StudyMed医師国家試験

「年50、5年で100」―放射線業務従事者の線量限度を単位の桁から攻略する

第110回医師国家試験 I問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第24問

法令に規定された男性放射線業務従事者の通常作業における1年間の放射線被ばく線量限度(実効線量)はどれか。

  1. a.10ミリシーベルト
  2. b.50ミリシーベルト
  3. c.500ミリシーベルト
  4. d.5シーベルト
  5. e.10シーベルト

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、放射線を扱う職場で働く人が1年間にどこまで被ばくしてよいか、つまり職業被ばくの線量限度を問う問題だ。数字の暗記に見えるけれど、着眼点は2つ。「実効線量とは何か」と「ミリシーベルトとシーベルトの桁の違い」だよ。まず、実効線量という言葉はどういう意味だったかな。
医学生医学生
放射線の種類や臓器ごとの感受性の違いを考慮して、全身への影響を1つの数字にしたもの、だったと思います。基礎の放射線医学の講義で、加重係数をかけるという話を聞きました。
ドクタードクター
その通り。放射線加重係数と組織加重係数をかけて、全身の被ばくの影響をシーベルトで表したものだ。主に発がんや遺伝的影響のような確率的影響、つまりしきい線量がないと仮定される影響を管理するための量なんだ。外部被ばくと内部被ばくを合算して評価する点も押さえておこう。
医学生医学生
数字は自信がないんですが、一般の人は年1ミリシーベルトでしたよね。職業だとその10倍の10ミリシーベルトくらいでしょうか。
ドクタードクター
一般公衆の年1ミリシーベルトをよく覚えているね。ただ、10ミリシーベルトという規定は法令上ないんだ。わが国では電離放射線障害防止規則や医療法施行規則で、放射線業務従事者の実効線量限度を「5年間につき100ミリシーベルト、かつ1年間につき50ミリシーベルト」と定めている。だから1年間の限度として問われれば、答えは50ミリシーベルトだ。
医学生医学生
5年で100なら、毎年50ずつ浴びたら2年で上限に達してしまいますね。
ドクタードクター
鋭いね。まさにそこが2段構えの意味なんだ。5年平均でみると年20ミリシーベルトに抑える必要があって、そのうえで単年度では50を超えてはいけない。ある年に少し多めになっても許容するけれど、長期的には低く管理する、という考え方だ。10ミリシーベルトは5年平均の20よりもさらに小さく、どの規定にも当てはまらないね。
医学生医学生
500ミリシーベルトも、どこかで見た気がする数字です。
ドクタードクター
それは皮膚の等価線量限度、1年間につき500ミリシーベルトだね。等価線量は特定の臓器・組織ごとの線量で、皮膚障害や白内障のような組織反応、いわゆる確定的影響を防ぐために臓器ごとに限度が設けられている。全身の実効線量の限度と混同すると、10倍も大きい数字を選んでしまうことになる。
医学生医学生
5シーベルトや10シーベルトは、単位がシーベルトになっているだけで桁がまったく違いますね。
ドクタードクター
そう、5シーベルトは5000ミリシーベルトで、年間限度の100倍だ。全身に短時間で数グレイを浴びると骨髄障害を中心とした急性放射線症候群をきたし、治療なしの半数致死線量はおよそ3〜5グレイとされる。10シーベルト規模になると消化管障害も前面に出て、集中治療をしても救命はきわめて難しい。線量限度どころか、致死的になりうる線量域なんだ。
医学生医学生
単位の桁に気をつければ、知識が曖昧でも少なくとも2つは消せますね。
ドクタードクター
その感覚は大事だよ。では関連する数字も整理しておこう。妊娠の可能性がある女性の放射線業務従事者は3か月間につき5ミリシーベルト、妊娠と診断された女性は申し出から出産まで内部被ばく1ミリシーベルト、腹部表面の等価線量2ミリシーベルトが限度だ。それから眼の水晶体は、2021年4月施行の改正で、年150ミリシーベルトから5年100ミリシーベルト・年50ミリシーベルトへ引き下げられた。
医学生医学生
臨床実習で循環器内科のカテーテル室に入ったとき、先生方が防護眼鏡をかけていた理由がわかりました。
ドクタードクター
IVRや透視を多用する医師は水晶体の被ばくが多くなりやすいから、まさにその対策だね。外部被ばくを減らす基本は、時間を短く、距離をとる、遮蔽するの3原則。点線源なら線量率は距離の2乗に反比例するから、一歩下がるだけでもかなり違うよ。
医学生医学生
患者さんがCTを何度も受ける場合には、線量限度はかからないんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。医療被ばくには線量限度は適用されない。必要な検査を限度のせいで受けられなくなっては本末転倒だからね。その代わり、被ばくに見合う便益があるかという正当化と、合理的に達成できる限り線量を低くする最適化、いわゆるALARAの原則で管理する。診断参考レベルの活用もその一環だ。正当化・最適化・線量限度が放射線防護の3原則で、線量限度は職業被ばくと公衆被ばくに対するものだと整理しておこう。
医学生医学生
年50・5年100は職業被ばく、年1は公衆、医療被ばくは限度なし、と区別して覚えます。

まとめ

放射線業務従事者の実効線量限度は、電離放射線障害防止規則などにより「5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv」と定められており、1年間の限度は50mSvです。実効線量は確率的影響を管理するための全身の指標で、皮膚の年500mSvや水晶体の年50mSv(2021年改正で引き下げ)のような等価線量限度は、組織反応を防ぐための臓器別の値として区別します。一般公衆は年1mSv、妊娠可能な女性従事者は3か月5mSvで、医療被ばくには線量限度を適用せず正当化と最適化で管理します。5Svや10Svは急性放射線症候群で致死的になりうる線量域であり、mSvとSvの桁を意識するだけでも誤答を避けられます。自分自身とスタッフを守る放射線防護の知識は、透視やIVRに関わるすべての医師に欠かせません。

