胎児がいるうちは起こらない―子宮内反症は「胎盤を出すとき」の異常
第111回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
分娩時の異常と発症時期との組合せで誤っているのはどれか。
- a.臍帯下垂 ―― 分娩第1期
- b.会陰裂傷 ―― 分娩第2期
- c.過強陣痛 ―― 分娩第2期
- d.不正軸進入 ―― 分娩第1期
- e.子宮内反症 ―― 分娩第2期
対話形式の解説
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ドクターまとめ
分娩第1期は分娩開始から子宮口全開大、第2期は全開大から胎児娩出、第3期は胎児娩出から胎盤娩出までと定義され、各異常は発生のきっかけから時期を判断できます。臍帯下垂は未破水時、不正軸進入は児頭の骨盤入口進入時の現象で主に第1期、会陰裂傷は胎児が会陰を通過する第2期、過強陣痛は陣痛の異常のため第1期・第2期のいずれにも起こりえます。子宮内反症は弛緩した子宮で胎盤娩出操作を行った際などに生じ、第3期またはその直後に発症するため、第2期との組合せは誤りです。子宮内反症は出血量に見合わない重いショックを伴うことがあり、速やかな用手整復が必要で、子宮収縮が不十分な段階での強い臍帯牽引を避けることが予防になります。分娩経過に沿って異常を整理することは、立ち会いの各段階で起こりうる急変を予測する力につながります。
解答・解説
正解はeです
本問は「誤っている組合せ」を選ぶ問題である。各異常がどの分娩期に起こりうるかを、分娩各期の定義と各異常の発生機序から判断する。
分娩各期の定義
・分娩第1期(開口期):分娩開始(陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の規則的な陣痛の開始)から子宮口全開大(約10cm)まで。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大から胎児娩出まで。 ・分娩第3期(後産期):胎児娩出から胎盤(と卵膜)の娩出まで。 ・胎盤娩出後の約2時間は分娩第4期とよばれ、弛緩出血などの観察が重要な時期である。
考え方
各異常を「何がきっかけで起こるか」で整理するとよい。臍帯下垂は破水前の胎胞の中で起こる現象、不正軸進入は児頭が骨盤入口に入る(進入する)ときの現象であり、いずれも分娩第1期に起こりうる。会陰裂傷は児頭や肩が会陰を通過する胎児娩出時に生じるため分娩第2期の事象である。過強陣痛は陣痛そのものの異常なので、陣痛がある第1期・第2期のいずれにも起こりうる。 これに対し子宮内反症は、胎盤の娩出操作(臍帯の牽引や子宮底の圧迫)を契機に子宮底が内腔側へ陥入する病態であり、胎児娩出後、すなわち分娩第3期(あるいはその直後)に起こる。胎児がまだ子宮内にある分娩第2期には起こりえないため、eが誤りの組合せである。
選択肢考察
- ×a. 臍帯下垂 ―― 分娩第1期
正しい組合せ。臍帯下垂は、卵膜が破れる前(未破水)に臍帯が胎児の先進部より下方、あるいは側方に位置している状態をいう。未破水の状態は分娩第1期に多く、内診や超音波で胎胞内に臍帯を触知・確認して診断される。破水すると臍帯が先進部を越えて腟内・腟外へ出る臍帯脱出に移行する危険があり、児頭と骨盤の間で臍帯が圧迫されて急速に胎児機能不全に陥る。分娩第2期でも未破水であれば起こりうる。
- ×b. 会陰裂傷 ―― 分娩第2期
