StudyMed医師国家試験

本数が途中で変わったら?―Brinkman指数を正しく積み上げる

第110回医師国家試験 I問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第23問

成人になったのを機に喫煙を開始し,20歳台の10年間は毎日20本,30歳以降の5年間は毎日40本喫煙している。その後は喫煙していない。  Brinkman指数はどれか。

  1. a.15
  2. b.20
  3. c.300
  4. d.400
  5. e.600

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、喫煙歴から累積喫煙量の指標であるBrinkman指数を計算する問題だ。シンプルに見えて、喫煙本数が途中で変わっていることと、すでに禁煙していることがひっかけポイントになっている。まず、Brinkman指数の定義は覚えているかな。
医学生医学生
1日の喫煙本数×喫煙年数、ですよね。病院実習で予診をとったとき、指導医に必ず聞くように言われました。
ドクタードクター
その通り。では、本数が途中で変わった場合はどう計算する?
医学生医学生
うーん、平均の本数を出して年数を掛けるんでしょうか。20本と40本の平均で30本、それに15年を掛けて450……あれ、選択肢にないですね。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。単純平均だと、20本の期間が10年、40本の期間が5年という長さの違いが反映されない。正しくは期間ごとに本数×年数を計算して、それを足し合わせるんだ。
医学生医学生
なるほど。20歳台は20本×10年で200、30歳以降は40本×5年で200、合わせて400ですね。
ドクタードクター
正解。Brinkman指数は400だ。では、もうやめているという点はどう扱う?
医学生医学生
禁煙していても、過去に吸った分がなくなるわけではないので、そのまま400でいいと思います。
ドクタードクター
その通り。指数はあくまで「これまでに吸った量の総和」だから、禁煙しても減らない。次に、ほかの数字がどういう間違いから生まれるか見ておこう。15という数字はどうかな。
医学生医学生
10年+5年で、年数を足しただけですね。本数を掛け忘れています。
ドクタードクター
そう。300と600はどうだろう。
医学生医学生
300は15年ずっと20本、600は15年ずっと40本で計算した値ですね。前者は後半の増加を無視して過小評価、後者は前半まで40本とみなして過大評価です。
ドクタードクター
完璧だ。残る20が一番の要注意で、これはpack-yearsで計算した値なんだ。pack-yearsは1日の箱数×年数で、1箱は20本。本例なら1箱×10年+2箱×5年で20 pack-yearsになる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で英語論文を読んだとき、pack-yearsが出てきて混乱した覚えがあります。Brinkman指数を20で割るとpack-yearsになるんですね。
ドクタードクター
その関係を押さえておけば換算は簡単だ。海外の文献やガイドラインではpack-yearsが主流だから、どちらの単位で聞かれているかを必ず確認しよう。ここからは臨床的な意義だ。Brinkman指数は肺癌、COPD、喉頭癌といった喫煙関連疾患のリスク評価に使われる。
医学生医学生
肺癌検診で喀痰細胞診の対象を決めるのにも使うんでしたっけ。
ドクタードクター
よく覚えているね。50歳以上で喫煙指数600以上の人は高危険群とされ、胸部X線に加えて喀痰細胞診の対象になる。喀痰細胞診は、喫煙との関連が強い中心型、つまり肺門部の扁平上皮癌を見つけるのが目的だ。
医学生医学生
末梢の腺癌よりも、太い気管支にできる扁平上皮癌のほうが喫煙と関係が深いからですね。
ドクタードクター
そう。もう一つ伝えておきたいのは、指数は減らなくても禁煙には確かな意味があるということ。禁煙後の年数が長くなるほど肺癌や心血管疾患のリスクは徐々に下がっていくし、COPDでは1秒量の低下速度が緩やかになる。外来では「今からやめても遅くない」と伝えることが大切だよ。
医学生医学生
数字を計算するだけでなく、その数字をどう患者さんに還元するかまで考えるんですね。

