StudyMed医師国家試験

痛みより「腫れ」を診よ―関節リウマチ診断の出発点は滑膜炎

第112回医師国家試験 E問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第13問

関節リウマチの診断において最も有用なのはどれか。

  1. a.発熱
  2. b.冷感
  3. c.皮疹
  4. d.しびれ
  5. e.関節腫脹

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチを診断するときに最も重視する所見はどれか、という問題だ。選択肢はどれもリウマチの患者さんで見かける可能性があるものばかり。だからこそ「この病気の本態は何か」「診断に有用な所見とはどういうものか」という2つの視点で考えるのがコツだよ。まず、関節リウマチの本態は何だと思う?
医学生医学生
自己免疫の機序で関節に炎症が起こる病気、ですよね。免疫学の講義では滑膜がターゲットになると習いました。
ドクタードクター
その通り。関節の内側を覆う滑膜に慢性の炎症、つまり滑膜炎が起き、滑膜が増殖・肥厚して、進行すると軟骨や骨が破壊される。では、滑膜炎は診察でどんな形で現れるかな。
医学生医学生
炎症なので、痛みと腫れ、熱感でしょうか。
ドクタードクター
そう。そのなかでも滑膜炎を直接反映するのが関節腫脹だ。増殖した滑膜や貯留した関節液によって関節が腫れる。だから正解は関節腫脹になる。2010年のACR/EULAR分類基準でも、少なくとも1関節に臨床的な滑膜炎、つまり腫脹があって他の疾患で説明できないことが、基準を当てはめる前提条件になっているんだ。
医学生医学生
腫れがなければ、点数をつける段階にすら進めないということですか。
ドクタードクター
そういうこと。さらに配点で一番大きいのも、腫脹や圧痛のある関節の数と部位の項目だ。手指のPIP・MCP関節や手関節など小関節に、左右対称に腫れが出るのが典型だね。
医学生医学生
圧痛も点数に入るなら、関節痛だけでもいい気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこは大事な落とし穴だよ。関節痛だけでは滑膜炎があるとはいえない。前提条件を満たすには、触診で滑膜の軟らかく弾力のある腫れを確かめる必要がある。診察で判断に迷うときは、関節超音波やMRIで滑膜炎を確認するんだ。では他の選択肢も見ていこう。発熱はどうかな。
医学生医学生
リウマチでも微熱が出ると聞いたことがありますが、熱はどんな病気でも出ますよね。
ドクタードクター
まさに特異度が低い所見だね。リウマチでは全身の炎症を反映して微熱や倦怠感、体重減少を伴うことはあるけれど、感染症や悪性腫瘍、他の膠原病でもみられる。むしろ高熱が目立つなら、化膿性関節炎や成人Still病、全身性エリテマトーデスなどを考えるきっかけになる。
医学生医学生
冷感はどうでしょう。膠原病というとRaynaud現象を思い浮かべました。
ドクタードクター
Raynaud現象は全身性強皮症などで目立つ所見で、末梢循環障害を示唆するものだ。リウマチの罹患関節は炎症でむしろ熱感を伴うことが多いから、冷感は方向が逆なんだ。
医学生医学生
皮疹については、皮膚科の臨床実習で膠原病の患者さんの皮膚所見をたくさん見ました。
ドクタードクター
皮膚所見は膠原病の鑑別ではとても重要だね。ただ、それは他の疾患を見分けるための手がかりとしてなんだ。全身性エリテマトーデスの蝶形紅斑、皮膚筋炎のGottron徴候やヘリオトロープ疹、乾癬性関節炎の乾癬、成人Still病のサーモンピンク疹などがその例だ。関節リウマチの皮膚病変としては肘の伸側などにできる皮下結節、いわゆるリウマトイド結節や、血管炎による潰瘍・紫斑があるけれど、頻度は限られ、分類基準にも入っていない。
医学生医学生
しびれは、手根管症候群とか環軸椎亜脱臼とか、合併症として出てくるイメージです。
ドクタードクター
よく整理できているね。手関節の滑膜炎による正中神経の圧迫、環軸椎亜脱臼による頸髄・神経根の圧迫、リウマトイド血管炎による多発性単神経炎などでしびれが出る。でもこれらは一部の患者さんに起こる合併症で、感度も特異度も低い。ちなみに環軸椎亜脱臼は、全身麻酔の挿管時の頸部後屈で問題になることがあるから、臨床では知っておきたいね。
医学生医学生
診断に有用な所見というのは、その病気でよく見られて、他の病気では少ないもの、という考え方で選べばいいんですね。
ドクタードクター
その通り。分類基準の残りの項目も押さえておこう。罹患関節のほかに、リウマトイド因子や抗CCP抗体などの血清学的検査、CRPや赤沈といった急性期反応物質、症状が6週以上続いているかが評価され、合計6点以上でリウマチに分類する。DIP関節や母指CMC関節、第1MTP関節は変形性関節症で侵されやすいので評価対象から除くことも覚えておこう。
医学生医学生
CBTの勉強で、DIP関節の変形性関節症はHeberden結節だと覚えました。
ドクタードクター
いい結びつけ方だね。そして臨床で一番大切なのは、早く見つけて早く治療することだ。メトトレキサートを中心とした抗リウマチ薬で早期から炎症を抑えることが、関節破壊や尺側偏位、スワンネック変形などの変形を防ぐことにつながる。効果が不十分なら生物学的製剤やJAK阻害薬も選択肢になる。だからこそ、外来で「手がこわばる、痛い」という人を診たら、痛みの訴えだけで終わらせず、一つひとつの関節を触って腫れを確かめる習慣をつけてほしい。

