StudyMed医師国家試験

超音波で「見える」ものと「まだ見えない」もの―妊娠初期エコーで診断できる病態を見極める

第112回医師国家試験 A問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第112回 A問題 第15問

妊娠初期の超音波検査で診断できるのはどれか。3つ選べ。

  1. a.稽留流産
  2. b.異所性妊娠
  3. c.胎児発育不全
  4. d.胎児21trisomy
  5. e.2絨毛膜2羊膜性双胎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠初期の超音波検査で何が「診断」できて、何ができないのかを整理する問題だ。ポイントは2つ。1つは「その時点の形として画像に映るものかどうか」、もう1つは「疑うこと」と「確定すること」を区別できているかどうかだよ。
医学生医学生
妊娠初期のエコーって、胎嚢や心拍を確認するイメージが強いです。産婦人科の実習でも、経腟エコーで胎嚢を見せてもらいました。
ドクタードクター
そう、それが基本だね。妊娠初期の超音波の目的は大きく4つある。正常な子宮内妊娠の確認、流産や異所性妊娠などの異常の発見、胎児数と多胎なら膜性の診断、そして頭殿長(CRL)の計測による妊娠週数の確定だ。まずは流産から考えよう。稽留流産はどうやって診断すると思う?
医学生医学生
出血や腹痛があって、エコーで胎嚢が見えなくなっていたら流産…でしょうか。
ドクタードクター
惜しいね。稽留流産の特徴はむしろ「症状がない」ことなんだ。胎芽や胎児が子宮内で亡くなっているのに、出血も腹痛もなく妊娠組織がとどまっている。だから症状からは気づけず、超音波所見そのものが診断の決め手になる。胎嚢が十分大きくなっても胎芽が見えない、あるいは胎芽は見えるのに心拍がない、といった所見だ。
医学生医学生
症状がないからこそ、エコーでしか見つけられないんですね。でも1回見えなかっただけで決めていいんですか。
ドクタードクター
大事な疑問だね。目安として、胎嚢の平均径が25mm以上で胎芽がない、CRLが7mm以上で心拍がない場合は流産と判断してよいとされる。基準に満たない段階では、週数の見込み違いで正常妊娠を中断してしまわないよう、1〜2週間あけて再検査し、発育や心拍の出現を確認してから診断するんだ。
医学生医学生
次は異所性妊娠ですね。CBTの勉強で、妊娠反応陽性なのに子宮内に胎嚢がないと疑う、と覚えました。
ドクタードクター
その通り。もう少し踏み込むと、血中hCGがおおむね1,500〜2,000 IU/L程度を超えていれば経腟エコーで子宮内に胎嚢が見えるはずなのに、見えない。これが強い疑いの根拠になる。さらに子宮外に胎嚢様構造や付属器の腫瘤、ダグラス窩の液体貯留を認めれば診断できる。破裂前に見つけられれば、卵管を温存する手術やメトトレキサートによる薬物療法も選べるから、妊娠初期エコーの最重要ターゲットの一つだよ。
医学生医学生
では胎児発育不全はどうでしょう。小さければエコーでわかりそうな気がします。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだ。妊娠初期は胎児の大きさの個体差がとても小さい。だからこそ、この時期のCRLから逆に妊娠週数を決めているんだ。週数を決めるための計測で「週数のわりに小さい」とは言えないよね。
医学生医学生
なるほど、物差しを作っている段階で、その物差しでは測れないということですね。
ドクタードクター
うまい表現だ。胎児発育不全は、個体差が出始める妊娠中期以降に、確定した週数に基づいて推定体重の推移を追って診断する。逆にいえば、初期に週数をきちんと確定しておくことが、後の発育評価の前提になるわけだ。
医学生医学生
21トリソミーは、首の後ろのむくみ、NTで分かるんじゃないですか。遺伝医学の講義で出てきました。
ドクタードクター
NTが厚いとリスクが高いと推定できる、というのは正しい。でもそれはあくまでリスク評価、つまり非確定的検査なんだ。母体血のNIPTや血清マーカーも同じ位置づけ。確定には絨毛検査や羊水検査で胎児由来の細胞の染色体を直接調べる必要がある。超音波だけでは、どの時期でも確定診断はできないよ。
医学生医学生
「疑える」と「診断できる」は別物なんですね。最後の2絨毛膜2羊膜性双胎はどうですか。
ドクタードクター
これはむしろ妊娠初期が一番得意な領域だ。10週ごろまでは胎嚢が2つ別々に見えることで診断できる。それ以降は、隔膜の付け根に絨毛組織が三角形に入り込むラムダ(λ)サインと厚い隔膜が手がかりになる。中期以降は隔膜が薄くなって判定が難しくなるから、初期のうちに膜性を決めておくことが大切なんだ。
医学生医学生
1絨毛膜2羊膜性双胎だと、Tサインで隔膜が薄いんでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。1絨毛膜双胎は胎盤を共有するので双胎間輸血症候群などのリスクがあり、健診の間隔や分娩時期など管理方針が大きく変わる。だから膜性診断は「できる」だけでなく「初期にしておくべき」ものなんだ。
医学生医学生
まとめると、稽留流産、異所性妊娠、2絨毛膜2羊膜性双胎は初期エコーで診断できて、胎児発育不全は時期が早すぎ、21トリソミーはそもそもエコーでは確定できない、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床では、初期エコーで胞状奇胎が見つかることもあるし、CRLで分娩予定日を修正する作業も日常的に行う。妊婦さんにとって初期のエコーは安心材料であると同時に、見逃してはいけない異常を拾う場でもある。何を見て、何を判断しているのかを意識しながら画像を見る習慣をつけておこう。

