StudyMed医師国家試験

腫れて、熱をもって、血流が落ちる―腎移植の急性拒絶反応を「時期」と「機序」で見抜く

第110回医師国家試験 E問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第110回 E問題 第1問

腎移植の急性拒絶反応で正しいのはどれか。

  1. a.血小板が減少する。
  2. b.移植腎が腫大する。
  3. c.移植腎の血流が上昇する。
  4. d.移植後6時間以内に起きる。
  5. e.ドナーのClassⅠ抗原に対するレシピエントの抗体が関与する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は腎移植後の拒絶反応の問題だ。拒絶反応は「いつ起こるか」と「どんな免疫が主役か」で4つに分けて整理するのがコツ。そのうえで、急性拒絶反応のときに移植腎で何が起きているかをイメージできれば、自然に答えが見えてくるよ。
医学生医学生
免疫学の講義で、超急性・急性・慢性の3つに分けると習った気がします。急性は抗体が主役でしたっけ?
ドクタードクター
そこはよく混同されるところだね。抗体が主役なのは、移植直後に起こる超急性拒絶反応のほう。レシピエントが移植前からドナーのHLAクラスⅠ抗原やABO血液型抗原に対する抗体を持っていると、移植腎の血管内皮に抗体が結合して補体が活性化され、血栓で腎がみるみる虚血・壊死してしまう。これが数分〜24時間以内に起こるんだ。
医学生医学生
ということは、「移植後6時間以内」や「ドナーのクラスⅠ抗原に対する抗体」という記述は、超急性拒絶反応の説明なんですね。
ドクタードクター
その通り。急性拒絶反応は典型的には移植後1週間〜3か月以内に起こり、主体はT細胞による細胞性免疫だ。抗原提示細胞がドナーのHLA抗原を提示し、CD4陽性T細胞が活性化されて、細胞傷害性T細胞などが移植腎を攻撃する。ちなみに超急性と急性の間、移植後1週間以内に起こるものは促進型急性拒絶反応と呼ばれ、過去の輸血・妊娠・移植で感作された記憶免疫が関わる。
医学生医学生
T細胞が腎に入り込んで攻撃するなら、腎そのものはどうなるんでしょう。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だよ。リンパ球などの炎症細胞が浸潤して間質に浮腫が起こるから、移植腎は腫大する。移植腎は腸骨窩に置かれていて体表から触れやすいので、腫大や圧痛として気づかれやすいんだ。これに発熱、尿量減少、体重増加、血清クレアチニン上昇が加わるのが典型像。
医学生医学生
腫れているなら、炎症で血流も増えていそうな気がしたんですが、違うんですか。
ドクタードクター
直感的にはそう思うよね。でも腎は被膜に包まれた臓器だから、浮腫で腎実質の内圧が上がると血液が入りにくくなる。さらに血管炎、つまり動脈内膜炎を伴えば血管抵抗も上がる。だから移植腎の血流はむしろ低下し、超音波ドプラでは抵抗係数、いわゆるRIの上昇がみられるんだ。
医学生医学生
なるほど、皮膚の炎症の「発赤・熱感」のイメージで考えるとだめなんですね。腎臓のような被膜のある臓器では、腫れること自体が血流を悪くすると。
ドクタードクター
いい理解だね。では血小板減少はどうだろう。
医学生医学生
拒絶反応で血管の中に血栓ができるなら、血小板が消費されて減りそうな気もします。
ドクタードクター
鋭いね。実際、超急性拒絶反応や重症の抗体関連型拒絶反応で血栓性微小血管症を伴えば、血小板が減ることはある。でもそれは急性拒絶反応一般の特徴とはいえない。移植後に血小板減少をみたら、まずは免疫抑制薬や抗ウイルス薬による骨髄抑制、サイトメガロウイルス感染症などを考えるのが臨床的な順序だよ。
医学生医学生
整理すると、急性拒絶反応で正しいのは移植腎が腫大すること、ですね。時期と抗体の話は超急性のもので、血流は低下、血小板減少は典型的ではない、と。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での話をしておこう。急性拒絶反応を疑ったら、確定診断は移植腎生検で、Banff分類で評価する。ここで大事なのが、カルシニューリン阻害薬、つまりシクロスポリンやタクロリムスによる腎毒性との鑑別だ。どちらもクレアチニンが上がるのに、拒絶なら免疫抑制を強め、薬剤性なら減らすと、対応が正反対になる。
医学生医学生
臨床実習で腎臓内科を回ったとき、タクロリムスの血中濃度を毎回チェックしていたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。治療はステロイドパルス療法が第一選択で、抵抗例には抗胸腺細胞グロブリンなどを使う。抗体関連型なら血漿交換や免疫グロブリン大量療法、リツキシマブなども選択肢になる。それから、移植から時間がたっていても、免疫抑制薬の減量や飲み忘れをきっかけに急性拒絶反応は起こりうる。服薬アドヒアランスの確認は外来でとても大切だよ。
医学生医学生
慢性拒絶反応はどう違うんでしょうか。
ドクタードクター
数か月〜数年かけて、ドナー特異的抗体などの液性免疫が関わり、血管内膜の肥厚や糸球体病変で腎機能がじわじわ低下する。治療抵抗性で、移植腎喪失の主な原因になるんだ。一方、超急性拒絶反応は移植前のクロスマッチの普及で今では極めてまれになっている。

