StudyMed医師国家試験

片脚に体重をかけずに外を歩く―「支える点の数」で選ぶ松葉杖の理由

第113回医師国家試験 F問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第33問

歩行補助具の写真(①~⑤)を別に示す。  片側下肢に全く荷重させない完全免荷として屋外歩行するのに最も適しているのはどれか。

第113回 F問題 第33問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真に示された5種類の歩行補助具から、片側下肢を完全免荷にして屋外を歩くのに最適なものを選ぶ問題だ。着眼点は2つ。患側の脚の代わりに体重を受け止められるだけの支持性があるか、そして段差や傾斜のある屋外で安定して使えるか。まず「完全免荷」とはどういう状態か確認しておこう。
医学生医学生
患側の脚を床につかない、つまり体重を全くかけないということですよね。骨折の術後などで指示されるイメージです。
ドクタードクター
その通り。患側の脚を使えないぶん、健側の脚と左右の補助具とで交互に体重を支えて進むことになる。だから補助具には、上肢を介して体重の大部分を確実に受け止める力が求められるんだ。写真の補助具を順に見ていこう。座面とハンドブレーキの付いた四輪の歩行車、車輪のない4本脚のフレーム型歩行器、腋窩当てと握りのある松葉杖、基部が4本脚に分かれた四点杖、前腕カフと握りのあるロフストランドクラッチの5つだ。
医学生医学生
安定性でいえば、両手で使う歩行器が一番に見えます。リハビリテーション科の実習でも、高齢の方が歩行器で病棟を歩いていました。
ドクタードクター
いいところに目をつけたね。歩行器は支持基底面が広いから安定性は高い。ただ、今回は「屋外」がポイントだ。車輪付きの歩行車は押して進むので体力の落ちた人でも楽に歩けるけれど、体重を強くかけると前に転がってしまう。両脚で歩けることが前提の道具なんだ。
医学生医学生
車輪のないフレーム型なら転がらないので、免荷にも使えそうですが。
ドクタードクター
実際、平坦な屋内なら免荷歩行の練習に使われることもある。でも4本の脚が同じ平面にそろって接地しないと安定しないから、段差や傾斜、凹凸の多い屋外では使いにくい。毎回持ち上げて前に置く動作も必要で、長い距離の移動には向かないんだ。
医学生医学生
では四点杖はどうでしょう。普通のT字杖よりしっかりしていますよね。
ドクタードクター
四点杖は自立して立つほど安定していて、片麻痺の患者さんが健側の手で持つことが多い。ただ、分類上は握りだけで支える杖、いわゆるケインに入る。ケインの役割は体重の一部を分散することで、全体重を受け止めることはできない。それに4本の脚が平らな面に同時に接地しないとぐらつくから、やはり屋外向きではない。
医学生医学生
握りだけでは足りないとなると、握り以外にも支える部分があるクラッチの出番ですね。松葉杖とロフストランドクラッチで迷いました。
ドクタードクター
そこが本問の核心だ。クラッチは握りともう1か所の2点で上肢を固定するから支持性が高く、どちらも免荷歩行に使われる。違いは2点目の位置。松葉杖は腋窩付近と手で支えるので上肢全体で体重を受けられ、歩行補助具の中で最も支持性が高い。ロフストランドクラッチは前腕カフと手で支えるから、体重は主に手と前腕で受けることになり、十分な上肢筋力と慣れが必要なんだ。
医学生医学生
だから正解は松葉杖なんですね。1本ずつ独立して動かせるので、段差や傾斜にも合わせやすいということですか。
ドクタードクター
そう。軽くて操作しやすく、屋外での完全免荷歩行に最も適している。ロフストランドクラッチは腋窩を圧迫しないし、手を離してもカフで腕に保持されるから、長期の使用者や両下肢に障害のある人に好まれる。用途の違いとして覚えておくといい。
医学生医学生
整形外科の実習で、松葉杖の脇当てに体重を預けてはいけないと教わったのを思い出しました。
ドクタードクター
大事なポイントだね。松葉杖は腋窩ではなく握りで体重を支えるのが原則で、腋窩に体重をかけ続けると橈骨神経などが圧迫されて神経麻痺を起こすことがある。いわゆる松葉杖麻痺だ。だから長さの合わせ方も重要で、腋窩当てと腋窩の間に2〜3横指ほどの隙間をとり、握りは肘が軽く曲がる大転子付近の高さにするのが目安だよ。
医学生医学生
歩き方はどうなりますか。OSCEの練習では杖歩行の介助しかやっていなくて。
ドクタードクター
完全免荷では、両松葉杖と患肢を同時に前に出し、杖に体重を預けて健側の脚を振り出す3点歩行が基本だ。部分荷重が許可されたら、患肢にかける荷重を段階的に増やしていく。階段は、昇りは健側の脚から、降りは松葉杖と患側の脚から出すのが原則。健側で持ち上げ、降りるときは患側を先に下ろす、と覚えるとわかりやすい。
医学生医学生
支持性は松葉杖、ロフストランドクラッチ、四点杖、T字杖の順で、歩行器は安定しているけれど屋内向き、と整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。補助具の選択は、荷重制限の指示、使う場所、上肢の筋力やバランス能力を合わせて考える。手や手関節に負担をかけられない関節リウマチの患者さんには、前腕を台に載せるプラットホーム杖という選択肢もある。処方する立場になったら、患者さんの生活の場面まで想像して選んでほしい。

