2×Na+血糖/18+BUN/2.8―3つの項で読み解く血漿浸透圧
第114回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
尿素窒素28mg/dL,血糖90mg/dL,Na 125mEq/L。 計算による血漿浸透圧(mOsm/kgH2O)の推定値はどれか。
- a.245
- b.255
- c.265
- d.275
- e.285
対話形式の解説
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ドクターまとめ
推定血漿浸透圧は「2×Na+血糖/18+BUN/2.8」で求められ、本問では250+5+10=265 mOsm/kgH2Oとなり、基準値(約275〜295)を下回る低浸透圧の状態です。Naを2倍するのは対になる陰イオンを含めるため、血糖の18はブドウ糖の分子量180、BUNの2.8は尿素に含まれる窒素2原子分の28に由来し、いずれもmg/dLをmmol/Lに換算する「×10÷分子量」の操作です。低ナトリウム血症ではまず浸透圧を確認し、低浸透圧性か、高血糖などによる高浸透圧性か、偽性低ナトリウム血症かを見分けることが鑑別の第一歩になります。また、実測値との差である浸透圧ギャップの開大はアルコール類などの中毒を示唆し、尿素は細胞膜を自由に通過するため有効浸透圧(張度)には寄与しません。式の成り立ちを理解しておくことで、計算ミスを防ぐだけでなく、電解質異常や中毒の評価にも応用できるようになります。
解答・解説
正解はcです
血漿浸透圧は、血漿1kgの水に溶けている溶質粒子の総数を表す指標で、浸透圧計で実測できるが、日常診療では血液検査値から次の推定式で求めることが多い。 血漿浸透圧(mOsm/kgH2O)= 2 × Na(mEq/L)+ 血糖(mg/dL)/18 + 尿素窒素(BUN, mg/dL)/2.8
式の考え方
・Na:血漿中の陽イオンの大部分はNa+であり、陽イオンと同じ数だけ陰イオン(主にCl-とHCO3-)が存在する。そこでNa濃度を2倍して、電解質全体による浸透圧の代表値とする。 ・血糖:ブドウ糖の分子量は180である。mg/dLをmmol/Lに換算するには、まず10倍してmg/Lにし、分子量180で割る。すなわち「×10÷180」=「÷18」となる。 ・尿素窒素:検査値は尿素そのものではなく、尿素1分子に含まれる窒素2原子分の重さ(14×2=28)で表される。同様に「×10÷28」=「÷2.8」でmmol/Lに換算する。
本問の計算
・2 × Na = 2 × 125 = 250 ・血糖/18 = 90 ÷ 18 = 5 ・BUN/2.8 = 28 ÷ 2.8 = 10 合計:250 + 5 + 10 = 265 mOsm/kgH2O したがって推定血漿浸透圧は265であり、基準値(およそ275〜295 mOsm/kgH2O)より低い低浸透圧の状態にある。Na 125mEq/Lの低ナトリウム血症に伴う低浸透圧血症と解釈できる。
選択肢考察
- ×a. 245
誤り。正しく計算すると265となる。245は、2×Na=250から血糖の寄与分(90/18=5)を誤って引いた場合(250−5=245)、あるいは血糖の寄与分を加えたうえで尿素窒素の寄与分(28/2.8=10)を誤って引いた場合(250+5−10=245)に得られる値である。推定式では電解質・ブドウ糖・尿素の寄与をすべて足し合わせるので、どの項も差し引くことはない。
- ×b. 255
誤り。255は、2×Na(250)に血糖の寄与分(90/18=5)だけを加え、尿素窒素の寄与分(28/2.8=10)を加え忘れた場合の値である。推定式ではNa、ブドウ糖、尿素の3つをすべて足し合わせる必要がある。
- ○c. 265
正しい。2×125(=250)+90/18(=5)+28/2.8(=10)=265 mOsm/kgH2Oとなる。電解質の寄与をNaの2倍で代表させ、非電解質の主要な溶質であるブドウ糖と尿素の寄与を、それぞれの分子量(ブドウ糖180、尿素窒素として28)を用いてmg/dLからmmol/Lに換算して加えたものである。
- ×d. 275
誤り。正しく計算すると265となる。275は、尿素窒素の寄与を誤って2倍に見積もる(28/1.4=20)など換算を誤った場合に得られうる値であり、推定値としては正しくない。なお275はおおむね血漿浸透圧の基準範囲の下限付近に相当する。
- ×e. 285
誤り。285は血漿浸透圧の基準範囲内(およそ275〜295)の代表的な値であり、Naが正常(140mEq/L前後)の場合に近い値である。本問ではNaが125mEq/Lと低いため、推定浸透圧は265と低値になる。
血漿浸透圧の基準値と浸透圧ギャップ
・基準値はおよそ275〜295 mOsm/kgH2O(施設により若干異なる)。 ・浸透圧ギャップ=実測浸透圧 − 計算浸透圧。正常では約10以下である。ギャップが大きい場合は、式に含まれない浸透圧物質(エタノール、メタノール、エチレングリコール、マンニトールなど)の存在を疑う。中毒診療で重要な指標となる。
有効浸透圧(張度)
・尿素は細胞膜を自由に通過するため、細胞内外の水の移動にはほとんど関与しない(無効浸透物質)。 ・水の移動を左右する有効浸透圧(張度)は、2×Na+血糖/18 で近似される。腎不全でBUNが高いと計算浸透圧は上がるが、張度は上がらない。
低ナトリウム血症の評価における浸透圧
・低浸透圧性(大部分):SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、副腎不全、甲状腺機能低下症、利尿薬、水中毒など。 ・等浸透圧性(偽性低ナトリウム血症):高度の脂質異常症や高蛋白血症により、測定上Naが低く出る。 ・高浸透圧性:高血糖やマンニトール投与により細胞内から水が移動し、Naが希釈される。 低ナトリウム血症をみたら、まず血漿浸透圧を確認して低浸透圧性かどうかを判断することが鑑別の第一歩である。
換算の覚え方
mg/dLをmmol/Lに換算するには「×10÷分子量」、つまり「÷(分子量/10)」とする。ブドウ糖(180)は÷18、尿素窒素(28)は÷2.8となる。
POINT
・推定血漿浸透圧=2×Na+血糖/18+BUN/2.8 ・2×125+90/18+28/2.8=250+5+10=265 ・ブドウ糖の分子量180、尿素窒素は窒素2原子分で28。 ・基準値は約275〜295。浸透圧ギャップ(実測−計算)が大きいときはアルコール類などの存在を疑う。 ・有効浸透圧(張度)には尿素は寄与しない。
