関節を越えて広がる炎症―リウマチの「関節外症状」に紛れ込んだ異分子を見抜く
第115回医師国家試験 B問題 第4問
国試問題にチャレンジ
関節リウマチの関節外症状としてみられないのはどれか。
- a.皮下結節
- b.皮膚潰瘍
- c.心外膜炎
- d.間質性肺炎
- e.後腹膜線維症
対話形式の解説
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ドクターまとめ
関節リウマチは滑膜炎による関節破壊を主体としつつ、全身に多彩な関節外症状をきたす全身性疾患で、リウマトイド因子や抗CCP抗体が高力価陽性の活動性の高い例に出やすくなります。代表的なものは、リウマトイド結節、血管炎による皮膚潰瘍・多発単神経炎、胸膜炎・心外膜炎などの漿膜炎、予後に関わる間質性肺炎で、眼の強膜炎、二次性AAアミロイドーシス、フェルティ症候群も重要です。一方、後腹膜線維症はIgG4関連疾患の代表的病変であり、リウマチの関節外症状ではありません。間質性肺炎ではメトトレキサートによる薬剤性肺障害やニューモシスチス肺炎との鑑別が臨床上の大きな課題です。関節外症状を「結節・血管炎・漿膜炎・肺・眼・続発症」という枠組みで整理しておくと、知識の漏れを防ぎ、実際の診療で全身を見渡す視点にもつながります。
解答・解説
正解はeです
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、滑膜の慢性炎症によって多発関節炎と骨・軟骨破壊をきたす自己免疫疾患である。しかし病変は関節にとどまらず、全身の結合組織・血管・漿膜・肺・眼・神経などに多彩な関節外症状を生じうる全身性疾患である。関節外症状は、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)が高力価陽性で、罹病期間が長く疾患活動性の高い例に出やすい。 本問は「みられないもの」を選ぶ問題である。皮下結節(リウマトイド結節)、皮膚潰瘍(血管炎による)、心外膜炎(漿膜炎)、間質性肺炎はいずれもRAの代表的な関節外病変として整理しておくべきものである。一方、後腹膜線維症は大動脈周囲から尿管周囲に線維性組織が増生する病態で、IgG4関連疾患の代表的病変の一つであり、RAの関節外症状としては挙げられない。したがって正解はeである。 考え方としては、RAの関節外症状を「結節(皮下・肺)」「血管炎(皮膚潰瘍、多発単神経炎など)」「漿膜炎(胸膜炎・心外膜炎)」「肺(間質性肺炎、細気管支炎)」「眼(上強膜炎・強膜炎)」「続発症(二次性アミロイドーシスなど)」という枠組みで覚えておくと、枠に入らない選択肢を見抜きやすい。
選択肢考察
- ×a. 皮下結節
リウマトイド結節と呼ばれ、RAで最も頻度の高い関節外症状の一つである(患者のおよそ20%前後、RF陽性例に多い)。肘頭部の伸側、後頭部、仙骨部、アキレス腱部など、骨に近く外的圧迫を受けやすい部位に生じる、硬く可動性のある無痛性結節である。病理学的には中心のフィブリノイド壊死を組織球が柵状に取り囲む肉芽腫で、肺内にも同様の結節を生じることがある。RAの関節外症状としてみられるため誤りである。
- ×b. 皮膚潰瘍
RAに血管炎を合併すると、皮膚の小~中型動脈が侵され、下腿などの難治性皮膚潰瘍、指趾の壊疽、爪周囲の梗塞、紫斑などがみられる。血管炎をはじめとする重篤な関節外症状を伴うRAは、わが国では悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis:MRA)と呼ばれ、指定難病である。皮膚潰瘍はRAの関節外症状としてみられるため誤りである。
- ×c. 心外膜炎
