StudyMed医師国家試験

「どこで詰まったか」が治療を決める―胆道疾患のドレナージと手術を整理する

第112回医師国家試験 C問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第19問

胆道疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.急性胆管炎 ―― 内視鏡的胆道ドレナージ
  2. b.急性胆嚢炎 ―― 腹腔鏡下胆嚢摘出術
  3. c.肝門部胆管癌 ―― 経皮的胆嚢ドレナージ
  4. d.胆嚢腺筋腫症 ―― 内視鏡的十二指腸乳頭切開術
  5. e.先天性胆道拡張症 ―― 経皮的胆道ドレナージ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胆道疾患と治療の組合せを選ぶ問題だ。暗記で解こうとすると混乱しやすいけれど、「胆汁の流れがどこでせき止められているか」と「病変が良性か悪性か、悪性化のリスクがあるか」の2点を考えれば筋道立てて判断できる。まずは急性胆管炎から考えてみよう。
医学生医学生
胆管が結石などで詰まって、うっ滞した胆汁に細菌が感染した状態ですよね。Charcotの三徴で、発熱・黄疸・右上腹部痛です。
ドクタードクター
その通り。重症化するとショックや意識障害が加わってReynoldsの五徴となり、敗血症から多臓器不全に進むこともある。だから治療は抗菌薬だけでは足りない。何が必要だと思う?
医学生医学生
詰まっている胆管の圧を下げること、つまりドレナージですね。
ドクタードクター
正解。そしてドレナージの方法として低侵襲で第一選択とされるのが、ERCPの手技を使った内視鏡的胆道ドレナージだ。乳頭から胆管にステントを留置したり、経鼻胆管ドレナージチューブを入れたりする。状態が落ち着いたら原因の結石を内視鏡的に取り除く。この組合せは正しい。
医学生医学生
消化器内科を回ったとき、夜中に緊急ERCPに呼ばれて、膿のような胆汁が出てきたのを見ました。あれで一気に熱が下がるんですよね。
ドクタードクター
貴重な経験をしたね。胆管炎ではドレナージそのものが治療の要なんだ。次は急性胆嚢炎。こちらは何が詰まっている?
医学生医学生
胆嚢管に結石が嵌頓して起こることが多いです。でも胆管炎と同じで、まずドレナージなのかなと思ったんですが……。
ドクタードクター
そこは区別が必要だ。急性胆嚢炎では炎症の場である胆嚢そのものを取り除くのが原則で、手術に耐えられる患者では発症早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨されている。高齢で併存疾患が重い、重症例である、といった手術リスクの高い場合に限って、まず経皮経肝胆嚢ドレナージで減圧し、落ち着いてから待機的に摘出を検討するんだ。
医学生医学生
胆嚢は取ってしまえるけれど、胆管は取れないから減圧する、という違いなんですね。
ドクタードクター
いい整理だね。では肝門部胆管癌と経皮的胆嚢ドレナージの組合せはどうかな。胆道の解剖を思い浮かべてみよう。
医学生医学生
肝門部というと、左右の肝管が合流するあたりで胆管がふさがるんですよね。胆嚢は胆嚢管を介して、もっと下の総胆管につながっているので……あ、胆嚢を穿刺しても閉塞部より上は減圧されません。
ドクタードクター
まさにそこ。ドレナージは閉塞部より上流、つまり肝臓側に対して行わないと効果がない。肝門部胆管癌の減黄には、内視鏡的胆道ドレナージや経皮経肝胆道ドレナージで閉塞部より上の胆管を直接ドレナージする。根治治療は肝切除と肝外胆管切除、リンパ節郭清を組み合わせた外科切除になる。
医学生医学生
胆嚢腺筋腫症は、病理でRokitansky-Aschoff洞が増えて壁が厚くなる病気だと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。良性疾患で癌化のリスクは低いと考えられているから、無症状なら経過観察が基本。症状がある場合や胆嚢癌との鑑別が難しい場合に胆嚢摘出術を行う。内視鏡的十二指腸乳頭切開術は乳頭を切って総胆管結石を取り出すための手技だから、胆嚢壁の病変には何の効果もない。
医学生医学生
先天性胆道拡張症はどうでしょう。胆管が拡張していて胆汁がたまるなら、ドレナージで良さそうにも思えます。
ドクタードクター
そこが落とし穴。この病気はほぼ全例で膵・胆管合流異常を伴っていて、膵液が胆道に逆流することで胆管炎や膵炎、そして高い頻度で胆道癌を起こす。だから根本治療は、拡張した肝外胆管と胆嚢を切除して、肝管空腸吻合などで胆汁と膵液の流れを分ける分流手術なんだ。胆管炎や穿孔のときに一時的にドレナージすることはあっても、それは手術までのつなぎにすぎない。
医学生医学生
CBTの勉強で、膵・胆管合流異常は十二指腸壁の外で合流するので括約筋が効かない、と覚えました。発癌予防のために切除するんですね。つまり正しいのは、急性胆管炎と内視鏡的胆道ドレナージ、急性胆嚢炎と腹腔鏡下胆嚢摘出術の2つです。
ドクタードクター
正解だ。最後に臨床での注意点をまとめておこう。急性胆管炎・胆嚢炎は診療ガイドラインで軽症・中等症・重症に分類され、重症度に応じてドレナージのタイミングや手術の時期を判断する。胆管炎は放置すると短時間で敗血症性ショックに陥ることがあるから、発熱と黄疸を見たら胆管閉塞を疑い、早めに消化器内科へ相談することが大切だ。
医学生医学生
胆嚢炎で手術リスクが高い人に胆嚢ドレナージをするのはいいけれど、胆管の閉塞に胆嚢ドレナージをしても効かない、という点も整理しておきます。
ドクタードクター
それが分かっていれば、この分野は怖くないよ。治療を選ぶときは、いつも「どこで詰まって、どこを減圧すべきか」を解剖で考える習慣をつけよう。

