始まりの目安となる。
- ○e. 陣痛頻度が1時間に6回以上
分娩開始のもう一つの表現である。1時間に6回以上の子宮収縮は、平均すると10分に1回以上の収縮を意味し、陣痛周期10分以内と同じ状態を頻度で表したものである。陣痛の周期が一定でない場合でも、1時間あたりの回数で判断できるようにこの基準が併記されている。よってこの時点で分娩開始と判断する。
分娩の時期区分
・分娩第1期(開口期): 分娩開始(陣痛発来)〜子宮口全開大(10cm)。子宮口開大の緩やかな潜伏期と、急速に進む活動期に分けられる。 ・分娩第2期(娩出期): 子宮口全開大〜胎児娩出。 ・分娩第3期(後産期): 胎児娩出〜胎盤娩出。 分娩所要時間は分娩第1期から第3期までの合計であり、初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上を遷延分娩とする。
破水の時期による分類
・前期破水: 分娩開始前の破水 ・早期破水: 分娩開始後、子宮口全開大前の破水 ・適時破水: 子宮口全開大前後の破水 ・遅滞破水: 子宮口全開大後も破水せず、児頭が卵膜に包まれたまま下降するもの
分娩の前兆(分娩開始前にみられる変化)
・前陣痛(不規則な子宮収縮によるお腹の張り)の増加 ・児頭の下降と骨盤内への固定に伴う変化: 子宮底が下がり胃の圧迫が減って食欲が出る、胎動を感じにくくなる、膀胱が圧迫されて頻尿になる ・腰痛や恥骨周囲の痛み: 腹部がせり出して重心が前方に移り腰椎前弯が強まること、分娩に備えて骨盤の関節・靱帯が緩むことによる ・産徴(いわゆる“おしるし”): 子宮頸管が開大し始め、卵膜が子宮壁から剥がれることで生じる少量の血性粘液の排出 これらは分娩が近いことを示すが、分娩開始の定義には含まれない。
POINT
・分娩開始=陣痛周期が10分以内、または陣痛頻度が1時間に6回以上となった時点(陣痛発来)。 ・破水・児頭下降・子宮口開大・産徴は分娩開始の判断基準ではない。 ・分娩開始前の破水は前期破水、子宮口全開大頃の破水が適時破水。 ・前陣痛は不規則で増強せず子宮口開大を伴わない。分娩陣痛は規則的で次第に強く頻回になる。
