誰のためでもなく、みんなのために―エレベーターに学ぶユニバーサルデザインの本質
第112回医師国家試験 F問題 第29問
国試問題にチャレンジ
ユニバーサルデザインの例として適切なのはどれか。
- a.回転ドアの設置
- b.地下歩道の整備
- c.エレベーターの設置
- d.エスカレーターの設置
- e.障害者(児)施設の設置
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
ユニバーサルデザインとは、年齢・障害の有無・体格・性別・国籍などにかかわらず、設計の段階から誰もが特別な調整なしに使えるよう施設や製品、情報を整える考え方であり、既存の障壁を後から取り除くバリアフリーとは発想が異なります。エレベーターは車椅子使用者から健常者までほぼ全員がそのまま利用できるため代表例となり、車椅子では使えないエスカレーター、挟まれる危険のある回転ドア、階段のみの地下歩道、対象を限定する障害者施設は該当しません。多目的トイレ、ノンステップバス、ピクトグラムなども身近な例で、7原則に照らして考えると判断しやすくなります。ユニバーサルデザインはノーマライゼーションの理念を環境面から支えるものであり、多様な患者が訪れる医療現場でも、設備や情報提供のあり方を考えるうえで欠かせない視点です。
解答・解説
正解はcです
ユニバーサルデザイン(universal design)とは、年齢、障害の有無、体格、性別、国籍・言語などの違いにかかわらず、はじめから「できるだけ多くの人が、特別な調整なしに使える」ように施設・製品・情報・環境を設計するという考え方である。米国の建築家ロナルド・メイス(Ronald Mace)が1980年代に提唱した。 これとよく比較されるのがバリアフリーである。バリアフリーは、高齢者や障害者などにとって既に存在する障壁(段差など)を後から取り除くという発想で、対象者を特定したうえでの対策という側面が強い。一方、ユニバーサルデザインは対象者を限定せず、設計の段階から全ての人を想定する点が異なる。 本問では、各選択肢について「車椅子使用者、歩行が不安定な高齢者、ベビーカーを押す人、大きな荷物を持つ人、視覚障害者、子ども、外国人など、多様な利用者がそのまま安全・容易に使えるか」「特定の人だけを対象にしていないか」という観点で判断すればよい。この条件を満たすのはエレベーターである。
選択肢考察
- ×a. 回転ドアの設置
回転ドアは空調効率や防風には優れるが、一定の速度で回る狭い区画に合わせて出入りする必要がある。車椅子やベビーカーの利用者は通過が難しく、歩行の遅い高齢者や子どもは挟まれる危険もある(実際に回転ドアでの重大事故も起きている)。多くの人が安全に使えるとはいえず、ユニバーサルデザインの例ではない。
- ×b. 地下歩道の整備
地下歩道は道路を横断せずに移動できる利点があるが、出入口が階段だけであれば車椅子使用者や歩行困難者は利用できない。スロープやエレベーターなど段差のない移動手段を併設してはじめて誰もが使える通路になるのであり、地下歩道の整備そのものはユニバーサルデザインの例とはいえない。
- ○c. エレベーターの設置
エレベーターは、車椅子使用者、杖を使う高齢者、妊婦、ベビーカーや重い荷物を持つ人、健常者まで、ほぼ全ての人が同じ設備をそのまま利用できる。さらに、低い位置の操作ボタン、点字表示、音声案内、鏡の設置などを組み合わせることで、視覚障害者や車椅子使用者にも使いやすくなる。利用者を限定せず多くの人が使いやすいという点で、ユニバーサルデザインの代表例である。
- ×d. エスカレーターの設置
エスカレーターは多くの歩行者の上下移動を楽にするが、車椅子のままでは原則として利用できず、動く段に乗り移るタイミングを取りにくい高齢者やバランス障害のある人には転倒の危険がある。利用できない人が一定数存在するため、ユニバーサルデザインの例とはいえない。
- ×e. 障害者(児)施設の設置
障害者(児)施設は、障害のある人という特定の対象者のために設けられる施設である。福祉的に重要ではあるが、「対象を限定せず、全ての人が使えるようにする」というユニバーサルデザインの考え方とは方向性が異なる。
ユニバーサルデザインの7原則(ロナルド・メイスらによる)
1.公平な利用:誰でも同じように使える 2.利用における柔軟性:使い方を選べる(右利き・左利きの両方に対応するなど) 3.単純で直感的な利用:経験や言語能力に関係なく使い方がわかる 4.認知できる情報:必要な情報が視覚・聴覚・触覚など複数の手段で伝わる 5.失敗に対する寛大さ:誤った操作をしても危険が生じにくい 6.少ない身体的な努力:無理な姿勢や大きな力を必要としない 7.接近や利用のための大きさと空間:体格や姿勢、移動手段にかかわらず使える空間がある
身近な例
多目的(多機能)トイレ、段差のない出入口とスロープ、自動ドア(引き戸式)、ノンステップバス、ピクトグラム(絵文字による案内表示)、シャンプー容器の側面のギザギザ(目を閉じていてもリンスと区別できる)、大きく押しやすいスイッチ、温水洗浄便座の操作部の凹凸表示など。
バリアフリーとの違い
バリアフリー:既存の障壁を取り除く。主な対象は高齢者・障害者など特定の人。例として既存の階段に後付けする階段昇降機など。 ユニバーサルデザイン:最初から全ての人を想定して設計する。対象を限定しない。 日本では、高齢者や障害者などの移動・施設利用の円滑化を目的として「バリアフリー法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が定められている。
ノーマライゼーションとの関連
障害のある人も地域で普通の生活を送れる社会を目指す理念をノーマライゼーションという。ユニバーサルデザインは、この理念を環境づくりの面から実現する方法の一つと位置づけられる。
POINT
・ユニバーサルデザイン=年齢・障害・体格・性別・国籍などにかかわらず、はじめから誰もが使えるように設計すること ・バリアフリー=既存の障壁を後から取り除くこと(対象者を想定した対策) ・特定の人だけを対象とする施設・製品はユニバーサルデザインではない ・回転ドアやエスカレーターなど、車椅子使用者や高齢者が使いにくい・危険なものは該当しない ・代表例:エレベーター、多目的トイレ、ノンステップバス、ピクトグラム
