StudyMed医師国家試験

5つの柱のてっぺんにあるもの―健康日本21(第二次)の「最終目標」を構造で読む

第113回医師国家試験 B問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第113回 B問題 第23問

健康日本21(第二次)の最終目標と位置付けられているのはどれか。

  1. a.生活習慣及び社会環境の改善
  2. b.健康寿命の延伸と健康格差の縮小
  3. c.健康を支え,守るための社会環境の整備
  4. d.生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
  5. e.社会生活を営むために必要な機能の維持・向上

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、国民健康づくり運動である健康日本21(第二次)の最終目標を問う問題だ。実は選択肢はすべて、基本方針に掲げられた「基本的な方向」に含まれている。だから単なる暗記ではなく、5つの項目がどんな関係にあるのか、その構造を理解しているかがカギになる。
医学生医学生
全部それらしく見えて迷いました。公衆衛生の講義で聞いたはずなんですが、並列の5項目として覚えてしまっていました。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。5つは並列ではなく、ピラミッドのような階層構造になっている。まず根拠から押さえよう。健康日本21(第二次)は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として、2013年度から始まった運動だ。
医学生医学生
健康増進法は、受動喫煙対策でも出てきた法律ですよね。
ドクタードクター
そう、同じ法律だね。では構造を見ていこう。一番の土台にあるのが、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康という6分野での、生活習慣及び社会環境の改善。これは具体的な取り組みの領域だ。
医学生医学生
生活習慣の改善は、それ自体がゴールのような気もしますけど……。
ドクタードクター
禁煙や減塩はそれ自体大切だけれど、何のためにやるのかを考えてみて。生活習慣を改善するのは、その先にある病気の予防や生活機能の維持のためだよね。だから「手段」の側に位置付けられる。同じく、健康を支え、守るための社会環境の整備も手段だ。個人の努力だけでは限界があるから、地域のつながり、いわゆるソーシャルキャピタルの強化や、企業・民間団体の健康づくりへの参加を促して、社会全体で支えようという考え方だね。
医学生医学生
その上にくるのが、生活習慣病の発症予防と重症化予防でしょうか。
ドクタードクター
その通り。がん、循環器疾患、糖尿病、COPDといったNCD、非感染性疾患を対象に、一次予防に加えて、合併症や症状の進展を防ぐ重症化予防まで徹底しようというもの。もう一つが、社会生活を営むために必要な機能の維持・向上で、こころの健康、次世代の健康、高齢者の健康をライフステージに応じて守ろうという目標だ。ロコモティブシンドロームや低栄養の予防もここに入る。
医学生医学生
この2つが中間目標で、その先にあるのが健康寿命の延伸と健康格差の縮小、ということですね。
ドクタードクター
正解。生活習慣と社会環境を改善し、病気を防ぎ、生活機能を保つ。その結果として実現されるべき「最終的な目標」と基本方針に明記されているのが、健康寿命の延伸と健康格差の縮小なんだ。
医学生医学生
健康寿命と平均寿命の違いを、CBTの勉強で混同しかけたことがあります。
ドクタードクター
大事なところだね。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。平均寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味する。第二次では、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加が目標とされたんだ。単に長生きするだけでなく、元気に過ごせる期間を延ばそうということだね。
医学生医学生
健康格差というのは、どういう差を指すんですか。
ドクタードクター
地域や社会経済状況の違いによって生じる、集団間の健康状態の差のことだ。指標としては都道府県間の健康寿命の差の縮小が掲げられた。所得や学歴、住んでいる地域によって健康状態に差が出る、という健康の社会的決定要因の考え方が背景にある。
医学生医学生
地域医療実習で、通院の手段がなくて受診が遅れる高齢の方の話を聞きました。そういうことも格差につながるんですね。
ドクタードクター
まさにそう。だからこそ個人の努力だけでなく、社会環境の整備が手段として重視されている。発展として、運動の変遷も押さえておこう。1978年の第1次国民健康づくり対策、1988年のアクティブ80ヘルスプラン、2000年度からの健康日本21で一次予防と数値目標が重視され、2002年に健康増進法が制定された。その後が第二次で、当初の10年計画から1年延長されて2023年度まで実施された。
医学生医学生
今はもう次の計画が始まっているんですよね。
ドクタードクター
2024年度から健康日本21(第三次)が始まっている。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンに掲げ、ライフコースアプローチなども新たに盛り込まれたけれど、健康寿命の延伸と健康格差の縮小は引き続き最上位の目標だ。計画が変わってもこの柱は変わらない、と覚えておくといい。
医学生医学生
項目を並べて覚えるより、「何のための手段か」を考えると自然に頂点が見えてきますね。
ドクタードクター
その通り。公衆衛生の施策は、目的と手段の関係で整理すると一気に理解しやすくなる。臨床に出ても、患者さんに禁煙や減塩を勧める一つひとつの関わりが、この大きな目標につながっていると意識できるといいね。

