「割り付けたら最後まで」―ITT解析で数えるのは表のどの合計か
第110回医師国家試験 B問題 第13問
国試問題にチャレンジ
治療Aと治療Bとの比較を目的としたランダム化比較試験〈無作為比較対照試験〉を行った。割付と実際の治療人数の表を示す。 intention to treat〈ITT〉で2つの治療を比較するときに,治療Aと治療Bの人数の組合せで正しいのはどれか。 治療Aを 実際に行った 治療Bを 実際に行った 治療開始前に 死亡した 合計 治療A割付 110人 15人 4人 129人 治療B割付 6人 115人 0人 121人 合計 116人 130人 4人 250人

- a.110人 ―― 115人
- b.114人 ―― 115人
- c.116人 ―― 130人
- d.125人 ―― 121人
- e.129人 ―― 121人
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
ITT解析では、実際に受けた治療や脱落・死亡の有無に関係なく、ランダムに割り付けた全員を最初の割付群のまま解析します。本問の表では割付の行の合計を用い、治療A群129人、治療B群121人で比較するのが正解です。割付どおりに治療を受けた人だけを数えるのはper protocol解析、実際に受けた治療で分けるのはas-treated解析であり、いずれもランダム化で得た群間の比較可能性を損なうおそれがあります。ITT解析は実臨床に近い実効性を反映し、優越性試験の主解析とされる一方、非劣性試験ではPP解析との併用による確認が推奨されます。解析方法の違いを理解しておくことは、臨床試験の結果を正しく読み解くための基本となります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
ランダム化比較試験(RCT)の解析方法のうち、intention to treat〈ITT〉解析(治療意図に基づく解析)では各群の人数をどう数えるかが問われている。
ITT解析の原則
ITT解析では、実際にどの治療を受けたか、治療を最後まで続けたか、途中で脱落・死亡したかに関係なく、ランダム割付をされた全員を「最初に割り付けられた群」の一員として解析する("once randomized, always analyzed")。 ランダム化の目的は、既知・未知の交絡因子(年齢、重症度など結果に影響する背景因子)を両群に均等に分けることである。割付後に「実際に受けた治療」や「治療を完了したか」で患者を組み替えたり除外したりすると、その組み替え自体が病状や副作用などの予後因子と関連するため、ランダム化で得た群間の比較可能性が崩れ、バイアスが入り込む。ITT解析はこれを防ぐための方法である。
表の読み取り
・治療A割付: 実際に治療Aを受けた110人、治療Bに切り替わった15人、治療開始前に死亡した4人 → 合計129人 ・治療B割付: 実際に治療Bを受けた115人、治療Aに切り替わった6人、死亡0人 → 合計121人 ITT解析では割付時点の人数をそのまま用いるので、治療A群129人、治療B群121人で比較する。表の行(割付)の合計がそのまま答えであり、列(実際の治療)の合計を見てはいけない点が要点である。
選択肢考察
- ×a. 110人 ―― 115人
誤り。割り付けられたとおりの治療を実際に受けた人だけ(A割付でAを受けた110人、B割付でBを受けた115人)を数えている。これはプロトコール遵守者のみを解析するper protocol〈PP〉解析の人数であり、割付どおりに治療を受けなかった人や死亡者を除外しているためITT解析ではない。
- ×b. 114人 ―― 115人
誤り。A割付129人から治療Bに切り替わった15人を除き(114人)、B割付121人から治療Aに切り替わった6人を除いた(115人)数である。治療を切り替えた人を除外しているため、割付全員を解析するITTの原則に反する。
- ×c. 116人 ―― 130人
誤り。割付に関係なく実際に受けた治療ごとに集計した数(治療A: 110+6=116人、治療B: 15+115=130人)であり、as-treated解析(実治療に基づく解析)の人数である。治療の選択が患者の状態に左右されうるため、ランダム化の利点が失われる。
- ×d. 125人 ―― 121人
誤り。A割付129人から治療開始前に死亡した4人を除いた数(125人)である。ITT解析では治療開始前の死亡者も割付群に含めて解析するので、除外してはならない。治療を受けなかった人などを除外する解析は修正ITT(modified ITT)と呼ばれることがあるが、本来のITTとは異なる。
- ○e. 129人 ―― 121人
正しい。割付時点の各群の全員、すなわち治療A割付129人(実際に治療Bを受けた15人と治療開始前に死亡した4人を含む)と治療B割付121人(実際に治療Aを受けた6人を含む)を、それぞれ割り付けられた群として解析する。これがITT解析の人数である。
RCTの主な解析方法
・ITT解析(intention to treat): 割り付けた全員を割付群のまま解析する。ランダム化による群間の比較可能性を保つため、RCTの主解析として推奨される。服薬不遵守や脱落も含めるので、現実の診療で「その治療を選んだ場合」の効果(実効性、effectiveness)を反映しやすく、効果はやや控えめ(帰無仮説寄り)に推定される傾向がある。 ・PP解析(per protocol): 試験計画どおりに治療を完了した人だけを解析する。理想的条件での効果(効能、efficacy)を見るのに用いられるが、除外の仕方によってバイアスが入りやすい。 ・as-treated解析: 割付ではなく実際に受けた治療で群分けして解析する。ランダム化の意味が失われやすい。
ITT解析の補足
・優越性試験ではITT解析を主解析とするのが原則である。 ・非劣性試験では、ITTは群間差を小さく見せる方向に働き、非劣性と誤って結論しやすいため、ITTとPPの両方で結果が一致するかを確認することが推奨される。 ・ITT解析を行う場合でも、脱落者の結果データが欠けると欠測値の扱い(補完方法など)が問題になる。
RCTのバイアス対策の整理
・ランダム化: 選択バイアス・交絡を防ぐ ・割付の隠蔽(コンシールメント): 割付順序を事前に知られないようにする ・盲検化(マスキング): 情報バイアス(実施バイアス・測定バイアス)を防ぐ ・ITT解析: 割付後の脱落・切り替えによるバイアスを防ぐ
POINT
・ITT解析=割付どおりの群で全員を解析する(実際の治療・脱落・死亡は問わない)。 ・表では「割付の行の合計」を見る → 129人と121人。 ・実際に受けた治療で分ける=as-treated解析、プロトコール遵守者のみ=PP解析。 ・ITTの目的はランダム化で得た群間の比較可能性を保ち、バイアスを避けること。
