「障壁を除く」か「最初から作らない」か―ノーマライゼーション・バリアフリー・ユニバーサルデザインを整理する
第119回医師国家試験 C問題 第25問
国試問題にチャレンジ
( ア )とは,障害者が健常者と同じように家庭や地域で共に生活することを目指す理念である。その手段として物理的,社会的障壁の除去を目的とする( イ ),障害の有無にかかわらず誰もが快適な環境を目指す( ウ )などがある。 ア~ウの組合せで正しいのはどれか。 (ア) (イ) (ウ) a リハビリテーション バリアフリー ノーマライゼーション b リハビリテーション ユニバーサルデザイン バリアフリー c ノーマライゼーション バリアフリー ユニバーサルデザイン d ノーマライゼーション ユニバーサルデザイン バリアフリー e ノーマライゼーション リハビリテーション ユニバーサルデザイン
- a.リハビリテーションバリアフリーノーマライゼーション
- b.リハビリテーションユニバーサルデザインバリアフリー
- c.ノーマライゼーションバリアフリーユニバーサルデザイン
- d.ノーマライゼーションユニバーサルデザインバリアフリー
- e.ノーマライゼーションリハビリテーションユニバーサルデザイン
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
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ドクターまとめ
ノーマライゼーションは、障害者が健常者と同じように家庭や地域で共に生活できる社会を目指す理念で、デンマークのバンク-ミケルセンが提唱しました。その実現手段として、既存の物理的・制度的・文化情報面・意識上の障壁を後から取り除くのがバリアフリー、年齢や障害の有無にかかわらず最初から誰もが使いやすいよう設計するのがユニバーサルデザインです。リハビリテーションは障害のある個人の機能や社会参加の回復をはかる手段であり、社会のあり方を示す理念とは区別されます。「理念か手段か」「個人か社会か」「後から除くか最初から作らないか」という軸で整理すると、用語の取り違えを防げます。患者の退院支援や地域生活を考えるうえでも、個人へのアプローチと環境へのアプローチを両輪で捉える視点は欠かせません。
解答・解説
正解はcです
テーマ
障害者福祉の基本となる3つの用語、ノーマライゼーション・バリアフリー・ユニバーサルデザインの意味と、それらの関係を問う問題である。
考え方
まず(ア)は「障害者が健常者と同じように家庭や地域で共に生活することを目指す理念」である。これは社会のあり方についての「理念」であり、ノーマライゼーションが該当する。リハビリテーションは個人の機能・能力や社会参加の回復をはかる「過程・手段」であって、社会全体の目指す姿を示す理念ではないので、(ア)には入らない。この時点で選択肢はc・d・eに絞られる。 次に、理念を実現する手段として2つが挙げられている。 ・(イ)「物理的,社会的障壁の除去を目的とする」:すでに存在する障壁(バリア)を取り除く発想であり、バリアフリーである。 ・(ウ)「障害の有無にかかわらず誰もが快適な環境を目指す」:はじめから誰にとっても使いやすいように設計する発想であり、ユニバーサルデザインである。 バリアフリーは「障害のある人を対象に、後から障壁を除く」、ユニバーサルデザインは「すべての人を対象に、最初から障壁を作らない」という違いを押さえれば、(イ)と(ウ)を取り違えることはない。よって、ア=ノーマライゼーション、イ=バリアフリー、ウ=ユニバーサルデザインの組合せとなる。
選択肢考察
- ×a. リハビリテーションバリアフリーノーマライゼーション
(ア)をリハビリテーションとしている点が誤りである。リハビリテーションは、障害のある人が身体的・精神的・社会的に最も適した機能水準を獲得し、自らの人生を変革していくための手段・過程であり、地域で共に生活する社会を目指す理念ではない。また(ウ)のノーマライゼーションは理念そのものであり、「誰もが快適な環境を目指す」手段(設計の考え方)を指す語ではない。
