StudyMed医師国家試験

平らな線と遅れる谷―胎児心拍数陣痛図が告げる「急速遂娩」のサイン

第114回医師国家試験 C問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第30問

妊娠37週0日の妊婦に行った胎児心拍数陣痛図を別に示す。  認められる所見はどれか。2つ選べ。

第114回 C問題 第30問の問題画像
  1. a.徐脈
  2. b.基線細変動消失
  3. c.早発一過性徐脈
  4. d.遅発一過性徐脈
  5. e.変動一過性徐脈

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胎児心拍数陣痛図、いわゆるCTGの読影問題だ。上段が胎児心拍数、下段が子宮収縮の記録になっている。CTGは読む順番を決めておくと見落としが減る。基線、基線細変動、一過性頻脈、一過性徐脈の順だ。まず基線はどうだろう。
医学生医学生
心拍数が何度も下がっているので、徐脈と言っていいのかなと思いました。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。「徐脈」は基線そのものが110bpm未満の状態をいう。この図の基線はおよそ155〜160bpmで、上限ぎりぎりだけど正常範囲内だ。収縮のたびに一時的に下がるのは「一過性徐脈」で、基線の徐脈とは区別しなければいけない。
医学生医学生
なるほど、一時的な低下と基線の低下は別物なんですね。
ドクタードクター
そう。ちなみに心拍数の低下が10分以上続けば、基線が変わったものとして扱う。次に基線細変動を見てみよう。心拍数のラインの細かいギザギザはどうかな。
医学生医学生
言われてみると、線がほとんど平らで揺れがありません。
ドクタードクター
その通り。細変動は振幅で分類し、目で見て確認できないものを消失、5bpm以下を減少、6〜25bpmを中等度で正常、26bpm以上を増加とする。この図はまさに消失だ。細変動は交感神経と副交感神経が心拍を細かく調節している証拠だから、それが消えているのは胎児の中枢神経が低酸素やアシドーシスで抑えられていることを示唆する。
医学生医学生
生理学で習った自律神経の調節が、こんな形で胎児の状態を映すんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。ただし胎児の睡眠周期や、母体に使った鎮静薬・マグネシウムでも一時的に細変動が減ることはあるから、背景は確認しよう。さて一過性頻脈は見られない。最後に一過性徐脈の種類だ。早発・遅発・変動、どれだと思う?
医学生医学生
収縮に合わせてゆっくり下がっているので、早発一過性徐脈でしょうか。
ドクタードクター
惜しい。早発も遅発もどちらも「ゆっくり下がる」徐脈だから、形だけでは区別できない。見るべきは、子宮収縮の頂点と徐脈の最下点の時間関係だ。この図ではどうなっている?
医学生医学生
あ、谷の底が収縮のピークより後ろにずれていて、収縮が終わってから戻っています。
ドクタードクター
そう、だから遅発一過性徐脈だ。しかも収縮のたびに同じ形で繰り返している。早発一過性徐脈は最下点が収縮の頂点とほぼ一致し、児頭圧迫による迷走神経反射で起こる良性の所見だから、今回とは意味がまったく違う。
医学生医学生
変動一過性徐脈はどう見分ければいいですか。
ドクタードクター
変動一過性徐脈は急に下がるのが特徴で、下がり始めから最下点まで30秒未満、15bpm以上低下し、15秒以上2分未満続くものをいう。主な原因は臍帯圧迫で、形や深さ、収縮との時間関係が毎回ばらばらなことが多い。この図はゆっくり下がってゆっくり戻り、毎回同じ形だから変動ではない。よって答えは基線細変動消失と遅発一過性徐脈の2つだ。
医学生医学生
遅発一過性徐脈は、胎盤機能の低下を意味するんでしたよね。
ドクタードクター
そうだね。子宮収縮で胎盤への血流が一時的に減ったとき、もともと余力の乏しい胎児が低酸素になることで起こる。そこに細変動消失が加わると、胎児がすでにアシドーシスの影響を受けている可能性が高い。日本産科婦人科学会の胎児心拍数波形レベル分類では、細変動消失に遅発一過性徐脈が繰り返し加わる場合はレベル5、異常波形・高度にあたる。
医学生医学生
産婦人科の実習で分娩室にいたとき、モニターを見た先生がすぐ帝王切開の準備を指示していたのを思い出しました。
ドクタードクター
レベル5では急速遂娩を実施する、あるいはすぐに実施できる体制で分娩を進めるのが原則だから、まさにそういう場面だ。レベル分類の判定で中心になるのは基線細変動で、細変動が保たれているかどうかで同じ一過性徐脈でも重みが変わる。もう一つ、遷延一過性徐脈も覚えておこう。15bpm以上の低下が2分以上10分未満続くもので、これも細変動の評価と合わせて判断する。
医学生医学生
基線、細変動、頻脈、徐脈の順に読んで、徐脈は収縮との時間関係と下がり方で分類する。この手順を体に染み込ませます。
ドクタードクター
それがいちばん大事だ。CTGは分娩の現場で毎日のように判断を求められる検査だから、パターン認識を確実にしておけば、いざというときに迷わず動けるよ。

