StudyMed医師国家試験

敵は病原体ではなく自分の抗体―Guillain-Barré症候群の治療は「2本柱」で覚える

第111回医師国家試験 D問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第111回 D問題 第13問

Guillain-Barré症候群の治療法として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.血漿交換
  2. b.アシクロビル点滴
  3. c.ステロイドパルス療法
  4. d.免疫グロブリン製剤投与
  5. e.ベンジルペニシリン〈ペニシリンG〉点滴

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はGuillain-Barré症候群の治療法を2つ選ぶ問題だ。カギは「今、神経を傷めているのは何か」を考えること。病態がわかれば、効く治療と効かない治療ははっきり分かれるよ。まず、どんな病気だったか思い出せるかな。
医学生医学生
下痢や風邪のあとに、足から始まる左右対称の弛緩性麻痺が急に進む病気ですよね。腱反射が落ちるのも特徴だったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。先行感染の1〜3週後に発症して、通常4週以内にピークを迎える。では、なぜ感染のあとに末梢神経がやられるんだろう。
医学生医学生
神経内科の講義で「分子相同性」と習いました。カンピロバクターの菌体の構造が神経のガングリオシドに似ているので、菌に対して作った抗体が神経まで攻撃してしまう、と。
ドクタードクター
その通り。つまり麻痺が出た時点での病態は、感染そのものではなく自己免疫反応なんだ。だから治療の中心は、その自己免疫反応を抑える免疫療法になる。ここまでくると、選択肢を整理しやすくなるね。
医学生医学生
先行感染があるなら、抗菌薬や抗ウイルス薬で原因を叩けばいいようにも思えてしまうんですが……。
ドクタードクター
そこが典型的な誤解だよ。麻痺が出るころには感染自体がもう終わっていることが多いし、たとえ病原体を除いても、すでに作られた自己抗体による神経の傷害は止まらない。アシクロビルはヘルペス脳炎などに使う抗ウイルス薬、ベンジルペニシリンは梅毒や肺炎球菌・連鎖球菌感染症に使う抗菌薬で、どちらもこの病気の治療にはならない。
医学生医学生
火事の原因になったマッチを片付けても、燃え広がった火は消えない、という感じですね。
ドクタードクター
うまいたとえだね。では、自己免疫を抑える治療として有効性が確立しているものは何だろう。
医学生医学生
自己免疫といえばステロイドだと思って、ステロイドパルス療法を選びそうになりました。
ドクタードクター
それがこの問題最大のひっかけなんだ。多くの自己免疫疾患とは違って、Guillain-Barré症候群ではステロイド単独の有効性がランダム化比較試験で否定されている。経口ステロイドではむしろ回復が遅れる可能性も示されていて、ガイドラインでも単独では行わないとされているよ。
医学生医学生
えっ、そうなんですね。じゃあ慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、CIDPのほうはどうですか。
ドクタードクター
いい比較だ。慢性に経過するCIDPではステロイドが有効で、ここが両者の大きな違いとして頻出なんだ。急性のGuillain-Barré症候群では効かず、慢性のCIDPでは効く。セットで覚えておこう。では正解の2つは何になるかな。
医学生医学生
残るのは血漿交換と免疫グロブリン製剤投与ですね。血漿交換は、血液から抗体を取り除く治療ですか。
ドクタードクター
そう。血漿交換を含む血漿浄化療法は、抗ガングリオシド抗体や補体、サイトカインといった神経を傷める液性因子を取り除く。ただ体外循環が必要なので、自律神経障害で血圧が大きく揺れる人や、血行動態が不安定な人、小児では行いにくい。
医学生医学生
免疫グロブリンのほうは、抗体を抜くんじゃなくて逆に入れるんですよね。ちょっと不思議です。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だね。免疫グロブリン大量静注療法、いわゆるIVIgは、400 mg/kg/日を5日間点滴する。自己抗体の中和、Fc受容体の遮断、補体活性化の抑制などで免疫反応を調整すると考えられている。効果は血漿浄化療法とほぼ同等で、特別な設備がいらず施行しやすいので、現在は第一選択として使われることが多いよ。副作用として頭痛、無菌性髄膜炎、血栓症、腎障害があり、IgA欠損症ではアナフィラキシーに注意が必要だ。
医学生医学生
2つを組み合わせればもっと効きそうですけど、併用はするんですか。
ドクタードクター
血漿交換のあとにIVIgを続ける併用は、単独療法に比べて明らかな上乗せ効果が示されていない。どちらか一方を、発症からなるべく早く、おおむね2週以内に始めるのが大切なんだ。
医学生医学生
病態が自己免疫だから免疫療法、でもステロイドは例外、そして血漿浄化とIVIgの2本柱、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点。この病気で命に関わるのは呼吸筋麻痺と自律神経障害だ。肺活量を繰り返し測って低下があれば人工呼吸管理を考え、不整脈や血圧変動に備えて心電図モニターをつける。深部静脈血栓症の予防や早期からのリハビリも欠かせない。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、毎日ベッドサイドで肺活量を測っていた患者さんがいました。あれは呼吸筋麻痺の進行を見ていたんですね。
ドクタードクター
その通り。診断面では、髄液で細胞数は正常なのに蛋白だけが上がる蛋白細胞解離が有名だけれど、発症1週以内ではまだ目立たないこともある。病型には脱髄型と軸索型があり、カンピロバクター感染後の軸索型では抗GM1抗体が陽性になりやすい。外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三徴とするFisher症候群は類縁疾患で、抗GQ1b抗体が陽性になることも合わせて押さえておこう。

