StudyMed医師国家試験

9kgの1歳児は何kcal食べる?―「体重×100」で読み解く小児のエネルギー必要量

第112回医師国家試験 E問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第3問

成長および発達に異常を認めない体重9kgの1歳0か月の男児が1日に必要とするエネルギー量(kcal)はどれか。

  1. a.600
  2. b.900
  3. c.1,200
  4. d.1,500
  5. e.1,800

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は小児の栄養、1日に必要なエネルギー量を見積もる問題だ。計算自体はシンプルだけれど、ポイントは「小児は体重あたりで考える」こと、そして「年齢が低いほど体重あたりの必要量が多い」ことの2つ。まずは成人の必要量から思い出してみよう。
医学生医学生
成人は体重1kgあたり30〜40kcalくらいでしたよね。9kgなら300kcal前後……さすがに少なすぎる気がします。
ドクタードクター
いい違和感だね。成人の数字をそのまま当てはめると大きく外れてしまう。小児は体重あたりのエネルギー必要量が成人よりずっと多いんだ。理由は何だと思う?
医学生医学生
成長しているからでしょうか。体を作る分のエネルギーが要るというイメージです。
ドクタードクター
その通り。成人と違って、新しい組織を作って蓄えるためのエネルギー、つまりエネルギー蓄積量が上乗せされる。加えて、体重に対して体表面積が大きいので熱が逃げやすく、代謝も活発だ。この3つが重なって、体重あたりの必要量が大きくなる。
医学生医学生
目安の数字はどれくらいですか。
ドクタードクター
乳児で約100〜120kcal/kg/日、幼児で約80〜100kcal/kg/日、学童で約60〜80kcal/kg/日、成人で約30〜40kcal/kg/日。年齢が上がるにつれて段階的に下がっていくと覚えるといい。今回の子は1歳0か月で、ちょうど乳児期から幼児期への移行点にいる。
医学生医学生
じゃあ100kcal/kgを使って、9kg×100で900kcalですね。上限の120で計算しても1,080kcalです。
ドクタードクター
そう、概算で900〜1,000kcal/日程度と見積もれる。さらに厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』でも、1〜2歳男児の推定エネルギー必要量は身体活動レベルふつうで950kcal/日とされている。どちらから考えても、最も近いのは900kcalだ。
医学生医学生
小児科の実習で、指導医の先生が「迷ったら体重×100」と言っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
実践的な覚え方だね。では、ほかの数字も体重あたりに直して検証してみよう。600kcalはどうかな。
医学生医学生
9で割ると約67kcal/kgなので、乳幼児としては少なすぎますね。
ドクタードクター
正解。食事摂取基準でいえば、600kcal台は生後6〜8か月頃の乳児に相当する値で、1歳児には足りない。逆に1,200kcalは約133kcal/kgで、乳児の目安の上限すら超える。食事摂取基準では3〜5歳児に近い水準だ。
医学生医学生
1,500kcalや1,800kcalになると、体重あたり160〜200kcalで明らかに過剰ですね。
ドクタードクター
その通り。1,500kcal前後は学童期前半、1,800kcal前後は学童期後半の推定エネルギー必要量に近い値だ。こうやって選択肢がそれぞれ何歳くらいの数字なのかを意識すると、年齢と必要量の関係が立体的に見えてくる。
医学生医学生
推定エネルギー必要量って、そもそもどう計算しているんですか。基礎医学の生理学で基礎代謝の話は習いましたが。
ドクタードクター
推定エネルギー必要量は、エネルギーの過不足が最も少なくなると推定される1日の摂取量のこと。成人では基礎代謝量に身体活動レベルを掛けて求めるけれど、成長期の小児ではそこにエネルギー蓄積量を足す。なお0〜11か月の乳児では、総エネルギー消費量にエネルギー蓄積量を加えて算出しているよ。
医学生医学生
成長分を足す、という発想がこの問題の核心なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。もう一つ臨床で役立つ関連知識として、水分必要量も同じく年齢が低いほど体重あたりで多い。乳児で約150mL/kg/日、幼児で約100mL/kg/日、学童で約80mL/kg/日、成人で約50mL/kg/日が目安だ。脱水の子の輸液計画を立てるときにも、この感覚がそのまま生きてくる。
医学生医学生
エネルギーも水分も「小さい子ほど体重あたりで多い」とセットで覚えておきます。
ドクタードクター
それがいい。乳幼児健診で体重の増えが悪い子を診るときも、まず摂取量を体重あたりに換算して足りているかを考える。数字を丸暗記するより、なぜ多いのかを理解しておくと応用が利くよ。