まとめ

胎児心拍数陣痛図は「基線→基線細変動→一過性頻脈→一過性徐脈」の順に読むと見落としを防げます。基線が110bpm未満なら徐脈ですが、子宮収縮に伴う一時的な低下は一過性徐脈として区別します。一過性徐脈は、ゆっくり下がり最下点が収縮の頂点と一致すれば早発(児頭圧迫による良性所見)、頂点より遅れれば遅発(胎盤機能低下による低酸素)、急に下がれば変動(主に臍帯圧迫)と分類します。基線細変動の消失は胎児中枢神経の低酸素・アシドーシスを示唆し、これに遅発一過性徐脈が繰り返し加わると日本産科婦人科学会のレベル5に相当し、急速遂娩を考慮します。系統的な読影手順と波形の病態生理を結びつけて理解することが、分娩中の迅速で適切な判断につながります。

解答・解説

正解はb, dです

胎児心拍数陣痛図(CTG:cardiotocogram)を読む問題である。上段が胎児心拍数、下段が子宮収縮(陣痛)の記録である。CTGは決まった順番で読むと見落としがない。

読む順番

1. 胎児心拍数基線(baseline):一過性の変動を除き、10分間の平均的な心拍数を5bpm刻みで読む。 2. 基線細変動(variability):基線が細かく揺れる幅(振幅)を見る。 3. 一過性頻脈の有無。 4. 一過性徐脈の有無と種類:子宮収縮との時間関係と、心拍数の下がり方(緩やかか急か)で分類する。

本図の所見

・基線:およそ155~160bpmで、上限ぎりぎりではあるが正常範囲(110~160bpm)である。 ・基線細変動:心拍数のラインはほぼ平らで、細かい揺れが目で見て確認できない。つまり細変動は消失している。 ・一過性頻脈:見られない。 ・一過性徐脈:子宮収縮のたびに心拍数がゆっくり下がり、ゆっくり戻る。その最下点は子宮収縮の頂点よりも後にずれており、収縮が終わったあとに回復している。この形の徐脈が収縮ごとに繰り返し出ている。これは遅発一過性徐脈である。

解釈

遅発一過性徐脈は、子宮収縮で胎盤への血流が一時的に減ったときに、もともと余力の乏しい胎児が低酸素になることで起こる。胎盤機能が低下していることを示す。これに基線細変動の消失が加わると、胎児の中枢神経がすでに低酸素・アシドーシスの影響を受けていることを強く示す。日本産科婦人科学会の5段階分類では最も重いレベル5(異常波形・高度)にあたり、ただちに児を娩出する(急速遂娩)ことを考える状況である。

選択肢考察

  1. ×a.  徐脈

    徐脈とは、胎児心拍数基線が110bpm未満の状態をいう。本図の基線はおよそ155~160bpmであり、徐脈ではない。一時的に心拍数が下がっている部分は「一過性徐脈」であり、基線そのものが下がっている「徐脈」とは区別して読む。なお、10分以上続く心拍数の低下は、基線が変わったものとして扱う。

