言葉のサラダ、作話、自生思考―精神症状の「名前」と「病態」を結びつける
第112回医師国家試験 F問題 第37問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.感情失禁は適応障害でみられる。
- b.両価性はうつ病に特徴的である。
- c.自生思考は強迫性障害でみられる。
- d.作話はKorsakoff症候群でみられる。
- e.言葉のサラダは統合失調症に特徴的である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
精神症状の用語問題は、定義を正確に思い出し、その症状がどんな病態から生じるかを考えると判断しやすくなります。両価性・自生思考・言葉のサラダはいずれも統合失調症と結びつく症状で、両価性はBleulerの4つのAの一つ、言葉のサラダは連合弛緩が極端になった思考形式の障害、自生思考は自己所属感が薄れる初期症状です。自生思考は、自分の考えと認識し不合理と自覚している強迫性障害の強迫観念とは区別されます。感情失禁は血管性認知症などの器質性精神障害で目立ち、作話はビタミンB1欠乏によるKorsakoff症候群の代表的症状です。用語を病態と結びつけて理解しておくことは、試験対策にとどまらず、精神症状を正確に評価し記録するための基礎になります。
解答・解説
正解はd, eです
本問は、精神症状を表す用語の意味と、それが典型的にみられる疾患との対応を問う知識問題である。 精神症状の多くは複数の疾患にまたがって出現するため、「この症状ならこの疾患」と一対一で対応するものは限られる。その中で、試験で繰り返し問われる組合せは確実に覚えておく必要がある。本問の5つの選択肢のうち、両価性・自生思考・言葉のサラダの3つはいずれも統合失調症と結びつけて理解すべき症状である。 解き方としては、まず各用語の定義を正確に思い出し(例:自生思考=自分の意図と関係なく考えが勝手に浮かんでくる体験)、次にその症状を生む病態(器質的な脳障害か、思考の形式の障害か、自我障害か、など)を考えると、どの疾患と結びつくかが判断しやすい。 ・感情失禁:脳の器質的障害(特に脳血管障害)による情動調節の低下 ・両価性・自生思考・言葉のサラダ:統合失調症の基本症状・思考障害 ・作話:記憶障害を背景とした健忘症候群(Korsakoff症候群など) このように整理すると、適応障害・うつ病・強迫性障害との組合せは誤りであり、作話とKorsakoff症候群、言葉のサラダと統合失調症の組合せが正しいとわかる。
選択肢考察
- ×a. 感情失禁は適応障害でみられる。
感情失禁とは、ささいな刺激で泣いたり笑ったり怒ったりと、感情の表出を抑えられなくなる状態である。情動を調節する脳機能が器質的に障害されることで生じ、脳血管性認知症(血管性認知症)をはじめとする器質性精神障害に特徴的である。適応障害は、明らかなストレス因に反応して抑うつ気分や不安などが生じ、ストレス因がなくなれば改善する心理的反応であり、脳の器質的障害を背景とする感情失禁を特徴とする疾患ではない。なお、偽性球麻痺などでみられる強制泣き・強制笑いも類似した現象である。
- ×b. 両価性はうつ病に特徴的である。
両価性(アンビバレンス)とは、同じ対象に対して「愛しているが憎い」「したいがしたくない」のように、相反する感情・意志・考えが同時に存在する状態である。程度が軽ければ健常者にもみられるが、両者が統合されずに併存し、行動の決定ができなくなるほど著しいものは統合失調症の特徴とされる。Bleulerは連合弛緩・感情障害・自閉と並べて両価性を統合失調症の基本症状(いわゆる4つのA)に挙げた。うつ病の中核は抑うつ気分・興味や喜びの喪失、思考制止、意欲低下などであり、両価性はうつ病に特徴的な症状ではない。
- ×c. 自生思考は強迫性障害でみられる。
