夏の高熱と喉の奥の水疱―ヘルパンギーナは「口の奥だけ」を覚えよう
第114回医師国家試験 D問題 第9問
国試問題にチャレンジ
ヘルパンギーナにおいて小水疱が好発する部位はどれか。
- a.咽頭
- b.手掌
- c.足底
- d.体幹
- e.外陰部
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ヘルパンギーナは主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスによる乳幼児の夏かぜで、突然の高熱とともに軟口蓋から咽頭にかけて口腔後方に小水疱が多発し、皮膚には原則として発疹を認めません。手掌・足底に水疱が出れば手足口病、体幹中心で新旧の皮疹が混在すれば水痘、外陰部の有痛性水疱・潰瘍なら性器ヘルペス、歯肉炎と口腔前方のアフタならヘルペス性歯肉口内炎と、水疱の部位から疾患を絞り込めます。治療は対症療法が中心ですが、咽頭痛による脱水や熱性けいれん、まれな無菌性髄膜炎・心筋炎に注意が必要です。また症状消失後も便中にウイルスが排泄されるため、手洗いによる感染対策が欠かせません。「水疱の出る場所」と疾患を対応させて覚えることは、小児の発熱・発疹の診療で素早く診断にたどり着く基礎になります。
解答・解説
正解はaです
ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群をはじめとするエンテロウイルス属によって起こる急性ウイルス感染症である。乳幼児に多く、夏季に流行する、いわゆる「夏かぜ」の代表である。 典型的には、突然39〜40℃の高熱で発症し、口腔の奥、すなわち咽頭から口蓋にかけての粘膜に、周囲が赤く縁取られた直径1〜2mm程度の小水疱が多発する。水疱はすぐに破れて浅い潰瘍(アフタ様)になり、強い咽頭痛のため乳幼児では不機嫌、流涎、哺乳不良・摂食不良を来す。発疹が口の中だけにとどまり、皮膚には原則として出現しないことが、同じエンテロウイルス感染症である手足口病との大きな違いである。 本問は「水疱が出る部位」から疾患を想起させる知識問題であり、各選択肢の部位に水疱を作る代表的な疾患を対応させて整理すると解きやすい。
選択肢考察
- ○a. 咽頭
ヘルパンギーナの小水疱は口腔後方の粘膜、具体的には軟口蓋、口蓋垂、前口蓋弓(口蓋舌弓)付近から咽頭にかけて好発する。水疱が破れると小潰瘍となって強い咽頭痛を生じ、飲食を嫌がる原因となる。病変が口腔後方に限局し、皮膚病変を伴わない点が本症の特徴であるため、これが正解である。
- ×b. 手掌
手掌に小水疱が出るのは手足口病の特徴である。手足口病はコクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71などが原因で、手掌・足底・口腔内(頬粘膜や舌など口腔の前方にも出やすい)に水疱を生じ、殿部や膝にも皮疹がみられることがある。ヘルパンギーナでは手掌に皮疹は通常出ないため誤りである。
- ×c. 足底
足底の小水疱も手足口病でみられる所見である。手足口病の皮疹は楕円形で長軸が皮膚の紋理に沿う小水疱が特徴的で、通常かゆみは乏しく、痂皮を作らずに治癒する。ヘルパンギーナの病変は口腔内に限られるため誤りである。
- ×d. 体幹
体幹を中心に水疱が広がる代表は水痘(水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染)で、紅斑・丘疹・水疱・痂皮が混在しながら頭皮を含む全身に広がる。帯状疱疹では片側の神経支配領域(デルマトーム)に沿って水疱が帯状に並ぶ。また汗疹(あせも)でも体幹に小水疱を認めることがある。いずれもヘルパンギーナの所見ではないため誤りである。
- ×e. 外陰部
外陰部に水疱や、それが破れた有痛性の浅い潰瘍を生じる代表は性器ヘルペス(主に単純ヘルペスウイルス2型、近年は1型も多い)である。ヘルパンギーナでは外陰部に病変を作らないため誤りである。
ヘルパンギーナの概要
・病原体: コクサッキーウイルスA群が中心で、ほかにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなどのエンテロウイルス属も原因となる。 ・疫学: 5歳以下、特に1〜4歳に多い。夏季(初夏〜夏)に流行のピークがある。感染症法の5類感染症(小児科定点把握)である。 ・感染経路: 飛沫感染、接触感染、糞口感染。エンテロウイルスは症状消失後も数週間にわたり便中に排泄されるため、手洗いが重要である。 ・症状: 突然の高熱(39〜40℃)が2〜4日続き、口腔後方に小水疱・アフタが出現する。乳幼児では高熱に伴い熱性けいれんを起こすことがある。 ・経過と治療: 多くは1週間程度で自然軽快する。特異的な治療薬はなく、解熱鎮痛薬、刺激の少ない食事、十分な水分補給による対症療法が中心である。まれに無菌性髄膜炎や心筋炎を合併するため注意する。
口腔内・皮膚に水疱を作る小児の主な疾患の比較
・ヘルパンギーナ: 軟口蓋〜咽頭など口腔後方の小水疱。皮疹なし。高熱。 ・手足口病: 手掌・足底・口腔内(口腔前方にも)の水疱。殿部・膝にも出ることがある。発熱は軽度か無いことも多い。 ・ヘルペス性歯肉口内炎(単純ヘルペスウイルス1型の初感染): 歯肉の発赤・腫脹・出血と、口唇・舌・頬粘膜など口腔前方の多発性アフタ。高熱。 ・水痘: 体幹中心に全身へ広がる、各段階の皮疹が混在する水疱。口腔粘膜にも出ることがある。
POINT
・ヘルパンギーナ: エンテロウイルス(主にコクサッキーA群)、夏季、乳幼児、突然の高熱+軟口蓋〜咽頭の小水疱。皮疹はない。 ・手足口病: 手掌・足底・口腔内の水疱。 ・ヘルペス性歯肉口内炎: 歯肉炎+口腔前方のアフタ。 ・水痘: 体幹中心で新旧の皮疹が混在。帯状疱疹: デルマトームに沿う片側性の水疱。 ・外陰部の有痛性水疱・潰瘍: 性器ヘルペス。
