StudyMed医師国家試験

3号液2Lに食塩は何グラム?―「NaCl 1g=Na 17mEq」で解く輸液の換算

第111回医師国家試験 H問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第111回 H問題 第14問

2,000mLの維持輸液(電解質組成:Na+ 35mEq/L,K+ 20mEq/L,Cl- 35mEq/L)に相当する食塩〈NaCl〉の量に最も近いのはどれか。

  1. a.2g
  2. b.4g
  3. c.6g
  4. d.8g
  5. e.10g

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、輸液の電解質組成を「食塩何グラム分か」に換算する計算問題だ。ポイントは、食塩相当量を決めるのはどのイオンか、そしてmEqとグラムをどうつなぐか、の2つ。まず、どの数字を使えばいいと思う?
医学生医学生
NaもClも書いてあるので、両方足して計算するのかなと思いました。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴なんだ。NaCl 1分子にはNa+とCl-が1つずつ入っている。だからNa+が1mEqあれば、それだけでNaCl 1mmol分に当たる。Cl-を足すと同じ食塩を二重に数えてしまうんだよ。食塩相当量はNa+の量だけで決まる、と覚えておこう。K+もここでは関係ない。
医学生医学生
なるほど、ペアの片方だけ数えればいいんですね。じゃあまず2L中のNa+は、35mEq/L×2Lで70mEqですか。
ドクタードクター
その通り。次はmEqをグラムに変える。mEqはmmolに価数を掛けたもので、Na+は1価だからmEqとmmolは同じ値になる。NaClの式量はNa 23とCl 35.5を足して58.5。つまりNaCl 58.5mgがNa+1mEqに相当する。
医学生医学生
基礎の生化学の講義で当量の話は聞いたはずなのに、臨床の数字と結びついていませんでした。1gだと1000÷58.5で約17mEqですね。
ドクタードクター
そう、「NaCl 1g≒Na+17mEq」。これを覚えておくと、70÷17で約4.1g、つまり最も近いのは4gとすぐ出せる。70mmol×58.5mgで4095mgと計算しても同じだ。では、ほかの選択肢がどんな間違いから生まれるか考えてみよう。2gはどうかな。
医学生医学生
2gだとNa+約34mEqなので、ちょうど1L分ですね。2Lを掛け忘れるとそうなりそうです。
ドクタードクター
正解。8gはどうだろう。
医学生医学生
さっき私が言ったように、NaとClを足して70mEq/L、それに2Lで140mEqにすると約8gになります。危なかったです。
ドクタードクター
まさにその誤りを狙った選択肢だね。6gは約103mEq、10gは約171mEqで、いずれも本問の70mEqとは合わない。特に6gは、高血圧の食事療法で目標とされる「1日6g未満」という見慣れた数字だから、つい引き寄せられやすい。
医学生医学生
CBTの勉強で6gという数字が頭に残っていたので、要注意ですね。
ドクタードクター
ここで少し臨床の話をしよう。この組成はいわゆる維持液、3号液の代表的なものだ。成人の1日必要量はおおよそ水分2000mL、Na+70〜100mEq、K+40mEq程度とされていて、3号液を1日2L入れるとそれをおおむね満たす設計になっている。
医学生医学生
臨床実習の病棟で「とりあえず3号液2本」という指示をよく見かけましたが、そういう理屈だったんですね。食塩にすると4gくらいというのは意外と少ない気がします。
ドクタードクター
いい気づきだね。普段の食事と比べるとかなり少ないし、逆に生理食塩液は1Lで食塩9g、Na+154mEq/Lと濃い。輸液ごとの塩分量を把握していると、心不全や高血圧の患者さんでの使い分けや、低Na血症の評価にも役立つ。KClも1g≒K+13mEqと覚えておくと便利だよ。
医学生医学生
K+が入っている輸液で、特に気をつけることはありますか。
ドクタードクター
K+は投与速度と濃度が大事で、目安として20mEq/時以下、濃度40mEq/L以下とされる。急速静注は致死的不整脈の危険があるから絶対に避ける。計算問題に見えて、実は日々の輸液オーダーの安全に直結する知識なんだ。
医学生医学生
Na+だけで数える、1gは17mEq、そして3号液2Lで食塩約4g。病棟でもすぐ使えそうです。

まとめ

輸液の食塩相当量はNa+の量だけで求め、Cl-を足し合わせてはいけません。NaClの式量は58.5で、Na+は1価なのでmEqとmmolが等しく、NaCl 1gはNa+約17mEqに相当します。Na+35mEq/Lの維持液2LではNa+70mEqとなり、70÷17≒4.1gから食塩約4gと計算できます。この組成は代表的な3号液で、1日2Lで成人の水分・Na+・K+の必要量をおおむね補える設計であり、生理食塩液(1Lで食塩9g)との違いやK+の投与速度・濃度の上限もあわせて押さえておくと安全な輸液管理につながります。換算のコツを身につけておけば、国試だけでなく病棟での輸液オーダーの確認にもすぐ役立ちます。