  2. ○b.  基線細変動消失

    基線細変動は、振幅(揺れの幅)によって次のように分類する。目で見て確認できないものを消失、5bpm以下を減少、6~25bpmを中等度(正常)、26bpm以上を増加とする。本図では心拍数のラインがほぼ平らで細かい揺れが見えないので、細変動消失と判定する。細変動は、胎児の自律神経(交感神経と副交感神経)が心拍を調節していることを表す。これが消えている場合は、胎児の中枢神経が低酸素・アシドーシスで抑えられていることを示唆する。ただし、胎児の睡眠周期や、母体に投与した薬(鎮静薬、マグネシウムなど)でも一時的に減少することがある。

  3. ×c.  早発一過性徐脈

    早発一過性徐脈は、子宮収縮に合わせて心拍数がゆっくり下がり、ゆっくり戻る徐脈である。徐脈の最下点が子宮収縮の頂点とほぼ同じ時期にあるのが特徴である。分娩中に児頭が圧迫され、迷走神経反射が起こることで生じるもので、胎児の状態が悪いことを示す所見ではない。本図では、徐脈の最下点が子宮収縮の頂点よりも後にずれているので、早発ではない。

  4. ○d.  遅発一過性徐脈

    遅発一過性徐脈は、子宮収縮に伴って心拍数がゆっくり下がり、ゆっくり戻る徐脈である。徐脈の最下点が子宮収縮の頂点より遅れて現れ、多くは子宮収縮が終わったあとに回復する。「ゆっくり」とは、下がり始めから最下点までが30秒以上かかることを指す。本図では、子宮収縮のたびにこの形の徐脈が繰り返し出ている。子宮収縮で胎盤への血流が一時的に減ったとき、胎盤の機能が下がっていて余力のない胎児が低酸素になることで起こる。そのため、胎児の状態が悪いことを示す重要な所見である。

  5. ×e.  変動一過性徐脈

    変動一過性徐脈は、心拍数が急に下がる徐脈である。下がり始めから最下点までが30秒未満で、15bpm以上下がり、始まってから元に戻るまでが15秒以上2分未満のものをいう。主な原因は臍帯の圧迫である。形や深さ、子宮収縮との時間関係が回ごとに違うことが多い。本図の徐脈は、ゆっくり下がってゆっくり戻り、毎回同じような形で子宮収縮より遅れて出ているので、変動一過性徐脈ではない。

一過性徐脈の4分類

・早発一過性徐脈:心拍数がゆっくり下がる(最下点まで30秒以上)。最下点が子宮収縮の頂点と一致する。児頭圧迫による迷走神経反射で起こり、良性である。 ・遅発一過性徐脈:心拍数がゆっくり下がる。最下点が子宮収縮の頂点より遅れる。胎盤機能が下がり、子宮胎盤循環で胎児に十分な酸素が届かないことで起こる。 ・変動一過性徐脈:心拍数が急に下がる(最下点まで30秒未満)。15bpm以上下がり、15秒以上2分未満続く。臍帯圧迫が主な原因である。 ・遷延一過性徐脈:15bpm以上下がった状態が2分以上10分未満続く。10分以上続く場合は基線が変わったもの(徐脈)として扱う。

判読のコツ

早発と遅発はどちらもゆっくり下がる徐脈なので、形だけでは区別できない。子宮収縮の頂点と徐脈の最下点、この2点の時間関係だけを比べると区別しやすい。変動一過性徐脈は、急に下がることで見分ける。

胎児心拍数波形のレベル分類(日本産科婦人科学会)

レベル1(正常波形)からレベル5(異常波形・高度)までの5段階で評価し、レベルごとに対応の目安が決められている。判定の中心になるのは基線細変動である。細変動が消失しているときに、遅発一過性徐脈・変動一過性徐脈・遷延一過性徐脈などが繰り返し出ていれば、レベル5と判定する。レベル5では急速遂娩を実施する(または、すぐに実施できる体制のもとで分娩を進める)。

POINT

・CTGは「基線→基線細変動→一過性頻脈→一過性徐脈」の順に読む ・基線の正常は110~160bpm(徐脈は基線が110bpm未満の状態) ・基線細変動:消失(目で見えない)、減少(5bpm以下)、中等度(6~25bpm、正常)、増加(26bpm以上) ・早発と遅発は、子宮収縮の頂点と徐脈の最下点の時間関係で区別する。変動一過性徐脈は急に下がる ・基線細変動の消失に遅発一過性徐脈が繰り返し加わると、レベル5(胎児アシドーシスを強く疑う)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。