パンを食べて部活に行ったら―食物依存性運動誘発アナフィラキシーの二大原因
第110回医師国家試験 A問題 第17問
国試問題にチャレンジ
我が国における食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因として頻度が高いのはどれか。2つ選べ。
- a.甲殻類
- b.牛乳
- c.小麦
- d.大豆
- e.卵
対話形式の解説
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ドクターまとめ
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、原因食物の摂取とその後の運動が組み合わさったときに起こるIgE依存性のアナフィラキシーで、中学生から青年期に初発しやすい疾患です。我が国では小麦(主要アレルゲンはω-5グリアジン)が最多で、次いで甲殻類(トロポミオシン)が多く、この2つで大部分を占めます。鶏卵・牛乳・大豆は乳幼児の食物アレルギーの原因として重要ですが、本症ではまれであり、両者を混同しないことが重要です。NSAIDsや疲労などが増悪因子となり、発症時はアドレナリン筋注、予防には摂取後2時間以上運動を避けることやエピペンの携帯、学校との情報共有が欠かせません。年齢によって食物アレルギーの原因が変わることを理解しておくと、問診や生活指導を的確に行えるようになります。
解答・解説
正解はa, cです
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)は、即時型(IgE依存性)食物アレルギーの特殊型である。原因食物を摂取しただけ、あるいは運動しただけでは症状が出ないが、「原因食物の摂取」と「その後の運動」が組み合わさったときにアナフィラキシー(全身の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下など)を起こすのが特徴である。 多くは原因食物の摂取後2時間以内(特に1時間以内)の運動で発症し、運動の種類は球技やランニングなど比較的負荷の強いものが多い。初発は中学生から青年期に多く、乳幼児の食物アレルギーとは好発年齢が異なる。運動によって消化管からのアレルゲン吸収が促進されることや、マスト細胞が活性化しやすくなることが発症に関わると考えられている。 我が国での原因食物は小麦製品が最も多く(全体の約6割)、次いで甲殻類(エビ・カニ、約3割)であり、この2つで大部分を占める。一方、鶏卵・牛乳・大豆は乳幼児期の即時型食物アレルギーの主要な原因であるが、FDEIAの原因としてはまれである。「小児の食物アレルギーの原因」と「FDEIAの原因」とを混同しないことが本問の要点である。
選択肢考察
- ○a. 甲殻類
エビ・カニなどの甲殻類は、我が国のFDEIAの原因食物として小麦に次いで2番目に多い。主要なアレルゲンは筋肉タンパク質のトロポミオシンである。甲殻類は成人の即時型食物アレルギーの原因としても上位を占め、年長児以降に新たに発症しやすい食物である点でもFDEIAの好発年齢と合致する。
- ×b. 牛乳
牛乳は乳幼児の即時型食物アレルギーの原因として鶏卵に次いで多いが、FDEIAの原因となることはまれである。また、牛乳は大豆とともに新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー:嘔吐・下痢・血便などを呈する非IgE依存性の病型)の主要な原因でもある。乳幼児期の牛乳アレルギーの多くは成長とともに耐性を獲得する。
- ○c. 小麦
小麦(パン・麺類など小麦製品)は我が国のFDEIAの原因として最も多く、全体の半数以上を占める。主要なアレルゲンはω-5グリアジン(小麦タンパク質グルテンの成分)であり、血清ω-5グリアジン特異的IgE抗体の測定は小麦によるFDEIAの診断に有用である。かつて加水分解小麦を含む石鹸の使用により経皮感作され、小麦によるFDEIAを発症した例が多数報告され、社会問題となった。
- ×d. 大豆
大豆は即時型食物アレルギーの原因として一定の頻度はあるものの、鶏卵・牛乳・小麦に比べると少なく、FDEIAの原因としてもまれである。牛乳と同様に、新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の原因となることがある。なお、豆乳摂取によりカバノキ科花粉(シラカンバ・ハンノキなど)と交差反応する口腔アレルギー症候群が成人で問題になることがある。
- ×e. 卵
鶏卵は乳幼児を中心とした即時型食物アレルギーの原因食物として最も多い。しかしFDEIAの原因となることは少ない。鶏卵アレルギーも多くは学童期までに耐性を獲得するため、学童期以降に初発することが多いFDEIAとは年齢層が異なる。主要なアレルゲンは卵白のオボムコイドで、加熱しても抗原性が残りやすい。
FDEIAの特徴の整理
・機序:IgE依存性(I型アレルギー)の即時型食物アレルギーの特殊型 ・好発:中学生〜青年期に初発することが多い。比較的まれな疾患である ・誘因:原因食物の摂取後、多くは2時間以内の運動。運動の種類は球技・ランニングなど ・増悪因子:アスピリンなどのNSAIDs服用、疲労、睡眠不足、感冒、月経前、飲酒、入浴など ・原因食物:小麦が最多、次いで甲殻類。そのほか果物、魚類などの報告もある
診断
詳細な問診(摂取した食物と運動の時間関係)、原因食物の特異的IgE抗体測定や皮膚プリックテストを行い、必要に応じて食物摂取と運動負荷を組み合わせた誘発試験を行う。誘発試験で症状が出ない場合、アスピリン前投与で誘発性を高めることがある。
治療・予防
・発症時:アナフィラキシーとしてアドレナリン筋注(大腿前外側部)が第一選択。抗ヒスタミン薬・ステロイドは補助的 ・予防:原因食物を摂取したら少なくとも2時間(可能なら4時間)は運動を避ける、運動前には原因食物を摂取しない。NSAIDsの併用を避ける ・アドレナリン自己注射薬(エピペン)を携帯させ、学校などとも情報を共有する
我が国の即時型食物アレルギーの原因食物(年齢による違い)
・乳幼児:鶏卵、牛乳、小麦が上位。近年は木の実類(特にクルミ)も増加している ・学童〜成人:甲殻類、果物、小麦、魚類、ピーナッツ、木の実類などが多くなる
POINT
・FDEIA=原因食物の摂取+運動の組み合わせで発症するIgE依存性アナフィラキシー ・我が国の原因食物は小麦(最多、ω-5グリアジン)>甲殻類 ・中学生〜青年期に初発しやすい。NSAIDsは増悪因子 ・鶏卵・牛乳・大豆は乳幼児の食物アレルギーの原因として重要だがFDEIAでは少ない ・対応はアドレナリン筋注、予防は摂取後2時間以上運動を避けること