解答・解説

正解はbです

輸液に含まれるNa+の量を、食塩(NaCl)の重さに換算する問題である。食塩相当量はNa+の量だけで決まる。Cl-やK+の量は計算に使わない。

手順1:輸液2,000mL中のNa+量を求める

Na+濃度は35mEq/Lなので、2,000mL(=2L)中には 35mEq/L × 2L = 70mEq のNa+が含まれる。

手順2:NaCl 1gが何mEqかを求める

NaClの式量は Na 23 + Cl 35.5 = 58.5 である。つまり NaCl 1mmol = 58.5mg。 Na+は1価のイオンなので、mEq(ミリ当量=mmol×価数)とmmolは同じ値になり、NaCl 58.5mg = Na+ 1mEq である。 したがって NaCl 1g(1,000mg)は 1,000 ÷ 58.5 ≒ 17.1mEq となる。

手順3:食塩相当量に換算する

70mEq ÷ 17mEq/g ≒ 4.1g (または 70mmol × 58.5mg/mmol = 4,095mg ≒ 4.1g) よって、最も近いのは4gである。 「NaCl 1g ≒ Na+ 17mEq」を覚えておけば、Na+のmEq数を17で割るだけで素早く求められる。

選択肢考察

  1. ×a.  2g

    誤り。2gのNaClに含まれるNa+は約34mEqであり、この輸液1L分(35mEq)にほぼ相当する量である。2,000mL全体の量(70mEq)を求めるには2Lを掛ける必要があり、それを忘れるとこの値になる。

  2. ○b.  4g

    正しい。Na+は35mEq/L × 2L = 70mEqである。NaCl 1gはNa+約17mEqに相当するため、70 ÷ 17 ≒ 4.1gとなり、選択肢の中で最も近いのは4gである。

  3. ×c.  6g

    誤り。NaCl 6gはNa+約103mEqに相当し、本輸液2,000mL中のNa+(70mEq)よりも多い。なお6gは日本高血圧学会が推奨する1日の食塩摂取目標(6g/日未満)の値であり、数値に引きずられないよう注意する。

  4. ×d.  8g

    誤り。NaCl 8gはNa+約137mEqに相当し、70mEqのおよそ2倍である。Na+とCl-をそれぞれ数えて合計してしまう(35+35=70mEq/L、×2L=140mEq)と、この値に近くなる。NaCl 1分子はNa+とCl-を1つずつ含むため、食塩相当量はNa+の量だけで計算する。

  5. ×e.  10g

    誤り。NaCl 10gはNa+約171mEqに相当し、本輸液のNa+量の2倍以上である。電解質の合計量を誤って用いるなど、換算方法を誤った場合の値である。

mEq(ミリ当量)とは

電解質の量を電荷の数で表す単位で、mEq = mmol × 価数 である。Na+、K+、Cl-のような1価イオンではmEqとmmolは同じ値、Ca2+やMg2+のような2価イオンではmEqはmmolの2倍になる。輸液の電解質濃度は通常mEq/Lで表示される。

覚えておくと便利な換算

・NaCl 1g ≒ Na+ 17mEq(式量58.5) ・KCl 1g ≒ K+ 13mEq(式量74.5) ・生理食塩液(0.9% NaCl):Na+・Cl-ともに154mEq/L。1L中にNaCl 9gを含む。 ・食塩相当量(g)= Na(mg)× 2.54 ÷ 1,000(食品表示で用いられる換算。58.5÷23≒2.54)

維持輸液(3号液)

本問の組成(Na+ 35mEq/L、K+ 20mEq/L、Cl- 35mEq/L)は代表的な維持液(3号液)である。成人の1日必要量の目安は水分約2,000mL、Na+ 約70~100mEq、K+ 約40mEqとされ、3号液を1日2,000mL投与すると、1日に必要な水分・Na+・K+をおおむね補える設計になっている。本問の計算からわかるように、3号液2Lに含まれる食塩は約4gである。

K+投与の注意

K+の投与速度は原則20mEq/時以下、濃度は40mEq/L以下を目安とし、急速静注は致死的不整脈の危険があるため禁忌である。

POINT

・NaCl 1g ≒ Na+ 17mEq(1,000 ÷ 58.5)。KCl 1g ≒ K+ 13mEq。 ・食塩相当量はNa+量で計算する(Cl-と合算しない)。 ・本問:35mEq/L × 2L = 70mEq → 70 ÷ 17 ≒ 4.1g → 約4g。 ・3号液(維持液)2,000mL/日で、水分・Na+・K+の1日必要量をおおむね満たす。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。