- ×b. リハビリテーションユニバーサルデザインバリアフリー
(ア)をリハビリテーションとしている点が誤りである。さらに(イ)と(ウ)も逆になっている。物理的・社会的障壁の「除去」を目的とするのはバリアフリーであり、障害の有無を問わず誰もが使いやすい環境を最初から目指すのがユニバーサルデザインである。
- ○c. ノーマライゼーションバリアフリーユニバーサルデザイン
障害者が地域で健常者と同様に生活できる社会を目指す理念はノーマライゼーションである。その実現手段として、既存の段差・制度・情報・意識などの障壁を取り除くのがバリアフリー、年齢・性別・障害の有無などにかかわらず誰もが利用しやすいよう最初から設計するのがユニバーサルデザインである。3つすべてが文中の説明と一致するので正しい。
- ×d. ノーマライゼーションユニバーサルデザインバリアフリー
(ア)のノーマライゼーションは正しいが、(イ)と(ウ)が逆である。「障壁の除去」はバリアフリー、「誰もが快適な環境」はユニバーサルデザインの説明である。ユニバーサルデザインは障壁を取り除くというより、そもそも障壁を生じさせない設計思想である。
- ×e. ノーマライゼーションリハビリテーションユニバーサルデザイン
(ア)のノーマライゼーションと(ウ)のユニバーサルデザインは正しいが、(イ)のリハビリテーションが誤りである。リハビリテーションは障害のある個人に働きかけて機能や生活能力の回復・向上をはかるものであり、社会の側にある物理的・社会的障壁を除去することを目的とする概念ではない。
ノーマライゼーション
1950年代にデンマークのバンク-ミケルセンが知的障害者の処遇改善運動の中で提唱し、1959年の同国の法律に盛り込まれた。その後スウェーデンのニィリエが「1日・1週間・1年の普通のリズム」などの原則に整理して広めた。障害者を特別な施設に隔離するのではなく、地域社会で普通の生活を送れるようにするという考え方であり、1981年の国際障害者年のテーマ「完全参加と平等」にもつながっている。理念の内容として、一般市民と同等の生活の実現、社会的自立、生活の質〈QOL〉の向上、社会の理解の促進などが挙げられる。
バリアフリー
障害者白書(1995年版)では、障害者を取り巻く障壁を次の4つに整理している。 ・物理的な障壁:段差、狭い通路、使いにくい交通機関など ・制度的な障壁:資格・免許取得の制限、入学・就職の制限など ・文化・情報面の障壁:点字・手話・字幕などの不足による情報の得にくさ ・意識上の障壁:偏見、無理解、差別など 日本ではハートビル法と交通バリアフリー法を統合したバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、2006年)が制定されている。
ユニバーサルデザイン
米国の建築家ロナルド・メイスが1980年代に提唱した。7原則として、①誰でも公平に使える、②使う上での柔軟性(自由度)が高い、③使い方が簡単で直感的にわかる、④必要な情報がすぐ理解できる、⑤ミスや危険につながりにくい(安全性)、⑥身体的な負担が少ない、⑦接近や利用に十分な大きさと空間が確保されている、が挙げられる。例として、段差のない低床バス、多機能トイレ、シャンプー容器の側面の凹凸などがある。
リハビリテーション
語源は「再び適した状態にする」であり、医学的・教育的・職業的・社会的リハビリテーションに分けられる。障害のある個人の能力や社会参加の回復を目指す手段であり、社会の側を変えるノーマライゼーションとは視点が異なる。
POINT
・ノーマライゼーション=障害者が地域で健常者と同じように暮らせる社会を目指す「理念」。 ・バリアフリー=既存の物理的・制度的・文化情報的・意識上の障壁を「除去」する。 ・ユニバーサルデザイン=障害の有無にかかわらず、最初から「誰もが」使いやすいように設計する(7原則)。 ・リハビリテーションは個人の機能・能力回復の手段であり、理念ではない。