まとめ

Guillain-Barré症候群は、カンピロバクター腸炎などの先行感染をきっかけに、分子相同性によって末梢神経への自己免疫反応が起こり、急性の弛緩性麻痺をきたす疾患です。治療の中心は免疫療法で、有効性が確立しているのは血漿浄化療法(血漿交換など)と免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)の2つであり、効果はほぼ同等で、発症早期に開始するほど有効です。ステロイド単独療法は無効とされ、慢性に経過するCIDPではステロイドが有効である点と対比して覚えることが重要です。先行感染があっても麻痺の原因は自己免疫であるため、抗菌薬や抗ウイルス薬は治療になりません。呼吸筋麻痺や自律神経障害の監視を含む全身管理も予後を左右するため、病態に基づいて治療を選ぶ考え方とあわせて身につけておきたい知識です。

解答・解説

正解はa, dです

Guillain-Barré症候群(GBS)は、感染などをきっかけに末梢神経に対する自己免疫反応が起こり、急性に四肢の弛緩性麻痺が進行する疾患である。カンピロバクター(Campylobacter jejuni)腸炎やサイトメガロウイルス、Epstein-Barr(EB)ウイルス、マイコプラズマなどの感染が先行することが多く、病原体の構造と末梢神経の糖脂質(ガングリオシド)が似ているために、病原体に対して作られた抗体が神経も攻撃してしまう(分子相同性)と考えられている。 したがって治療の中心は、病原体そのものを叩くことではなく、神経を傷害している自己免疫反応を抑える免疫療法である。有効性がランダム化比較試験で確立している免疫療法は、血液から自己抗体などの液性因子を取り除く血漿浄化療法と、大量の免疫グロブリンを点滴して免疫反応を調整する免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)の2つである。どちらも効果はほぼ同等とされ、発症早期(おおむね2週以内)に開始するほど有効である。 一方、他の多くの自己免疫疾患で用いられる副腎皮質ステロイドは、GBSでは単独での有効性が否定されている点が本問の最大のひっかけである。また先行感染があっても、麻痺が出現した時点の病態は自己免疫反応であるため、抗ウイルス薬や抗菌薬は治療にならない。

選択肢考察

  1. ○a.  血漿交換

    血漿交換を含む血漿浄化療法は、血液中の抗ガングリオシド抗体や補体、サイトカインなど神経を傷害する液性因子を除去する治療で、GBSに対する有効性が確立している。方法には単純血漿交換法、二重膜濾過法、免疫吸着法がある。発症からなるべく早く(特に発症7日以内)始めるほど効果が高い。体外循環を要するため、血行動態が不安定な例や自律神経障害による血圧変動が強い例、小児などでは施行しにくく、その場合はIVIgが選ばれやすい。

