正期産に入った赤ちゃんの「元気度」を数字で読む―心拍・体重・羊水・NST・BPSの正常値
第114回医師国家試験 C問題 第29問
国試問題にチャレンジ
妊娠37週の胎児および胎児付属物と正常な所見の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.胎児心拍数 ―― 90/分
- b.推定胎児体重 ―― 1,900g
- c.羊水指数〈AFI〉 ―― 12cm
- d.ノンストレステスト〈NST〉 ―― reactive
- e.Biophysical profile score〈BPS〉 ―― 4点
対話形式の解説
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ドクターまとめ
胎児の評価は「発育」と「健康状態(well-being)」の2本立てで整理すると理解しやすくなります。胎児心拍数基線の正常は110〜160bpm、AFIはおよそ5〜24cm、NSTはreactiveが正常、BPSは8点以上が正常で4点以下は胎児低酸素症を疑う異常です。37週の推定胎児体重の平均はおよそ2,700〜2,800gで、1,900gは胎児発育不全を疑う値です。NSTのnon-reactiveは胎児の睡眠周期でも生じるため追加評価で判断し、羊水量の減少は慢性的な胎盤機能低下を反映します。各指標の正常値をその生理学的な意味と結びつけて理解しておくことが、妊婦健診や分娩管理で胎児の状態を的確に判断する基礎になります。
解答・解説
正解はc, dです
妊娠37週は正期産(37週0日~41週6日)に入ったばかりの時期である。この時期の胎児と胎児付属物(胎盤・臍帯・羊水など)の状態を評価する代表的な指標について、正常範囲を知っているかを問う問題である。
評価の考え方
胎児の評価は大きく2つに分けて整理するとわかりやすい。 1. 発育の評価:超音波で児頭大横径(BPD)、腹囲(AC)、大腿骨長(FL)を測り、推定胎児体重(EFW)を出して、妊娠週数の基準値と比べる。 2. 胎児の健康状態(well-being)の評価:胎児心拍数モニタリング(基線、基線細変動、一過性頻脈・徐脈)、ノンストレステスト(NST)、羊水量(AFI など)、biophysical profile score(BPS)などを用いる。 各選択肢の数値を、それぞれの正常範囲に当てはめて判定すればよい。胎児心拍数基線は110~160/分、37週の推定胎児体重はおよそ2,500~3,000g台、AFIは5~24cm程度、NSTはreactiveが正常、BPSは8点以上が正常である。この基準から外れていない組合せは、AFI 12cmとNST reactiveの2つである。
選択肢考察
- ×a. 胎児心拍数 ―― 90/分
胎児心拍数基線の正常範囲は110~160bpm(beats per minute:1分間の拍数)である。110bpm未満は徐脈、160bpmを超えると頻脈と判定する。90/分は明らかな徐脈であり、正常ではない。胎児徐脈は低酸素状態、臍帯圧迫、母体低血圧、先天性房室ブロック(母体の抗SS-A抗体などが関与)などで起こるため、原因の評価と対応が必要になる。
- ×b. 推定胎児体重 ―― 1,900g
日本の胎児体重基準値では、妊娠37週の推定胎児体重の平均はおよそ2,700~2,800gである。正常範囲の下限は2,200~2,300g程度と考えてよい。1,900gはこの下限を大きく下回る。日本では推定胎児体重が基準値の-1.5SD以下の場合に胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)を疑うので、1,900gはFGRを疑う所見であり、正常ではない。なお、1,900gは妊娠33週前後の平均体重に相当する。
- ○c. 羊水指数〈AFI〉 ―― 12cm
AFI(amniotic fluid index:羊水指数)は、子宮を臍の高さと正中線で4つの区画に分け、各区画で胎児や臍帯が入らない最も深い羊水ポケットの垂直径を測り、それを合計した値である。正常範囲はおよそ5~24cmで、5cm以下は羊水過少、24cm以上(25cm以上とする基準もある)は羊水過多と判断する。12cmは正常範囲の中ほどにあり、正常所見である。羊水量は胎児の尿量を反映するため、慢性的な胎盤機能低下では胎児の腎血流が減り、羊水が少なくなる。
- ○d. ノンストレステスト〈NST〉 ―― reactive
NST(non-stress test)は、子宮収縮などのストレスをかけていない状態で胎児心拍数を記録し、胎動に伴う一過性頻脈が出るかどうかで胎児の健康状態を評価する検査である。妊娠32週以降では、心拍数が基線から15bpm以上上がり、15秒以上続く一過性頻脈が、20分間に2回以上見られればreactive(反応性)と判定する。reactiveであれば、胎児の自律神経(中枢神経)機能が保たれ、低酸素状態にないことを示すので、正常所見である。40分以上観察しても基準を満たさない場合はnon-reactiveとし、BPSなどで追加の評価を行う。
- ×e. Biophysical profile score〈BPS〉 ―― 4点
BPSは、超音波で見る胎児呼吸様運動、胎動、胎児筋緊張、羊水量の4項目に、NSTを加えた計5項目をそれぞれ0点か2点で評価し、10点満点で採点する方法である。8~10点は正常、6点は境界域(再検査を検討)、4点以下は胎児低酸素症(胎児機能不全)の可能性が高い異常と判断する。4点は異常であり、正期産であれば娩出(分娩を終了させること)を考える状況である。
胎児well-being評価の主な指標
・胎児心拍数基線:正常110~160bpm。基線細変動は6~25bpmが正常で、細変動の減少・消失は胎児のアシドーシスを示唆する重要な所見である。 ・NST:reactiveなら胎児状態良好。non-reactiveの場合は、胎児の睡眠周期(20~40分程度)による偽陽性も多いため、BPSや超音波ドプラ血流計測などで追加評価する。妊娠32週未満では一過性頻脈の基準を「10bpm以上・10秒以上」に下げて判定する。 ・BPS(Manningの方法):胎児呼吸様運動、胎動、筋緊張、羊水量、NSTの5項目×2点=10点満点。8点以上が正常、6点は境界、4点以下は異常。急性の低酸素では、NST・呼吸様運動・胎動・筋緊張といった中枢神経に依存する項目が先に障害される。慢性の低酸素では、羊水量が減少する。 ・modified BPS:NSTとAFIだけで評価する簡便法。 ・羊水量:AFIのほかに、最大羊水ポケット(MVP)でも評価する。MVPは2cm未満を羊水過少、8cm以上を羊水過多とする。
胎児発育の評価
推定胎児体重は、超音波で測ったBPD・AC・FLを式に入れて計算する。日本では基準値の-1.5SD以下をFGRの目安とする。FGRでは胎児の健康状態をこまめに評価し、臍帯動脈や中大脳動脈の血流をドプラ検査で調べるなどして、娩出の時期を決める。かつてはcontraction stress test(CST:子宮収縮を誘発して心拍変化を見る検査)も用いられた。しかし、余力の少ない胎児に負荷をかける危険があるため、現在はあまり行われない。
POINT
・胎児心拍数基線の正常は110~160bpm(110未満は徐脈、160超は頻脈) ・AFIの正常はおよそ5~24cm(5cm以下で羊水過少、24~25cm以上で羊水過多) ・NST reactive:32週以降は「15bpm以上・15秒以上の一過性頻脈が20分間に2回以上」で、胎児状態良好を示す ・BPSは10点満点で、8点以上が正常、6点が境界、4点以下が異常 ・37週の推定胎児体重の平均はおよそ2,700~2,800gで、1,900gはFGRを疑う
