StudyMed医師国家試験

数えるべきは「袋」の数―胎嚢と胎盤でつかむ双胎の膜性診断

第110回医師国家試験 B問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第26問

双胎妊娠で胎盤と数が一致するのはどれか。

  1. a.臍帯
  2. b.胎芽
  3. c.胎児
  4. d.胎嚢
  5. e.羊膜

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は双胎妊娠の膜性、つまり絨毛膜と羊膜がそれぞれいくつあるかを理解しているかを問う問題だ。ポイントは「どの膜性のパターンでも常に胎盤と数が一致するもの」を探すこと。そのためには、胎盤が何から作られるかを思い出す必要があるよ。
医学生医学生
双胎は、二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜の3つに分かれるんでしたよね。産婦人科の講義で略語のDD、MD、MMを覚えました。
ドクタードクター
その通り。では胎盤の胎児側の主体は何だろう。
医学生医学生
絨毛…ですか。だから「絨毛膜の数=胎盤の数」ということでしょうか。
ドクタードクター
正解。絨毛膜が1つなら胎盤は1つ、2つなら2つだ。ここで問題になるのは、選択肢の中で絨毛膜の数と常に連動するものはどれか、ということ。
医学生医学生
羊膜かなと一瞬思いましたが、MD双胎だと羊膜は2枚で胎盤は1つだから合わないですね。
ドクタードクター
いい気づきだね。羊膜は胎児を直接包む最内層の膜で、DDなら2枚、MDでも2枚、MMで1枚。DDとMMでは胎盤数と一致するけれど、MDで崩れる。だから羊膜は不正解だ。では臍帯はどうかな。
医学生医学生
臍帯は赤ちゃん1人に1本なので、双胎なら常に2本。一絨毛膜性だと胎盤1つに臍帯が2本付くことになるので、一致しません。
ドクタードクター
その通り。胎芽と胎児も同じ理屈で、双胎ならどの膜性でも常に2つだ。ちなみに我が国では妊娠10週未満の器官形成途中の児を胎芽、10週以降を胎児と呼び分けている。
医学生医学生
そうすると残るのは胎嚢ですね。でも、胎嚢と絨毛膜の関係がいまひとつピンときません。
ドクタードクター
そこが核心だ。妊娠初期の超音波で見える黒い袋、あれが胎嚢だけど、実体は絨毛膜に囲まれた腔なんだ。つまり胎嚢の数は絨毛膜の数そのもの。だからDDでは胎嚢2つ・胎盤2つ、MDとMMでは胎嚢1つ・胎盤1つと、膜性を問わず必ず一致する。
医学生医学生
臨床実習の妊婦健診で、経腟エコーで先生が「袋が2つあるね」と言っていたのは、膜性を見ていたんですね。
ドクタードクター
まさにそう。妊娠初期、特に10週ごろまでに胎嚢の数を数えるのが、絨毛膜性を診断するうえで最も確実な方法なんだ。それ以降は、14週ごろまでに隔膜の付着部の形を見る。DDでは隔膜の基部が三角形に盛り上がるλ(ラムダ)サイン、MDでは薄い隔膜がT字状に付くTサインになる。
医学生医学生
そもそも、なぜ膜性がそこまで重要なんですか。
ドクタードクター
一絨毛膜性双胎は1つの胎盤を共有していて、胎盤内で両児の血管が吻合している。そのため双胎間輸血症候群や、一児が亡くなったときにもう一児に脳障害が起こるリスクが高い。MM双胎ではさらに臍帯同士が絡み合って胎児死亡に至る危険もある。管理方針が大きく変わるから、妊娠初期のうちに膜性を確定させることが大切なんだ。
医学生医学生
卵性との関係も整理したいです。二卵性は必ずDDでしたよね。
ドクタードクター
そう。二卵性は2つの受精卵がそれぞれ着床するので必ずDDになる。一卵性は分離の時期で決まり、受精後およそ3日以内ならDD、4〜8日ごろならMD、8〜12日ごろならMM、それより遅いと結合双胎になる。一卵性で最も多いのはMDだ。だから「DDなら二卵性」とは言えない点に注意してほしい。
医学生医学生
DDでも胎盤が1つに見えることはあるんですか。
ドクタードクター
鋭いね。DDで2つの胎盤が近くに付着すると、肉眼的には1つに癒合して見えることがある。でも由来は2つの絨毛膜だから、本質的には胎盤2つだ。分娩後に胎盤だけ見て膜性を判断するのは難しいこともあるからこそ、妊娠初期の胎嚢数の確認が価値を持つんだよ。

まとめ

胎盤の胎児側の主体は絨毛膜であり、胎盤の数は絨毛膜の数に対応します。妊娠初期に超音波で見える胎嚢は絨毛膜に囲まれた腔なので、胎嚢の数も絨毛膜の数と一致し、DD・MD・MMのいずれの膜性でも胎盤と胎嚢は同数になります。一方、臍帯・胎芽・胎児は双胎では常に2つ、羊膜はMDで2枚・MMで1枚となるため、膜性によっては胎盤数と一致しません。二卵性は必ずDD、一卵性は分離時期によりDD・MD・MMのいずれにもなり、膜性診断は妊娠初期の胎嚢数の確認とλサイン・Tサインで行います。一絨毛膜性双胎は双胎間輸血症候群などのハイリスク妊娠であり、膜性を早期に正しく診断することが適切な周産期管理の出発点となります。

