感作なしで即出動―NK細胞が「自然免疫のリンパ球」である理由
第110回医師国家試験 B問題 第14問
国試問題にチャレンジ
自然免疫に関与するのはどれか。
- a.NK細胞
- b.形質細胞
- c.ヘルパーT細胞
- d.細胞傷害性T細胞
- e.Bリンパ球〈B細胞〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
免疫は、病原体共通の構造をパターン認識受容体で捉えて即座に働く自然免疫と、遺伝子再構成で多様化した受容体により個々の抗原を特異的に認識し、免疫記憶をもつ獲得免疫に大別されます。NK細胞はリンパ球でありながら抗原特異的受容体を持たず、事前の感作なしにMHCクラスIの発現が低下したウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する、自然免疫の代表的な細胞です。一方、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、そしてB細胞から分化して抗体を産生する形質細胞は、いずれも獲得免疫に属します。NK細胞はADCCを通じて抗体の働きを実行するなど、自然免疫と獲得免疫は連携して生体を守っています。「抗原特異性と免疫記憶の有無」という軸で細胞を整理することは、感染症、腫瘍免疫、抗体医薬の理解の土台になります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
免疫系は大きく「自然免疫」と「獲得免疫(適応免疫)」に分けられる。本問は選択肢の細胞をこの2つに振り分けられるかを問うている。
自然免疫と獲得免疫の違い
・自然免疫: 生まれつき備わっている防御機構で、病原体が侵入するとすぐ(数分〜数時間)に働く。病原体に共通する分子パターン(PAMPs、病原体関連分子パターン。細菌のリポ多糖〔LPS〕など)をToll様受容体〈TLR〉などのパターン認識受容体で大まかに認識する。抗原特異性は低く、免疫記憶をつくらない(2回目の感染でも反応の強さは基本的に変わらない)。担当する細胞は好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、好酸球、好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)など。 ・獲得免疫: 個々の抗原を特異的に見分ける受容体(T細胞受容体〈TCR〉、B細胞受容体〈BCR〉)を持つリンパ球が担う。初回の反応が立ち上がるまでに数日〜1週間程度かかるが、抗原特異性が高く、免疫記憶により2回目以降はより速く強く反応する。担当する細胞はT細胞(ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞など)、B細胞、B細胞から分化した形質細胞である。
考え方
リンパ球の中でも、抗原特異的な受容体を遺伝子再構成によって作るT細胞・B細胞は獲得免疫、そのような受容体を持たないNK細胞は自然免疫に属すると整理すれば、正解はNK細胞と判断できる。
選択肢考察
- ○a. NK細胞
正しい。NK(ナチュラルキラー)細胞は大型顆粒リンパ球で、事前の抗原感作(抗原にさらされて準備されること)なしに、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直ちに傷害できる。抗原特異的な受容体(TCRやBCR)を持たず、自己のMHCクラスI分子を認識する抑制性受容体と、ストレスを受けた細胞の分子を認識する活性化受容体とのバランスで標的を見分ける。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞ではMHCクラスIの発現が低下していることが多く、抑制シグナルが外れて攻撃される(missing self)。パーフォリンとグランザイムで標的細胞を殺し、IFN-γを産生してマクロファージを活性化する。また抗体が結合した細胞をFc受容体(CD16)で認識して傷害する抗体依存性細胞傷害〈ADCC〉も担う。自然免疫の主要なリンパ球である。
- ×b. 形質細胞
誤り。形質細胞はB細胞が抗原刺激とヘルパーT細胞の補助を受けて最終分化した細胞で、特定の抗原に対する抗体(免疫グロブリン)を大量に分泌する。抗原特異的な抗体による防御は液性免疫と呼ばれ、獲得免疫の中心的な働きである。形質細胞自体は抗原を認識する受容体をほとんど表面に出していないが、獲得免疫の最終的な実行役(エフェクター細胞)に位置づけられる。
- ×c. ヘルパーT細胞
誤り。ヘルパーT細胞はCD4陽性T細胞で、抗原提示細胞がMHCクラスII分子に載せて提示した抗原ペプチドをTCRで特異的に認識する。サイトカインを放出してB細胞の抗体産生、細胞傷害性T細胞の活性化、マクロファージの活性化などを助ける、獲得免疫の司令塔である。抗原特異性と免疫記憶を持つ。
- ×d. 細胞傷害性T細胞
誤り。細胞傷害性T細胞〈CTL〉はCD8陽性T細胞で、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞がMHCクラスI分子に載せて提示した抗原ペプチドをTCRで特異的に認識し、パーフォリン・グランザイムやFasリガンドを介して標的細胞を殺す。抗原特異性と免疫記憶を持ち、細胞性免疫を担う獲得免疫の細胞である。同じように細胞を殺すNK細胞とは、抗原特異的な認識の有無で区別される。
- ×e. Bリンパ球〈B細胞〉
誤り。B細胞は表面の抗原特異的な受容体(BCR、膜型免疫グロブリン)で抗原を認識し、ヘルパーT細胞の助けを得て形質細胞やメモリーB細胞に分化する。抗体による液性免疫を担う獲得免疫の細胞である。またMHCクラスIIで抗原をヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞としても働く。
免疫細胞の整理
自然免疫: 好中球(細菌の貪食・殺菌、急性炎症の主役)、マクロファージ(貪食、サイトカイン産生、抗原提示)、樹状細胞(最も強力な抗原提示細胞。自然免疫で病原体を捉え、リンパ節でナイーブT細胞に抗原提示して獲得免疫を始動させる)、NK細胞、好酸球(寄生虫防御、アレルギー)、好塩基球・マスト細胞(ヒスタミン放出、I型アレルギー)。細胞以外では補体系、抗菌ペプチド、皮膚・粘膜のバリアも自然免疫に含まれる。 獲得免疫: T細胞(CD4陽性ヘルパーT細胞、CD8陽性細胞傷害性T細胞、制御性T細胞など)、B細胞、形質細胞、メモリー細胞。
自然免疫と獲得免疫の比較
・反応の速さ: 自然免疫は即時、獲得免疫は初回で数日以上 ・認識: 自然免疫はパターン認識受容体(TLRなど)で病原体共通の構造を認識、獲得免疫は遺伝子再構成で多様化したTCR・BCRで個々の抗原を認識 ・特異性: 自然免疫は低い、獲得免疫は高い ・免疫記憶: 自然免疫はなし(基本的に)、獲得免疫はあり(ワクチンの原理)
両者の橋渡し
樹状細胞やマクロファージの抗原提示、NK細胞によるADCC、補体による抗体の働きの増強など、自然免疫と獲得免疫は互いに連携して働く。また自然リンパ球〈ILC〉、NKT細胞、γδT細胞のように、両者の中間的性質をもつリンパ球も知られている。
POINT
・自然免疫: NK細胞、好中球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マスト細胞、補体。 ・獲得免疫: T細胞(ヘルパー・細胞傷害性)、B細胞、形質細胞。 ・NK細胞はリンパ球だが抗原特異的受容体を持たず、事前の感作なしにウイルス感染細胞・腫瘍細胞を殺す自然免疫の細胞。 ・獲得免疫の特徴は抗原特異性と免疫記憶。