まとめ

片側下肢の完全免荷で歩くには、患側の脚の代わりに上肢で体重の大部分を支える必要があり、屋外では段差や傾斜にも対応できなければなりません。腋窩付近と手の2点で上肢全体を使って体重を受ける松葉杖は歩行補助具の中で最も支持性が高く、1本ずつ操作できるため屋外の完全免荷歩行に最も適しています。握りだけで支える四点杖やT字杖は体重の一部を分散するにとどまり、ロフストランドクラッチは免荷に使えるものの支持性は松葉杖に劣り、歩行器や歩行車は主に平坦な屋内向きです。松葉杖は腋窩ではなく握りで体重を支えるのが原則で、腋窩の圧迫は神経麻痺の原因になるため、長さの調整と3点歩行・階段昇降の指導もあわせて押さえておきましょう。補助具の特徴を支持性と使用環境の両面から理解しておくことは、術後リハビリテーションや退院支援の場面で適切な処方を行う土台になります。

解答・解説

正解はcです

写真の歩行補助具

①四輪の車輪と座面・ハンドブレーキを備えた歩行車(四輪型歩行器、ロレーター) ②4本の脚をもつフレーム型の歩行補助具(車輪のない固定型の歩行器。高さの異なる2段のグリップをもち、立ち上がりの補助にも使える) ③腋窩(わきの下)当てと握りをもつ腋窩支持型クラッチ(松葉杖) ④基部が4本脚に分かれた四点杖(四脚杖) ⑤前腕カフと握りをもつ前腕支持型クラッチ(ロフストランドクラッチ)

設問の考え方

「片側下肢の完全免荷」とは、患側の脚に体重を一切かけないことである。この状態で歩くには、患側脚の代わりに体重を受け止める支点が必要で、健側の脚と左右の補助具とで交互に体重を支える(両松葉杖での3点歩行:両杖と患肢を同時に前に出し、杖に体重を預けて健側脚を振り出す方法など)。そのため補助具には、①体重の大部分を上肢を介して確実に支えられること、②屋外の段差や傾斜、不整地でも安定して接地できること、が求められる。 補助具は、片手で使う杖類と両手で使う歩行器類に大別され、杖類はさらに握りだけで支える杖(ケイン)と、握り以外にも支持部をもつクラッチに分けられる。握りだけで支える杖は体重の一部を分散するのが役割で、完全免荷には向かない。クラッチは2点で上肢を固定するため支持性が高く、免荷歩行に用いられる。中でも松葉杖は腋窩付近と手の2点で支え、上肢全体で体重を受けられるため最も支持性が高い。1本ずつ独立して操作でき、段差や傾斜にも対応しやすいので、屋外で完全免荷歩行を行うのに最も適している。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は車輪付きの歩行車である。押して進むので体力の落ちた高齢者などが楽に歩けるが、車輪があるため体重を強くかけると前方へ転がってしまい、片脚に代わって全体重を支える用途には向かない。両脚で歩けることを前提とした補助具であり、段差や不整地の多い屋外での完全免荷歩行には適さない。