まとめ

関節リウマチの本態は滑膜の慢性炎症(滑膜炎)であり、それを直接反映する関節腫脹が診断に最も有用な所見です。2010年ACR/EULAR分類基準では、少なくとも1関節の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が適用の前提で、罹患関節の数と部位、リウマトイド因子・抗CCP抗体、CRP・赤沈、6週以上の罹病期間を合わせて6点以上でリウマチに分類します。発熱は非特異的、冷感はRaynaud現象など末梢循環障害を示唆し、皮疹は他の膠原病との鑑別で重要、しびれは手根管症候群や環軸椎亜脱臼などの合併症として一部にみられるにすぎません。関節痛だけでは滑膜炎とはいえず、触診や超音波で腫脹を確認することが重要です。早期診断・早期治療が関節破壊の予防につながるため、「痛みより腫れを診る」姿勢はリウマチ診療の基本になります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、関節の内側を覆う滑膜に慢性の炎症(滑膜炎)が起こり、進行すると軟骨・骨が破壊される自己免疫疾患である。本問は、診断にあたって最も重視される臨床所見を問うている。

考え方

RAの本態は滑膜炎であり、その直接的な表れが関節腫脹である。炎症で増殖・肥厚した滑膜や、関節内に貯留した関節液によって関節が腫れる。現在用いられている2010年ACR/EULAR(米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会)分類基準でも、まず「少なくとも1関節に臨床的な滑膜炎(腫脹)があり、他の疾患では説明できないこと」が適用の前提条件とされている。つまり関節腫脹がなければ、そもそも基準を当てはめることができない。 一方、発熱・皮疹・しびれなどはRAで生じることはあっても、頻度が低いか、多くの疾患でみられる非特異的な所見であり、診断の決め手にはならない。診断に有用な所見とは、その疾患で高頻度にみられ(感度が高い)、他疾患では少ない(特異度が高い)ものである、という観点で選択肢を比べるとよい。 なお、関節の痛み(関節痛)だけでは滑膜炎があるとはいえない点にも注意する。触診で滑膜の腫れ(軟らかく弾力のある腫脹)を確認することが重要で、診察所見が不確かなときは関節超音波検査やMRIで滑膜炎を確認する。

選択肢考察

  1. ×a.  発熱

    RAでは全身性炎症を反映して微熱や全身倦怠感、体重減少を伴うことがあるが、発熱は感染症、悪性腫瘍、他の膠原病など多くの疾患でみられ、特異性が低い。高熱が目立つ場合は、むしろ化膿性関節炎や成人Still病、全身性エリテマトーデスなど他疾患を考える。RAの診断に有用な所見ではない。