まとめ

胆道疾患の治療は、胆汁の流れがどこで閉塞しているか、そして病変が良性か悪性か・悪性化のリスクがあるかで整理できます。急性胆管炎は抗菌薬に加えて胆道ドレナージが要で、低侵襲な内視鏡的胆道ドレナージが第一選択です。急性胆嚢炎は早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が原則で、手術リスクが高い例では経皮経肝胆嚢ドレナージを先行します。肝門部胆管癌では閉塞部より上流の胆管をドレナージする必要があり胆嚢ドレナージは無効で、根治は肝切除を含む外科切除です。胆嚢腺筋腫症は原則経過観察、先天性胆道拡張症は膵・胆管合流異常による発癌リスクから分流手術が根本治療となり、解剖と病態に基づいて治療を選ぶ姿勢が臨床判断の土台になります。

解答・解説

正解はa, bです

胆道疾患の治療を選ぶときは、「何が・どこで・なぜ問題になっているか」を考えると整理しやすい。 ・胆汁の流れが「どこで」せき止められているか: 胆管が閉塞しているのか(胆管炎、閉塞性黄疸)、胆嚢管が閉塞しているのか(胆嚢炎)。閉塞部位より上流を減圧しなければドレナージは効かない。 ・病変が良性か悪性か、また悪性化のリスクを持つか: 悪性腫瘍や前癌病変的な疾患では、根治・予防のための外科切除が治療の柱となる。 ・緊急性: 急性胆管炎は重症化すると敗血症から多臓器不全に至るため、迅速な胆道減圧が必要である。 本問では、急性炎症性疾患(急性胆管炎・急性胆嚢炎)には、それぞれ閉塞部位に応じたドレナージや原因臓器の摘出が対応し、腫瘍性・先天性疾患(肝門部胆管癌・先天性胆道拡張症)では外科切除が根本治療となる。胆嚢腺筋腫症は良性疾患で、原則として経過観察である。これらを踏まえて各組合せの妥当性を判断する。

選択肢考察

  1. ○a.  急性胆管炎 ―― 内視鏡的胆道ドレナージ

    急性胆管炎は、総胆管結石や腫瘍などで胆管が閉塞し、うっ滞した胆汁に細菌感染が加わった病態である。治療の基本は絶食・輸液・抗菌薬に加えた胆道ドレナージ(胆管の減圧)であり、中等症・重症例や初期治療に反応しない例では早期のドレナージが必要となる。方法としては、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)の手技を用いた内視鏡的胆道ドレナージ(胆管ステントを留置するEBS、経鼻胆管ドレナージENBDなど)が低侵襲で第一選択とされる。全身状態が落ち着いた後、原因となった胆管結石を内視鏡的に除去する。

  2. ○b.  急性胆嚢炎 ―― 腹腔鏡下胆嚢摘出術

    急性胆嚢炎の多くは胆嚢結石が胆嚢管に嵌頓して起こる。治療の原則は抗菌薬投与と、炎症の場である胆嚢の摘出であり、手術に耐えられる患者では発症早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨される。高齢・重篤な併存疾患などで手術リスクが高い場合や重症例では、まず経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)などで胆嚢を減圧し、状態改善後に待機的に摘出術を検討する。

