青くならない心臓病はどれ?―チアノーゼは「静脈血の抜け道」で考える
第114回医師国家試験 D問題 第10問
国試問題にチャレンジ
チアノーゼを生じないのはどれか。
- a.Fallot四徴症
- b.大動脈二尖弁
- c.完全大血管転位症
- d.総肺静脈還流異常症
- e.Eisenmenger症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
先天性心疾患でチアノーゼが生じるのは、右→左シャントや静脈血と肺静脈血の混合によって、酸素の少ない血液が体循環へ流れ込む場合です。Fallot四徴症、完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症は代表的なチアノーゼ性心疾患であり、Eisenmenger症候群は左→右シャント疾患が肺高血圧の進行で右→左シャントに逆転した状態です。一方、大動脈二尖弁は短絡を持たない弁形態異常で単独ではチアノーゼを生じませんが、大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、上行大動脈拡張や解離、感染性心内膜炎の原因となるため長期の経過観察が重要です。チアノーゼは還元ヘモグロビンの量で決まり、貧血や多血症で見え方が変わる点にも注意が必要です。疾患ごとに血液の流れを描いて考える習慣は、先天性心疾患全般の病態理解と、新生児期の緊急対応の判断に直結します。
解答・解説
正解はbです
チアノーゼとは、皮膚や粘膜(口唇、爪床、耳朶、鼻尖など毛細血管が豊富で皮膚の薄い部位)が青紫色に見える状態である。毛細血管血中の還元ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビン)が約5g/dL以上になると肉眼で認識できるようになる。 先天性心疾患でチアノーゼが生じる基本的な機序は、酸素化されていない体静脈血が肺を通らずに体循環へ流れ込むこと、すなわち右→左シャント(右左短絡)、あるいは体静脈血と肺静脈血の混合である。したがって本問は、各疾患に「酸素の少ない血液が体循環に混入する経路があるか」を考えれば解ける。 選択肢のうち、Fallot四徴症、完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症はいずれも代表的なチアノーゼ性先天性心疾患であり、Eisenmenger症候群は本来の左→右シャントが肺高血圧の進行により右→左シャントへ逆転した状態である。一方、大動脈二尖弁は弁の形態異常にすぎず、心内や大血管間に短絡を持たないため、単独ではチアノーゼを生じない。
選択肢考察
- ×a. Fallot四徴症
Fallot四徴症は、①心室中隔欠損(VSD)、②肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)、③大動脈騎乗、④右室肥大の4つを特徴とする。右室流出路が狭いため右室から肺へ血液が出にくく、静脈血がVSDを通って大動脈へ流れ込む(右→左シャント)ためチアノーゼを呈する。チアノーゼ性先天性心疾患の中で最も頻度が高く、啼泣や脱水を契機に右室流出路の狭窄が強まると、チアノーゼが急に増悪する無酸素発作(低酸素発作)を起こす。チアノーゼを生じるので誤りである。
- ○b. 大動脈二尖弁
大動脈二尖弁は、通常3枚ある大動脈弁の弁尖が2枚しかない先天性の弁形態異常である。弁を通る血流が乱れやすく、年齢とともに弁の変性・石灰化が進んで大動脈弁狭窄症の原因になり、大動脈弁閉鎖不全症や上行大動脈拡張(大動脈解離のリスク)、感染性心内膜炎の原因にもなる。しかし心房・心室・大血管の間をつなぐ短絡路は存在せず、静脈血が体循環に混ざらないため、単独でチアノーゼを生じることはない。したがって正解である。
- ×c. 完全大血管転位症
完全大血管転位症では、心房と心室のつながりは正常だが、右室から大動脈が、左室から肺動脈が出ている。そのため体循環と肺循環が直列ではなく並列の2つの閉じた回路となり、体静脈血はそのまま大動脈へ送られる。卵円孔開存・心房中隔欠損・心室中隔欠損・動脈管開存などで両回路の血液が混ざらなければ生存できず、新生児早期から強いチアノーゼを呈する。新生児期には動脈管を開いておくためのプロスタグランジンE1投与やバルーン心房中隔裂開術(BAS)を行い、根治術として動脈スイッチ手術(Jatene手術)が行われる。チアノーゼを生じるので誤りである。