まとめ

腎移植後の拒絶反応は、発症時期と免疫機序で超急性・促進型急性・急性・慢性に分けて整理します。急性拒絶反応は典型的には移植後1週間〜3か月に起こり、主体はT細胞による細胞性免疫で、炎症細胞浸潤と間質浮腫により移植腎が腫大・圧痛を示し、発熱、尿量減少、クレアチニン上昇を伴います。被膜に包まれた腎では浮腫や血管炎で血流はむしろ低下し、ドプラ超音波でRI上昇がみられます。移植後24時間以内に既存の抗ドナーHLAクラスⅠ抗体やABO抗体で起こるのは超急性拒絶反応であり、血小板減少をみたらまず薬剤性や感染症を考えます。確定診断は移植腎生検で、カルシニューリン阻害薬腎毒性との鑑別は治療方針を正反対に分けるため、臨床で特に重要です。

解答・解説

正解はbです

テーマ

腎移植後の拒絶反応は,発症時期と主な免疫機序によって超急性・促進型急性・急性・慢性に分けて整理する。本問は,臨床で最も頻度が高く治療可能性も高い「急性拒絶反応」の時期・機序・臨床所見を問うている。

急性拒絶反応の要点

・時期: 典型的には移植後1週間〜3か月以内に起こる(免疫抑制薬の減量・怠薬などを契機にそれ以降にも起こりうる)。 ・機序: 主体はドナーのHLA抗原を認識したレシピエントのT細胞による細胞性免疫(T細胞関連型拒絶反応)である。移植後に新たに産生されたドナー特異的抗体〈DSA〉による抗体関連型拒絶反応も含まれる。 ・臨床所見: 移植腎の炎症と浮腫を反映して,移植腎の腫大・圧痛,発熱,尿量減少,体重増加,血清クレアチニンの上昇がみられる。超音波ドプラ検査では腎内血流の低下と抵抗係数〈RI: resistive index〉の上昇がみられる。 ・確定診断は移植腎生検(Banff分類)で行う。

解き方

各選択肢が「急性拒絶反応」に合致するのか,それとも超急性拒絶反応や免疫抑制療法の合併症など別の病態の特徴なのかを見分ける。移植腎の炎症・浮腫で腎が腫れ,血流は低下する,という病態を押さえれば正解にたどり着ける。