  3. ×c.  肝門部胆管癌 ―― 経皮的胆嚢ドレナージ

    肝門部胆管癌では肝門部(左右肝管の合流部付近)で胆管が閉塞し、閉塞性黄疸をきたす。胆嚢は胆嚢管を介して閉塞部より下流側の総胆管に合流しているため、胆嚢を穿刺しても閉塞部より上流の肝内胆管は減圧されず、黄疸の改善は得られない。減黄には内視鏡的胆道ドレナージや経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)など、閉塞部より肝臓側の胆管を直接ドレナージする方法を用いる。根治治療は肝切除と肝外胆管切除、リンパ節郭清を組み合わせた外科切除である。

  4. ×d.  胆嚢腺筋腫症 ―― 内視鏡的十二指腸乳頭切開術

    胆嚢腺筋腫症は、胆嚢壁内に粘膜上皮が陥入したRokitansky-Aschoff洞(RAS)が増生し、壁が肥厚する良性疾患である。癌化のリスクは低いと考えられており、無症状なら経過観察が基本である。症状がある場合や胆嚢癌との鑑別が困難な場合には胆嚢摘出術を行う。内視鏡的十二指腸乳頭切開術(EST)は、乳頭部を切開して総胆管結石の除去などに用いる手技であり、胆嚢壁の病変である本症の治療にはならない。

  5. ×e.  先天性胆道拡張症 ―― 経皮的胆道ドレナージ

    先天性胆道拡張症は、ほぼ全例で膵・胆管合流異常を伴い、膵液が胆道内へ逆流することで胆管炎・膵炎や、高率な胆道癌の発生をきたす。根本治療は、拡張した肝外胆管と胆嚢を切除して膵液と胆汁の流れを分離し、肝管空腸吻合などで胆道を再建する手術(分流手術)である。胆管炎や胆道穿孔などで一時的に経皮的ドレナージを行うことはあるが、あくまで手術までのつなぎであり、本症の治療として対応する組合せとはいえない。

急性胆管炎と急性胆嚢炎の対比

・急性胆管炎: 胆管閉塞+胆汁感染。発熱・黄疸・右上腹部痛(Charcotの三徴)、重症ではショック・意識障害が加わる(Reynoldsの五徴)。治療は抗菌薬+胆道ドレナージ(内視鏡的が第一選択、困難ならPTBD)。重症度は急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン(Tokyo Guidelines)で軽症・中等症・重症に分類される。 ・急性胆嚢炎: 胆嚢管閉塞(多くは結石嵌頓)による胆嚢の炎症。右季肋部痛、Murphy徴候、発熱。超音波で胆嚢腫大・壁肥厚・結石嵌頓などを確認する。治療は抗菌薬+早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術。手術リスクが高い例ではPTGBDなどの胆嚢ドレナージを先行する。

主な胆道ドレナージ法

・内視鏡的: 内視鏡的胆管ステント留置(EBS)、内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)。乳頭からアプローチする。 ・経皮的: 経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD、胆管を穿刺)、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD、胆嚢を穿刺)。 ドレナージは閉塞部より上流(肝臓側)に対して行わなければ効果がない。胆嚢ドレナージで減圧できるのは、胆嚢管合流部より下流の総胆管が閉塞している場合に限られる。

先天性胆道拡張症と膵・胆管合流異常

膵管と胆管が十二指腸壁外で合流するため、乳頭括約筋の作用が合流部に及ばず、膵液と胆汁が相互に逆流する。胆道癌の高リスク状態であり、診断がつけば分流手術を行う。

POINT

・急性胆管炎: 抗菌薬+胆道ドレナージ(内視鏡的が第一選択)。 ・急性胆嚢炎: 抗菌薬+早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術(高リスク例はPTGBD先行)。 ・肝門部胆管癌の減黄に胆嚢ドレナージは無効。閉塞部より上流の胆管をドレナージする。根治は肝切除を含む外科切除。 ・胆嚢腺筋腫症: 原則経過観察。癌との鑑別困難・有症状なら胆嚢摘出。ESTは総胆管結石などに用いる手技。 ・先天性胆道拡張症: 膵・胆管合流異常を伴い発癌リスクが高い→肝外胆管切除+胆道再建(分流手術)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。