まとめ

Brinkman指数(喫煙指数)は「1日の喫煙本数×喫煙年数」で求める累積喫煙量の指標で、本数が途中で変わった場合は期間ごとの積を合算します。本例では20本×10年+40本×5年=400となり、禁煙後も累積値は減らないため400のままです。年数だけを足す、全期間を一律の本数で計算する、1箱20本を単位とするpack-years(本例では20)と取り違える、といった誤りに注意が必要です。Brinkman指数は肺癌やCOPDなど喫煙関連疾患のリスク評価に用いられ、肺癌検診では50歳以上・喫煙指数600以上が喀痰細胞診の対象となる高危険群とされます。指数そのものは減らなくても禁煙によって疾患リスクは徐々に低下するため、正確な喫煙歴の聴取と禁煙支援はいずれも臨床の基本となります。

解答・解説

正解はdです

Brinkman指数(喫煙指数)は、生涯の累積喫煙量を表す指標であり、次の式で求める。  Brinkman指数 = 1日の喫煙本数 × 喫煙年数 喫煙本数が途中で変わった場合は、期間ごとに「本数×年数」を計算し、それらを足し合わせればよい。

計算

・20歳台(10年間):20本/日 × 10年 = 200 ・30歳以降(5年間):40本/日 × 5年 = 200 ・合計:200 + 200 = 400 したがってBrinkman指数は400である。現在は禁煙していても、過去の累積喫煙量は消えないため、指数はそのまま400として扱う。 なお、よく似た指標にpack-years(パック・イヤー)がある。これは「1日の喫煙箱数(1箱=20本)× 喫煙年数」で、本例では 1箱×10年 + 2箱×5年 = 20 pack-yearsとなる。設問はBrinkman指数を問うているので、単位を取り違えないことが大切である。

選択肢考察

  1. ×a.  15

    15は喫煙年数の合計(10年+5年)にすぎず、1日の喫煙本数が掛け合わされていない。Brinkman指数は本数と年数の積で表すため誤りである。

  2. ×b.  20

    20はpack-years(1日の箱数×年数)で計算した値である(1箱×10年+2箱×5年=20)。累積喫煙量の指標としては正しい考え方だが、本数を単位とするBrinkman指数とは異なるため、本問の答えとしては誤りである。

  3. ×c.  300

    300は全喫煙期間15年を一律に1日20本として計算した値(20本×15年)である。30歳以降の5年間は1日40本に増えているので、この期間の喫煙量を過小評価しており誤りである。

  4. ○d.  400

    期間ごとに計算すると、20本×10年=200、40本×5年=200で、合計400となる。喫煙本数が変化した場合は期間ごとの積を合算するのが正しい求め方であり、禁煙後も累積値は減らないので、これが本例のBrinkman指数である。

  5. ×e.  600

    600は全喫煙期間15年を一律に1日40本として計算した値(40本×15年)である。20歳台の10年間は1日20本であったので、喫煙量を過大評価しており誤りである。

Brinkman指数の臨床的意義

・累積喫煙量の目安として、肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喉頭癌などの喫煙関連疾患のリスク評価に用いる。 ・肺癌検診では、50歳以上で喫煙指数(1日本数×年数)600以上の者が高危険群とされ、胸部X線検査に加えて喀痰細胞診の対象となる。喀痰細胞診は、喫煙と関連の強い中心型(肺門型)の扁平上皮癌の検出を目的とする。 ・一般に指数400以上で肺癌のリスクが高まるとされる。

pack-yearsとの関係

・pack-years = 1日の喫煙箱数(1箱20本)× 喫煙年数 ・Brinkman指数 ÷ 20 = pack-years(例:400 ÷ 20 = 20 pack-years) ・国際的な文献や海外のガイドラインではpack-yearsが用いられることが多い。

禁煙の効果

・禁煙しても累積喫煙量(指数)は減らないが、禁煙後の年数が長くなるにつれて肺癌や心血管疾患のリスクは徐々に低下する。COPDでは禁煙により呼吸機能(1秒量)の低下速度が緩やかになる。

POINT

・Brinkman指数 = 1日の喫煙本数 × 喫煙年数。本数が途中で変わったら期間ごとに計算して合算する。 ・本例:20×10 + 40×5 = 400。 ・pack-years(箱数×年数)と混同しない:本例は20 pack-years。 ・肺癌検診では50歳以上・喫煙指数600以上が喀痰細胞診の対象。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。