選択肢考察

  1. ×a.  血小板が減少する。

    急性拒絶反応の典型的な所見ではない。移植後に血小板減少をみた場合は,まず免疫抑制薬や抗ウイルス薬など薬剤の副作用(骨髄抑制),サイトメガロウイルス感染症などの感染症を考える。なお,超急性拒絶反応や重症の抗体関連型拒絶反応で血栓性微小血管症を伴う場合には,血小板が消費されて減少することがあるが,急性拒絶反応一般の特徴とはいえない。

  2. ○b.  移植腎が腫大する。

    急性拒絶反応では移植腎にリンパ球などの炎症細胞が浸潤し,間質の浮腫が生じるため移植腎が腫大する。移植腎は腸骨窩に置かれ体表から触れやすいため,腫大や圧痛として気づかれ,発熱,尿量減少,血清クレアチニン上昇とともに重要な臨床所見となる。

  3. ×c.  移植腎の血流が上昇する。

    炎症・浮腫により腎実質内の圧が高まり,血管炎(動脈内膜炎)を伴えば血管抵抗も増すため,移植腎の血流はむしろ低下する。超音波ドプラ検査で血流低下とRIの上昇を認めることが拒絶反応を疑う手がかりとなる。

  4. ×d.  移植後6時間以内に起きる。

    移植直後(数分〜24時間以内)に起こるのは超急性拒絶反応である。急性拒絶反応は典型的には移植後1週間〜3か月以内に起こる。両者の中間で移植後1週間以内に起こるものは促進型急性拒絶反応と呼ばれる。

  5. ×e.  ドナーのClassⅠ抗原に対するレシピエントの抗体が関与する。

    レシピエントが移植前から持っているドナーのHLAクラスⅠ抗原に対する抗体(既存抗体)が,移植腎の血管内皮に結合して補体を活性化し,血栓形成と虚血を来すのは超急性拒絶反応の機序である。急性拒絶反応の主体はT細胞による細胞性免疫であり,抗原提示細胞によるHLA抗原(特にクラスⅡ)の提示を受けたCD4陽性T細胞の活性化がこれを駆動する。

腎移植後拒絶反応の分類

・超急性拒絶反応: 移植後数分〜24時間以内。ABO血液型不適合やドナーHLA(主にクラスⅠ)に対する既存抗体による液性免疫。補体活性化・血管内血栓により移植腎は急速に壊死し,治療は困難で移植腎摘出となる。移植前のクロスマッチ(リンパ球交差試験)の普及により現在は極めてまれ。 ・促進型急性拒絶反応: 移植後1週間以内(多くは2〜5日)。過去の輸血・妊娠・移植で感作された記憶免疫による反応。 ・急性拒絶反応: 典型的には移植後1週間〜3か月。主にT細胞による細胞性免疫。ステロイドパルス療法が第一選択で,抵抗例では抗胸腺細胞グロブリンなどを用いる。抗体関連型には血漿交換,免疫グロブリン大量療法,リツキシマブなどが用いられる。 ・慢性拒絶反応: 移植後数か月〜数年。液性免疫(ドナー特異的抗体)の関与が大きく,移植腎の血管内膜肥厚・糸球体病変により緩徐に腎機能が低下する。治療抵抗性で移植腎喪失の主要な原因となる。

急性拒絶反応を疑う所見

発熱,移植腎の腫大・圧痛,尿量減少,体重増加・浮腫,血圧上昇,血清クレアチニン上昇,ドプラ超音波での腎血流低下・RI上昇。確定診断には移植腎生検が必要で,カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン,タクロリムス)による腎毒性との鑑別が臨床上重要となる。

POINT

・急性拒絶反応: 移植後1週間〜3か月,主体は細胞性免疫(T細胞) ・所見: 移植腎腫大・圧痛,発熱,尿量減少,Cr上昇,ドプラで腎血流低下 ・超急性拒絶反応: 移植後24時間以内,既存の抗ドナーHLA(クラスⅠ)抗体・ABO抗体による液性免疫 ・移植後の血小板減少は薬剤性や感染症をまず考える ・確定診断は移植腎生検,カルシニューリン阻害薬腎毒性との鑑別が重要

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。