StudyMed医師国家試験

10cmの筋腫が乱すのは「周期」か「量」か―子宮筋腫の症状を器質と内分泌で切り分ける

第114回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第114回 E問題 第10問

直径10cmの子宮筋層内筋腫が原因となって生じ得るのはどれか。

  1. a.片頭痛
  2. b.無排卵
  3. c.過多月経
  4. d.希発月経
  5. e.月経前症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は子宮筋腫、それも筋層内にできた大きな筋腫がどんな症状を起こし得るかを問う問題だ。ポイントは、筋腫が子宮という「器官の形」の異常なのか、排卵やホルモンの「調節系」の異常なのかを見極めること。この視点で選択肢を振り分けると、すっきり解けるよ。
医学生医学生
筋腫はエストロゲン依存性に大きくなると習ったので、ホルモンと関係が深い病気というイメージがあります。
ドクタードクター
そこが引っかけポイントだね。筋腫はエストロゲンの影響を「受けて」大きくなるけれど、筋腫自体が卵巣ホルモンの分泌や排卵を「変える」わけではない。影響の向きが逆なんだ。だから排卵は通常どおり保たれ、月経周期も基本的には乱れない。
医学生医学生
なるほど、ホルモンに育てられる側であって、ホルモンを動かす側ではないんですね。
ドクタードクター
その通り。では筋腫の分類から整理しよう。子宮壁のどこにできるかで、内腔へ突出する粘膜下筋腫、筋層の中にとどまる筋層内筋腫、子宮の外側へ突出する漿膜下筋腫に分けられる。
医学生医学生
産婦人科の講義で、過多月経は粘膜下筋腫で起こりやすいと聞きました。筋層内だと出血には関係しないのでは?
ドクタードクター
いい疑問だね。確かに粘膜下筋腫は小さくても過多月経を起こしやすく、最も顕著だ。でも直径10cmもある筋層内筋腫なら話は別。子宮内腔が引き伸ばされて出血する内膜の面積が広がるし、子宮筋がうまく収縮できず月経時の血管の締め付けが不十分になって止血しにくくなる。子宮の血流やうっ血が増えることも関係する。だから正解は過多月経だ。
医学生医学生
大きさ次第で、筋層内でも内腔の形が変わってしまうということですね。
ドクタードクター
そう。過多月経が続くと鉄欠乏性貧血になり、それが受診のきっかけになることも多い。では、ほかの選択肢を見ていこう。無排卵と希発月経はどうかな。
医学生医学生
どちらも視床下部-下垂体-卵巣系の問題ですよね。CBTの勉強で、希発月経は周期が39日以上3か月未満と覚えました。
ドクタードクター
正確だね。希発月経は卵胞の発育が遅れる場合や無排卵周期症で起こる「周期」の異常で、排卵機構に原因がある。無排卵は多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、体重減少やストレスなどが原因だ。筋腫は卵巣機能にもゴナドトロピン分泌にも影響しないから、どちらも筋腫の結果としては起こらない。
医学生医学生
月経前症候群も、黄体期に出る症状なので排卵後のホルモン変動の話ですね。
ドクタードクター
そのとおり。月経開始前3〜10日ほどの黄体期に、いらいらや抑うつ、乳房痛、むくみなどが繰り返し現れ、月経が始まると軽快する。卵巣ホルモンの変動への反応と考えられていて、筋腫は原因にならない。
医学生医学生
片頭痛は、月経のときに悪化する人がいると聞いたので少し迷いました。
ドクタードクター
月経関連片頭痛だね。月経前後のエストロゲンの急な低下が発作の引き金になると考えられているから、ホルモン変動とは関係がある。でも子宮の腫瘤そのものが片頭痛を起こす機序はない。片頭痛はあくまで神経系の疾患だ。
医学生医学生
まとめると、周期の異常は排卵・内分泌の問題、量の異常は子宮の器質的な問題、と分けて考えればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。多くの場合、その整理が有効だよ。最後に臨床での注意点も押さえておこう。大きな筋腫の症状は、過多月経と貧血、月経痛、不妊や流産、そして圧迫症状だ。膀胱を圧迫すれば頻尿、直腸なら便秘、尿管や骨盤内静脈なら水腎症や下肢浮腫が出ることもある。
医学生医学生
漿膜下筋腫だと月経の異常は少なくて、大きくなるまで気づかないこともあると教わりました。
ドクタードクター
そうだね。漿膜下筋腫は圧迫症状が出るまで無症状のことが多く、有茎性なら茎捻転で急性腹症を起こすこともある。外来で貧血の女性を診たら、月経血の量を必ず聞き、筋腫などの器質的な原因を念頭に置く習慣をつけておこう。

まとめ

子宮筋腫は子宮平滑筋由来の良性腫瘍で、エストロゲン依存性に増大しますが、それ自体は排卵や卵巣ホルモン分泌に影響しません。そのため無排卵・希発月経・月経前症候群といった視床下部-下垂体-卵巣系に由来する病態は起こさず、代表的な症状は過多月経と鉄欠乏性貧血、月経痛、圧迫症状、不妊です。過多月経は粘膜下筋腫で最も起こりやすいものの、直径10cmのような大きな筋層内筋腫でも内腔の拡大・変形や子宮収縮不良によって生じ得ます。「周期の異常は内分泌、量の異常は器質」という整理は、月経異常の鑑別全般に役立つ基本的な考え方です。