まとめ

小児のエネルギー必要量は体重あたりで考え、目安は乳児で約100〜120kcal/kg/日、幼児で約80〜100kcal/kg/日、成人で約30〜40kcal/kg/日と、年齢が低いほど多くなります。体重9kgの1歳児では9×100で約900kcal/日となり、食事摂取基準の1〜2歳男児の推定エネルギー必要量950kcal/日とも合致します。小児で体重あたりの必要量が多いのは、成長のためのエネルギー蓄積量が加わることに加え、体表面積が相対的に大きく代謝も活発なためです。水分必要量も同様に乳児で約150mL/kg/日と多く、輸液計画や乳幼児健診での栄養評価に直結します。数値の暗記だけでなく、その理由を理解しておくことが、小児診療で応用の利く判断につながります。

解答・解説

正解はbです

体重あたりのエネルギー必要量は年齢によって大きく異なり、年齢が低いほど体重1kgあたりの必要量は多い。これは、小児では体表面積に対する基礎代謝が大きいことに加え、成人と違って「成長のためのエネルギー(新しい組織を作り蓄えるための分)」が上乗せされるためである。 目安としては、乳児期で約100〜120kcal/kg/日、幼児期で約80〜100kcal/kg/日、成人で約30〜40kcal/kg/日と覚えておくとよい。本問の児は1歳0か月で乳児期から幼児期への移行点にあり、体重は9kgである。これを当てはめると、 9kg × 100kcal/kg/日 = 900kcal/日 9kg × 120kcal/kg/日 = 1,080kcal/日 となり、概算でおよそ900〜1,000kcal/日程度と見積もられる。 また、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』でも、1〜2歳男児の推定エネルギー必要量(身体活動レベル ふつう)は950kcal/日とされており、これに最も近い選択肢は900kcalである。体重あたりの概算と公的基準のどちらから考えても、900kcalが最も妥当となる。

選択肢考察

  1. ×a.  600

    誤り。600kcal/日は体重9kgで割ると約67kcal/kg/日となり、1歳児の必要量としては明らかに少ない。食事摂取基準でも600kcal台は生後6〜8か月頃の乳児(男児650kcal、女児600kcal)の値に相当し、1歳児には不足する。

  2. ○b.  900

    正しい。乳幼児の目安である約100kcal/kg/日に体重9kgを掛けると900kcal/日となる。食事摂取基準の1〜2歳男児の推定エネルギー必要量950kcal/日にも最も近く、選択肢の中で最も妥当な値である。

  3. ×c.  1,200

    誤り。1,200kcal/日は体重9kgあたり約133kcal/kg/日に相当し、乳児の目安の上限(約120kcal/kg/日)をも上回る。食事摂取基準では3〜5歳児(男児1,300kcal/日)に近い水準であり、1歳児には過剰である。

  4. ×d.  1,500

    誤り。体重あたりに換算すると約167kcal/kg/日となり過剰である。1,500kcal/日前後は学童期前半(6〜7歳頃)の推定エネルギー必要量に近い値である。

  5. ×e.  1,800

    誤り。体重あたり200kcal/kg/日に相当し、明らかに過剰である。1,800kcal/日前後は学童期後半(8〜9歳頃)の推定エネルギー必要量に近い値である。

推定エネルギー必要量の考え方

推定エネルギー必要量(EER)は、エネルギーの過不足が最も少なくなると推定される1日あたりの摂取量である。成人では「基礎代謝量 × 身体活動レベル」で求めるが、成長期の小児ではこれに「エネルギー蓄積量(組織の合成・成長に伴って体内に蓄えられるエネルギー)」を加える。 EER(kcal/日)= 基礎代謝量(kcal/日)× 身体活動レベル + エネルギー蓄積量(kcal/日) なお乳児(0〜11か月)では、総エネルギー消費量にエネルギー蓄積量を加えて算出される。

日本人の食事摂取基準における乳幼児の推定エネルギー必要量(kcal/日)の例

・0〜5か月:男児550、女児500 ・6〜8か月:男児650、女児600 ・9〜11か月:男児700、女児650 ・1〜2歳:男児950、女児900 ・3〜5歳:男児1,300

体重あたりのエネルギー必要量の目安

・乳児:約100〜120kcal/kg/日 ・幼児:約80〜100kcal/kg/日 ・学童:約60〜80kcal/kg/日 ・成人:約30〜40kcal/kg/日 年齢が低いほど体重あたりの必要量が多いのは、体重に対する体表面積が大きく熱の放散が多いこと、代謝が活発であること、成長のためのエネルギーが必要なことによる。

関連:体重あたりの水分必要量

同様に、水分必要量も乳児では約150mL/kg/日、幼児で約100mL/kg/日、学童で約80mL/kg/日、成人で約50mL/kg/日と、年齢が低いほど多い。輸液量の計算などでも重要になる。

POINT

・乳児のエネルギー必要量は約100〜120kcal/kg/日、成人は約30〜40kcal/kg/日。 ・体重9kgの1歳児では 9×100 = 約900kcal/日。 ・食事摂取基準の1〜2歳男児の推定エネルギー必要量は950kcal/日(女児900kcal/日)。 ・小児の推定エネルギー必要量には成長のためのエネルギー蓄積量が加算される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。