正しい組合せ。会陰裂傷は、児頭や肩甲が腟口・会陰を通過する際に会陰が過度に伸展して裂ける損傷である。児頭の発露から胎児の娩出完了までの間に生じるため、分娩第2期の事象である。頭位分娩では児頭の娩出だけで裂けることもあれば、続く肩甲の娩出で拡大することもある。裂傷の深さにより第1度(会陰皮膚・腟粘膜のみ)から第4度(肛門粘膜・直腸粘膜に及ぶ)に分類される。
- ×c. 過強陣痛 ―― 分娩第2期
正しい組合せ。過強陣痛は、陣痛が異常に強い、あるいは陣痛発作の持続が長く間欠が短い状態であり、診断基準は子宮口開大度ごと(分娩第1期の各段階)と分娩第2期それぞれに設定されている。したがって第1期・第2期のどちらにも起こりうる。原因として児頭骨盤不均衡などの産道の通過障害や子宮収縮薬の過量投与があり、胎児機能不全、子宮破裂、頸管裂傷、急産などの原因となる。
- ×d. 不正軸進入 ―― 分娩第1期
正しい組合せ。不正軸進入は、児頭が骨盤入口に進入する際に、児頭の矢状縫合が骨盤入口の中央(骨盤軸)からずれて母体の前方または後方に偏り、左右の頭頂骨の一方が先行して進入する状態である。前在頭頂骨が先行して矢状縫合が母体の後方(仙骨側)に寄るものを前在頭頂骨進入(Naegele傾斜)、後在頭頂骨が先行して矢状縫合が前方(恥骨側)に寄るものを後在頭頂骨進入(Litzmann傾斜)という。児頭が骨盤入口へ進入するのは主に分娩第1期であり、この時期に内診で診断されることが多い。後在頭頂骨進入は分娩停止につながりやすい。
- ○e. 子宮内反症 ―― 分娩第2期
誤った組合せであり、これが正解である。子宮内反症は、子宮底部が子宮内腔側へ陥入し、ひどい場合は子宮内膜面が腟内や腟外へ反転して露出する状態である。子宮底部に付着した胎盤を、子宮が弛緩した状態で臍帯牽引や子宮底圧迫により娩出しようとした場合などに起こりやすく、分娩第3期(胎盤娩出時)あるいはその直後に発症する。胎児が娩出されていない分娩第2期には起こりえない。症状は激しい下腹部痛、大量出血、迷走神経反射を伴うショック(出血量に見合わない重いショック)で、速やかな用手整復と全身管理が必要となる。
分娩期別に起こりやすい主な異常
・分娩第1期:臍帯下垂・臍帯脱出(破水時)、前期破水に伴う問題、回旋異常・不正軸進入、微弱陣痛・過強陣痛、常位胎盤早期剝離 ・分娩第2期:会陰裂傷・腟壁裂傷、頸管裂傷、肩甲難産、過強陣痛・微弱陣痛、子宮破裂、遷延分娩 ・分娩第3期以降:子宮内反症、癒着胎盤、胎盤遺残、弛緩出血、羊水塞栓症(分娩中から直後に多い)
臍帯下垂と臍帯脱出
・臍帯下垂:未破水で、臍帯が先進部より下方・側方にある。 ・臍帯脱出:破水後に、臍帯が先進部を越えて腟内・腟外へ脱出したもの。 ・臍帯脱出は胎児生存中であれば緊急帝王切開の適応となり、それまでの間は内診指で先進部を押し上げて臍帯圧迫を軽減し、骨盤高位などをとる。
子宮内反症の対応
・発症時は胎盤を無理に剝がさず、速やかに用手的整復を試みる。子宮収縮があると整復が難しいため、子宮弛緩薬などを用いることがある。 ・整復困難な場合は開腹手術による整復を行う。 ・整復後は子宮収縮薬を投与して再発と弛緩出血を防ぐ。 ・予防として、子宮が十分に収縮していない段階で強い臍帯牽引を行わないことが重要である。
POINT
・分娩第1期:分娩開始〜子宮口全開大、第2期:全開大〜胎児娩出、第3期:胎児娩出〜胎盤娩出。 ・子宮内反症は胎盤娩出を契機とし、分娩第3期(またはその直後)に起こる。第2期には起こらない。 ・臍帯下垂は未破水時、不正軸進入は児頭の骨盤入口進入時に起こり、いずれも主に分娩第1期。 ・会陰裂傷は胎児娩出時(第2期)、過強陣痛は第1期・第2期のいずれにも起こりうる。
