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「MSW」は資格名じゃない?―職種名と国家資格を見分けるコツ

第114回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第7問

国家資格でないのはどれか。

  1. a.介護福祉士
  2. b.言語聴覚士
  3. c.理学療法士
  4. d.臨床工学技士
  5. e.医療ソーシャルワーカー

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療を支える職種のうち、国家資格でないものを選ぶ問題だ。着眼点は、その名称を定めた法律、いわゆる資格法(身分法)があるかどうか。国家資格は、法律で資格要件や業務が決められていて、国家試験に合格して厚生労働大臣の免許や登録を受けるものを指すんだ。
医学生医学生
医療系の職種って、病院で働いているならだいたい国家資格だと思っていました。
ドクタードクター
そう思いがちだよね。でも病院には、資格名ではなく「職種の呼び名」で呼ばれている人たちもいる。まず介護福祉士から確認しよう。根拠法は何だと思う?
医学生医学生
社会福祉士と一緒の法律だった気がします。公衆衛生の講義で「社会福祉士及び介護福祉士法」と習いました。
ドクタードクター
その通り。介護福祉士は心身の障害で日常生活に支障がある人に介護を行い、本人や介護者に介護の指導もする国家資格だ。一定の研修を経れば喀痰吸引なども行える。次は言語聴覚士と理学療法士。
医学生医学生
臨床実習で神経内科を回ったとき、脳梗塞の患者さんの嚥下評価をSTさんがしていました。STは言語聴覚士法、PTは理学療法士及び作業療法士法ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。言語聴覚士は言語・音声・聴覚の障害に対する訓練や検査に加えて、医師・歯科医師の指示の下で嚥下訓練や人工内耳の調整も担う。理学療法士は、起き上がる・立つ・歩くといった基本的動作能力の回復を目指して、運動療法や電気刺激・温熱などの物理療法を行う。どちらも国家資格だ。
医学生医学生
臨床工学技士は少し馴染みが薄いです。
ドクタードクター
ICUや透析室、手術室で活躍している職種だよ。臨床工学技士法に基づく国家資格で、医師の指示の下、人工呼吸器や人工心肺装置、透析装置などの生命維持管理装置の操作と保守点検を行う。ここまでの4つはすべて自分の資格法をもっている。
医学生医学生
となると、残る医療ソーシャルワーカーが国家資格ではない、ということですね。でも退院支援の相談をしている姿をよく見かけるので、資格がないのは意外です。
ドクタードクター
そこが大事なポイント。医療ソーシャルワーカー、MSWは病院や保健所で働く職種の呼び名で、その名称を定めた資格法は存在しない。業務内容は厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」で示されているけれど、それは資格法ではないんだ。実際には、国家資格である社会福祉士や、精神科領域では精神保健福祉士をもつ人が担っていることが多い。
医学生医学生
なるほど、「職種名」と「資格名」がずれているんですね。MSWという職種に、社会福祉士という資格の人が就いている、と。
ドクタードクター
まさにそう。MSWは医療費の負担、退院後の生活の場、復職や福祉制度の利用といった経済的・社会的な問題に対して、社会資源をつないで解決を支援する。医師にとっても頼もしいパートナーだよ。ここで発展知識として、国家資格の「業務独占」と「名称独占」も整理しておこう。
医学生医学生
業務独占は、資格がないとその業務ができないもの、でしたっけ。
ドクタードクター
そう。医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師などが代表例だ。一方、名称独占は資格がないとその名前を名乗れないもの。理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師などがこちら。介護の仕事自体は無資格でもできるけれど、介護福祉士と名乗れるのは有資格者だけ、ということだね。
医学生医学生
理学療法士や臨床工学技士がしている処置って、看護師の「診療の補助」と重なりませんか。
ドクタードクター
鋭い質問だね。本来は看護師の業務独占に当たる部分もあるけれど、それぞれの資格法で、医師の指示の下なら看護師資格がなくても行えると定められているんだ。それから紛らわしいものとして、ケアマネジャー(介護支援専門員)は介護保険法に基づき都道府県知事が登録する公的資格で国家資格ではないし、准看護師も都道府県知事の免許だ。こちらもよく問われるから一緒に覚えておこう。
医学生医学生
国家資格かどうかは、根拠法と免許を出すのが誰か、の2点で判断すればいいんですね。
ドクタードクター
その整理で十分戦えるよ。そして臨床では、各職種が何を担えるかを知っていることが、適切な相談先を選ぶ力につながる。退院調整で困ったらMSWに、嚥下評価ならSTに、と迷わず声をかけられる医師になってほしいね。

まとめ

国家資格とは、個別の資格法で資格要件や業務が規定され、国家試験合格により厚生労働大臣の免許・登録を受けるものです。介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)、言語聴覚士(言語聴覚士法)、理学療法士(理学療法士及び作業療法士法)、臨床工学技士(臨床工学技士法)はいずれも国家資格ですが、医療ソーシャルワーカーは職種名であってその名称を定めた資格法はなく、実際には社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者が多く従事しています。国家資格には業務独占と名称独占があり、介護支援専門員や准看護師が厚生労働大臣免許の国家資格ではない点も併せて押さえておきたいところです。各職種の資格と役割を正しく理解することは、チーム医療で適切な連携先を選ぶための基礎になります。