まとめ

妊娠初期の超音波検査では、胎嚢の位置、胎芽・胎児心拍の有無、胎嚢や隔膜の性状といった「その時点で形として映る所見」から、稽留流産、異所性妊娠、2絨毛膜2羊膜性双胎などを診断できます。稽留流産は無症状のため超音波所見が決め手となり、異所性妊娠はhCG値に見合う子宮内胎嚢がないことから疑い、双胎の膜性はλサインやTサインを用いて初期のうちに確定することが重要です。一方、胎児発育不全は初期のCRLが週数決定に使われる時期であるため中期以降に診断し、21トリソミーはNTで疑えても確定には絨毛検査や羊水検査が必要です。「何がいつ、どの検査で確定できるのか」を整理しておくことは、妊婦健診の流れや出生前検査の説明を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, b, eです

問われていること

妊娠初期(妊娠13週6日まで)に行う超音波検査で「診断(確定)できる」病態を選ぶ問題である。妊娠初期の超音波検査には主に次の目的がある。 ・正常な子宮内妊娠であることの確認(胎嚢の位置、胎芽・胎児心拍の有無) ・流産や異所性妊娠、胞状奇胎などの妊娠初期の異常の診断 ・胎児数の確認と、多胎であれば膜性(絨毛膜と羊膜の数)の診断 ・頭殿長(CRL:crown-rump length、胎児の頭頂から殿部までの長さ)の計測による妊娠週数・分娩予定日の確定

考え方

形態として画像に直接現れる異常(胎嚢の位置、胎児心拍の有無、胎嚢・胎盤の数や隔壁の性状)は妊娠初期の超音波で診断できる。一方、「時間経過での発育の遅れ」を評価する病態(胎児発育不全)は、胎児の大きさに個体差が生じ、かつ正確な妊娠週数が確定した後でなければ判定できないため妊娠初期には診断できない。また、染色体異常は超音波で「疑う」ことはできても、確定には染色体そのものの検査が必要である。 この観点から、稽留流産・異所性妊娠・2絨毛膜2羊膜性双胎が正解となる。

選択肢考察

  1. ○a.  稽留流産

    稽留流産は、胎芽・胎児が子宮内で死亡している(または発育が停止している)にもかかわらず、性器出血や下腹部痛などの症状がなく、子宮内に妊娠組織がとどまっている状態である。症状に乏しいため、診断は超音波所見による。胎嚢は見えるが一定以上の大きさになっても胎芽が出現しない、あるいは胎芽は見えるが心拍を確認できない、といった所見で診断する。目安として、胎嚢の平均径が25mm以上で胎芽がみられない場合や、頭殿長が7mm以上で心拍がみられない場合は流産と判断してよいとされる。基準に満たない段階では、誤診で正常妊娠を中断しないよう、1〜2週間ほどの間隔をおいて超音波検査を繰り返し、胎嚢の発育や心拍出現の有無を確認してから診断する。

  2. ○b.  異所性妊娠

    異所性妊娠は、受精卵が子宮内膜以外(大部分は卵管、ほかに卵巣・子宮頸管・腹腔・帝王切開瘢痕部など)に着床した状態である。妊娠反応が陽性で、血中hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が経腟超音波で子宮内胎嚢を確認できるはずの値(おおむね1,500〜2,000 IU/L程度)を超えているのに子宮内に胎嚢がみられない場合に強く疑い、子宮外に胎嚢様構造(心拍を伴う胎児が見えることもある)や付属器腫瘤、ダグラス窩の液体貯留(腹腔内出血)を認めれば診断できる。妊娠初期に経腟超音波で診断すべき代表的疾患であり、破裂前に見つけることで卵管温存手術やメトトレキサートによる薬物療法などの選択肢が広がる。