解答・解説

正解はcです

子宮筋腫は子宮の平滑筋から発生する良性腫瘍で、生殖年齢女性に非常に多い。症状は筋腫の「発生部位」と「大きさ」によって決まり、卵巣ホルモンの分泌や排卵そのものを障害する腫瘍ではない、という点が本問を解く鍵である。 筋腫は子宮壁内での位置により、粘膜下筋腫(内膜直下で子宮内腔へ突出)、筋層内筋腫(子宮筋層の中にとどまる)、漿膜下筋腫(子宮の外側へ突出)に分けられる。月経血量の増加は内腔を変形させる粘膜下筋腫で最も起こりやすいが、筋層内筋腫であっても直径10cmに達するような大きなものでは、子宮内腔が引き伸ばされて内膜の面積が広がること、子宮筋の収縮が妨げられて月経時の止血が不十分になること、子宮の血流やうっ血が増えることなどにより、過多月経を生じ得る。 一方、選択肢のうち無排卵・希発月経・月経前症候群はいずれも視床下部-下垂体-卵巣系(排卵と卵巣ホルモン分泌の調節系)の働きに関係する病態であり、片頭痛は神経系の疾患である。子宮という「器官の形態」の異常である筋腫とは機序が異なるため、筋腫の直接の結果としては生じない。このように「器質的な異常か、内分泌(排卵)の異常か」で選択肢を振り分けると正解に到達できる。

選択肢考察

  1. ×a.  片頭痛

    誤り。片頭痛は女性に多い一次性(機能性)頭痛で、月経は代表的な誘因の一つである。月経前後にエストロゲンが急に低下することが発作の引き金になると考えられており(月経関連片頭痛)、ホルモン変動とは関係がある。しかし子宮筋腫という子宮の腫瘤そのものが片頭痛を起こす機序はない。

  2. ×b.  無排卵

    誤り。無排卵は視床下部・下垂体・卵巣のいずれかの機能障害によって卵胞が成熟・排卵に至らない状態である。思春期や更年期のように視床下部-下垂体-卵巣系が未熟あるいは衰えている時期、多囊胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、体重減少やストレスなどが原因となる。子宮筋腫は卵巣機能やゴナドトロピン分泌に影響しないので、排卵は保たれる。

  3. ○c.  過多月経

    正しい。子宮筋腫は器質的な過多月経の代表的な原因である(ほかに子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど)。粘膜下筋腫で最も顕著だが、10cm大の筋層内筋腫では子宮内腔が拡大・変形して出血する内膜の面積が増えること、筋層の収縮不良により月経時に血管が十分に締め付けられず止血しにくいこと、子宮血流の増加などにより月経血量が増える。過多月経が続くと鉄欠乏性貧血をきたし、それが受診のきっかけになることも多い。

  4. ×d.  希発月経

    誤り。希発月経は月経周期が39日以上3か月未満に延長した状態である。卵胞の発育が遅れて卵胞期が延びる場合や、無排卵周期症によって起こり、排卵機構の異常に基づく周期の異常である。子宮筋腫は周期を決める内分泌系に影響しないため、月経周期を延長させない。筋腫で変化するのは周期ではなく月経血の量や月経痛である。

  5. ×e.  月経前症候群

    誤り。月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome)は排卵後の黄体期、とくに月経開始前3〜10日ほどの間に繰り返し現れる精神症状(いらいら、抑うつ、不安など)や身体症状(乳房痛、腹部膨満感、むくみ、頭痛など)で、月経の開始とともに軽快・消失する。排卵後の卵巣ホルモンの変動に対する反応と考えられており、子宮筋腫は原因とならない。

子宮筋腫の概要

子宮平滑筋由来の良性腫瘍で、30〜40歳代に多く、エストロゲン依存性に増大する。閉経後は縮小する傾向がある。多発することも多い。

発生部位による分類と症状の特徴

・粘膜下筋腫:子宮内腔に突出する。小さくても過多月経・不正出血・不妊・流産の原因となりやすい。有茎性のものは子宮口から脱出する(筋腫分娩)ことがある。 ・筋層内筋腫:最も頻度が高い。大きくなると内腔を変形させ、過多月経や月経痛、不妊の原因となる。 ・漿膜下筋腫:月経異常は起こしにくく、大きくなって周囲臓器を圧迫するまで無症状のことが多い。有茎性では茎捻転による急性腹症を起こすことがある。

大きな筋腫でみられる主な症状

・過多月経とそれに伴う鉄欠乏性貧血 ・月経痛(月経困難症) ・圧迫症状:膀胱圧迫による頻尿、直腸圧迫による便秘、骨盤内静脈・尿管の圧迫による下肢浮腫や水腎症 ・下腹部腫瘤の触知 ・不妊・流産

月経周期に関する用語の整理

・正常の月経周期:25〜38日 ・頻発月経:24日以下 ・希発月経:39日以上3か月未満 ・続発性無月経:3か月以上月経がない 周期の異常は主に排卵・内分泌の異常を、月経血量の異常(過多月経・過少月経)は主に子宮の器質的異常を反映することが多い。

POINT

・子宮筋腫は排卵や卵巣ホルモン分泌に影響せず、月経周期の異常(希発月経・無排卵)は起こさない。 ・子宮筋腫の代表症状は過多月経(→鉄欠乏性貧血)、月経痛、圧迫症状(頻尿・便秘)、不妊である。 ・過多月経は粘膜下筋腫で最も起こりやすいが、大きな筋層内筋腫でも生じる。 ・月経前症候群は黄体期に症状が出て月経開始とともに消失する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。