まとめ

健康日本21(第二次)は健康増進法に基づく国民健康づくり運動で、2013年度から2023年度まで実施されました。基本的な方向として5項目が掲げられましたが、これらは並列ではなく、生活習慣及び社会環境の改善と社会環境の整備を土台に、生活習慣病の発症予防・重症化予防と社会生活機能の維持・向上を図り、その結果として最終目標である健康寿命の延伸と健康格差の縮小を実現するという階層構造になっています。健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間であり、健康格差は地域や社会経済状況による集団間の健康状態の差を指します。2024年度からの健康日本21(第三次)でも、健康寿命の延伸と健康格差の縮小は最上位の目標に据えられています。施策を目的と手段の関係で整理する視点は、公衆衛生分野の理解を深め、日々の診療での予防的な関わりの意義を捉えるうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

健康日本21(第二次)は、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として、2013年度から実施された国民健康づくり運動である(当初は2022年度までの10年計画であったが、関連計画との期間をそろえるため1年延長され、2023年度まで実施された)。 この基本方針では、国民の健康の増進に関する基本的な方向として次の5つが掲げられた。 ①健康寿命の延伸と健康格差の縮小 ②生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD〈非感染性疾患〉の予防) ③社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上 ④健康を支え、守るための社会環境の整備 ⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善 これら5つは並列ではなく階層構造をなしている。①は、生活習慣の改善や社会環境の整備によって実現されるべき「最終的な目標」と位置付けられ、②〜⑤はその実現に向けた手段・中間的な目標である。すなわち、個人の生活習慣の改善(⑤)と社会環境の整備(④・⑤)を通じて、生活習慣病の予防(②)と社会生活機能の維持・向上(③)を図り、その結果として健康寿命の延伸と健康格差の縮小(①)を達成する、という構図である。選択肢はすべて基本方針に含まれる項目であるため、この構造を理解しているかが問われている。

選択肢考察

  1. ×a.  生活習慣及び社会環境の改善

    基本的な方向の⑤にあたる。栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康という6分野について、個人の生活習慣とそれを取り巻く社会環境の改善を目指すもので、最終目標を達成するための具体的な取り組みの領域である。

  2. ○b.  健康寿命の延伸と健康格差の縮小

    基本方針において、生活習慣の改善や社会環境の整備によって実現されるべき最終的な目標と明記されている。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」であり、目標は平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加とされた。健康格差は地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差であり、都道府県間の健康寿命の差の縮小が指標とされた。

  3. ×c.  健康を支え,守るための社会環境の整備

    基本的な方向の④にあたる。個人の努力だけでは健康づくりに限界があるため、地域のつながり(ソーシャルキャピタル)の強化、企業・民間団体による健康づくりへの参加促進など、社会全体で個人の健康を支える環境づくりを目指すもので、最終目標を達成するための手段である。

  4. ×d.  生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底

    基本的な方向の②にあたる。がん、循環器疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を対象に、一次予防(発症予防)に加えて合併症の発症や症状の進展を防ぐ重症化予防を重視したものであり、最終目標の実現に向けた中間的な目標である。

  5. ×e.  社会生活を営むために必要な機能の維持・向上

    基本的な方向の③にあたる。こころの健康、次世代の健康(子ども)、高齢者の健康(ロコモティブシンドロームや低栄養の予防など)をライフステージに応じて維持・向上させることを目指すもので、最終目標を達成するための目標の一つである。

わが国の国民健康づくり運動の変遷

・第1次国民健康づくり対策(1978年〜):健康診査の充実、市町村保健センターの整備など ・第2次国民健康づくり対策(1988年〜、アクティブ80ヘルスプラン):運動習慣の普及に重点 ・第3次:健康日本21(2000年度〜):一次予防の重視、具体的な数値目標の設定。2002年に法的基盤として健康増進法が制定された。 ・第4次:健康日本21(第二次)(2013〜2023年度):健康寿命の延伸と健康格差の縮小を最終目標とした。 ・第5次:健康日本21(第三次)(2024年度〜、12年計画):「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとし、基本的な方向として、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりの4つを掲げている。第三次でも健康寿命の延伸と健康格差の縮小は引き続き最上位の目標とされている。

健康寿命

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいう。国民生活基礎調査の「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問への回答などを基に算出される。平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味し、この差を縮めることが医療費・介護費の抑制や生活の質の向上につながる。

POINT

・健康日本21(第二次)の最終目標=健康寿命の延伸と健康格差の縮小。 ・残りの基本的な方向(生活習慣病の発症予防と重症化予防、社会生活機能の維持・向上、社会環境の整備、生活習慣及び社会環境の改善)は最終目標を達成するための手段。 ・根拠法は健康増進法。2024年度からは健康日本21(第三次)が開始され、ここでも健康寿命の延伸と健康格差の縮小が最上位目標である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。