  3. ×c.  胎児発育不全

    胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)は、胎児の推定体重が妊娠週数に比べて明らかに小さい状態で、わが国では推定体重が基準値の−1.5SD以下を目安とする。妊娠初期は胎児の大きさの個体差がきわめて小さく、むしろこの時期の頭殿長から妊娠週数を決める(月経歴から推定した週数を補正する)ため、初期の大きさで発育の遅れを判定することはできない。胎児の発育に差が生じ始める妊娠中期以降に、確定した妊娠週数に基づく推定体重の推移を追って診断する。初期に週数を正確に確定しておくことは、後のFGR評価の前提となる。

  4. ×d.  胎児21trisomy

    妊娠11〜13週ごろの超音波検査で胎児の後頸部にみられる皮下の透亮像(NT:nuchal translucency、項部浮腫)が厚い場合、21トリソミー(Down症候群)などの染色体異常のリスクが高いと推定される。しかし、これはあくまでリスク評価(非確定的検査)であり、診断ではない。母体血を用いるNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)や母体血清マーカー検査も同様に非確定的検査である。確定診断には、絨毛検査(絨毛採取)や羊水検査で得た胎児由来細胞の染色体分析が必要であり、超音波検査だけでは妊娠のどの時期でも確定診断はできない。

  5. ○e.  2絨毛膜2羊膜性双胎

    2絨毛膜2羊膜性双胎(DD双胎)は、胎児ごとに絨毛膜(将来の胎盤)と羊膜が別々に存在する双胎である。膜性の診断は妊娠初期の超音波検査が最も正確で、妊娠10週ごろまでは胎嚢が2つ別々に見えることで診断できる。それ以降に2つの胎嚢が接して1つに見えるようになっても、隔壁の付け根に絨毛組織が三角形に入り込むラムダ(λ)サインと、厚い隔膜を認めればDD双胎と判断できる。妊娠中期以降は隔膜が薄くなり判定が難しくなるため、初期に診断しておくことが重要である。

妊娠初期超音波の正常所見の目安(経腟超音波)

・妊娠5週ごろ:子宮内に胎嚢(GS:gestational sac)が見え始める。 ・妊娠5〜6週ごろ:胎嚢内に卵黄嚢、続いて胎芽が見える。 ・妊娠6〜7週ごろ:胎芽の心拍が確認できる。 ・妊娠9〜11週ごろ:頭殿長(CRL)を計測し、妊娠週数・分娩予定日を確定・修正する。

双胎の膜性診断

・2絨毛膜2羊膜性(DD):胎嚢2つ、λサイン、厚い隔膜。 ・1絨毛膜2羊膜性(MD):胎嚢1つの中に羊膜腔が2つ、Tサイン(隔膜が胎盤から垂直に立ち上がる)、薄い隔膜。胎盤を共有するため双胎間輸血症候群(TTTS)などのリスクがある。 ・1絨毛膜1羊膜性(MM):隔膜なし。臍帯相互巻絡のリスクがある。 膜性により周産期リスクと管理方針(健診間隔、分娩時期など)が大きく異なるため、妊娠初期の膜性診断は必須である。

流産の分類(超音波・臨床所見による)

・切迫流産:出血などの症状はあるが妊娠継続の可能性がある状態(胎児心拍あり)。 ・進行流産:子宮口が開大し、妊娠組織が排出されつつある状態。 ・完全流産/不全流産:妊娠組織が完全に/一部残って排出された状態。 ・稽留流産:症状がなく、胎芽・胎児が死亡したまま子宮内にとどまっている状態。

出生前検査の区別

・非確定的検査:NT計測などの超音波マーカー、母体血清マーカー、NIPT。 ・確定的検査:絨毛検査、羊水検査(胎児染色体の直接分析。流産リスクを伴う侵襲的検査)。

POINT

・妊娠初期の超音波で診断すべきもの:流産(稽留流産を含む)、異所性妊娠、胞状奇胎、胎児数と多胎の膜性、頭殿長による妊娠週数の確定。 ・胎児発育不全は妊娠中期以降に診断する(初期は個体差が小さく、週数決定に使う時期)。 ・21トリソミーは超音波(NT)で疑えても確定診断できない。確定は絨毛検査・羊水検査。 ・膜性診断は妊娠初期に。DD双胎=λサイン、MD双胎=Tサイン。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。