- ×d. 総肺静脈還流異常症
総肺静脈還流異常症では、肺で酸素化された血液を運ぶ肺静脈のすべてが左房に入らず、垂直静脈や上大静脈、冠静脈洞、門脈系などを経由して右房へ戻る。左心系へ血液が届くには心房中隔欠損や卵円孔を介した右房→左房の流れ(右→左シャント)が必須で、体循環に送られるのは静脈血と肺静脈血が混ざった血液となるためチアノーゼを呈する。特に還流路に狭窄がある型(下心臓型に多い)では肺うっ血と強いチアノーゼを来し、新生児期の緊急手術が必要となる。チアノーゼを生じるので誤りである。
- ×e. Eisenmenger症候群
Eisenmenger症候群は、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症など本来は左→右シャントで肺血流が増加している疾患を放置した結果、肺血管に不可逆的な病変が生じて肺血管抵抗が上昇し、肺動脈圧が体血圧と同等以上になった状態である。その結果、短絡が両方向性あるいは右→左へ逆転し、チアノーゼやばち指、多血症を呈する。動脈管開存症によるものでは、下半身のみにチアノーゼが出る差異性チアノーゼ(differential cyanosis)がみられることがある。この段階では短絡の閉鎖手術は禁忌となる。チアノーゼを生じるので誤りである。
チアノーゼの分類
・中心性チアノーゼ: 動脈血の酸素飽和度そのものが低下している状態。右→左シャントを持つ先天性心疾患、肺疾患による低酸素血症などが原因。口唇・舌など体の中心部の粘膜にも出現する。 ・末梢性チアノーゼ: 動脈血の酸素飽和度は正常だが、末梢の血流が遅く組織で酸素が多く抜き取られることで生じる。寒冷曝露、心拍出量低下、末梢血管収縮などが原因。四肢末端に出やすい。 ・チアノーゼは還元ヘモグロビンの「量」で決まるため、多血症では出やすく、高度の貧血では低酸素でも出にくい。
先天性心疾患の分類
・非チアノーゼ性(左→右シャント): 心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、房室中隔欠損症。肺血流が増える。 ・非チアノーゼ性(短絡なし): 大動脈二尖弁、大動脈縮窄症(単純型)、肺動脈弁狭窄症(軽〜中等症)など。 ・チアノーゼ性: Fallot四徴症、完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症、左心低形成症候群、Ebstein病(心房間の右→左シャントを伴う場合)など。 ・先天性心疾患は出生のおよそ1%にみられる。そのうちチアノーゼ性は少数派で、非チアノーゼ性が多数を占める。単独疾患としては心室中隔欠損症が最多とされる。ただし大動脈二尖弁は一般人口の1〜2%程度にみられる非常に頻度の高い弁形態異常で、多くは成人期まで無症状のため、通常の先天性心疾患の頻度統計とは別に扱われることが多い。
Eisenmenger化
左→右シャント疾患は肺血流増加が長く続くと肺血管の内膜肥厚などの不可逆な変化が進み、Eisenmenger症候群に至る。これを防ぐため、肺高血圧が不可逆になる前に適切な時期に短絡を閉じる治療が行われる。
POINT
・先天性心疾患のチアノーゼ=右→左シャント(または静脈血と動脈血の混合)がある。 ・還元ヘモグロビン約5g/dL以上でチアノーゼが見える。 ・大動脈二尖弁は短絡のない弁形態異常で、単独ではチアノーゼを生じない。将来の大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、上行大動脈拡張、感染性心内膜炎に注意する。 ・Fallot四徴症、完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症はチアノーゼ性心疾患の代表。 ・左→右シャント疾患も放置するとEisenmenger症候群となり、右→左シャントでチアノーゼを呈する。