RAでは漿膜炎として胸膜炎や心外膜炎(心膜炎)を生じる。症状を伴う心外膜炎は1割以下と多くないが、心エコーなどで捉えられる無症候性の心膜病変を含めるとかなりの割合に及ぶとされ、男性・RF陽性例に多い。まれに収縮性心膜炎へ進展することもある。なお心内膜炎ではなく心「外」膜炎である点に注意する。RAの関節外症状としてみられるため誤りである。
- ×d. 間質性肺炎
間質性肺炎(間質性肺疾患)はRAの肺病変の中で最も重要なもので、画像上の無症候例を含めると3割以上に認められるとされ、生命予後に影響する。組織型は通常型間質性肺炎(UIP)パターンや非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンが多い。また、治療薬であるメトトレキサート(MTX)などによる薬剤性肺障害や、免疫抑制下のニューモシスチス肺炎との鑑別が重要になる。RAの関節外症状としてみられるため誤りである。
- ○e. 後腹膜線維症
後腹膜線維症は、腹部大動脈周囲から腸骨動脈・尿管周囲の後腹膜に線維性組織が増生する病態で、尿管が巻き込まれると水腎症や腎後性腎不全をきたす。原因としてはIgG4関連疾患が代表的であり、血清IgG4高値と、組織でのIgG4陽性形質細胞浸潤・花筵状線維化・閉塞性静脈炎を特徴とする。そのほか薬剤(麦角アルカロイドなど)、悪性腫瘍、放射線治療後なども原因となる。RAの関節外症状としては挙げられないため、これが正解である。
RAの主な関節外症状
・全身症状:発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血(慢性炎症に伴う貧血) ・皮膚:リウマトイド結節、血管炎による皮膚潰瘍・指趾壊疽・紫斑 ・眼:上強膜炎、強膜炎(重症では穿孔性強膜軟化症)、二次性シェーグレン症候群による乾燥性角結膜炎 ・肺・胸膜:間質性肺炎、肺内リウマトイド結節、細気管支炎、胸膜炎・胸水(胸水は糖低値が特徴) ・心臓:心外膜炎、心筋炎、また動脈硬化性心血管疾患のリスク上昇 ・神経:血管炎による多発単神経炎、頸椎(環軸椎亜脱臼)病変による脊髄圧迫、手根管症候群などの絞扼性神経障害 ・腎:二次性(AA)アミロイドーシスによるアミロイド腎症(蛋白尿・ネフローゼ)、薬剤性腎障害 ・消化管:AAアミロイドーシスによる慢性下痢・吸収不良 ・血液:フェルティ症候群(RA・脾腫・好中球減少) ・その他:顎関節の障害に伴う下顎後退が睡眠時無呼吸症候群の一因となることがある
悪性関節リウマチ(MRA)
既存のRAに血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性または重篤な臨床病態を伴うものをいう。多発単神経炎、皮膚潰瘍・壊疽、上強膜炎、胸膜炎、心膜炎、心筋炎、間質性肺炎、臓器梗塞などがみられ、RF高力価、補体低下、免疫複合体陽性を示しやすい。
IgG4関連疾患の主な病変
血清IgG4高値と罹患臓器へのIgG4陽性形質細胞浸潤・線維化を特徴とし、高齢男性に多い。自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺炎(ミクリッツ病)、後腹膜線維症、間質性腎炎、炎症性大動脈瘤などをきたす。ステロイドがよく効く。
POINT
・RAは関節外にも多彩な病変を生じる全身性疾患である。 ・代表的な関節外症状:リウマトイド結節、血管炎(皮膚潰瘍、多発単神経炎)、漿膜炎(胸膜炎・心外膜炎)、間質性肺炎、上強膜炎・強膜炎、二次性アミロイドーシス、フェルティ症候群。 ・後腹膜線維症はIgG4関連疾患の代表的病変であり、RAの関節外症状ではない。 ・RAの間質性肺炎では、MTXなどによる薬剤性肺障害や日和見感染との鑑別が重要である。