  2. ×b.  アシクロビル点滴

    アシクロビルは単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスのDNA合成を阻害する抗ウイルス薬で、ヘルペス脳炎などに用いる。GBSはウイルス感染が先行することはあっても、麻痺の原因は感染後に生じた自己免疫による末梢神経障害であり、ウイルスの増殖を抑えても病態は改善しない。したがってGBSの治療としては不適切である。

  3. ×c.  ステロイドパルス療法

    多くの自己免疫疾患とは異なり、GBSでは副腎皮質ステロイド単独(経口・静注パルスとも)の有効性はランダム化比較試験で否定されている。経口ステロイドではむしろ回復が遅れる可能性も示されており、診療ガイドラインでもステロイド単独療法は行うべきでないとされる。同じ免疫性末梢神経障害でも、慢性に経過する慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)ではステロイドが有効であり、両者の違いとして頻出である。

  4. ○d.  免疫グロブリン製剤投与

    免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)は、ヒト免疫グロブリン400 mg/kg/日を5日間連続で点滴静注する方法で、GBSの標準治療の一つである。自己抗体の中和、Fc受容体の遮断、補体活性化の抑制などにより免疫反応を抑えると考えられている。効果は血漿浄化療法と同等で、特別な設備や体外循環が不要で施行しやすいため、現在は第一選択として用いられることが多い。副作用として頭痛、無菌性髄膜炎、血栓症、腎障害などがあり、IgA欠損症ではアナフィラキシーに注意する。なお血漿交換の後にIVIgを続けて行う併用療法は、単独療法に比べて明らかな上乗せ効果は示されていない。

  5. ×e.  ベンジルペニシリン〈ペニシリンG〉点滴

    ベンジルペニシリンは梅毒(神経梅毒を含む)や肺炎球菌・連鎖球菌感染症などに用いる抗菌薬である。GBSでは先行感染としてカンピロバクター腸炎などの細菌感染がみられることがあるが、神経症状が出る頃には感染自体は終息していることが多く、また麻痺は自己免疫機序によるため抗菌薬で改善することはない。GBSの治療としては不適切である。

Guillain-Barré症候群の概要

・先行感染(上気道炎や下痢)の1〜3週後に、下肢から始まる左右対称性の弛緩性運動麻痺が急速に進行し、通常4週以内に症状がピークに達する。 ・深部腱反射は低下〜消失する。感覚障害は軽いことが多い。顔面神経麻痺や球麻痺、呼吸筋麻痺、自律神経障害(不整脈、血圧変動)を伴うことがある。 ・脳脊髄液検査では、細胞数は正常で蛋白のみ上昇する「蛋白細胞解離」がみられる(発症1週以内では目立たないことがある)。 ・病型には脱髄型(急性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー:AIDP)と軸索型(急性運動性軸索型ニューロパチー:AMAN)があり、カンピロバクター感染後の軸索型では抗GM1抗体などが陽性となりやすい。外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三徴とするFisher症候群は類縁疾患で、抗GQ1b抗体が陽性となる。

治療の整理

・免疫療法:血漿浄化療法またはIVIg(効果は同等、併用の上乗せ効果は明らかでない)。歩行に介助を要する中等症以上が主な適応となる。 ・ステロイド単独:無効(行わない)。 ・全身管理:呼吸筋麻痺に対する人工呼吸管理(肺活量の低下に注意)、自律神経障害に対する心電図モニター、深部静脈血栓症の予防、早期からのリハビリテーションが重要である。

予後

多くは数か月で回復するが、一部に後遺症が残り、数%は死亡する。高齢、先行する下痢、急速な進行、人工呼吸器の装着などは予後不良因子とされる。

POINT

・GBSの免疫療法は血漿浄化療法と免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)の2本柱で、効果は同等。 ・IVIgは400 mg/kg/日×5日間。発症早期(2週以内)に開始するほど有効。 ・ステロイド単独療法は無効であり行わない(CIDPではステロイドが有効である点と対比)。 ・先行感染があっても抗菌薬・抗ウイルス薬は治療にならない。 ・呼吸筋麻痺と自律神経障害の監視を含む全身管理が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。