自生思考とは、自分では考えようとしていないのに、考えが次々と勝手に浮かんでくる体験であり、統合失調症の初期によくみられる症状である。思考が自分のものであるという感覚(自己所属感)が薄れる点で、自我障害に近い性質をもつ。一方、強迫性障害でみられる強迫観念は、本人の意志に反して繰り返し浮かぶ考えではあるが、本人はそれを「自分の考え」と認識しており、しかも不合理だと自覚して打ち消そうとする(自我異和的)点が異なる。両者を混同しないことが重要である。
- ○d. 作話はKorsakoff症候群でみられる。
作話とは、記憶の欠落した部分を、実際には体験していない内容で埋めて語ることで、本人に嘘をついている自覚はない。Korsakoff症候群は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって乳頭体や視床内側部などが障害されて起こる健忘症候群で、前向性健忘(記銘力障害)、逆向性健忘、見当識障害、作話を特徴とする。慢性アルコール使用障害に伴う低栄養が代表的な原因であり、意識障害・眼球運動障害・小脳性運動失調を3徴とするWernicke脳症に引き続いて生じることが多い。作話はKorsakoff症候群の代表的な症状であり、本選択肢は正しい。
- ○e. 言葉のサラダは統合失調症に特徴的である。
統合失調症では、考えと考えのつながりがゆるむ連合弛緩が起こり、話のまとまりが失われる(思考滅裂、滅裂思考)。これが高度になると、文法的・意味的なつながりのない単語が無秩序に並ぶだけの発話となり、これを言葉のサラダと呼ぶ。さまざまな野菜が混ぜ合わされたサラダにたとえた表現である。思考の形式の障害の極端な形であり、統合失調症に特徴的な症状である。なお、意識障害時の思考のまとまりのなさは「思考散乱」と呼び、区別される。
統合失調症に関連する代表的な症状
・Bleulerの基本症状(4つのA):連合弛緩(Association)、感情障害(Affect)、両価性(Ambivalence)、自閉(Autism) ・Schneiderの1級症状:考想化声、対話性幻聴、自己の行為を批評する幻聴、身体への被影響体験、考想奪取・考想吹入、考想伝播、させられ体験(作為体験)、妄想知覚 ・思考の形式の障害:連合弛緩 → 思考滅裂 → 言葉のサラダ、思考途絶 ・初期症状:自生思考、気付き亢進、緊迫困惑気分など
似た用語の区別
・思考滅裂(統合失調症、意識は清明)と思考散乱(意識障害下) ・自生思考(統合失調症、自己所属感が薄い)と強迫観念(強迫性障害、自分の考えとして自覚し不合理と認識する) ・観念奔逸(躁状態、考えが次々と浮かび話題がそれていくが連想のつながりはある)と思考制止(うつ状態、考えが進まない) ・迂遠(てんかん・認知症などで回りくどいが最終的には目的に達する)
器質性・症状性の精神症状
・感情失禁:血管性認知症など ・作話:Korsakoff症候群(ビタミンB1欠乏)、前交通動脈瘤破裂後、認知症など ・Wernicke脳症:意識障害、眼球運動障害、小脳性運動失調。ビタミンB1の速やかな投与が必要で、ブドウ糖を先に投与すると悪化しうる。
適応障害・うつ病・強迫性障害の要点
・適応障害:明らかなストレス因に反応して情緒面・行動面の症状が出現し、ストレス因が去れば通常は改善する。 ・うつ病:抑うつ気分、興味・喜びの喪失、思考制止、罪業妄想・貧困妄想・心気妄想(微小妄想)など。 ・強迫性障害:強迫観念と強迫行為。本人は不合理と認識している(自我異和性)。
POINT
・感情失禁は器質性精神障害、特に血管性認知症で目立つ。 ・両価性、自生思考、言葉のサラダはいずれも統合失調症と結びつける。 ・自生思考(統合失調症)と強迫観念(強迫性障害)は、自己所属感と不合理性の自覚の有無で区別する。 ・作話はKorsakoff症候群の代表的症状(記銘力障害・見当識障害・逆向性健忘・作話)。原因はビタミンB1欠乏で、Wernicke脳症に続発しやすい。
