II音をまたいで鳴り続ける雑音―連続性雑音は「血管どうしの短絡」を探せ
第110回医師国家試験 A問題 第16問
国試問題にチャレンジ
先天性心疾患で連続性雑音を聴取するのはどれか。2つ選べ。
- a.肺動脈狭窄症
- b.動脈管開存症
- c.心室中隔欠損症
- d.大動脈弁狭窄症
- e.先天性冠状動脈瘻
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
連続性雑音は、心周期全体を通じて圧較差が保たれる短絡、すなわち大動脈系と肺動脈・右心系・静脈系との血管レベルの交通で生じ、II音をまたいで途切れずに続きます。代表は胸骨左縁第2肋間で機械様雑音を呈する動脈管開存症と、拡張期に強調されやすい先天性冠状動脈瘻で、Valsalva洞動脈瘤破裂や体肺動脈短絡術後、動静脈瘻も同じ原理です。心室中隔欠損症は汎収縮期雑音、肺動脈狭窄症や大動脈弁狭窄症は収縮期駆出性雑音であり、II音で途切れる往復性雑音とも区別が必要です。また動脈管開存症で肺高血圧が進むと連続性雑音が消失する点も臨床上重要です。「どの時相に圧較差があるか」から雑音を理解することで、暗記に頼らず聴診所見を病態に結びつけられるようになります。
解答・解説
正解はb, eです
連続性雑音とは、収縮期から拡張期まで途切れずに(多くはII音をまたいで)聴こえる心雑音である。心雑音は圧較差のある部位を血液が勢いよく流れることで生じるため、「心周期を通じて常に圧較差が保たれている短絡(シャント)」があると、血流が止まらず連続性雑音となる。 典型例は、高圧系である大動脈(あるいはその分枝である冠動脈)と、低圧系である肺動脈や右心系・静脈系とが血管レベルで直接つながっている病態である。大動脈圧は収縮期・拡張期ともに肺動脈圧や右心系の圧より高いため、短絡血流は心周期全体にわたって流れ続ける。 これに対し、心室中隔欠損症のような心室レベルの短絡や、弁の狭窄による雑音は、圧較差が収縮期にしか大きくならないため収縮期雑音となる。本問は「血管と血管(または血管と低圧の心腔)の短絡」を探せばよく、動脈管開存症と先天性冠状動脈瘻が該当する。
選択肢考察
- ×a. 肺動脈狭窄症
肺動脈弁狭窄では、収縮期に右室から狭い弁口を通って肺動脈へ駆出される血流が乱流となり、胸骨左縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を生じる。しばしば収縮期駆出音(クリック)やII音の分裂・肺動脈成分(IIp)の減弱を伴う。拡張期には弁口を通る順行性の血流は生じないため、連続性雑音にはならない。
- ○b. 動脈管開存症
動脈管は胎児期に肺動脈から大動脈へ血液を流すバイパスで、通常は出生後数日以内に機能的に閉鎖する。これが閉じずに残るのが動脈管開存症(patent ductus arteriosus:PDA)である。出生後は大動脈圧が収縮期・拡張期とも肺動脈圧を上回るため、大動脈から肺動脈へ常に左右短絡血流が流れ、胸骨左縁第2肋間(左鎖骨下部)を最強点とする連続性雑音(収縮後期からII音付近で最大となる機械様雑音:machinery murmur)を聴取する。脈圧の増大(拡張期血圧の低下)や反跳脈も特徴である。ただし肺高血圧が進行して肺動脈圧が上昇すると、拡張期の圧較差が消えて連続性雑音は聴かれなくなる(さらに進行すると右左短絡となるEisenmenger化)。
- ×c. 心室中隔欠損症
心室中隔欠損症(ventricular septal defect:VSD)では、収縮期に左室圧が右室圧を大きく上回るため左室から右室へ短絡血流が生じ、胸骨左縁第3〜4肋間を最強点とする汎収縮期雑音を聴取する。拡張期には両心室の圧がともに低く圧較差がほとんどないため、短絡による雑音は生じない。短絡量が多い場合、増加した肺血流が左房から僧帽弁を通過することで心尖部に拡張中期ランブル(相対的僧帽弁狭窄音)が聴かれることはあるが、これは連続性雑音ではない。なお、VSDに大動脈弁逸脱による大動脈弁閉鎖不全を合併すると収縮期と拡張期の雑音(to-and-fro雑音)となるが、II音で途切れる点で連続性雑音とは区別される。
- ×d. 大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症では、収縮期に左室から狭窄した大動脈弁口を通る駆出血流によって、胸骨右縁第2肋間を最強点とし頸部へ放散する収縮期駆出性雑音(漸増漸減型)を聴取する。先天性では二尖弁などが原因となり、駆出音(クリック)を伴うことがある。拡張期には雑音を生じる血流がないため、連続性雑音にはならない。
- ○e. 先天性冠状動脈瘻
先天性冠状動脈瘻(冠動静脈瘻、coronary artery fistula)は、冠動脈が毛細血管床を介さずに心腔や血管へ直接交通する先天奇形である。流入先は右室・右房・肺動脈・冠静脈洞など右心系が大部分を占める。冠動脈(大動脈と同等の高圧)と右心系(低圧)との間には収縮期・拡張期を通じて圧較差があるため、短絡血流が持続し連続性雑音を生じる。冠血流は拡張期優位であるため、雑音は拡張期に強調されることが多く、最強点はPDAより低い位置(胸骨左縁下部など、流入部位に対応する部位)になりやすい点がPDAとの鑑別点となる。なお、まれに左室へ流入する場合は、収縮期には左室圧が高く短絡が生じないため拡張期雑音のみとなる。
連続性雑音をきたす主な病態
・動脈管開存症 ・冠動静脈瘻(先天性冠状動脈瘻) ・Valsalva洞動脈瘤破裂(右心系へ破裂した場合) ・大動脈肺動脈窓(aortopulmonary window) ・Blalock-Taussig短絡術後などの体肺動脈短絡 ・肺動静脈瘻、末梢の動静脈瘻(透析用シャントの血管雑音もこの原理) ・静脈コマ音(venous hum:小児の頸部で聴かれる機能性の連続性雑音。頸静脈の圧迫や体位変換で消失する)
心雑音の時相と代表疾患
・収縮期駆出性雑音:大動脈弁狭窄、肺動脈弁狭窄、心房中隔欠損(相対的肺動脈弁狭窄)、肥大型閉塞性心筋症 ・汎収縮期雑音:僧帽弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全、心室中隔欠損 ・拡張期雑音:大動脈弁閉鎖不全・肺動脈弁閉鎖不全(拡張早期の灌水様雑音)、僧帽弁狭窄(拡張中期ランブル) ・連続性雑音:上記の血管レベルの短絡
連続性雑音と「収縮期+拡張期雑音」の違い
大動脈弁狭窄兼閉鎖不全やVSD+大動脈弁閉鎖不全では収縮期と拡張期の両方に雑音があるが、II音(弁の閉鎖)の時点でいったん途切れ、往復性(to-and-fro)雑音と呼ばれる。連続性雑音はII音をまたいで途切れずに続く点が異なる。
POINT
・連続性雑音=心周期全体で圧較差が保たれる短絡(大動脈系⇔肺動脈・右心系・静脈系) ・代表:動脈管開存症(胸骨左縁第2肋間、machinery murmur)、冠動静脈瘻、Valsalva洞動脈瘤破裂 ・VSDは汎収縮期雑音、弁狭窄は収縮期駆出性雑音であり、連続性にはならない ・PDAに肺高血圧が進むと連続性雑音は消失する
