声が出るからこそTourette―チック症を「種類」と「期間」で整理する
第112回医師国家試験 D問題 第4問
国試問題にチャレンジ
Tourette症候群について正しいのはどれか。
- a.乳児期に発症する。
- b.発達の退行を伴う。
- c.音声チックを認める。
- d.6か月以内に症状は消失する。
- e.場面による症状の変動を認めない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
Tourette症候群は、多彩な運動チックと1つ以上の音声チックがともに存在し、初発から1年以上持続し、18歳未満で発症するチック症の最重症型であり、音声チックは診断に必須です。発症はおおむね4〜6歳ごろで、単純運動チックから始まって音声チックが加わり、思春期前後にピークを迎えたのち軽快する例が多く、発達の退行は伴いません。チックは緊張や疲労で増悪し集中時や睡眠中に軽減するなど場面で変動し、汚言症は特徴的ですが一部の患者にのみみられます。ADHDや強迫症の併存が多く、治療は心理教育と環境調整を基本に、行動療法や重症例での抗精神病薬を組み合わせます。チック症を「種類」と「持続期間」で整理する視点は、小児の行動・発達の問題を評価する際の基本になります。
解答・解説
正解はcです
テーマ
チックとは、突発的・急速・反復的で、律動性のない運動または発声である。本人の意思とは無関係に生じるが、短時間なら意識して抑えることができる点が特徴である。チックは目的のない動き(まばたき、首振り、顔しかめなど)である運動チックと、声や音を出す音声チック(咳払い、鼻を鳴らす、「あっ」「うっ」などの発声、単語の発語など)に分けられる。
チック症の分類(DSM-5の考え方)
チック症は症状の種類と持続期間で分類される。 ・暫定的チック症:運動チックと音声チックのいずれか(または両方)があり、持続が1年未満のもの。小児で最も多く、一過性に消えることが多い。 ・持続性(慢性)運動または音声チック症:運動チックか音声チックの一方のみが1年以上続くもの。 ・Tourette症(Tourette症候群):多彩な運動チックと1つ以上の音声チックの両方が(同時期でなくてもよい)、初発から1年以上持続するもの。いずれも18歳未満での発症が条件である。
正解の導き方
Tourette症候群はチック症の中で最も重症型であり、診断には音声チックの存在が必須である。発症は幼児期から学童期(おおむね4〜6歳ごろ)で乳児期ではなく、1年以上持続することが定義に含まれ、症状は緊張や不安、疲労などの状況により大きく変動する。発達の退行はみられない。これらの特徴を押さえれば、正しい選択肢は「音声チックを認める」に絞られる。
選択肢考察
- ×a. 乳児期に発症する。
Tourette症候群の発症は幼児期から学童期で、平均では5〜6歳ごろとされる。多くはまばたきなどの単純な運動チックから始まり、その後音声チックが加わる経過をとる。乳児期(1歳未満)の発症は典型的ではない。診断基準上は18歳未満での発症が条件である。
- ×b. 発達の退行を伴う。
Tourette症候群では、いったん獲得した言語・運動・社会性などの能力が失われる発達の退行はみられない。ただし、注意欠如・多動症(ADHD)や強迫症(強迫性障害)、自閉スペクトラム症などを併存することが多く、学業や社会生活上の困難はむしろこれらの併存症に由来することも少なくない。退行を伴う疾患としては、Rett症候群や小児期崩壊性障害(現在のDSM-5では自閉スペクトラム症に包含)などが挙げられる。
- ○c. 音声チックを認める。
Tourette症候群の診断には、多彩な運動チックに加えて1つ以上の音声チックが存在することが必須である。音声チックには、咳払い・鼻鳴らし・「あっ」「うっ」といった単純音声チックと、単語や句を発する複雑音声チックがある。複雑音声チックには、卑猥な言葉や社会的に不適切な言葉を発する汚言症(コプロラリア)、他人の言葉を繰り返す反響言語、自分の言葉を繰り返す反復言語などがある。汚言症はTourette症候群の象徴的な症状として知られるが、実際に認めるのは一部の患者に限られ、診断に必須ではない。
- ×d. 6か月以内に症状は消失する。
Tourette症候群は定義上、チックが初発から1年以上持続する慢性の疾患である。症状は10歳前後から思春期早期に最も重くなることが多く、その後は成長とともに軽快し、多くは成人期までに軽快または消失する。6か月以内に消失するような短期間のチックは、暫定的チック症に相当する。
- ×e. 場面による症状の変動を認めない。
チックは状況によって強さが大きく変わるのが特徴である。緊張・不安・興奮・疲労などで増悪し、何かに集中しているときや睡眠中には軽減する。また緊張から解放されてくつろいだ時に増えることもある。チックの直前には「むずむずする」などの前駆衝動を自覚することが多く、意識すれば一時的に止められるが、我慢を続けると後でかえって強く出やすい。症状に変動がないという記述は誤りである。
Tourette症候群の概要
・男児に多く、男女比はおよそ3〜4:1とされる。 ・遺伝的素因が強く関与し、大脳基底核を中心とする皮質-線条体-視床-皮質回路の機能異常、ドパミン系の過活動が想定されている。 ・経過:単純運動チックで始まり、音声チック、複雑チックが加わる。症状は思春期前後にピークを迎え、成人に向かうにつれ軽快・消失する例が多いが、成人期まで持続する例もある。
チックの分類
・単純運動チック:まばたき、顔しかめ、首振り、肩すくめなど。 ・複雑運動チック:飛び跳ねる、物に触る、他人の動作をまねる(反響動作)、卑猥な身振り(汚行症)など。 ・単純音声チック:咳払い、鼻鳴らし、うなり声、「あっ」など。 ・複雑音声チック:単語・句の発声、汚言症、反響言語、反復言語など。
併存症
ADHD、強迫症の併存が特に多く、学習障害、不安症、自閉スペクトラム症なども合併しうる。生活上の支障の評価では、チックそのものだけでなく併存症にも注意を払う。
治療
・まず疾患についての心理教育を本人・家族・学校に行い、チックを叱ったり無理に止めさせたりしないよう環境を調整する。 ・行動療法として、チックに対する包括的行動介入(CBIT)やハビット・リバーサル(習慣逆転法)が有効とされる。 ・日常生活に支障がある重症例では薬物療法を行い、ハロペリドール、アリピプラゾールなどの抗精神病薬(ドパミン受容体を遮断・調節する薬)が用いられる。
POINT
・Tourette症候群=多彩な運動チック+1つ以上の音声チックが1年以上持続、18歳未満発症。 ・音声チックは必須。汚言症は特徴的だが一部の患者のみで、診断に必須ではない。 ・発症は4〜6歳ごろ(乳児期ではない)。発達の退行はない。 ・緊張・ストレスで増悪し、集中時・睡眠中に軽減する。短時間なら意識的に抑制可能。 ・ADHD・強迫症の併存が多い。重症例ではハロペリドール、アリピプラゾールなどを用いる。