解答・解説

正解はeです

問われているテーマ

チーム医療を担う医療・福祉職種のうち、法律に基づく国家資格(国が定める法律で資格要件や業務が規定され、国家試験に合格して厚生労働大臣の免許・登録を受けるもの)でない職種を選ぶ問題である。

考え方

人の生命や健康、生活に深く関わる職種の多くは、質を担保するために個別の資格法(身分法)で規定されている。選択肢のうち、介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」、言語聴覚士は「言語聴覚士法」、理学療法士は「理学療法士及び作業療法士法」、臨床工学技士は「臨床工学技士法」という根拠法をもつ国家資格である。 一方、医療ソーシャルワーカー(MSW:medical social worker)は病院などで働く職種の呼び名であり、その名称自体を定めた資格法は存在しない。実際には国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士を有する者が従事することが多いが、「医療ソーシャルワーカー」という国家資格があるわけではない。「職種名」と「資格名」が一致するかどうか、根拠となる法律があるかどうかを意識すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  介護福祉士

    社会福祉士及び介護福祉士法(1987年制定)に規定される国家資格である。専門的知識・技術をもって、身体上または精神上の障害により日常生活を営むのに支障がある者に対して心身の状況に応じた介護(喀痰吸引等を含む)を行い、また本人や介護者に対して介護に関する指導を行う。資格がなければ介護福祉士と名乗れない名称独占の資格であり、介護業務そのものは無資格者も行うことができる。

  2. ×b.  言語聴覚士

    言語聴覚士法(1997年制定)に規定される国家資格(ST:speech-language-hearing therapist)である。音声機能、言語機能または聴覚に障害のある者に対し、その機能の維持向上を図るための言語訓練、必要な検査、助言・指導を行う。医師・歯科医師の指示の下で、嚥下訓練や人工内耳の調整なども行うことができる。名称独占の資格である。

  3. ×c.  理学療法士

    理学療法士及び作業療法士法(1965年制定)に規定される国家資格(PT:physical therapist)である。医師の指示の下に、身体に障害のある者に対して、主として基本的動作能力(起き上がる、座る、立つ、歩くなど)の回復を図るため、治療体操などの運動療法や、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段を用いる物理療法を行う。名称独占の資格である。

  4. ×d.  臨床工学技士

    臨床工学技士法(1987年制定)に規定される国家資格(CE:clinical engineer)である。医師の指示の下に、人工呼吸器、人工心肺装置、血液浄化装置(透析装置)などの生命維持管理装置の操作(生体への接続・除去を含む)と保守点検を行う。名称独占の資格である。

  5. ○e.  医療ソーシャルワーカー

    病院・診療所や保健所などで、患者や家族が抱える経済的・心理的・社会的問題(医療費の負担、退院後の生活の場、就労や復職、福祉制度の利用など)について相談に応じ、社会資源の活用や関係機関との調整を通じて問題解決と社会復帰を支援する職種である。業務内容は厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」で示されているが、この名称を定めた資格法はなく、国家資格ではない。多くは国家資格である社会福祉士や、精神科領域では精神保健福祉士の資格を持つ者が担っている。

名称独占と業務独占

国家資格は大きく次の2つの性格で整理される。 ・業務独占:資格を持たない者がその業務を行うことが禁じられているもの。医師、歯科医師、薬剤師、看護師、助産師、診療放射線技師など。 ・名称独占:資格を持たない者がその名称を名乗ることが禁じられているもの。業務独占の資格も多くは名称独占を兼ねる。名称独占のみの例として、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、臨床検査技師、臨床工学技士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、管理栄養士、公認心理師などがある。 なお、理学療法士や臨床工学技士などが行う業務の一部は、本来看護師の業務独占である「診療の補助」に当たるが、各資格法により、医師の指示の下であれば看護師の資格がなくても行えるとされている。

福祉系の主な国家資格

・社会福祉士:社会福祉士及び介護福祉士法。福祉に関する相談援助。 ・介護福祉士:同上。介護と介護に関する指導。 ・精神保健福祉士:精神保健福祉士法。精神障害者の社会復帰に関する相談援助。

国家資格と紛らわしいもの

・医療ソーシャルワーカー:職種名であり国家資格ではない。 ・介護支援専門員(ケアマネジャー):介護保険法に基づき都道府県知事が登録する公的資格で、国家資格ではない。 ・准看護師:都道府県知事の免許であり、厚生労働大臣免許の国家資格である看護師とは異なる。

POINT

・医療ソーシャルワーカー(MSW)は職種名であり、国家資格ではない(社会福祉士・精神保健福祉士の有資格者が多い)。 ・介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法)、言語聴覚士(言語聴覚士法)、理学療法士(理学療法士及び作業療法士法)、臨床工学技士(臨床工学技士法)はいずれも国家資格。 ・国家資格には業務独占(医師・看護師・薬剤師など)と名称独占(理学療法士・臨床工学技士・介護福祉士など)がある。 ・介護支援専門員は国家資格ではなく都道府県の公的資格である点も頻出。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。