解答・解説

正解はbです

問われていること

放射線業務に従事する人(放射線業務従事者)が通常の業務で受けてよい放射線量の上限、すなわち職業被ばくの線量限度のうち、男性の1年あたりの実効線量限度を問う問題である。

実効線量とは

実効線量は、放射線の種類による生物学的影響の違い(放射線加重係数)と、臓器・組織ごとの放射線感受性の違い(組織加重係数)を考慮して、全身が受けた被ばくの影響を一つの数値にまとめた量であり、単位はシーベルト(Sv)である。確率的影響(発がんや遺伝的影響のように、しきい線量がなく線量に比例して発生確率が増えると仮定される影響)のリスク管理に用いられる。体外の線源からの外部被ばくと、体内に取り込んだ放射性物質による内部被ばくを合算して評価する。

法令上の線量限度

国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を取り入れ、わが国では電離放射線障害防止規則(電離則)や医療法施行規則などで、放射線業務従事者の実効線量限度を「5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv」と定めている。すなわち5年平均では1年あたり20mSvに抑える必要があり、そのうえで単年度では50mSvを超えてはならない。したがって、設問の「1年間の線量限度」は50ミリシーベルトである。 選択肢のうち、mSv(ミリシーベルト)とSv(シーベルト)の桁の違いに注意すると、500mSv以上は職業被ばくの年間限度としてはけた違いに大きく、5Sv・10Svに至っては急性放射線症候群で致死的になりうる線量であることから、常識的にも除外できる。

選択肢考察

  1. ×a.  10ミリシーベルト

    誤り。放射線業務従事者の年間実効線量限度として法令に定められた値ではない。5年間100mSvの枠から計算される1年平均の20mSvよりも小さく、該当する規定はない。なお一般公衆の線量限度は年間1mSvであり、こちらとも一致しない。

  2. ○b.  50ミリシーベルト

    正しい。電離放射線障害防止規則・医療法施行規則などにより、放射線業務従事者の実効線量限度は「5年間で100mSvを超えず、かつ任意の1年間で50mSvを超えない」と定められている。1年間に限ってみた上限が50mSvである。ただし毎年50mSvずつ被ばくすると2年で100mSvに達してしまうため、5年平均では年20mSv以下に管理する必要がある点も併せて理解しておく。

  3. ×c.  500ミリシーベルト

    誤り。500mSvは実効線量限度ではなく、皮膚の等価線量限度(1年間につき500mSv)にあたる数値である。等価線量は特定の臓器・組織ごとの線量で、皮膚や眼の水晶体のような組織反応(確定的影響)を防ぐために個別に限度が設けられている。全身の実効線量としての年間限度としては10倍も大きい。

  4. ×d.  5シーベルト

    誤り。5Sv(5000mSv)は職業被ばくの年間限度より100倍大きい値である。全身に短時間で数Gy(グレイ)程度を被ばくすると骨髄障害を主体とする急性放射線症候群をきたし、半数致死線量(LD50/60)は治療なしで約3〜5Gyとされる。5Svは致死的になりうる線量域であり、線量限度とは無関係である。

  5. ×e.  10シーベルト

    誤り。10Sv(10000mSv)規模の全身急性被ばくでは、骨髄障害に加えて消化管障害が前面に出て、集中治療を行ってもほぼ救命困難とされる。職業被ばくの線量限度とはけた違いの値である。

線量限度の整理(わが国の法令)

1. 放射線業務従事者(通常作業) ・実効線量:5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv ・女性(妊娠する可能性がないと診断された者を除く):3か月間につき5mSv ・妊娠と診断された女性(申し出から出産まで):内部被ばくによる実効線量1mSv、腹部表面の等価線量2mSv ・眼の水晶体の等価線量:5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv(2021年4月施行の改正で、それまでの年間150mSvから引き下げられた) ・皮膚の等価線量:1年間につき500mSv 2. 緊急作業時:実効線量100mSv(原子力災害などの特例緊急作業では250mSv) 3. 一般公衆:実効線量で年間1mSv(医療被ばくと自然放射線は除く)

放射線防護の三原則

・正当化:被ばくを伴う行為は、それによる便益が害を上回る場合にのみ行う。 ・最適化:経済的・社会的要因を考慮しつつ、被ばくを合理的に達成可能な限り低く保つ(ALARAの原則)。 ・線量限度:個人の被ばくが限度を超えないように管理する。なお医療被ばく(患者が診療で受ける被ばく)には線量限度は適用されず、正当化と最適化(診断参考レベルの活用など)で管理される。

外部被ばく防護の三原則

時間(被ばく時間を短く)、距離(線源から離れる。点線源では線量率は距離の2乗に反比例)、遮蔽(鉛などで遮る)。

影響の種類

・確率的影響(発がん、遺伝的影響):しきい線量がないと仮定され、実効線量で管理する。 ・組織反応(確定的影響:白内障、皮膚障害、不妊、骨髄抑制など):しきい線量があり、それ以下に抑えることで防ぐ。臓器ごとの等価線量限度はこの考えに基づく。

POINT

・放射線業務従事者の実効線量限度:5年間で100mSv、かつ1年間で50mSv(5年平均で年20mSv) ・女性は3か月で5mSv、妊娠中は内部被ばく1mSv・腹部表面2mSv ・水晶体の等価線量限度は2021年改正で5年100mSv・年50mSvへ引き下げ、皮膚は年500mSv ・一般公衆は年1mSv、医療被ばくには線量限度を適用しない ・mSvとSvの単位の桁を取り違えない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。