痛みより「腫れ」を診よ―関節リウマチ診断の出発点は滑膜炎
第112回医師国家試験 E問題 第13問
国試問題にチャレンジ
関節リウマチの診断において最も有用なのはどれか。
- a.発熱
- b.冷感
- c.皮疹
- d.しびれ
- e.関節腫脹
対話形式の解説
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ドクターまとめ
関節リウマチの本態は滑膜の慢性炎症(滑膜炎)であり、それを直接反映する関節腫脹が診断に最も有用な所見です。2010年ACR/EULAR分類基準では、少なくとも1関節の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が適用の前提で、罹患関節の数と部位、リウマトイド因子・抗CCP抗体、CRP・赤沈、6週以上の罹病期間を合わせて6点以上でリウマチに分類します。発熱は非特異的、冷感はRaynaud現象など末梢循環障害を示唆し、皮疹は他の膠原病との鑑別で重要、しびれは手根管症候群や環軸椎亜脱臼などの合併症として一部にみられるにすぎません。関節痛だけでは滑膜炎とはいえず、触診や超音波で腫脹を確認することが重要です。早期診断・早期治療が関節破壊の予防につながるため、「痛みより腫れを診る」姿勢はリウマチ診療の基本になります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、関節の内側を覆う滑膜に慢性の炎症(滑膜炎)が起こり、進行すると軟骨・骨が破壊される自己免疫疾患である。本問は、診断にあたって最も重視される臨床所見を問うている。
考え方
RAの本態は滑膜炎であり、その直接的な表れが関節腫脹である。炎症で増殖・肥厚した滑膜や、関節内に貯留した関節液によって関節が腫れる。現在用いられている2010年ACR/EULAR(米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会)分類基準でも、まず「少なくとも1関節に臨床的な滑膜炎(腫脹)があり、他の疾患では説明できないこと」が適用の前提条件とされている。つまり関節腫脹がなければ、そもそも基準を当てはめることができない。 一方、発熱・皮疹・しびれなどはRAで生じることはあっても、頻度が低いか、多くの疾患でみられる非特異的な所見であり、診断の決め手にはならない。診断に有用な所見とは、その疾患で高頻度にみられ(感度が高い)、他疾患では少ない(特異度が高い)ものである、という観点で選択肢を比べるとよい。 なお、関節の痛み(関節痛)だけでは滑膜炎があるとはいえない点にも注意する。触診で滑膜の腫れ(軟らかく弾力のある腫脹)を確認することが重要で、診察所見が不確かなときは関節超音波検査やMRIで滑膜炎を確認する。
選択肢考察
- ×a. 発熱
RAでは全身性炎症を反映して微熱や全身倦怠感、体重減少を伴うことがあるが、発熱は感染症、悪性腫瘍、他の膠原病など多くの疾患でみられ、特異性が低い。高熱が目立つ場合は、むしろ化膿性関節炎や成人Still病、全身性エリテマトーデスなど他疾患を考える。RAの診断に有用な所見ではない。
- ×b. 冷感
RAの罹患関節は炎症のため、むしろ熱感を伴うことが多い。四肢の冷感はRAの典型的な所見ではなく、末梢循環障害やRaynaud現象(全身性強皮症などでみられる)を示唆する所見である。
- ×c. 皮疹
RAの皮膚病変としては、肘の伸側や後頭部、手指など圧のかかる部位に生じる皮下結節(リウマトイド結節)や、リウマトイド血管炎による皮膚潰瘍・紫斑などがあるが、頻度は限られ、診断基準にも含まれていない。皮疹は全身性エリテマトーデス(蝶形紅斑)、皮膚筋炎(Gottron徴候、ヘリオトロープ疹)、乾癬性関節炎(乾癬)、成人Still病(サーモンピンク疹)など、他の関節炎をきたす疾患との鑑別でむしろ重要となる。RA診断に有用な所見ではない。
- ×d. しびれ
RAでは、手関節の滑膜炎による手根管症候群(正中神経の圧迫)、頸椎の環軸椎亜脱臼による頸髄・神経根の圧迫、リウマトイド血管炎による多発性単神経炎などで、しびれを生じることがある。しかしこれらは合併症として一部の患者に生じるもので、感度・特異度ともに低く、診断に有用な所見ではない。
- ○e. 関節腫脹
関節腫脹は、増殖した滑膜や関節液の貯留によって生じ、RAの本態である滑膜炎を直接反映する所見である。2010年ACR/EULAR分類基準では、少なくとも1関節の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が適用の前提であり、さらに腫脹・圧痛のある関節の数と部位(大関節か、手指・手関節などの小関節か)が最も配点の大きい項目となっている。手指のPIP関節・MCP関節、手関節などの小関節に左右対称性の腫脹がみられることが典型的である。したがってRAの診断において最も有用な所見である。
2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準
適用の前提:1関節以上に臨床的滑膜炎(腫脹)があり、他疾患で説明できないこと。以下の合計が6点以上(10点満点)でRAに分類する。 ・A 罹患関節(腫脹または圧痛):大関節1か所 0点、大関節2〜10か所 1点、小関節1〜3か所 2点、小関節4〜10か所 3点、11か所以上(少なくとも1つは小関節) 5点 ・B 血清学的検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体):いずれも陰性 0点、いずれかが低値陽性 2点、いずれかが高値陽性(基準値上限の3倍超) 3点 ・C 急性期反応物質(CRP、赤沈):いずれも正常 0点、いずれかが異常 1点 ・D 症状の持続期間:6週未満 0点、6週以上 1点 なお、RAに典型的な骨びらん(X線所見)があり、過去に本基準を満たしていたと推定される経過がある場合は、点数によらずRAと分類する(骨びらん単独で分類できるわけではない)。また、遠位指節間(DIP)関節、第1手根中手(CMC)関節、第1中足趾節(MTP)関節は変形性関節症で侵されやすいため、評価対象から除外される。
RAの臨床像
・30〜50歳代の女性に多い。 ・朝のこわばり、手指・手関節など小関節の左右対称性の多関節炎で始まることが多い。 ・進行すると尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形などの関節変形をきたす。 ・関節外症状:リウマトイド結節、間質性肺疾患、強膜炎、リウマトイド血管炎、続発性アミロイドーシス、貧血など。 ・治療はメトトレキサートを中心とする抗リウマチ薬で早期から炎症を抑え、関節破壊を防ぐことが目標である。効果不十分なら生物学的製剤やJAK阻害薬を用いる。
POINT
・RAの本態は滑膜炎で、それを直接示す所見が関節腫脹である。 ・2010年ACR/EULAR分類基準では、1関節以上の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が前提条件。 ・関節痛だけでは不十分で、腫脹(滑膜炎)を確認することが重要。 ・発熱・皮疹・しびれは非特異的、あるいは合併症として一部にみられる所見にすぎない。