解答・解説

正解はdです

双胎の膜性(絨毛膜と羊膜の数による分類)を理解しているかを問う問題である。 双胎は膜性によって、二絨毛膜二羊膜(DD)双胎、一絨毛膜二羊膜(MD)双胎、一絨毛膜一羊膜(MM)双胎の3つに分けられる。設問は「どの膜性であっても常に胎盤と数が一致するものはどれか」を問うている。 考え方の鍵は、胎盤が何から作られるかである。胎盤の胎児側の主体は絨毛膜(絨毛)であり、胎盤の数は絨毛膜の数に対応する。一方、妊娠初期に超音波で見える胎嚢(たいのう)は、絨毛膜に包まれた袋(絨毛膜腔)そのものである。したがって胎嚢の数も絨毛膜の数に対応し、胎盤と胎嚢は膜性を問わず必ず同じ数になる(DD双胎ではいずれも2つ、MD・MM双胎ではいずれも1つ)。 これに対し、臍帯・胎芽・胎児は児1人につき1つずつ存在するため、双胎では膜性にかかわらず常に2つである。羊膜は膜性によって2枚の場合と1枚の場合がある。それぞれの数をDD・MD・MMの3パターンで並べてみると、すべてのパターンで胎盤と一致するのは胎嚢だけであることがわかる。

選択肢考察

  1. ×a.  臍帯

    誤り。臍帯は胎児と胎盤をつなぐ索状物で、児1人に1本ずつあるため双胎では常に2本である。DD双胎では胎盤も2つなので数が一致するが、一絨毛膜性(MD・MM)双胎では胎盤が1つで、そこに2本の臍帯が付着するため一致しない。

  2. ×b.  胎芽

    誤り。胎芽は器官形成が未完成な妊娠初期(我が国では妊娠10週未満)の児を指す呼称で、双胎では常に2つである。一絨毛膜性双胎では胎盤が1つなので、数は一致しない。

  3. ×c.  胎児

    誤り。胎児はヒトとしての形態を備えた妊娠10週以降の児を指し、双胎では当然2人である。胎芽と同様、一絨毛膜性双胎では胎盤が1つであり数は一致しない。

  4. ○d.  胎嚢

    正しい。胎嚢は絨毛膜に囲まれた腔であり、その数は絨毛膜の数、すなわち将来の胎盤の数と一致する。DD双胎では胎嚢2つ・胎盤2つ、MD・MM双胎では胎嚢1つ・胎盤1つとなる。このため妊娠初期(特に妊娠10週ごろまで)に経腟超音波で胎嚢の数を数えることが、絨毛膜性を診断するうえで最も確実な方法となる。

  5. ×e.  羊膜

    誤り。羊膜は胎児を直接包む最内層の膜である。DD双胎では羊膜2枚・胎盤2つで一致するが、MD双胎では羊膜2枚に対し胎盤は1つであり一致しない(MM双胎では羊膜1枚・胎盤1つで一致する)。膜性によって一致しない場合があるため誤りである。

双胎の膜性と構造の数

・DD双胎(二絨毛膜二羊膜): 胎盤2・胎嚢2・羊膜2・臍帯2・胎児2 ・MD双胎(一絨毛膜二羊膜): 胎盤1・胎嚢1・羊膜2・臍帯2・胎児2 ・MM双胎(一絨毛膜一羊膜): 胎盤1・胎嚢1・羊膜1・臍帯2・胎児2 なおDD双胎で2つの胎盤が近接して付着すると、肉眼的には1つに癒合して見えることがある(癒合胎盤)が、胎盤としては2つに由来する。

卵性と膜性の関係

・二卵性双胎: 2つの受精卵がそれぞれ着床するため、必ずDD双胎となる。 ・一卵性双胎: 1つの受精卵が分離する時期によって膜性が決まる。一般に、受精後およそ3日以内(絨毛膜ができる前)の分離ではDD、およそ4〜8日(絨毛膜形成後・羊膜形成前)ではMD、およそ8〜12日(羊膜形成後)ではMM、それより遅いと結合双胎となる。一卵性双胎で最も多いのはMD双胎である。

膜性診断の臨床的意義

一絨毛膜性双胎は1つの胎盤を共有し、胎盤内で両児の血管が吻合しているため、双胎間輸血症候群(TTTS)、一児死亡時のもう一児の脳障害などのリスクが高い。MM双胎ではさらに臍帯相互巻絡による胎児死亡の危険がある。管理方針が大きく異なるため、妊娠初期に胎嚢の数を確認し、加えて妊娠14週ごろまでに隔膜の付着部の形(DDでは隔膜の基部が三角形に盛り上がるλ(ラムダ)サイン、MDでは薄い隔膜がT字状に付着するTサイン)をみて膜性を診断する。

用語

胎芽: 妊娠10週未満の、器官形成途中の児。胎児: 妊娠10週以降の児。

POINT

・胎嚢の数=絨毛膜の数=胎盤の数(膜性を問わず一致する)。 ・臍帯・胎芽・胎児は双胎では常に2つ。羊膜はMDで2枚、MMで1枚。 ・二卵性は必ずDD。一卵性は分離時期によりDD・MD・MMのいずれにもなる。 ・膜性診断は妊娠初期の胎嚢数の確認と、λサイン・Tサインで行う。一絨毛膜性はTTTSなどのハイリスク。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。