  2. ×b.  ②

    ②は車輪のない4本脚のフレーム型歩行補助具である。持ち上げて前に置き、広い支持基底面で体を支えるため、平坦な屋内であれば免荷歩行の練習に使われることもある。しかし4本の脚がすべて同一平面に接地しないと安定しないので、段差・傾斜・凹凸のある屋外での使用には適さず、持ち上げ動作を繰り返すため長距離の移動にも不向きである。

  3. ○c.  ③

    ③は松葉杖(腋窩支持型クラッチ)である。腋窩付近と握りの2点で上肢を固定し、上肢全体で体重を支えられるため、歩行補助具の中で最も支持性が高い。2本を使えば健側脚と交互に体重を受け持ち、患側脚を全く接地させない完全免荷歩行ができる。軽量で1本ずつ操作でき、段差や傾斜にも対応しやすいため、屋外歩行に最も適している。なお体重は腋窩ではなく手の握りで支えるのが原則で、腋窩に体重をかけ続けると腋窩神経・橈骨神経などの圧迫による神経麻痺(松葉杖麻痺)を起こすことがある。

  4. ×d.  ④

    ④は四点杖である。基部が4本脚で広いため、通常のT字杖より自立性・安定性が高く、片麻痺患者などが健側の手で持って使うことが多い。しかし握りだけで支える杖(ケイン)であり、体重の一部を分散させる補助にとどまるので完全免荷はできない。また4本の脚が平らな面に同時に接地しないとぐらつくため、凹凸のある屋外では使いにくい。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤はロフストランドクラッチ(前腕支持型クラッチ)である。前腕カフと握りの2点で支えるため、握りだけの杖より支持性が高く、免荷歩行にも用いられる。腋窩を圧迫せず、手を離してもカフで前腕に保持されるため、長期使用者や両下肢障害者に好まれる。ただし体重は主に手と前腕で受けるので、腋窩付近と手で支える松葉杖に比べると支持性が劣り、十分な上肢筋力と習熟を要する。一般的な完全免荷の屋外歩行に「最も」適するのは松葉杖である。

歩行補助具の分類

・杖(片手で使用)  ケイン:握りだけで支える。T字杖、多点杖(三点杖・四点杖)など。  クラッチ:握りと他の部位の2点で支える。松葉杖(腋窩支持型)、ロフストランドクラッチ(前腕支持型)、プラットホーム杖(肘から前腕を台に載せて支えるもので、関節リウマチなどで手や手関節に負担をかけられない場合に用いる)など。 ・歩行器(両手で使用)  固定型(持ち上げて前に出す)、交互型(左右のフレームを交互に前に出す)、車輪付きの歩行車(前輪型・四輪型)など。広い支持基底面により安定性を得るが、屋外・段差での使用には制約がある。

支持性と安定性の目安

上肢での体重支持性:松葉杖 > ロフストランドクラッチ > 四点杖 > T字杖。 歩行器は支持基底面が広く安定性は高いが、主に屋内の平坦な場所で用いる。

松葉杖の合わせ方と歩き方

・長さの目安:腋窩当てと腋窩の間に2〜3横指(約5cm)の隙間を設け、握りは肘関節が軽く屈曲する高さ(大転子の高さ付近)とする。 ・完全免荷では3点歩行(両松葉杖と患肢を同時に前に出し、杖で支えて健側脚を振り出す)を用いる。部分荷重が許可されれば、患肢にかける荷重を段階的に増やしていく。 ・階段は、昇りは健側脚から、降りは松葉杖と患側脚から出すのが原則である。

POINT

・片側下肢の完全免荷で屋外歩行 → 両松葉杖(腋窩支持型クラッチ)が最適。 ・握りだけで支える杖(T字杖、四点杖)では完全免荷はできない。 ・ロフストランドクラッチは免荷にも使えるが、支持性は松葉杖に劣る。 ・歩行器・歩行車は主に平坦な屋内向きで、段差や不整地のある屋外歩行には適さない。 ・松葉杖は腋窩でなく握りで体重を支える(腋窩圧迫で神経麻痺の危険)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。