  2. ×b.  冷感

    RAの罹患関節は炎症のため、むしろ熱感を伴うことが多い。四肢の冷感はRAの典型的な所見ではなく、末梢循環障害やRaynaud現象(全身性強皮症などでみられる)を示唆する所見である。

  3. ×c.  皮疹

    RAの皮膚病変としては、肘の伸側や後頭部、手指など圧のかかる部位に生じる皮下結節(リウマトイド結節)や、リウマトイド血管炎による皮膚潰瘍・紫斑などがあるが、頻度は限られ、診断基準にも含まれていない。皮疹は全身性エリテマトーデス(蝶形紅斑)、皮膚筋炎(Gottron徴候、ヘリオトロープ疹)、乾癬性関節炎(乾癬)、成人Still病(サーモンピンク疹)など、他の関節炎をきたす疾患との鑑別でむしろ重要となる。RA診断に有用な所見ではない。

  4. ×d.  しびれ

    RAでは、手関節の滑膜炎による手根管症候群(正中神経の圧迫)、頸椎の環軸椎亜脱臼による頸髄・神経根の圧迫、リウマトイド血管炎による多発性単神経炎などで、しびれを生じることがある。しかしこれらは合併症として一部の患者に生じるもので、感度・特異度ともに低く、診断に有用な所見ではない。

  5. ○e.  関節腫脹

    関節腫脹は、増殖した滑膜や関節液の貯留によって生じ、RAの本態である滑膜炎を直接反映する所見である。2010年ACR/EULAR分類基準では、少なくとも1関節の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が適用の前提であり、さらに腫脹・圧痛のある関節の数と部位(大関節か、手指・手関節などの小関節か)が最も配点の大きい項目となっている。手指のPIP関節・MCP関節、手関節などの小関節に左右対称性の腫脹がみられることが典型的である。したがってRAの診断において最も有用な所見である。

2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準

適用の前提:1関節以上に臨床的滑膜炎(腫脹)があり、他疾患で説明できないこと。以下の合計が6点以上(10点満点)でRAに分類する。 ・A 罹患関節(腫脹または圧痛):大関節1か所 0点、大関節2〜10か所 1点、小関節1〜3か所 2点、小関節4〜10か所 3点、11か所以上(少なくとも1つは小関節) 5点 ・B 血清学的検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体):いずれも陰性 0点、いずれかが低値陽性 2点、いずれかが高値陽性(基準値上限の3倍超) 3点 ・C 急性期反応物質(CRP、赤沈):いずれも正常 0点、いずれかが異常 1点 ・D 症状の持続期間:6週未満 0点、6週以上 1点 なお、RAに典型的な骨びらん(X線所見)があり、過去に本基準を満たしていたと推定される経過がある場合は、点数によらずRAと分類する(骨びらん単独で分類できるわけではない)。また、遠位指節間(DIP)関節、第1手根中手(CMC)関節、第1中足趾節(MTP)関節は変形性関節症で侵されやすいため、評価対象から除外される。

RAの臨床像

・30〜50歳代の女性に多い。 ・朝のこわばり、手指・手関節など小関節の左右対称性の多関節炎で始まることが多い。 ・進行すると尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形などの関節変形をきたす。 ・関節外症状:リウマトイド結節、間質性肺疾患、強膜炎、リウマトイド血管炎、続発性アミロイドーシス、貧血など。 ・治療はメトトレキサートを中心とする抗リウマチ薬で早期から炎症を抑え、関節破壊を防ぐことが目標である。効果不十分なら生物学的製剤やJAK阻害薬を用いる。

POINT

・RAの本態は滑膜炎で、それを直接示す所見が関節腫脹である。 ・2010年ACR/EULAR分類基準では、1関節以上の臨床的滑膜炎(腫脹)の存在が前提条件。 ・関節痛だけでは不十分で、腫脹(滑膜炎)を確認することが重要。 ・発熱・皮疹・しびれは非特異的、あるいは合併症として一部にみられる所見にすぎない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。